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Post Date:2025年11月3日 

抹茶をおいしくする小さなひと手間 ─ 「抹茶ふるい」選びで、儀式から日常へ

芳香園 - 抹茶専用 抹茶ふるい

抹茶を自宅で楽しむのにも、どうしてもお茶を点てる道具が必要になります。

  • 抹茶椀:お茶を飲むための器
  • 茶筅(ちゃせん):抹茶、お湯、空気を撹拌する
  • 茶杓(ちゃしゃく):抹茶をすくうための道具
  • 抹茶篩(ふるい):抹茶を点てやすくするために、粉を均一にほぐす道具
  • 湯冷まし:抹茶を点てやすい温度に整えるための器

こうして並べてみると、道具の多さに少し身構えてしまいます。

この中で、自宅で抹茶を点てるときにも代えが利かないのが、茶筅(ちゃせん)と抹茶篩(ふるい)です。

抹茶篩(ふるい)は、抹茶の粉を細かく均一にして、なめらかな一服に整えるための道具です。点てる前に抹茶をふるうと、粉が細かくなるためお湯とよく混ざり、空気を含みやすくなって、口当たりがやわらかく、まろやかなお茶を楽しめます。

以前は下記の抹茶篩缶(ふるいかん)を使っていましたが、一回分のお茶をふるうには不便だし、抹茶篩缶の掃除も手間でした。

抹茶を点てる時間が特別であるのは確かですが、それでも、もう少し気軽に楽しめたらと思い、 茶こしタイプの抹茶篩にしました。


茶こしタイプの抹茶篩

抹茶篩缶と違って、毎回飲む分だけをふるいにかけられるのが、茶こしタイプの良さです。「日常的に抹茶を楽しむ」には、このタイプがいちばん気軽で扱いやすいでしょう。

形状は茶こしに似ていますが、抹茶篩は網目がより細かく、抹茶をなめらかなパウダー状に整えることができます。ただし、あまりに細かいと目詰まりしてしまいます。

芳香園 - 抹茶ふるいの適度なメッシュ

この抹茶篩は具体的なメッシュ数の記載こそありませんが、「抹茶をふるうのに最適なメッシュ幅を採用。」とあり、ちょうど良いパウダー状に仕上がります。

芳香園 - 抹茶ふるい でパウダー状の抹茶

日本製(新潟県燕市)で、素材は18-8ステンレス。18-8ステンレスとは、クロム18%、ニッケル8%を含む高品質なステンレスで、錆びにくく、においが移らず、手入れも簡単です。


🍵 茶こしタイプ抹茶篩の使い方

茶こしタイプの抹茶篩は使い方が簡単です。

  1. 抹茶椀の上にセットする

     抹茶椀の上に直接、抹茶篩をのせます。

  2. 抹茶を入れる

    茶杓2杯分(薄茶1杯分)を目安に、茶こしの中に抹茶を入れます。

    芳香園 - 抹茶ふるい 茶杓2杯の抹茶
  3. 軽く押しながらふるう

    茶杓の背で抹茶をやさしく押しながら金網を通します。無理にこすらず、撫でるように動かすと粉が均一になります。

    芳香園 - 抹茶ふるい でふるう
  4. 使用後は軽く洗い、しっかり乾かす

    金網に残った粉を軽く叩いて落とし、水ですすいでからよく乾かします。

これでお茶を点てる準備が完了です。あとは、お湯を注ぐだけです。但し、熱湯をそのまま使うと香りや味が損なわれてしまうため、ここでひと呼吸置いて、お湯を少し冷まします。


お湯を注ぐ前に冷ますことが大切

抹茶を点てるときは、熱湯をそのまま使うよりも、少し冷ましたお湯の方が味がやわらかくなります。熱すぎるお湯は抹茶の香りを飛ばし、苦味を強くしてしまうからです。

もちろん温度調整ができるケトルがあれば、湯冷ましは不要です。BALMUDA MoonKettle ー ちょっと焦がれています。鉄瓶を思わせるデザインは、抹茶を点てる所作にもよく似合います。

BALMUDA MoonKettleは50-100℃までを1℃単位で調節できる優れもの。一般的には抹茶を点てるときには、80℃前後で点てると、抹茶の甘みと香りが最も引き立つとされていますが、宇治抹茶などは、少し低めの温度の方が甘みが引き立ちます。

