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Post Date:2026年9月21日 

掃除の基本は、やっぱり「掃いて」「拭く」(ホウキ編)

長柄の棕櫚鬼毛箒、短柄の座敷箒、無印良品の木製ショートポール付きカーペットクリーナーを並べた掃除道具

「掃除の基本は『掃いて』『拭く』」という記事を書いてから、ずいぶん時間が経ちました。

コードレス掃除機が一般的になり、ロボット掃除機もずいぶん身近になりました。それでも、家の掃除は「掃いて」「拭く」というスタイルを続けています。

  • 箒での掃き掃除が基本
  • フローリングワイパーでさっぱり
  • 時折の水拭きで汚れをしっかり落とす

床に髪の毛や小さなゴミを見つけたら、壁に掛けてある箒を手に取って、さっと掃く。電源も充電も不要で、音もしません。ちょっとした掃除なら、フローリングワイパーよりも手軽です。

時間があれば、フローリングワイパーにウェットシートをつけて床をさっぱり。また時折、フローリングモップやマイクロファイバークロスを使って、しっかりと水拭きします。


棕櫚箒(しゅろほうき)と座敷箒(ざしきほうき)

昔ながらの箒には、大きく分けて2つの素材があります。

ひとつは、京都を中心に西日本で古くから使われてきた棕櫚を使った棕櫚箒。そしてもうひとつが、江戸中期から後期にかけて関東で広く使われるようになった、ホウキモロコシで編まれた座敷箒です。

棕櫚箒に使われている棕櫚の繊維は毛先が柔らかく、フローリングをなでるように掃けるのが特徴です。一方、ホウキモロコシは適度なコシがあり、髪の毛やホコリ、小さなゴミをしっかり掃き集めてくれます。

棕櫚箒には、棕櫚の皮を束ねて穂先をほぐした「皮箒」と、皮をほぐして繊維にし、それを束ねて作る「鬼毛箒」があります。選ぶなら「鬼毛箒」。鬼毛箒は皮箒よりも穂先にコシがあり、柔らかさがありながらもしっかりとした掃き心地があります。

棕櫚の繊維を束ねて作られた鬼毛箒の穂先と編み込み部分

鬼毛箒は皮箒と比べると価格もかなり高くなりますが、長く使える掃除道具ですし、何より、掃き心地がとても気持ちよいです。

また、箒の柄の長さには短柄(たんえ)と長柄(ながえ)の2種類があります。


短柄は座敷箒、長柄は鬼毛箒

短柄と長柄は、掃く場所や掃き方によって使い分けています。

短柄で使っているのは座敷箒です。柄が短いぶん小回りが利き、家具のまわりや部屋の隅など、狭いところを掃くのにも向いています。ちょっとしたゴミに気づいたとき、さっと掃くことができるのが短柄のよさです。また、座敷箒はコシが強いので、ラグマットのゴミをかき出す力もあります。

一方、長柄で使っているのは棕櫚の鬼毛箒です。立ったまま広い範囲を掃きやすく、柔らかな毛先でフローリングをなでるように掃けます。鬼毛には柔らかさの中にも適度なコシがあり、細かなゴミも集めやすく感じます。

立ったまま床を掃ける長柄タイプの棕櫚鬼毛箒

箒は穂先が曲がらないように吊るして保管します。アズマ工業の鬼毛箒も全長約123cmと長いため、廊下の壁に吊るしています。

廊下の壁に吊るして保管している、全長約123cmのアズマ工業の長柄鬼毛箒

座敷箒と棕櫚箒は、どちらか一方が優れているというより、それぞれ得意な使い方があります。ちょっとした掃除には短柄の座敷箒、広い範囲には長柄の鬼毛箒。この組み合わせがいちばんしっくりきています。


座敷箒で掃くということ

座敷箒は、電気を使わず、充電も不要で、音もしません。気になったときにすぐ手に取ることができ、大きめのゴミや髪の毛も掃き集めやすい。家具のすき間や部屋の隅にも穂先が届きます。

