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2024年9月18日

初心者の太字万年筆の選び方!カスタム67 Bの実力は?

PILOT CUSTOM 67 <B>

太字の万年筆を使ってみたいけど、普段使いになるのか分からないし、、。そんな風に悩んだことはありませんか?太字は、文字に力強さと個性を与え、手書きの楽しさをさらに深めてくれる存在です。

「中古の万年筆なら気軽に試せるかも!」と思い、カスタム67 Bを中古で購入。

1985年発売のパイロットカスタム67は、同社の67周年記念モデルとして登場した、14金5号の万年筆です。カスタム74の前身モデルとしても知られています。67には太字の字幅もあり、太字を日常的に使う機会は多くないけど、金ペンならではの太字の書き味を味わいたい方にオススメです。

カスタム74よりもシンプルなデザインのカスタム67は、飽きのこない美しさで長く愛用できそうです。定番モデルのため中古市場でも比較的多く流通しており、状態の良いものが安価で入手できるのも魅力です。


Custom 67のペン先(ニブ)

5号サイズのペン先は、10号サイズのCustom Heritage 912のペン先と比べるとコンパクトです。ペン先には、PILOT 14K585 5 Bと刻印されています。

Custom67 Nib 14K 585 5 B
  • 14K:14金
  • 585:金の含有率 58.5%
  • 5:5号サイズのペン先
  • B:字幅 Bold(太字)

横からみるとボールドなので四角い大きなペンポイントが目立ちます。

Custom67 Nib(横から)

こちらは裏側になります。

Custom67 Nib(裏側)

デザイン

カスタム67は細身のボディで、万年筆初心者にも握りやすい太さです。カスタム74と同様に樹脂製のバランス型ですが、経年劣化のせいか、74に比べてややプラスチック感があります。

Custom67

キャップのリングは、カスタム74の太いリングとは対照的に、細いリングが2本です。キャップの縁に「CUSTOM 67 JAPAN」が控えめに刻まれています。

Custom67 キャップ

クリップの丸い玉はカスタム74と同じデザインですが、キャップと軸の両端のリングがより細く、全体として質素な印象を与えます。

Custom67 尻軸


コンバーターも使える

初期型のカスタム67の尻軸には、バランサー(オモリ)が入っているので、コンバーターのCON-70が入らないとありますが、入手したカスタム67は初期モデルではないのでCON-70が装着できました。

パイロット コンバーター CON-70

Custom 67の書き心地

14K 5号サイズのペン先はコンパクトですが、太字のペン先はインクフローが多く、筆圧をかけずに滑らかに書けます。気持ちよく太い文字が書けるペン先です。

しかし、字幅が太ければ柔らかいというわけではないといいうことが実感できました。

ペン先に力を入れると"しなり"はあります。

Custom67 ペン先のしなり

しかし、金ペンや軟調ペンの書き味に慣れてしまっということもありますが、書き味は滑らかですが、決して柔らかくはありません。どちらかといえば、硬く筆圧をかけても書きやすい万年筆に仕上がっています。

カスタム74試筆台で試した<B:太字>と比べてもあまり変わらない気がします、、。


パイロットのペン先はいつから硬化したのか?

100年の歴史 | パイロット100周年記念サイト - PILOT には、1972年に発売された「カスタム」シリーズでは「現代の日本人にあった、日本の文字のための万年筆」と謳われています。

もう少し前に遡っても、硬化の兆しが見られます。1968年に発売された「エリートS」は、Yシャツのポケットに収まるショートサイズの万年筆でしたが、このサラリーマンをターゲットとした万年筆が、携帯性と実用性を兼ね備えたペン先の硬化の始まりだったのではないかと思われます。

「エリートS」は復刻版として「エリート95S」として、現在も発売されています。

1960年代から1970年代にかけての0.5mmのシャープペンシル、そしてボールペンの普及に伴って筆圧をかけて書くことが一般的になってきました。万年筆もまた、硬めのペン先にすることで、耐久性を高め、ボールペンやシャープペンシルに慣れたユーザーにとっても使いやすいように日常の筆記用具として進化してきたのではないでしょうか。

そして、実用的な万年筆が硬化する中で、柔らかい万年筆の書き味を求める声に応えたのが、軟調ペン先なのではないかと思います。


14K 5号の太字は必要か?

