ブログをはじめて直ぐに書いたのが、薄茶を点てる | 象と散歩 です。あれから少しは、まともな文章が書けるようになったのでしょうか。お茶はずっと楽しんでいますが、変化としてはお気に入りの抹茶碗を新たに見つけたことですかね。
The Book of Tea
"The Book of Tea" は、岡倉天心が海外に向けて、日本の総合芸術としての茶道を通して、文化、歴史、思想を説いている英語本ですが、「茶の本」として日本語訳も出版されています。茶道の精神は禅宗の考え方にあり、その根底には道教があります。内容的には難しいですが、日本人の美意識を改めて考えさせてくれます。
英文収録 茶の本 (講談社学術文庫) は、涌谷英明氏の翻訳も素晴らしく、英文も収録されているおススメの一冊です。
「抹茶を楽しむ」といったタイトルなのに、茶の心を説く本の紹介からになってしまいましたが、その背景にある世界観を知っておくことは、お茶を楽しむためにも無駄な事ではないかと思います。知識も楽しみのひとつです。
抹茶とはなにか
抹茶は碾茶(てんちゃ)からつくられます。甜茶とは、発芽から摘採(てきさい)までの間、強い日差しが当たらないように藁や葦簀(よしず)で遮光した、被膜栽培をしたお茶です。
お茶に含まれるテアニンは、日に当たるとグルタミン酸とエチルアミンに分解されます。このエチルアミンがカテキンの合成に使われお茶の渋みとなります。碾茶はカテキンの合成を抑制して、テアミンの含有量が多い、渋味の少ないお茶です。
玉露も同じ被膜栽培によって渋味を抑えたお茶ですが、抹茶は碾茶の葉脈や茎を取り除いて石臼で挽いたものです。
抹茶の科学的作用
抹茶に多く含まれるテアミン(アミノ酸)には、リラックスや抗ストレスの作用があり、逆にカテキンには抗酸化作用、脂肪燃焼などの効果があるといわれています。リラックスできる抹茶と健康のための煎茶と、同じお茶でも効能が違うなんて不思議です。
お茶を楽しむために必要なもの
千利休を流れを汲む三千家には、裏千家、表千家、武者小路千家とあり、現代にも「茶の心」は脈々と受け継がれています。茶道が何たるかであるかを知るために礼儀作法を学ぶことにも一理ありますが、もっと気軽に自宅で抹茶を楽しみましょう。
茶道を知らなくても抹茶は楽しめますが、楽しみの過程としての 雰囲気、特別感、味わい、リラックスのためには、美味しい抹茶とある程度の道具を揃えることが必要です。
抹茶(一杯の値段は、、、)
なるべく美味しい抹茶を選びましょう。美味しくないと思ってしまっては、その後が続きません。抹茶が初めてで、どれを買ったらいいかわからないという方には 一保堂の明昔 をお勧めします。
香りが高く、苦味が少なく美味しく飲めると思います。薄茶(うすちゃ)で飲むなら茶杓で一杓半(約2g)として20杯分なので一杯の値段は100円ぐらいです。
コスパ優先であれば、薄茶で50杯分の 丸久小山園の五十鈴 (いすず) でしょうか。こちらは薄茶で一杯50円弱です。
抹茶は冷温で保存すると香りと味が長持ちします。購入したら密封して(ジップロックが便利)冷凍庫で保存しましょう。
抹茶篩(ふるい)
抹茶を美味しく飲むためには、抹茶篩(ふるい)は必需品です。ふるいにかけないとお茶を点てたときにダマになってしまい、細かい泡も立たず、口触りが悪いお茶になってしまいます。
ふるいを使わずに、湯を注ぐ前に少量の水をいれてから茶碗の中で抹茶をコネて団子状態にしてもダマになりませんが、ふるいにかけた方が楽ですし、見た目もきれいです。ちょっとした手間暇をかけるだけで美味しいお茶を楽しむことができます。
一般的な抹茶篩は、網の上で抹茶をヘラで濾すタイプです。
近藤さんの茶ふるい缶 は、ちょっと変わっていて、付属の3個のふるい金具を網の中に入れて左右水平に振って抹茶を濾します。
