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Post Date:2025年2月9日 

鉄ニブの限界を超えた先に広がる表現の世界 – 渓流ニブと小太刀ニブの魅力

WANCHER 誠エボナイト マットブラック - 小太刀ニブ

万年筆を使ってみたい」と思った瞬間が万年筆の深い世界の入り口です。書きやすさを求めて選んだ一本は、「字の練習に使うから」という大義名分で価格のハードルをクリア。しかし、ほどなくして「もっと美しい字を書くために」と、次の一本が欲しくなる…。こうして気づけば、万年筆沼にどっぷり浸かっているのではないでしょうか。

そんな沼の深みで見つけたのが、日本語を抑揚のある美しい線で表現するために作られた、WANCHER(ワンチャー)のオリジナルニブKEIRYUニブ - 渓流でした。繊細な筆遣いが求められる和の書体にも適した特別なペン先です。

KEIRYU ニブは、細く凛とした線や太く力強い線をペン先の角度によって生み出します。それぞれの線を一つの文字としてシームレスに繋ぎ合わせるには、少々慣れが必要かもしれません。 ぜひ、しばらく KEIRYU ニブで遊んでみてください。使いこなすことでより楽しさが増し、自由に操れるようになれば自分でも驚くようなイキイキとした文字が表現できます。

【引用】渓流 - Keiryu Nib | Wancherpen Japan

実際に試してみると、ステンレスニブとは思えないほどの表現力の幅に驚かされます。軽いタッチでは繊細な線を引き、筆圧をかけることで力強い筆致へと変化する。この筆のような書き心地こそが、KEIRYUニブならではの魅力です。

一方、KEIRYUニブが筆のような柔らかい表現を得意とするのに対し、鋭くシャープな筆致を追求した特殊ニブも存在します。それが小太刀(こだち)研ぎです。セーラー万年筆の長刀研ぎを参考に、The Nib Shaperの長原幸夫氏が開発したこのニブは、細字・中字・太字への研ぎ出しが可能で、WANCHERの一部の万年筆で選択できます。


渓流ニブと小太刀ニブの違い

WANCHERと長原氏が共同で生み出した渓流ニブと、セーラー万年筆の長刀研ぎの技術を活かして作られた小太刀ニブは、どちらも日本語の美しさを引き出す特別なニブです。しかし、その「抑揚」の表現範囲に違いがあります。

渓流ニブは、筆圧に応じて滑らかに強弱が変化し、太くダイナミックな線も、柔らかくしなやかな線も自在に描けます。一方、小太刀ニブは、鋭くシャープな筆致が特徴で、細かい文字や繊細な筆運びに適しています。

この違いを生み出しているのが、それぞれのペンポイントの形状です。

小太刀ニブと渓流ニブのペンポイントの比較

渓流ニブ(写真 右)は、ペンポイントが大きく丸みを帯びた「かまぼこ型」の形状をしており、滑らかな線と豊かなインクフローを実現しています。一方、小太刀ニブ(写真 左)は、先端が細長く鋭利な矢尻のような形状で、フラットに研ぎ出されています。そのため、紙に触れる面積が小さく、繊細でシャープな線を生み出します。

渓流ニブと小太刀ニブの文字比較

上が渓流ニブ、下が小太刀ニブで書いています。


渓流ニブ – 筆のような抑揚を楽しむ特別なペン先

渓流ニブは、渓流の水の流れのように滑らかで、自然な抑揚を生み出すペン先です。ペン先の角度や筆圧に応じて線の太さが自在に変化し、豊かで立体感のある筆記を楽しむことができます。

渓流ニブの特徴は以下の通りです。

  • 柔軟な表現力
    スチールニブでありながら、筆圧や角度に応じて線の太さを調整可能
  • 湾曲した大きなペンポイント
    ペンポイントがわずかに湾曲したかまぼこ型の形状により、滑らかな筆記感と自然な強弱を表現
  • 中〜大きめの文字に最適
    特に漢字の「ハライ」「トメ」「ハネ」をダイナミックに表現

渓流ニブは、漢字を流麗に書きたい方や、線の表情を楽しみたい方に最適です。


購入方法

WANCHERでは、JOWO #6ニブを搭載した一部のモデルで、購入時にオプションとして、KEIRYUニブ・渓流が選択できます。料金は+7,700円です。

例えば「誠エボナイト」で渓流ニブを選択すると、税込で29,700円となります。

誠エボナイト     22,000円
渓流ニブ     7,700円
_________
合計     29,700円

「誠エボナイト -峰-」のペン先は渓流ニブのみで、税込35,200円です。

また、15,000円(税別)以下のJOWO #6ニブ搭載モデル(例:世界樹万年筆)では、購入時にKEIRYUニブを選択できませんが、別売の渓流ニブを購入して交換することが可能です。

