つけペンのHocoro 筆文字を持っていますが、筆のように抑揚のある線を生み出すのはとても魅力的です。一方で大きく湾曲したペン先は、扱いが難しいと感じることもあり、ペン先の曲がりがより少ないタイプのBent Nibを試してみたいと思うようになりました。
手頃な価格で、驚くほど多様なペン先に出会えるのが中華万年筆の大きな魅力ですよね。ついつい『これも試してみたい!』と手が伸びてしまいます。そんな中華万年筆の中から、写真で見た感じペン先の曲がりが比較的穏やかそうな『Hongdian 620 Bent Nib』を発見!
実際に使ってみると、Hocoroとはまた違った書き味で、抑揚は少ないながらもペン先の角度で線の表情が変わり、不思議と味のある、個性的な文字が書ける面白い一本です。
Bent Nib(ベントニブ)とは?
「Bent」は英語で、動詞「bend」の過去形・過去分詞であり、形容詞としても使われます。「曲がった」「湾曲した」という意味で「Bent Nib」はペン先が意図的に曲げられている形状です。
Bent Nibの中でも、特に大きく湾曲した形状のものは、日本では『ふでペン先』や、英語圏では『Fude Nib(フデニブ)』などと呼ばれることもあります。具体的には、このような形状をしています。
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【引用】Amazon - Jinhao 100 クラシック ベントニブ |
こちらはセーラー万年筆「ふでDEまんねん」のペン先です。
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【引用】Amazon - WANCHER×SAILOR ふでDEまんねん |
そしてこちらWANCHER x 呉竹「長閑万年筆」のペン先です。
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【引用】Amazon - WANCHER x 呉竹 長閑万年筆 - 黒霞 |
これらのペン先は、写真のように、ペン先が大きく上向きに湾曲しているのが特徴です。
ベントニブの主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 筆記角度による線幅の変化: ペンの角度を変えることで、細字から太字まで、様々な線幅を表現できるものが多いです。これにより、筆で書いたような抑揚のある表現が可能になります。
- 個性的な表現: 手書き文字に独特のニュアンスや個性を加えることができます。
- 独特の書き心地: ペン先が紙に当たる角度や面積が通常と異なるため、独特の引っかかりや滑り感を持つことがあります。好みが分かれるポイントですが、この書き心地に魅力を感じる人もいます。
ベントニブは、通常の万年筆とは異なる書き味や表現力を求めるユーザーに適しています。特に、手書きの文字に変化をつけたい方、カリグラフィーに興味がある方、インクの特性を最大限に楽しみたい方などにおすすめです。
ただし、ベントニブは一般的なペン先と比べて扱いが難しく、最適な筆記角度を見つけるのに少し慣れが必要な場合があります。また角度によっては紙への引っかかりを感じることもあります。
Hongdian 620 Bent Nib とは?
Hongdian 620 Bent Nib に興味をもったのは、Amazonで見かけたこのペン先の写真がきっかけでした。一般的な大きく曲がったBent Nib(ふでペン先)と比べて、ペン先が上向きに曲がっている部分がとても短く、まるで『ミニふでペン先』とでも呼びたくなるような形状です。
「これなら書きやすく、普段使いの万年筆になる?」そう思ったのが第一印象です。
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【引用】Amazon - Hongdian 620 Bent Nib |
そして、こちらが実際に購入した Hongdian 620 Bent Nib のペン先です。
大きめのペンポイントをペン先に付けて、固まらないうちにグイッと押し付けて曲げたような形状です。紙に当たる部分がやや広く、緩やかにカーブするように研がれているので、この面を紙に当てる角度で線の太さが変わるのだと思います。
この形状は、セーラー万年筆の「hocoro 筆文字」と比べると、その違いがよく分かります。
hocoroのペン先は大きく反り返っていますが、Hongdian 620の曲がり具合はそれよりも穏やかです。それでも、先端がしっかり上を向いています。
こちらはニブの上からの写真です。
ニブには1997 Hong Dianと刻印がありますが、その下は読めません。Bent NibにはF(細字)やM(中字)といった字幅を示す刻印はありません。
仕様についても見てみましょう。
- 長さ(収納時): 約 136 mm
- 太さ(最大径): 約 14 mm (グリップ部分は約13mm)
- 重さ: 約 34 g
- 材質: 金属(具体的な種類は不明)
細めのボディですが、金属製のため適度な重みがあります。カラーバリエーションには、自分が購入した銀色(シルバー)以外に、ライトグリーン、赤色(レッドメタル)があります。キャップはネジ式なので密閉性が高いので、インクが乾いて書けなくなることもなさそうです。またコンバーターが付いているのでインクを充填すれば直ぐに使えます。
書き味はどう違う? Hocoro 筆文字 vs Hongdian 620 Bent Nib 書き比べ
前の章でペン先の形状の違いを見ましたが、ここでは実際にセーラーの「hocoro 筆文字」と、私が『ミニふでニブ』と称する Hongdian 620 Bent Nib の書き味を比べてみます。
まず、ペン先の角度によってどれくらい線の太さが変わるか見てみます。
- Hocoro 筆文字は、ペンを立てれば細線、寝かせれば極太線と、ダイナミックに線幅が変化します。まさに筆で書いたような表現力です。変化の幅で言うと、感覚的には一般的な万年筆の中字から太字くらいまでをカバーします。
- Hongdian 620『ミニふでニブ』も、ペンを立てれば細めに、寝かせれば太く書けます。しかし、Hocoroと比べるとその変化はかなり穏やかです。極端な太い線は出ませんが、変化が緩やかな分、線幅をコントロールしやすいというメリットがあります。こちらは細字から中字の範囲での変化が中心です。
実際に同じ文字を書いて並べてみると、その表現力の差は一目瞭然です
Hongian 620 Bent Nib は、ペン先の曲がりが穏やかな分、Hocoro 筆文字よりも一般的な万年筆に近い感覚でペンを運べます。書き出しの引っかかりも少なく、スムーズに書けます。筆文字と比べると、格段にコントロールしやすいと感じました。
また字幅が細いので、細かい字でも字が潰れることがありません。手帳やノートなどにも使える万年筆です。
まとめ
Hongdian N8(ロングナイフニブ)、Jinhao Dadao 9019(心電図ビッグニブ)に続く、中華万年筆 第3弾として Hongdian 620(ミニふでニブ)の紹介でした。
Hongdianの特殊ニブは、ロングナイフニブも、今回の『ミニふでニブ』も、期待以上、お値段以上の価値を提供してくれます。特に、この『ミニふでニブ』は、ユニークな書き味でありながら扱いやすく、手帳のメモ書きもできる細い字幅は、使い勝手がよく、普段使いができる万年筆です。
Bent Nibに興味がある方、手書きの字により個性を加えたい方には、まさに一本持っていて損のない万年筆と言えるでしょう。