茶筅(ちゃせん)
茶筅(ちゃせん)は、お茶を点てるためには、なくてはならない道具です。穂先の数が多い方が、細かい泡を立てやすいですが、持ち手の竹が太くなります。薄茶を楽しむのであれば、100本立てを選びましょう。
茶筅は消耗品なので「穂先がだいぶ折れてきたな」と思ったら交換時です。またお茶を点てる前には、茶筅の穂先をチェックして折れかかっていたらハサミで切ってしまいましょう。でないと抹茶に竹の切れ端が混じってしまいます。
折角、日本の文化を楽しむですから耐久性の高い国産の茶筅を選びたいところです。
茶杓(ちゃしゃく)
抹茶をすくう竹さじです。小さいティースプーンでも構いませんが、お茶を点てる雰囲気づくりのためにに一本購入しておきましょう。
抹茶碗
茶碗は自分が気に入ったものを購入しましょう。旅先でも焼き物やさんに寄ってみるとお気に入りの茶碗が見つかるかもしれません。
湯冷まし
薄茶を点てるは80-90℃が最適といわれていますが、熱いのが嫌いであれば70℃ぐらいでも美味しく点てられます。湯の温度によっても抹茶の味は変わります。色々と試して自分好みの湯温も探ってみてください。
ポットから直接、抹茶碗にお湯を注いでもいいのですが、あまりにも味気ないので、お湯を注ぐ道具としても湯冷ましがあると便利です。もちろん後述の鉄瓶でお湯を沸かすのであれば湯冷ましは必須です。
鉄瓶
ちょっと効果なものですが、鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかで、抹茶だけではなく、煎茶や珈琲も美味しく飲めます。鉄瓶で湯を沸かすと二酸化鉄が溶け出し、二酸化鉄は体内に摂取されるとFe(鉄)として吸収されるとあります。二酸化鉄とは、Fe(鉄)とO2(酸素)が化合されたもので、いわゆる鉄錆びです。
鉄瓶は錆びやすいので、内側がホーロー加工されているものがありますが、これでは鉄瓶ではなくなってしまいますので、ホーロー加工されていないものを選びましょう。
鉄瓶を錆びないようにするには、火を止めたらお湯を出し切って、ふたを開けて余熱で乾燥させます。乾き切らないようであれば、少し空焚きをして乾燥させます。使わない期間が長くなると錆びてしまいますが、逆に毎日使っていれば、あまり錆びることはありません。
お抹茶の点て方
美味しく薄茶を点てるには幾ばくかのコツがありますが、難しいことはありません。
① 抹茶を濾す前に、茶碗にお湯をはり、茶筅を入れておきます。茶碗を温めるとともに、茶筅をお湯に浸すことで、茶筅の穂先が柔らかくなります。
② 抹茶を丁寧に濾します。
③ 茶碗のお湯を払って、布巾で水気を拭き取ります。そこに濾した抹茶を投入。
④ お湯を60cc程度注いで抹茶を点てます。穂先が軽く底にあたる程度に前後にシャカシャカと。
⑤ 泡が細かいほど口触りがなめらかになります。全体的に泡がたったら、茶せんの先で泡の上に「の」の字を書くように中央から真上に引き上げると泡が山になりキレイな仕上がりになります。
⑥ 泡をもっこりとさせて、これで出来上がり。
あとは、抹茶を味わっていただきましょう。
今日の一曲
Brian Eno の Music for Airport。テープレコーダのループが複雑な調和を生み出し、シンプルなメロディーを一瞬たりとも 同じ響きに感じさせることがありません。意識をすれば音が皮膚から入り込んでくるのがわかりますし、意識をしなければ、柔らかい空間に包まれているだけです。
谷川俊太郎の「あの青い空の波の音が聞こえるあたりに」から始まる "かなしみ" を音楽で表現したらこんな感じなのではないかと思ってしまいます。
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