最近、ウルトラセブンの4K HDRリマスター版が再放送されるというニュースを見かけました。
「あぁ、観たい!でもテレビがないので物理的に観られない…」
動画配信サービスの Amazon Prime Videoをチェックすると、ウルトラセブン(TV版)は、レンタルでの視聴が可能ですが、視聴期間に制限があり、全話を自分のペースで楽しむには難しそうです。
ならばDVDやBlu-Rayは?と探してみましたが、国内で販売されているものは非常に高価で、購入を躊躇してしまいます。
どうしようかと悩んでいた矢先、偶然見つけたのが北米版の「Ultraseven: Complete Series [Blu-ray]」!!お得価格に驚きです。
ウルトラセブンの北米版?
北米版があるのは、円谷プロダクションがアメリカのホームビデオ配給会社 Mill Creek Entertainment (ミル・クリーク・エンターテイメント) とライセンス契約を結んでいるからです。この契約により、Mill Creek Entertainmentは北米地域(アメリカおよびカナダ)でウルトラシリーズの映像ソフト販売やデジタル配信を行う権利を得ています。
したがって、北米版ウルトラシリーズは、歴とした正規版です。
北米版ウルトラシリーズがお得な理由
Amazonなどで販売されているのは、この北米版の並行輸入品です。実は、ウルトラセブンに限らず、ウルトラシリーズや日本アニメの北米版は、国内版より安価に入手できます。
「並行輸入品」とは、メーカーが指定した正規の販売ルートを通さず、第三者が海外の市場から合法的に買い付けて国内に輸入・販売する商品のことを指します。
簡単に言うと、海外で販売されている本物を、正規の販売ルートを通さずに日本に入ってきた商品ということです。
ウルトラセブン本来の音声は日本語ですので、再生時の設定で字幕をオフにすれば、英語字幕なしでストレスなく楽しめます。
北米版のBlu-Rayは日本のプレイヤーで再生できるのか?
DVDであれば、日本ではリージョン2、北米ではリージョン1とリージョンコードが異なっているため、日本のDVDプレイヤーでは、北米で販売されているDVDを再生することができませんでした。
しかし、Blu-Rayは、日本も北米もリージョンAと同じなので、北米版「Ultraseven: Complete Series [Blu-ray]」も、日本メーカーのBlu-Rayプレイヤーで問題なく再生できます。
参考までに、Blu-Rayのリージョンコード区分は以下の通りです。
- リージョンA: 北米、中米、南米、東南アジア、日本、韓国、台湾など
- リージョンB: ヨーロッパ、中近東、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど
- リージョンC: 中央アジア、南アジア、中国(一部を除く)、東ヨーロッパなど
北米版ウルトラセブンはprime videoより高解像度
北米版Blu-rayのスペックは、映像が 1080p High Definition、音声は DTS-HD Master Audio 2.0 となっています。4K HDRリマスターには敵いませんが、フルHDの高解像度映像と、ロスレス圧縮による高音質な音声で「ウルトラセブン」を最高のクオリティで楽しめるということです。
ただし、May not be in High Definition(高画質ではない場合があります)という注意書きがありますが、これは、オリジナルマスターの状態によるものと思われます。それでも、多くのシーンはBlu-ray品質で収録されています。
ちなみに、Prime Videoで配信されているウルトラセブンは、SD (Standard Definition / 標準画質)です。その解像度は 720×480pxで、画素数は約35万画素となります。
一方、北米版ウルトラセブンのBlu-Rayは、フルHD(1080p)解像度が 1920x1080pxで、画素数は約207万画素です。両者を比較すると、画質の差は歴然ですね。
北米版ウルトラセブンパッケージ詳細
まず、気になる欠番についてですが、残念ながら北米版にも第12話「From Another Planet with Love(遊星より愛を込めて)」は収録されていません。
欠番を除く全48話が、6枚組のBlu-Rayディスクに収められています。
各ディスクには8話づつ収録されていて、欠番を除く全48話が、6枚組のBlu-Rayディスクに収められています。例えば、Disk6には以下の8エピソードが入っています。
- Ambassador of the Nonmalt
- Nightmare on Planet No. 4
- The Terrifying Super Ape-man
- The Saucers Have Come
- The Showdown of Dan vs. Seven
- Who Are You
- The Biggest Invasion in History: Part 1
- The Biggest Invasion in History: Part 2
それぞれのタイトルについては、再生すれば日本語のタイトルも分かりますが、日本語だと下記のタイトルのエピソードになります。
- ノンマルトの使者
- 第四惑星の悪夢
- 恐怖の超猿人
- 円盤が来た
- ダン対セブンの決闘
- あなたはだぁれ?
- 史上最大の侵略 前編
- 史上最大の侵略 後編
そのまま再生すると英語の字幕が表示されてしまいますので、メニューの「SUBTITLE ON/OFF」で「OFF」を選択すればディスク内全話で英語字幕が表示されなくなります。
大人も楽しめるウルトラセブン
ウルトラセブンは、単に怪獣=悪者と戦う勧善懲悪の物語ではありません。それぞれの背景や価値観の違いから生まれる「悪」と「善」という二元論を超えた視点が提示されています。
戦争、平和、環境問題、倫理、ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアスなど、現代にも通じる様々な社会的なテーマが多く含まれており、それらに対するアンチテーゼも巧みに描かれています。1960年代後半という高度成長経済の時代背景も反映されており、大人が観ると深く考えさせられるエピソードが多いです。
また、アンヌ隊員とモロボシ・ダンの関係は、単なる恋愛未満やプラトニックラブといった言葉では表現しきれない、互いを深く信頼し合う強い絆として描かれている点も魅力です。
そして、大人を惹きつけるもう一つの要素は、ウルトラ警備隊のメカニックデザインの秀逸さです。ウルトラホークやポインターといったメカは、約60年近くたった今見ても古さを感じさせない普遍的なカッコよさがあります。単なるデザイン性に留まらず、それがどこに格納され、どのように運用され、発進に至るかという「プロセス全体」を含めた機能美があるからこそ、大人も思わず夢中になってしまうのです。
さらに、ウルトラセブンの世界観を彩る上で欠かせないのが、冬木透氏による音楽です。氏の手掛けた楽曲は、単なるBGMではなく、物語の感情やキャラクターの内面を雄弁に伝え、作品全体に忘れられない独特の雰囲気を与えています。
子供向けの番組なのに交響曲だし、英語の歌詞とか。
「One, Two, Three, Four, One, Two, Three, Four, Ultra Seven ♪」
いま聴いてもカッコいい!