「世界樹万年筆」と別売の交換用「渓流ニブ」の合計でWANCHER楽天公式であれば、税込で20,350円となります。

世界樹万年筆     11,000円
渓流ニブ(別売)     9,350円
_________
合計     20,350円

さらに、Amazonで検索するとMonteverde(モンテベルデ)Conklin(コンクリン)は、交換ニブとしてJOWO #6があるので、渓流ニブに交換できる可能性があります。試してはいないので、あくまで自己責任で、、。


小太刀ニブ – 漢字を美しく刻む鋭利なペン先

The Nib Shaper創業者・長原氏が、セーラー万年筆の長刀(なぎなた)研ぎに独自の改良を加え、より漢字を美しく書くために開発した研磨方法が小太刀(こだち)研ぎです。WANCHERをはじめ、複数のメーカーが長原氏の監修を受けて小太刀ニブを販売しています。

WANCHERでは、18金ペン先への変更が+15,000円(税別)で、小太刀ニブへの変更は+12,000円(税別)です。「スチールニブなのに?」と感じるかもしれませんが、鉄ニブとは思えない書き味を体験すれば、その価値に納得できるはずです。

小太刀ニブには以下のような特徴があります。

  • 鋭利なペンポイント
    矢尻のように細長く、フラットに研がれた形状
  • 線のメリハリ
    縦線と横線の太さのコントラストが大きく、立体感のある文字が書ける
  • 漢字に最適
    トメ、ハネ、ハライを精密かつ力強く表現可能
  • 力強い書き心地
    鋭い書き出しで、堂々とした文字の印象を与える

小太刀ニブは文字のメリハリや正確さを重視する方におすすめで、特に漢字の美しさを追求したい方に最適です。ただし、楽天公式では小太刀ニブの太字しか取り扱いがありません。

KEIRYU・KODACHI(渓流・小太刀)を選択すると、22,000円の誠エボナイトが35,200円になります。

誠エボナイト     22,000円
渓流・小太刀ニブ     13,200円
_________
合計     35,200円

楽天公式には以下のように記載されているので問い合わせてみてください。

※販売中のニブとは異なるお色やサイズをご希望の場合は、変更が可能なものもございますので、お問い合わせください。

【引用】WANCHER楽天公式 - 誠エボナイトマットブラック

価格はさらに高くなりますが、WANCHERでは18金の小太刀ニブも選択できます。「不思議の国のアリス」のハートの女王をモチーフにした「キングオブハート」は、セーラー万年筆のプロフェッショナルギアをベースにしています。このモデルでは、小太刀ニブのF(細字)、M(中字)、B(太字)が選択可能です。

小太刀ニブを選ぶならWANCHER公式サイトで購入した方が、より多くの選択肢があります。下写真はWANCHER公式で購入した「誠エボナイト マットブラック 小太刀研ぎ(中字)」です。

WANCHER 誠エボナイト マットブラック - 小太刀研ぎ(中字)

渓流ニブ vs 小太刀ニブ - あなたに合うのはどっち?

どちらのニブが良いかは、個人の好みや筆記スタイルによって異なります。渓流ニブは、かなり太めの線となるため、細かい文字を書くのには向いていません。

共通しているのは、ともにインクフローが良く、滑らかな書き心地を持つペン先であることです。しかし、なぜか同じインクを使っても、渓流ニブと小太刀ニブは、他の万年筆で書いたの比べてインクが薄いように感じます。気のせいかと書いた文字を拡大すると「ムラ」があるのがわかります。この「ムラ」がインクを薄く感じさせているのだと思います。

渓流ニブ、小太刀ニブで書くとインクが薄くなる?
  • 渓流ニブ:滑らかで、表現力豊かな筆記を楽しみたい方
  • 小太刀ニブ:漢字を美しく書きたい方、力強い文字を書きたい方

小太刀ニブは、太字・中字・細字の3種類から字幅を選ぶことができます。中字の字幅は、セーラー万年筆やパイロットの中字とほとんど変わりません。

渓流ニブと小太刀ニブは試し書きができないため、選択が難しいのですが、ペン先単体でも購入できる渓流ニブは、価格面も含めて小太刀ニブより入手しやすいというメリットがあります。


書くことを深める道具としての万年筆

万年筆は単なる筆記具ではなく、使い手の書く楽しさや表現の幅を広げる道具です。だからこそ、道具としての本質を見極め、適切なものを選ぶことが重要になります。

高価な万年筆が必ずしも良いとは限りません。しかし、ときに道具は自分を成長させてくれます。渓流ニブや小太刀ニブもそうした書くを楽しみ自分を成長させてくれる道具です。

金ペンや軟調ペン先を使ってきた方なら、長刀研ぎを一度は必ず気にされるのではないでしょうか。そのときの選択肢として、渓流ニブや小太刀ニブを考えてみるのも良いかもしれません。

ふと、渓流ニブと小太刀ニブの両方を購入することになるのであれば、セーラー万年筆の長刀研ぎを購入できたのでは?と思うこともありますが、沼にハマっているので仕方がありません。

ふと、渓流ニブと小太刀ニブの両方を買うなら、セーラー万年筆の長刀研ぎが買えたのでは?と思うこともあります。でも、仕方ありません。万年筆沼とは、そういうものです。

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