FPR Ultra Flex でステンレス製フレックスニブの面白さを知り、勢い余って JoWo #6 OmniFlex ニブを搭載した Monteverde OmniFlex を購入しました。
Amazon US から発送で、商品到着まではおよそ2週間。届いたペン先を WANCHER の万年筆に装着してみました。
最初に感じたのは FPR Ultra Flex とは少し違う「軟らかさ」です。ところが、筆圧をかけたときのペン先の開き方を比べてみると、より大きく開くのは FPR Ultra Flex でした。
同じステンレス製のフレックスニブでも、形状も書き味も、線幅変化の出方もかなり違います。今回は JoWo #6 OmniFlex と FPR Ultra Flex の書き味や、ペン先の開き方の違いなどを比べてみます。
フレックスニブとは
フレックスニブとは、筆圧をかけたときにペン先がしなり、左右のタインが開いて切り割り(スリット)の幅が広がることで、線幅に変化をつけられるペン先です。
筆圧をかけずに書けば細い線になり、少し力を加えると太い線になります。文字に強弱や抑揚をつけられるのが、フレックスニブの大きな特徴です。
一般的な万年筆のペン先にも多少のしなりはありますが、フレックスニブは線幅の変化を出しやすいように設計されています。ただし、ここで注意したいのは、「ペン先が軟らかいこと」と「スリットが大きく開くこと」は別の性質だという点です。
たとえば、セーラー万年筆の21Kペン先では、筆圧をかけるとペン先そのものが撓むことで、切り割りの開きを最小限に抑えながら筆圧を受け止める構造になっていると説明されています。
つまり、ペン先が軟らかく感じられるからといって、必ずしも線幅が大きく変化するわけではありません。反対に、切り割りが大きく開くペン先でも、書き味としては硬めに感じる場合があります。
パイロット、プラチナ、セーラーといった国産万年筆メーカーには、「フレックスニブ」という名称のニブはありません。ただし、PILOTのフォルカン、いわゆるFAニブは、筆圧に応じてペン先がしなり、切り割りも開くことで線幅に強弱をつけられるため、フレックスニブに近い性格のニブといえます。
JoWo #6 OmniFlex はかなり独特な形をしている
JoWo #6 OmniFlex の第一印象は、ペン先の大きさと独特な形状です。
#6サイズだけあってペン先そのものが大きく、左右の肩には深い切り欠きが入っています。一般的な万年筆のペン先とはシルエットがかなり異なり、正面から見ると左右に角が生えたようにも見えます。
どこか悪魔っぽく見えるのも、この左右対称の大きな切り欠きと、中央へ向かって細く伸びるペン先の形によるものかもしれません。
裏側から見ると、ペン芯に対してニブが大きく張り出していることもよく分かります。
FPR Ultra Flex も、フレックスさせるために特徴的な形状をしています。しかし JoWo OmniFlex は、それとはまた違った形状で柔軟性を持たせています。特に肩の部分に入った大胆な切り込みは、見た目だけでも「普通のニブとは違う」と感じさせます。
ただし、特徴的な形をしているからといって、FPR Ultra Flex より大きく開くわけではありませんでした。その違いは、後ほど実際に書き比べながら見ていきます。
JoWo OmniFlexをWANCHERに装着する
Monteverde OmniFlex は、ニブとペン芯、そしてそれらを固定するハウジングがひとつのユニットになっています。
ただし、Monteverde 側のハウジングをそのまま WANCHER の万年筆に取り付けることはできません。そのため、Monteverde OmniFlex のニブとペン芯をハウジングから引き抜き、WANCHER 側のハウジングに組み替えて使います。
ハウジングとは、ニブとペン芯を外側からまとめて固定している筒状の樹脂パーツです。外側にはネジ山があり、首軸の内側にねじ込むことで、ニブとペン芯を万年筆本体に固定する役割を持っています。
Monteverde 側のハウジングからニブとペン芯を引き抜いたら、それぞれの位置を合わせながら WANCHER 側のハウジングに差し込みます。特に、ニブの切り割りがペン芯の中心とずれていないかを確認しながら、位置を整えていきます。