こうした使いやすさはもちろんですが、もうひとつ、箒ならではのよさがあります。

箒で掃くときは、床の状態を見ながら、自分の手でゴミを集めていきます。どこにホコリがたまりやすいのか、どこが汚れているのかにも自然と目が向きます。ただゴミを取るだけではなく、家の状態を確かめながら掃除をしているという実感があります。

掃除を続けていると、少しずつ家に手をかけている感覚が生まれます。きれいにすることそのものだけでなく、家の状態に気づき、整えていくことが、家への愛着にもつながっているように思います。

また、イライラしているときや、考えがまとまらないときに箒を手にすることもあります。体を動かして目の前の掃除に集中すると、それまで頭の中にあったことから少し離れて、「いま」に意識が向きます。ゴミを一か所に掃き集めていく単純な作業をしているうちに、気持ちも少し切り替わっていくように感じます。

ストレス解消になるとか、気持ちが整うとか、そこまで言い切れるものではありません。それでも、掃き終わるころには気持ちが少し切り替わっている。座敷箒には、そんなよさもあります。


アズマ工業の座敷箒 - 匠

座敷箒というと、職人が一本ずつ作る高価な工芸品を思い浮かべるかもしれません。でも、毎日の掃除に使うのであれば、もっと実用的で手頃なものがあります。

長く使っているのが、アズマ工業の手編み座敷箒です。

アズマ工業は、1896年創業の掃除用品メーカーで、箒づくりにも長い歴史があります。現在、座敷箒はタイで製造され、実用品としての箒づくりが続けられています。

その中でも気に入って使っているのが「匠」です。

ホウキモロコシを手編みしたアズマ工業の短柄座敷箒「匠」の穂と編み込み

「匠」には、契約栽培されたホウキモロコシの中から厳選された、最上級の原料が使われています。一本一本の繊維が細かく、しなやかさと適度な弾力があり、畳の目の奥まで掃けるとされています。

実際に使ってみても、穂先にはしなやかさがありながら、しっかりとしたコシがあります。高価な工芸品というより、日々の掃除で気兼ねなく使える道具。それでいて、手編みならではのしっかりした作りがあります。

これまで、アズマ工業の座敷箒では「特選」と「匠」の両方を使ってきました。見た目にも「匠」の方が穂が長く、穂の密度も高く、編み込み部分もしっかりしています。「特選」も日常使いには十分ですが、長く使ってみると「匠」の方が穂先のまとまりが崩れにくく、持ちもいいと感じています。

アズマ工業の座敷箒「匠」と「特選」を並べ、穂の長さや密度、編み込みの違いを比較

毎日使う箒だからこそ、高価すぎず、それでいて長く使えるものがいい。その点で、「匠」は実用的な座敷箒として、とてもバランスのいい一本だと思います。


名前が違っても同じ「匠」

アズマ工業のサイトを見ると、「短柄手編みホーキ 匠」と「BR121 手編みほうき 匠 短柄」という、よく似た2つの商品が掲載されています。

商品名は違いますが、商品説明を読む限り、違いが見当たりません。これまで使ってきた「匠125 匠箒 短柄」はすでに販売を終了しており、友人へのプレゼントを考えていたこともあって、2つの商品の違いをアズマ工業のお客様相談室に問い合わせてみました。

回答は意外なものでした。

販売を終了した「匠125 匠箒 短柄」を含め、「短柄手編みホーキ 匠」「BR121 手編みほうき 匠 短柄」の3商品は、商品名やパッケージ、販売価格などが異なるだけで、仕様や使われているほうき草、編み方に違いはないとのことです。

つまり、現在販売されている2種類の「匠」は、仕様に違いはありません。価格や販売店で選んでよさそうです。


掃き掃除にはコロコロが欠かせない

箒で集めたゴミは「塵取り」では、細かなホコリや髪の毛まではなかなか取り切れません。そこで欠かせないのが、いわゆる「コロコロ」です。

使っているのは、無印良品のカーペットクリーナーと木製ショートポールの組み合わせです。

無印良品のカーペットクリーナーに木製ショートポールを組み合わせたコロコロ

箒は穂先を傷めないために吊るして保管していますが、このコロコロは自立するので隣に並べて置いています。木製の柄のおかげで掃除道具らしさが少なく、部屋にも自然になじみます。