また、80℃といっても、実際に抹茶椀にお湯を注ぎ、茶筅で点てている間に温度は下がるので、お茶をいただく頃には、およそ70〜75℃前後になっています。

BALMUDA MoonKettleがなくても、湯冷ましを使って温度を整えることで、抹茶の粉がお湯になじみやすくなり、まろやかな泡と穏やかな香りが立ち上がります。ぜひ、自分好みの温度を探してみてください。


湯冷ましの使い方

お湯を冷ますといっても、難しいことはありません。沸騰させたお湯を湯冷ましに移し、湯気が落ち着くまで少し待つだけ。

陶器の湯冷まし(容量150-200ml程度)なら、1分でおよそ10〜15℃下がると考えるとわかりやすいです。室温が低い冬は早く、夏はゆっくり下がります。

以前は、陶器の片口の酒器(注器)を湯冷ましとして使っていました。

徳利型 片口 湯さまし

こちらの湯冷ましは、徳利(とっくり)型の片口です。

完全に主観ですが、持ち手のない湯冷ましの方が可愛い。お椀型の湯冷ましもありますが、かもしか道具店の湯冷ましは、どこか愛嬌のあるデザインです。

いまは、「静かな時間を淹れる珈琲道具 ― セラミックフィルターとドリップポット」で紹介したCORESトリップポットを、抹茶を点てるときにも使っています。

cores ドリップポット C470

抹茶を点てるときは、お湯を一気に入れるよりも、少しずつ注いで混ざり具合を調えるのが理想的。

注ぎ口が細く、湯量をコントロールしやすいCORESトリップポットは、その点でとても使いやすい道具です。

和洋折衷ですが、、。


抹茶の立て方

お湯は2段階で注ぎ、最後に表面を整えると、きれいな泡が立ちます。

  1. お湯を注ぐ

    茶杓2杯分の抹茶に対して、お湯は約60〜70mlが目安です。はじめに少量(20mlほど)を注ぎ、ペースト状になるまで茶筅でやさしく混ぜます。

    20mlの湯でペースト状に混ぜる

    そのあと、残りのお湯を静かに注ぎ入れます。

    cores ドリップポットで残り40mlの湯を注ぐ
  2. 茶筅で点てる

    茶筅を軽く立てて、手首を使って前後にすばやく動かすようにします。「M」または「W」を描くように動かすと、きめ細かな泡が立ちます。

  3. 表面を整える

    茶筅を少し持ち上げるようにして、「」を書くように表面を整えます。最後に中央からそっと茶筅を持ち上げると、こんもりとした泡に仕上がります。

    抹茶のクレマ

空気が混ざって生まれる微細な泡の層は、香りを閉じ込め、苦味をやわらげ、味をまろやかにします。それは、エスプレッソのクレマとよく似た役割です。


抹茶が危機的状況に、、

抹茶のもととなる茶葉は、碾茶(てんちゃ)です。

世界的な抹茶ブームを背景に、碾茶の生産量は増えているものの、需要に追いつかず、価格は年々高騰しています。

北米やヨーロッパ、中東などでも抹茶人気が広がり、輸出が増えたことで、国内の茶問屋や製茶業者の仕入れ価格にも影響が出ています。碾茶の価格は、この5年でおよそ2倍近くに上昇しました。

一方で、主産地の宇治(京都)・西尾(愛知)・八女(福岡)だけでなく、知覧(鹿児島)や静岡といった“煎茶どころ”でも、抹茶の原料となる碾茶づくりに力を入れる動きが広がっています。

煎茶は日光をたっぷり浴びて育てることで、爽やかな香りとほどよい渋みを生みます。一方、碾茶は収穫の20日前後から日光を遮る「覆下(おおいした)栽培」で育てられ、渋みを抑え、旨味成分(テアニン)を多く残す特別な茶葉です。

この碾茶を石臼で挽いたものが、私たちが口にする抹茶になります。


価格変動していない鉄瓶、、、

鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかで、白湯として飲んでもとても美味しいです。抹茶だけでなく、日本茶、紅茶、珈琲など、どんな飲み物でもひと味違う一杯に仕上げてくれます。