FPR Ultra Flex と比べるとニブサイズはかなり違う
WANCHER に装着した JoWo #6 OmniFlex と FPR Ultra Flex を並べてみると、まず目につくのがニブサイズの違いです。
JoWo #6 OmniFlex のほうが全体にひとまわり大きく、肩からペン先までの距離も長く見えます。左右の切り欠きも深く、ニブ全体が横方向に大きく張り出したような形をしています。
一方の FPR Ultra Flex は、JoWo #6 OmniFlex と比べると細身で、ニブ全体もコンパクトです。しかし、筆圧をかけたときには切り割りが大きく開き、線幅の変化も FPR Ultra Flex のほうが大きくなります。
実際に筆圧をかけて線を書いてみると、その違いははっきり出ます。左の FPR Ultra Flex と右の JoWo OmniFlex では、線幅にかなりの違いがあります。感覚的には、FPR Ultra Flex は細字(EF)から太字(B)、JoWo OmniFlex は細字(F)から中字(M)までの線幅変化です。
※ FPR Ultraflex のニブには1.1 EFという刻印があり、1.1mmから Extra Fine までの線幅を表しているのかもしれません。
ニブサイズの大きさや見た目の迫力と、実際にどれだけ切り割りが開くかは別でした、、。
JoWo OmniFlex は FPR Ultra Flex より軟らかく感じる
ペン先が紙にあたるタッチは、JoWo OmniFlex のほうが FPR Ultra Flex よりも軟らかく感じられます。FPR Ultra Flex はややカリカリとした硬質な書き味ですが、JoWo OmniFlex はインクフローもよく、スラスラと滑るように書けます。
筆圧をかけずに書いている範囲では大きな字幅変化はなく、むしろソフトニブに近い、滑らかな書き味です。
切り割りの開き方だけを見れば、FPR Ultra Flex のほうが大きく開き、線幅の変化も大きくなります。一方で、普通に文字を書いたときの「軟らかさ」は、JoWo OmniFlex のほうが強く感じられました。
ここでも、「大きく開くこと」と「軟らかい書き味」は、やはり別の性質だということが分かります。
まとめると、FPR と JoWo は性格がかなり違う
FPR Ultra Flex と JoWo OmniFlex は、同じステンレス製フレックスニブでも性格がかなり違います。
FPR Ultra Flex は、筆圧をかけたときに切り割りが大きく開き、線幅の変化をしっかり出せるニブです。細い線から太い線まで変化をつけやすく、フレックスニブらしい使い方を楽しめます。
一方の JoWo OmniFlex は、FPR Ultra Flex ほど大きく開くわけではありません。しかし、紙当たりは軟らかく、インクフローもよく、通常筆記ではスラスラと滑るように書けます。
大きな線幅変化を楽しみたいなら FPR Ultra Flex、普段使いの書きやすさや滑らかさを重視するなら JoWo OmniFlex、という違いが見えてきます。
どちらが優れているというより、フレックスニブとしての性格が異なると考えたほうがしっくりきます。
ステンレス製フレックスニブは設計でここまで変わる
今回 JoWo OmniFlex と FPR Ultra Flex を比べてみて興味深かったのは、同じステンレス製でも、ニブの形状によって書き味が大きく変わることです。
JoWo OmniFlex は、大きな #6 ニブの肩に深い切り欠きが入った独特な形状です。一方の FPR Ultra Flex は、より細身のニブながら、筆圧をかけると切り割りが大きく開きます。
つまり、フレックスニブの性格を決めているのは、素材の軟らかさだけではありません。ニブの長さや幅、厚み、切り割りの長さ、肩の形状など、さまざまな要素が組み合わさっています。
ステンレスは金に比べて硬い素材ですが、形状や設計によって、ここまで異なる書き味や線幅変化を生み出せるところに、ステンレス製フレックスニブの面白さがあります。