壁に吊るした短柄の座敷箒と、隣に置いた無印良品の木製ショートポール付きカーペットクリーナー

すぐ手に取れる場所に置いておけることも、掃除を面倒にしないためには大切です。箒で掃いて、コロコロでゴミを取る。木製ショートポールなら屈まずに使えるのが楽です。塵取りがいらないのも、掃き掃除を手軽にしてくれます。


掃いたあとは、拭く

掃き掃除だけで終わらせず、必要に応じて拭き掃除をします。

掃き掃除と拭き掃除は、それぞれ役割が違います。まず掃いて、それから拭く。やはり掃除の基本は、この順番です。

今回は「ホウキ編」として掃き掃除について書きました。拭き掃除については、また別の記事でまとめたいと思います。

短柄の座敷箒と長柄の棕櫚鬼毛箒、無印良品のフローリングワイパーとカーペットクリーナーを並べた掃除道具
Post Date:2026年9月12日 

モンブラン146は、なぜ書きたくなるのか──濃淡と揺らぎに惹かれる万年筆

MONTBLANC MEISTERSTUCK 146

きれいに整った線ではなく、少し濃くなったり、淡くなったり、紙の上で息をするように揺れる線。

ペン先が紙に触れ、インクが少し遅れて追いかけてくる。そのわずかな濃淡や揺らぎが、書いた文字に人の手の跡を残してくれる。

モンブラン146で書いていると、文字を書くことそのものが少し楽しくなります。

愛用している PILOT、セーラー、プラチナといった国産万年筆は、ペン先の精度やインクフローの安定感、扱いやすさに優れていて、筆記具としての完成度も高く、満足度も十分です。

それでも万年筆沼の深みにはまると、いつしかモンブランのマイスターシュテュックが気になる存在になります。

黒軸にゴールドの装飾、キャップトップのホワイトスター。ひと目でモンブランと分かる象徴的なデザインは、何十年も大きく変わることなく、「高級万年筆とはこういうものだ」というイメージを形づくってきました。

万年筆を好きになったからには、一度は使ってみたくなるマイスターシュテュック。

けれど実際にモンブラン146を手にして強く惹かれたのは、その象徴性だけではありません。軟らかなペン先と、そこから生まれる濃淡と揺らぎでした。


このモンブラン146は、いつ生まれたのか

購入時の説明では、1970年代後半から1980年代初頭に作られたとされるモンブラン146とありました。

念のため、「趣味の文具箱 Vol.20」の特集「モンブラン146の世代差を徹底比較」に掲載されている年代判定表をもとに、手元の146の特徴を確認してみました。

購入した146には、次のような特徴があります。

  1. 単色の「14C / MONTBLANC / 585」ニブ

    MONTBLANC MEISTERSTUCK 146 14C mono clolor nib
  2. エボナイト製で、ペン芯の先にインクを溜める水平の切り割りがある

    MONTBLANC MEISTERSTUCK 146 ebonite feed
  3. クリップリングの「GERMANY」刻印

    MONTBLANC MEISTERSTUCK 146 "GERMANY" engraving on a clip ring
  4. インク窓がグレーの透明窓

    MONTBLANC MEISTERSTUCK 146  grey translucent ink window
  5. 太字のリング刻印(MONTBLANC-MEISTERSTUCK No.146)

    "MONTBLANC-MEISTERSTUCK No.146" engraving

これらの特徴を年代判定表と照らし合わせると、1970年代中期から後期に見られる特徴を多く備えており、購入時の説明より少し古い可能性もあります。

とはいえ、ヴィンテージ万年筆にはパーツ交換や移行期の仕様もあり得るため、正確な製造年までは特定できません。

今回の146で特に惹かれたのが、単色の14Cニブでした。後年の14Kニブや現行の146とは異なる時代のペン先であり、この一本を手に取ってみたいと思わせる大きな理由のひとつでした。