いまのところ日常的にはあまり多く太字の出番を考えられません。しかし、太字は、より万年筆らしいアーティスティックな文字を表現できます。手紙や葉書を書いたり、一筆箋などを書く方は太字が重宝するかもしれません。

Bold(太字)は、Fine(細字)やMedium(中字)と比べて利用が限定されますが、手書きの幅を広げられる可能性を秘めているので、14K 5号の太字もあっても損はしないと思います。

中古の万年筆にはあたりハズレがありますし、ニブの形状が異なりしなやかと言われている初期モデルでなければ、カスタム74でも同じです。

また同価格帯のプロギアスリム、#3776センチュリーでもいいかもしれません。

しかし、太字を主力として考えるのであれば、14K 5号のペン先では、書き味に物足りさを感じるようになるかと思います。

サイズが大きいペン先は、筆圧に対して多少の弾力性を感じやすく、滑らかな書き心地が得られることが多いので、パイロットであれば10号や15号サイズ。21Kのプロフィット/プロフェッショナルギアの太字をおススメします。

2024年9月1日

定番の逸品、#3776センチュリーSF(細軟)で味わう軟調ペン先の世界

Platinum #3776 Century SF

軟調ペン先の魅力に惹かれ、店舗に設置されていた#3776試筆台でSF(細軟)を試し書きしてみたら、突然の物欲の神様の降臨。定番万年筆は個体差がほとんどないので安価に買えるネットでも安心です。 #3776 センチュリー ロジウム ブラックダイヤモンド 細軟(SF:Soft Fine) をポチり。


軟調ペンとは?

軟調ペン先(ソフトニブ)は、通常のペン先よりも薄めに作られ、ペン先の形状や材料の配合にも工夫が施されているため、柔軟で弾力のある書き心地を提供してくれます。

軟調ペン先の大きな魅力は、その柔らかさを活かした書き心地と表現力です。筆圧をかけるとペン先が広がり、太い線が書けますが、軽く書くと細い線となるため、抑揚がある字を書くことができます。

現在の日本メーカーの定番万年筆は、ボールペン等で強い筆圧が一般化した日本人に合わせているので、強い筆圧で書いても安定して書けるように、あまりしならずスリットが広がらないように硬めの硬質ペン先(ハードニブ)となっています。

しかし、これは万年筆の良さを失っていることにもなります。

万年筆で書いた文字には味わい深さがありますが、これは筆圧、ペン先の角度、筆記速度などの違いによって生まれる以下の要素によって生じます。

  1. インクの濃淡
  2. 線の太さ
  3. 線の抑揚(強弱)
  4. 筆致の柔らかさ

これは、 ペン先が柔らかく字幅が広い万年筆で筆圧をかけずに書くことで生まれる味わいです。硬いペン先細い字幅の万年筆は、ボールペンのように書けますが、万年筆の良さを半減させてしまいます。

この万年筆の本来のよさを実感させてくれるのが「軟調ペン先」です。


#3776 センチュリー 細軟の独特な書き味

#3776センチュリーSFは、同じ軟調ペン先のPILOTのカスタムヘリテイジ912 SM(中字軟) と比べると、筆圧を加えたときに大きくペン先がしなる(湾曲する)のがよくわかります。

しかし、細字ということもあってか、ペン先が大きくしなってもスリットがそれほど広がらず、字幅が大きく変化することなく安定して書けます。それでも、筆圧をかけないときと、かけたときの字幅の違いによって、文字に抑揚を表現することができます。

下の写真は、「大」の横棒だけ筆圧をかけた例です。

#3776 Century SF の字幅の違い

SF(細軟)のペン先は大きくしなりますが、他のセンチュリーのペン先と同様にやや硬めで、書くときに「カリカリ」とした感触があります。特に細かい字を書く際には「サクサク」と軽快に紙を滑るような感覚の中にしっかりとしたフィードバックがあり、繊細で正確な書き心地を提供します。SF(細軟)のペン先は、大きくしなる一方で、#3776特有のしっかりとしたタッチを感じさせる書き心地です。

この「しなり」と「カリカリ」としたペンタッチが、#3776 SF(細軟)特有の独特の書き心地を生み出しています。この大きくしなるペン先では、筆圧をかけ続ける書き方では書きづらいので、筆圧をかけない書き方が求められます。