メカニックデザインの魅力
ウルトラセブンのメカニックデザインには、語りつくせないほどの魅力があります。中でも象徴的なのが、ウルトラ警備隊の誇る万能戦闘機「ウルトラホーク1号」です。
レールに乗って発射台まで運ばれ、山が割れて出撃していく、サンダーバードを強く意識した出撃までのシーケンスは、何度見ても飽きません。
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またウルトラホーク1号の甲高く特徴的なジェット音も、作品にリアル感を与えています。さらに、飛行中に3機の独立した航空機に分離・合体できる機能も、大人たちの心をも鷲掴みにする画期的なアイデアでした。
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「ウルトラホーク1号」
【引用】Amazon - フジミ模型 1/72 特撮シリーズ No.4 ウルトラホーク1号 -
「α号(アルファ)」
【引用】Amazon - フジミ模型 1/72 特撮シリーズ No.4 α号 -
「β号(ベータ)」
【引用】Amazon - フジミ模型 1/72 特撮シリーズ No.4 β号 -
「γ号(ガンマ)」
【引用】Amazon - フジミ模型 1/72 特撮シリーズ No.4 γ号
また、ウルトラホーク1号以外にも魅力的なメカは多数登場します。例えば、ダイヤモンドの数倍の硬度を持つジェットドリルで地中を掘り進むマグマライザーも、そのデザインが秀逸です。
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【引用】Amazon - フジミ模型 マグマライザー TDF MRI |
ウルトラセブンのメカは、約60年近く前のデザインであるにも関わらず、どれも古さを感じさせない近未来的な普遍的なカッコよさがあります。単にデザインが良いだけでなく、それがどこに格納され、どのように運用され、発進に至るかという「プロセス全体」を含めた機能美があるからこそ、今見ても大人も夢中になれるのでしょう。
そういう意味では第5話「消された時間」で、東京モノレールを模したモノレールで基地内を移動するというシーンがありますが、60年前の東京モノレールも近未来を象徴する乗り物でしたが、いまでも「カッコいいなあ」と思っていたことに気がつきました。
【引用】Ultraseven: Complete Series - Episode 5 |
アンヌとダン、そして、クラシック好きではなくても
北米版Blu-Rayに付属のブクレットには、登場人物のプロフィール、エピソードガイド、怪獣ガイドなどが収録されていますが、もちろん全て英語表記です。特に注目したいのが、アンヌ隊員のプロフィール。
下記のように記載されています。
The only female member of the Inter Galactic Defense Force, as well as the youngest, Anne functions as the team's communications operator while still being a capable combatant in her own right, Closest to Dan Moroboshi, Anne is the first person to learn his secret identity as Ultraseven after seeing the device that could shift him between forms: the Ultra Eye, Through the tow share a lot of tension, their romantic inclinations never bloomed into anything fully fledged.
この最後のセンテンス「Through the tow share a lot of tension, their romantic inclinations never bloomed into anything fully fledged.」を「二人の間には多くの意識し合う感情があるものの、それ以上の関係へと発展することはなかったのです」と訳してみました。
恋愛未満、若しくはプラトニックラブという言葉では表現しきれない、深い絆この二人の特別な関係性を象徴しているのが、あまりにも有名すぎるウルトラセブン最終回の名シーンです。
「アンヌ、僕はね、人間じゃないんだ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ」
ダンのこの告白に、「えっ⁉︎」と驚き、逆光の中でシルエットになるアンヌの表情。そこでディヌ・リパッティ(ピアノ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィルハーモニア管弦楽団演奏によるシューマン「ピアノ協奏曲」 イ短調 作品54がカットインしてきます。
作品世界を感動的に盛り上げるこの演奏は、こちらのCDなどで聴くことができます。
また、この最終回のシーン、ファンの間で今なお、様々な解釈がされているのが、ダンがアンヌに告げる別れの言葉「西の空に明けの明星が輝く頃」というセリフです。「明けの明星」は金星のことですが、陽が沈んだ後の西の空に見えるのは「宵の明星」で、陽が昇る直前の東の空に見えるのが「明けの明星」とされています。
色々な考察がありますが、ウルトラセブンが宇宙へ旅立った後、ダンのセリフがもういちど流れます。「明けの明星が輝く頃、ひとつの光が宇宙に飛んでいく、それがボクなんだよ」――ここでは、ダンの最初のセリフにあった「西の空に」という言葉がなくなっています。
そして映像には、夜明け前の白み始めた空に明けの明星が輝き、その中をウルトラセブンが飛んでいく姿が映し出されています。これらのことから、ウルトラセブンは東の空へ飛び立ったと解釈するのが自然だと私は考えています。
さて、あなたなら、セリフと映像からどのように解釈しますか?ご自身の目でじっくりと最終回をご覧になって、色々な想いを巡らせてみてください。
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