半世紀近く前の道具ですが、モンブラン146は基本的なデザインが大きく変わっていないため、古さを感じさせません。そして何より、いまも実用品として自然に使えるところに、万年筆という道具の素晴らしさを感じます。


軟らかなペン先と、文字に生まれる濃淡

最初に入れたインクは、PILOT 色彩雫の「霧雨」でした。落ち着いたグレー系のインクで、このモンブラン146の濃淡や揺らぎにもよく合います。

PILOT 色彩雫(深海、霧雨、山栗)

実際に書き出してみると、まず印象に残ったのは、想像していた以上のペン先の軟らかさでした。

ペン先が紙に触れたときの感触は、PILOT のソフトニブ(SM)に近いと感じています。ごくわずかにしなってから、紙の上を滑り出していくような感覚があります。

この「ごくわずかに」というところが気持ちいい。

ペン先のわずかなしなりに、書く速度やペン先の動きが重なると、線の濃さも少しずつ変わっていきます。その違いが一画の中に自然な濃淡を生み、文字全体にも揺らぎのある表情を残します。

字幅は国産の F より少し太く、実際に書いた印象では欧州の F くらいです。細すぎず太すぎず、普段使いしやすいちょうどよい太さです。

濃淡と揺らぎのある字が書ける

軟らかなペン先の感触と、こうした濃淡や揺らぎが重なるところに、この146で書く面白さがあるのだと思います。


中古の146、それとも現行『ル・グラン』?

今回手に入れた146はヴィンテージですが、中古の万年筆を選ぶとなると、心配な点も多くなります。

修理やパーツ交換の履歴、正確な年代や状態、正規品であることを示す書類や購入記録など、中古ならではの不確かさは残ります。また、古い万年筆は個体差も小さくありません。

今回の146で感じたペン先の軟らかさや、文字に現れる濃淡と揺らぎも、この年代、この個体ならではのものと考えた方がよさそうです。現行の146に同じ書き味をそのまま期待することはできません。

一方で、モンブラン146の基本的なスタイルは現在にも受け継がれています。

現在のラインアップでは「マイスターシュテュック ル・グラン」として販売されていて、146らしいサイズ感や、黒い軸にゴールドの装飾、キャップトップのホワイトスターといったマイスターシュテュックらしい姿は健在です。

ヴィンテージには、古いペンならではの魅力があります。ただ、状態や年代を見極めることに不安があるなら、新品のル・グランを選ぶという方法もあります。

どちらを選ぶかは、ヴィンテージならではの個性を楽しみたいのか、それとも安心して新品を選びたいのか。その違いなのだと思います。


モンブラン146は、やっぱり書きたくなる

この146に惹かれる理由は、軟らかなペン先や、ヴィンテージならではの雰囲気だけではありません。

紙に触れたときのわずかなしなり、書く速度によって生まれる濃淡、文字全体に残る揺らぎ。そうした小さな変化が重なって、文字に書き手の個性が表れます。

書き手の個性が表れる一方で、すべてを思いどおりにしようとするわけではありません。ペン先やインクの動きに少し任せながら書く。その両方があることが、文字を書く楽しさにつながっているのだと思います。

特に書く用事がなくても、つい手に取ってしまう。

Montblanc White Star emblem

そんな万年筆が、「モンブラン マイスターシュテュック 146」なのだと思います。

Post Date:2026年8月29日 

JoWo OmniFlex を WANCHER に装着 ─ FPR Ultra Flex と比べて分かったこと

JoWo #6 Omniflex with WANCHER

FPR Ultra Flex でステンレス製フレックスニブの面白さを知り、勢い余って JoWo #6 OmniFlex ニブを搭載した Monteverde OmniFlex を購入しました。

