少し前のネタですが、Kbc radio Podcasting 「日経・朝のたまご」11月9日放送分の相対的貧困率を使った数字のマジックが面白かったので紹介します。
相対的貧困率は、民主党政権になって突如、厚生労働省が発表した指標です。最新の2007年調査(2006年データ)の相対的貧困率は15.7%、約7人に1人が貧困となっています。日本はスラム化してしまったのでしょうか?
相対的貧困率とは
厚生労働省の相対的貧困率の発表資料には、OECDの定義として「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員の割合と記されています。
簡単にいえば、真ん中の人の所得の半分以下なら貧困という定義です。
所得については、統計でウソをつく法でも利用した国民生活基礎調査を利用とあります。平成18年 国民生活基礎調査の概況を参照すると、世帯所得の中央値は458万円で、世帯人員1人当たり平均所得金額は206万です。しかし、相対的貧困率の所得は等価可処分所得なので、もとデータがわかりませんでした。
可処分所得/等価可処分所得
可処分所得は、年収から税金や社会保険料を差し引いた、実際に手元に入り使うことができる金額です。可処分所得は下記によってもとめることができます。
※ 住民税は、別途地方自治体で発行していますが、給与明細の住民税を12倍したものです。
等価可処分所得は世帯の可処分所得を平方根で割るとあります。これは、可処分所得が200万円の単身世帯と夫婦二人暮らしで280万円(200万円×√2)では、生活レベルが同じであることを意味します。1人あたりの所得を算出するのに、世帯の総所得を人数割するのには無理があると思いますが、平方根で割った数値というのも釈然としません。
新聞発表では、可処分所得の中央値は228万円とあります。この半分以下、つまり一人世帯なら114万円、二人世帯なら114万×√2=161万円、三人世帯なら114万×√3=197万円、四人世帯では114×√4=228万円以下の場合、貧困と定義されます。
等価可処分所得のマジック
ある国に201名の国民がいて、ある年の総所得が下記だとします。
所得300万円が100名、100万円が101名なので国民の総所得は、4億100万円になります。また真ん中の人の所得(中央値)は100万円となるので、100万円の半分50万円以下の所得の人は存在せず、この国の相対的貧困率は、0%となります。
翌年、所得100万円の一人が、一生懸命働いて所得が200万円あがり300万円になったとします。また国民の総所得を変化させないために、所得300万円の100名は2万円下がって298万円とします。すると真ん中の人の所得は298万円になり、半分の149万円以下の所得100万円の100名が貧困と定義され、相対的貧困率49.8%になってしまいます。
この国の総所得に変化はありません。また所得300万円だった人は、2万円しか下がっていないので生活に大きくは影響しません。所得100万円の100名は前年と同じ所得なのに貧困と定義され、この国の半数は貧困であることになってしまいます。
上記は極端な例ではありますが、「日経・朝のたまご」でも暗に相対的貧困率15.7%という数値に踊らされるなといっているのではないでしょうか。
定点観測をした結果をみても、昨年よりも相対的貧困率が上昇していることはわかりますが、2000年の相対的貧困率が高かった理由もわかりません。
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