また、細字の軟調ペン先なので、細く小さな字が書けます。手帳やノートなどに小さな字を書くのに適しています。しかし、ペン先がしなる特性上、速く書くのには不向きです。


#3776 センチュリーのデザイン

#3776センチュリーは、プラチナ万年筆が誇るフラッグシップモデルであり、シンプルでありながらもエレガントなシルエットを持ち、無駄のない直線的なラインが特徴です。このデザインは、クラシックな美しさと機能性を兼ね備えており、時代を超えて愛される普遍的な魅力を持っています。

微かに透けて見えるボディは美しい光沢を放ちます。

#3776 Century ブラックダイヤモンド

ブラックインブラックとブラックインダイヤモンドで悩みましたが、ロジウムメッキ仕上げ(シルバー)の方が、落ち着いた色合いなので、ロジウムフィニッシュ ブラックダイヤモンドを選びました。

#3776 センチュリーは、ペン先の横の張り出しが広くとられているためペン先が大きく見えます。万年筆はペン先が大きい方がカッコよく見えるので、カスタムヘリテイジも5号ではなく、10号の912にしましたが、カスタムヘリテイジの10号と比べても見栄えがいいです。

(左)Custom Heritage912 (右)#3776 Century 14K

#3776のスリップシール機構

万年筆は暫く使わないでいると、インクが出なくなったり、最悪、万年筆が使えなくなってしまいます。

#3776のキャップに搭載されたスリップシール機構は、キャップを閉めるときに空気を遮断する構造になっており、インクが長期間使用されない場合でも、常に書き出しがスムーズです。この機能は、プラチナが他社との差別化を図るために開発したもので、日常使いの万年筆としての実用性を高めています。


パイロットとプラチナの軟調ペン先どちらをファースト万年筆に選ぶべきか?

万年筆本来の書き方である筆圧をかけない書き方を学び、万年筆らしい文字を書きたいのであれば、パイロットのカスタムシリーズのSM(中字軟)がベストチョイスです。

Custom Heritage 912 SM は、ペン先のしなりは少ないですが、筆圧によって字幅に大きな差が生じるため、表現力に富んだ書き味が楽しめます。ペン先のタッチは柔らかく書き味は「ぬらっ」とした感じです。

中字より細字がというのであれば、#3776センチュリーの細軟という選択もありかと思いますが、前述した通りセンチュリーの細軟は独特の書き味です。万年筆を初めて使う方にはカスタムシリーズが無難な選択肢ですが、筆圧をかけない繊細な書き方を楽しみたい方には、#3776センチュリーSF(細軟)が最適です。

#3776 センチュリー SFを書きやすいと感じるためには、筆圧をかけない書き方が必要です。

再掲となりますが、下記は、生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

万年筆の持ち方については、象と散歩: 万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とはを参照してください。


柔らかいペン先を求めて

柔らかいペン先を求めて日本の三大万年筆メーカーであるパイロットとプラチナの14K軟調ペン先、そしてセーラーの21Kの定番万年筆のコンプリートです。

#3776 CENTURY, Custom Heritage912, Professional Gear

さて、次に物欲の神様が降臨するのは、どの万年筆を手にしたときなのでしょうか、、。軟ペン繋がりで、エラボー、フォルカン、長刀研ぎ、それともB(太字)、若しくは外国ブランド?

いやいや、初心に戻って大人な字の習得が先か、、、、。

2024年7月7日

万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とは

Custom Heritage 912 SM

金ペンの軟調万年筆(Custom Heritage 912 SM)を使うことで、「筆圧をかけずに書く」という感覚を指先で理解できました。ボールペンよりも筆圧をかけていないつもりでしたが、万年筆の正しい書き方を理解できていなかったようです。

「筆圧をかけない書き方」に慣れると、万年筆がいかに優れた『書く道具』であるかを実感できます。また、ペン先が柔らかいと、中字の万年筆でも細めの字も書くことができます。