Amazon US から発送で、商品到着まではおよそ2週間。届いたペン先を WANCHER の万年筆に装着してみました。

最初に感じたのは FPR Ultra Flex とは少し違う「軟らかさ」です。ところが、筆圧をかけたときのペン先の開き方を比べてみると、より大きく開くのは FPR Ultra Flex でした。

同じステンレス製のフレックスニブでも、形状も書き味も、線幅変化の出方もかなり違います。今回は JoWo #6 OmniFlex と FPR Ultra Flex の書き味や、ペン先の開き方の違いなどを比べてみます。


フレックスニブとは

フレックスニブとは、筆圧をかけたときにペン先がしなり、左右のタインが開いて切り割り(スリット)の幅が広がることで、線幅に変化をつけられるペン先です。

筆圧をかけずに書けば細い線になり、少し力を加えると太い線になります。文字に強弱や抑揚をつけられるのが、フレックスニブの大きな特徴です。

一般的な万年筆のペン先にも多少のしなりはありますが、フレックスニブは線幅の変化を出しやすいように設計されています。ただし、ここで注意したいのは、「ペン先が軟らかいこと」と「スリットが大きく開くこと」は別の性質だという点です。

たとえば、セーラー万年筆の21Kペン先では、筆圧をかけるとペン先そのものが撓むことで、切り割りの開きを最小限に抑えながら筆圧を受け止める構造になっていると説明されています。

つまり、ペン先が軟らかく感じられるからといって、必ずしも線幅が大きく変化するわけではありません。反対に、切り割りが大きく開くペン先でも、書き味としては硬めに感じる場合があります。

パイロット、プラチナ、セーラーといった国産万年筆メーカーには、「フレックスニブ」という名称のニブはありません。ただし、PILOTのフォルカン、いわゆるFAニブは、筆圧に応じてペン先がしなり、切り割りも開くことで線幅に強弱をつけられるため、フレックスニブに近い性格のニブといえます。


JoWo #6 OmniFlex はかなり独特な形をしている

JoWo #6 OmniFlex の第一印象は、ペン先の大きさと独特な形状です。

#6サイズだけあってペン先そのものが大きく、左右の肩には深い切り欠きが入っています。一般的な万年筆のペン先とはシルエットがかなり異なり、正面から見ると左右に角が生えたようにも見えます。

JoWo #6 OmniFlex のペン先

どこか悪魔っぽく見えるのも、この左右対称の大きな切り欠きと、中央へ向かって細く伸びるペン先の形によるものかもしれません。

裏側から見ると、ペン芯に対してニブが大きく張り出していることもよく分かります。

JoWo #6 OmniFlex のペン芯

FPR Ultra Flex も、フレックスさせるために特徴的な形状をしています。しかし JoWo OmniFlex は、それとはまた違った形状で柔軟性を持たせています。特に肩の部分に入った大胆な切り込みは、見た目だけでも「普通のニブとは違う」と感じさせます。

ただし、特徴的な形をしているからといって、FPR Ultra Flex より大きく開くわけではありませんでした。その違いは、後ほど実際に書き比べながら見ていきます。


JoWo OmniFlexをWANCHERに装着する

Monteverde OmniFlex は、ニブとペン芯、そしてそれらを固定するハウジングがひとつのユニットになっています。

JoWo #6 OmniFlex ユニット分解

ただし、Monteverde 側のハウジングをそのまま WANCHER の万年筆に取り付けることはできません。そのため、Monteverde OmniFlex のニブとペン芯をハウジングから引き抜き、WANCHER 側のハウジングに組み替えて使います。

ハウジングとは、ニブとペン芯を外側からまとめて固定している筒状の樹脂パーツです。外側にはネジ山があり、首軸の内側にねじ込むことで、ニブとペン芯を万年筆本体に固定する役割を持っています。

Monteverde 側のハウジングからニブとペン芯を引き抜いたら、それぞれの位置を合わせながら WANCHER 側のハウジングに差し込みます。特に、ニブの切り割りがペン芯の中心とずれていないかを確認しながら、位置を整えていきます。