空間鋳造 鉄瓶 EGG 大 - 沸騰する鉄瓶

10年前に一目惚れして手に入れた空間鋳造 鉄瓶 EGG 大は、いまも現役で活躍中です。正確な値段は覚えていませんが、たしか3万円ほどだったと思います。

空間鋳造 鉄瓶 EGG 大 と 抹茶椀

鉄瓶は長く使える道具なので、決して高い買い物ではありませんでしたが、現在の販売価格も30,800円と、物価高の中でも価格が維持されているのには驚かされます。

空間鋳造 EGG 大は900mlの容量で、可愛らしい丸みのあるデザイン。それでいて重さは約1.6kgあり、手に取ると鉄瓶ならではの重みと存在感をしっかりと感じます。

Post Date:2025年10月13日 

静かな時間を淹れる珈琲道具 ― セラミックフィルターとドリップポット

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター&coresドリップポット

CORES(コレス)のゴールドフィルター C246BKで淹れるコーヒーは、表面にオイルが浮かび、豊かな香りと力強いコクが楽しめます。

cores ゴールドフィルター C246BK

しかし齢を重ねていくと、“まろやか” で “澄んだ後味”を求めるようになってきました。

そんなときに見つけたのが、陶器が持つ多孔質という特徴を生かした、SANCERA139の陶器製フィルターです。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

日本の伝統的な焼き物(波佐見焼)がフィルターになる――そこには、日本ならではの知恵と技術、そして美しさが詰まっています。


波佐見焼とSANCERA139

SANCERA139 は、長崎県東彼杵郡波佐見町(はさみちょう)に本社を置く「株式会社 燦セラ(SANCERA Co., Ltd.)」が、波佐見焼の技術と多孔質セラミック技術を組み合わせて製造している製品です。

波佐見焼は、実用性と美しさを兼ね備えた長崎県の焼き物。陶器ならではの温かみと、現代の暮らしに寄り添うデザイン、そして新しい技術を柔軟に取り入れる姿勢が特徴です。

近年では「SANCERA139」「HASAMI」「natural69」など、モダンでシンプルな波佐見焼ブランドが多く登場しています。

その中でも、波佐見焼の伝統技術から生まれたSANCERA139 セラミックコーヒーフィルターは、まさにその精神を受け継ぎ、土の力と現代の感性が調和した逸品です。

AmazonなどではEthicalHouse(エシカルハウス)から波佐見焼 ニューセラミックコーヒーフィルター&ドリッパーとして販売されていますが、SANCERA(株式会社 燦セラ)のOEM製品です。

フィルター本体にSANCERA 139 MADE IN JAPANと刻まれています。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

セラミックフィルター × CORESドリップポット 理想のペアリング

SANCERA(燦セラ)Kuromaru|黒丸 セラミックコーヒーフィルタと、CORES(コレス)ドリップポット C470の相性はとてもよいです。

黒丸セラミックコーヒーフィルターは、とてもシンプルなデザイン。CORESのドリップポットも同じくミニマルで、取っ手がなく、容量も約300mlと小型です。どちらも機能性とデザイン性を兼ね備えた道具といえます。

CORES(コレス)ドリップポット C470

またCORESドリップポットは、持ち手のないすっきりとした形状で、注ぎ口も横に張り出していないため、使わないときも収納の邪魔になりません


☕️ なぜ相性が良いのか

セラミックフィルターとCORESドリップポット。このふたつが相性の良い理由は、互いの特徴を引き出し合っているからです。

① 黒丸 セラミックコーヒーフィルター:やわらかい抽出
  • フィルター部分が多孔質セラミックなので、お湯がじんわりと一定のスピードで自然に落ちる。
  • 紙を使わないため、コーヒーオイルがそのまま抽出され、味がまろやかで厚みが出る。
  • 抽出スピードがやや遅めなので、湯量と注ぎ方のコントロールが大切になる。
② CORES ドリップポット C470:細く安定した湯流
  • 約6mmという細口ノズルでピンポイントに注げるため、セラミックフィルターの抽出速度にぴったり合わせられる。
  • ハンドルがなく、掴み手から注ぎ口までの距離が近いので湯のコントロールがしやすく、粉の層を乱さず旨味の中心だけをじっくり引き出せる
  • ステンレス製で保温性が高く、安定した温度を保ちやすい。

セラミックフィルターのゆっくりとした抽出に、CORESドリップポットの繊細な湯の流れがぴたりと合う。それぞれの個性が、まろやかで澄んだ一杯を生み出します。


🔧 ちょっとしたコツ

セラミックフィルターは、お湯の通りがゆっくり。そのため、温度と注ぎ方のひと工夫で味わいがぐっと変わります。以下のポイントを意識すると、よりまろやかで澄んだ一杯に仕上がります。

  1. フィルターをあらかじめ80〜85℃のお湯で温める
  2. 蒸らしは20〜30秒、少量ずつ注ぐ
  3. 抽出全体は2分30秒〜3分を目安に

セラミックフィルターはお湯の通りがゆっくりなので、蒸らしは短めに。約20〜30秒ほど待ち、ガスが抜けて粉が少し沈んだら、ゆっくりと抽出を始めます。


🌿 味わいの特徴

セラミックフィルター × ドリップポットで淹れたコーヒーは:

  • 苦味がまるく、酸味がやわらかい
  • コーヒーオイル由来の香りとコクがしっかり残る
  • 後味がとてもクリーンで、雑味がない

コレス ドリンクポットでゆっくりとお湯を注ぐと、陶器のフィルターから静かに立ちのぼる香りが広がり、まろやかで澄んだ一杯が静かに完成します。

美濃焼 ぶるー浪漫 デミダスカップ

お手入れと使い方のコツ

金属フィルターは洗うだけで特別なお手入れは必要ありませんが、セラミックフィルターは長く使うためのちょっとした手間が必要です。

Ethical House(エシカルハウス)の公式YouTubeに公開されている「珈琲フィルターのいつものお手入れ編」という動画では、正しいメンテナンスの方法が丁寧に紹介されています。ただ、これを毎回行うのは、正直なところ少し大変です。

以下は、そのお手入れを簡略化したバージョンです。時間がないときは、①〜②を行ったあとに水を張った鍋に浸しています

洗浄は、セラミックフィルターの多孔質構造に詰まった微粉やオイルを取り除くためのもの。つまり、「フィルターの孔を呼吸させる」作業です。


🫧日々の簡略お手入れ

セラミックフィルターは、使うたびに少しずつコーヒーオイルや微粉が孔に溜まります。日々の小さな手入れを重ねることで、いつでも澄んだ味わいを保つことができます。

簡単お手入れ手順
  1. 使い終わったら、すぐにぬるま湯で裏から洗う
  2. 内側を洗ってさっと濯ぐ
  3. 鍋にお湯を張り、フィルターを自重で沈める
  4. フィルター内部にお湯が溜まったら鍋の外に捨てる
  5. 3〜4を数回繰り返す
  6. 最後にもう一度、全体をお湯で流して完了
💡 ポイント
  • 洗剤は使わない(孔を詰まらせる原因になります)
  • 使い終わったらできるだけ早く洗うのが一番のコツ

🔥 月に1度は煮沸を

抽出速度が遅くなっていなくても、定期的な煮沸洗浄で目詰まりを防ぎましょう。

こちらもEthical House(エシカルハウス)の公式YouTubeに公開されている「珈琲フィルターのスペシャルケア編」を参考にするのがおすすめです。

お湯を沸かした鍋にフィルターを入れ、5〜10分ほど煮沸するだけでリフレッシュ。こびりついた微粉や油分が抜けて、抽出スピードと風味が蘇ります。

少し手間はかかりますが、その分だけ“土のフィルター”は息を吹き返し、次の一杯をより澄んだ味にしてくれます。


残念な点と工夫

セラミックフィルターは、機能的にもデザイン的にもとても魅力的なのですが、ひとつだけ残念なのは付属の樹脂製ホルダーです。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

見た目がややチープで、フィルターをしっかり支える形状にもなっていません。そのため、以前から使っている木製のコーヒードリッパーホルダーを合わせて使っています。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター&木製ホルダー