FPR Ultra Flex と比べるとニブサイズはかなり違う

WANCHER に装着した JoWo #6 OmniFlex と FPR Ultra Flex を並べてみると、まず目につくのがニブサイズの違いです。

FPR Ultra Flex と JoWo #6 OmniFlex

JoWo #6 OmniFlex のほうが全体にひとまわり大きく、肩からペン先までの距離も長く見えます。左右の切り欠きも深く、ニブ全体が横方向に大きく張り出したような形をしています。

一方の FPR Ultra Flex は、JoWo #6 OmniFlex と比べると細身で、ニブ全体もコンパクトです。しかし、筆圧をかけたときには切り割りが大きく開き、線幅の変化も FPR Ultra Flex のほうが大きくなります。

実際に筆圧をかけて線を書いてみると、その違いははっきり出ます。左の FPR Ultra Flex と右の JoWo OmniFlex では、線幅にかなりの違いがあります。感覚的には、FPR Ultra Flex は細字(EF)から太字(B)、JoWo OmniFlex は細字(F)から中字(M)までの線幅変化です。

FPR UltraFlexとJoWo #6 OmniFlexの線幅の違い

※ FPR Ultraflex のニブには1.1 EFという刻印があり、1.1mmから Extra Fine までの線幅を表しているのかもしれません。

ニブサイズの大きさや見た目の迫力と、実際にどれだけ切り割りが開くかは別でした、、。


JoWo OmniFlex は FPR Ultra Flex より軟らかく感じる

ペン先が紙にあたるタッチは、JoWo OmniFlex のほうが FPR Ultra Flex よりも軟らかく感じられます。FPR Ultra Flex はややカリカリとした硬質な書き味ですが、JoWo OmniFlex はインクフローもよく、スラスラと滑るように書けます。

筆圧をかけずに書いている範囲では大きな字幅変化はなく、むしろソフトニブに近い、滑らかな書き味です。

JoWo #6 OmniFlexで少し筆圧をかけて書く

切り割りの開き方だけを見れば、FPR Ultra Flex のほうが大きく開き、線幅の変化も大きくなります。一方で、普通に文字を書いたときの「軟らかさ」は、JoWo OmniFlex のほうが強く感じられました。

ここでも、「大きく開くこと」と「軟らかい書き味」は、やはり別の性質だということが分かります。


まとめると、FPR と JoWo は性格がかなり違う

FPR Ultra Flex と JoWo OmniFlex は、同じステンレス製フレックスニブでも性格がかなり違います。

FPR Ultra Flex は、筆圧をかけたときに切り割りが大きく開き、線幅の変化をしっかり出せるニブです。細い線から太い線まで変化をつけやすく、フレックスニブらしい使い方を楽しめます。

一方の JoWo OmniFlex は、FPR Ultra Flex ほど大きく開くわけではありません。しかし、紙当たりは軟らかく、インクフローもよく、通常筆記ではスラスラと滑るように書けます。

大きな線幅変化を楽しみたいなら FPR Ultra Flex、普段使いの書きやすさや滑らかさを重視するなら JoWo OmniFlex、という違いが見えてきます。

どちらが優れているというより、フレックスニブとしての性格が異なると考えたほうがしっくりきます。


ステンレス製フレックスニブは設計でここまで変わる

今回 JoWo OmniFlex と FPR Ultra Flex を比べてみて興味深かったのは、同じステンレス製でも、ニブの形状によって書き味が大きく変わることです。

JoWo OmniFlex は、大きな #6 ニブの肩に深い切り欠きが入った独特な形状です。一方の FPR Ultra Flex は、より細身のニブながら、筆圧をかけると切り割りが大きく開きます。

つまり、フレックスニブの性格を決めているのは、素材の軟らかさだけではありません。ニブの長さや幅、厚み、切り割りの長さ、肩の形状など、さまざまな要素が組み合わさっています。

ステンレスは金に比べて硬い素材ですが、形状や設計によって、ここまで異なる書き味や線幅変化を生み出せるところに、ステンレス製フレックスニブの面白さがあります。

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