陶器と木の組み合わせは、見た目のバランスもよく、何よりもコーヒーを淹れる時間が少しあたたかく感じられます。

またシンプルなデザインのHARIO(ハリオ)のサーバーも長年愛用しています。

コーヒーを淹れる時間を、少しだけ丁寧にしてくれる道具。SANCERA139とCORES C470は、そんな存在です。

Post Date:2025年10月4日 

炊き立ての味を再現――かもしか道具店「陶の飯びつ」1.5合の秘密

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

長谷園の土鍋「かまどさん」で炊いたご飯は本当に美味しい。けれど、残ったご飯はラップに包んで冷蔵庫へ入れ、食べるときはレンチンするのが定番です。

土鍋は保温ができないので、二日目に限らず冷めてしまえば結局はレンチン頼み。お米の価格が上がっている今だからこそ、温め直したご飯も炊き立てのように美味しく味わいたいものです。

そこで前から気になっていたのが、同じ長谷園の陶器製ご飯保存容器「陶珍」。「おひつ(お櫃)」「めしびつ(飯櫃)は、炊きあがったご飯を移して保存・保温するための容器です。

ただ『陶珍 小』は1合、『陶珍 大』は2合。いつも2合炊いて、残るのはおよそ1〜1.5合。小では入りきらず、大は直径16cmと大きすぎ。まさに帯に短したすきに長しで、しかも価格もやや高めです。

そこで、ちょうど良いサイズの『1.5合の陶器おひつ』を探すことにしました。


ご飯がふっくら美味しいまま!陶器製おひつの秘密

陶器製のおひつは、冷めたご飯をふっくら美味しく蘇らせてくれます。その秘密は、陶器が持つ水分を吸ったり戻したりする「呼吸するような働き」にあります。


🍚 ご飯を美味しく保つ3つのメカニズム

  1. 適度な水分調整

    陶器は目に見えない小さな穴が無数にある「多孔質(たこうしつ)」構造をしています。このため、炊き立てご飯の余分な水分をいったん吸収し、再加熱時には蒸気として戻してくれるのです。だから、ベタつかず、ふっくらとした食感が保たれます。

  2. じんわり均一加熱

    陶器は熱をゆっくり伝える素材です。電子レンジで温めても、中までじんわりと熱が通り、均一に温まります。そのため、ご飯が乾きにくく、全体がふっくら仕上がります。

  3. においがつかない

    プラスチック容器と違い、陶器はにおいや蒸れがこもりにくいのも特長です。自然素材ならではのやさしい保存力で、炊きたてに近い風味が楽しめます。

だから陶器のおひつを使うと、冷蔵庫で保存しておいたご飯をチンするだけで「炊きたてっぽい!」と感じられます。

陶器製のおひつは、見た目以上に理にかなった暮らしの道具なのです。


1.5合の陶器のおひつ

一口に陶器といっても種類はさまざま。日本のお米を美味しく食べるなら、やはり日本の伝統的な焼き物で作られたおひつを選びたいところです。さらに、ご飯の美味しさを保つための工夫がきちんと明記されている製品であることも大切です。

そこで調べて候補にしたのが、次の3つです。

  • かもしか道具店「陶の飯びつ」1.5合
  • Hangout ライスコンテナ
  • &NE 萬古焼 おひつ 大(ハレとケ)

比較の基準として、長谷園「陶珍(2合)」も加え、1.5合のおひつ3種+陶珍の4つで比べてみました。その中から選んだのは…

項目 かもしか道具店
陶の飯びつ 1.5合
Hangout
ライスコンテナ
&NE ハレとケ
萬古焼 おひつ 大
長谷園
陶珍(2合)
容量 約1.5合 600ml 約1.5合 約2合
サイズ 約 φ15(蓋) × H11cm 約 φ13 × H9.5cm 約 φ17 × H9.5cm 約 φ16 × H10.5cm
重量 約910g 約700g 約860g 約1000g
材質 萬古焼 信楽焼 萬古焼 伊賀焼
電子レンジ
オーブン × - ×
食洗機 - × ×
価格 5,500円 3,850円 4,500円 7,700円

萬古焼(ばんこやき)、信楽焼(しがらきやき)、伊賀焼(いがやき)、いずれも「土に小さな穴が多い=多孔質な陶土」を使うのが特徴です。気孔があることで保存中はご飯の余分な水分を吸い、温め直すときにはその水分を戻してくれます。これが「まるで炊きたて!」と感じられる理由です。


かもしか道具店「陶の飯びつ」に決めた

陶器のおひつは「多孔質な土の性質」を活かしています。ただ、実際には内側に釉薬(ゆうやく=ガラス質のコーティング)が施されている製品がほとんどです。そのため、全面が素焼きのおひつと比べると、水分の調整力は弱くなります。

比較対象とした長谷園の「陶珍」では、ご飯を温める前に蓋に水を含ませるよう説明があります。これは、蓋の部分が素焼きになっていて、水分を吸収・放出して調整できる仕組みを持っていることを示しています。

ふたに吸水させる 温める前に「陶珍」のふたに十分水を含ませます。約1分で水から上げ、表面の水分を拭きます。

もしおひつ全体が釉薬を使わない素焼きであれば、

  • ご飯のデンプンや色が染み込みやすい
  • 水分やにおいを吸いやすく、カビが生えやすい
  • 日常使いでは衛生面の管理が難しい

といった問題が生じます。

こうした課題を考慮してつくられているのが、かもしか道具店「陶の飯びつ」とHangoutライスコンテナです。蓋の裏が素焼きになっています。

この「素焼きの部分を活かす設計」がご飯の水分をちょうどよく調整してくれるようになっています。美味しさの秘密はフタにあり。です。

下図は、Hangoutライスコンテナの蓋の裏です。

【引用】Amazon - Hangout Rice container

600mlにおひつに1.5合のごはんが入るのか?

Hangout Rice containerの容量は600ml。

販売サイトによって「1合〜1.5合用」と表記されていますが、他の1.5合サイズのおひつと比べると、最も小ぶりなサイズです、、

炊きあがったごはんの体積は、炊き方(水分量)や盛り付け方によって変わりますが、ふんわりとよそうと1合で、およそ500ml〜600ml程度。

そう考えると、600mlでは1.5合分を入れるには少し余裕が足りないかもしれません。

やはり、もう少し余裕のあるサイズをということで、かもしか道具店「陶の飯びつ」に決めました!


かもしか道具店「陶の飯びつ」を使ってみて

"かもしか道具店"は、三重県菰野町にある萬古焼の窯元・山口陶器が立ち上げた産地ブランドです。

おひつは機能性だけでなく、デザインもシンプルでスリム。色は白と黒がありますが、汚れが目立ちにくい黒を選びました。

蓋の裏は素焼きになっていて、この部分で水分を調整してくれる仕組みです。

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

長谷園「かまどさん」で炊いたご飯を茶碗によそい、残ったご飯を"かもしか道具店「陶の飯びつ」"に移します。炊き立てのご飯を入れると、おひつが余分な水分を吸収してベタつきを防ぎ、美味しい状態で保存できます。

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

翌日に食べるときは冷蔵庫で保存しますが、スリムな形状なので庫内でもかさばりません。

温め直すときは、蓋をしたまま電子レンジへ。加熱すると、おひつに吸収されていた水分が蒸気となって戻り、ふっくら炊き立てのような食感と味わいがよみがえります。

冷凍庫で凍らしたご飯も、おひつに入れて蓋をしてレンチンすると美味しくよみがえります。

「かもしか道具店 おひつ」は、土鍋炊きの美味しさを損なわずにご飯を保存できる、非常に優れた選択だったと満足しています。

食事のスタイルに合わせて「ふつう」と「こぶり」を選んでください。一食一食を大切にしたい方には、最高の食卓の道具です。

ふつう 小ぶり
約φ15×H12cm 約φ12×H11cm
ごはん1.5合分 ごはん1合分
大凡3膳 大凡2膳

炊飯器で炊いたご飯でも

炊飯器で長時間保温すると、ご飯が固くなる・黄色くなる・臭くなるといった、いわゆる「3K問題」が起こりがちです。せっかく美味しく炊いたお米でも、時間が経つにつれて風味が落ちてしまいます。

炊飯器で炊いたご飯も、陶器のおひつに移して保存すれば、余分な水分を吸収してベタつきを防ぎ、温め直すとその水分を戻してふっくら。炊飯器の保温よりも、美味しさを保つ方法として理にかなっています。

炊飯器派の方でも、「ご飯の美味しさを最後まで楽しみたい」と思ったら、陶器のおひつを試してみる価値があります。

陶器のおひつは、見た目は素朴ですが、とても理にかなった道具です。

「残したご飯も炊き立ての美味しさで味わいたい」――そう感じている方は、ぜひ陶器のおひつを試してみてください。

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