筆圧をかけずに書くためには、軽くペンを握れる太めのボディと、柔らかいペン先がポイントです。

逆に、万年筆に慣れていなく筆圧をかけて書く人には、グリップが細く、硬いペン先で字幅が細い万年筆が書きやすい万年筆となります。


定番エントリーモデルの14K 軟調万年筆を選ぶ

ファースト万年筆には、定番のエントリーモデルである14K軟調万年筆を選びましょう。

万年筆はもともと筆圧をかけずに書く筆記具でしたが、現代ではシャープペンシルやボールペンに慣れている人が多く、筆圧をかけても書きやすい万年筆が新たな常識となっています。

しかし、万年筆本来の書き味を楽しむためには、筆圧をかけずに書くことを意識することが大切です。初めて万年筆を選ぶ際は、日本メーカーの定番エントリーモデルの中から、14Kの軟調ペン先を採用したものを選ぶのがオススメです。


定番のエントリーモデルから選ぼう!

日本の万年筆メーカーは、日本語の「とめ・はね・はらい」といった漢字の特徴を意識して万年筆を製造しています。定番のエントリーモデルは、長年多くの万年筆ファンに愛されており、ファースト万年筆として間違いのない選択と言えるでしょう。

日本の代表的な万年筆メーカーの定番エントリーモデルの金ペンは以下の通りです。

メーカー製品ペン先価格(税込)
パイロットカスタム 7414K 5号¥17,600
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #377614K 大型¥22,000
セーラー万年筆プロフィット スタンダード14K 中型¥17,600
プロフェッショナルギア スリム

数年前までは、少し背伸びをすれば手が届く価格帯だったエントリーモデルの金ペンですが、度重なる価格改定により、2024年現在では発売時の1.6倍から2倍にまで値上がりしています。それでも、「一生モノ」と考えると、購入する価値は十分にあります。

以下は、2019年以降の価格改定履歴です。人件費、物流費、そして万年筆のペン先の金やイリジウムといった原材料価格の高騰で、仕方がないのかもしれませんが、お財布的には厳しくなりました。

価格改定履歴
Custom74#3776Profit
発売時¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)
2019年¥12,000
(税込 ¥13,200)
¥13,000
(税込 ¥14,300)
¥14,000
(税込 ¥15,400)
2021年¥18,000
(税込 ¥19,600)
2022年¥16,000
(税込 ¥17,600)
2024年¥16,000
(税込 ¥17,600)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
※ 発売年によって税率が異なるので、発売時の価格は税抜価格です

金ペンを使おう!

万年筆のペン先にはステンレスと金がありますが、紙に触れたときの「しなり」が大きく異なります。ステンレス製のペン先は硬いため、たわみを感じられません。

一方、金製のペン先は柔らかく、筆圧に合わせてしなやかにたわむため、滑らかな書き心地が楽しめます。エントリーモデルは14Kですが、金の含有量が多いほどペン先が柔らかくなるため、予算が許せば18Kや21Kの万年筆を選ぶのもオススメです。


軟調ペンという選択

定番のエントリーモデルは、筆圧をかけて書くことに慣れている万年筆初心者でも書きやすいように、ペン先のしなりを少なくし、スリットがあまり広がらないように設計されています。

例えば、パイロット CUSTOMのスペシャルサイトでは、Custom74について以下のように説明されています。

ボールペンの広がりにより、強い筆圧が一般化した日本人に合った書き味を目指したシリーズ。硬いタッチを基本に軟字も用意し、なめらかな書き味を実現。 ペン先は発売当時8種類、6年後の1998年に3種類追加し、現在の11種類に。

【引用】CUSTOMスペシャルサイト

Custom74の前身である、Custom67は、今より「しなり」がある軟らかいペン先だったといいます。時代と共に硬質化しているのは、他メーカーのエントリーモデルの万年筆にも共通する傾向と言えるでしょう。

しかし、金ペン先本来の「しなやかさ」を活かしつつ、筆圧をかけてもインクフローが安定しているだけの万年筆では、万年筆らしさや個性が失われてしまいます。

そこでおすすめしたいのが、ペン先を意図的に柔らかくした「軟調ペン」です。

PILOT Custom Heritage 912 SM(ソフトミディアム)のペン先

軟調ペンは、筆圧によって筆跡に強弱をつけやすく、ボールペンにはない万年筆ならではの感触を味わえます。また、自然と筆圧をかけずに書く習慣が身につくというメリットもあります。

エントリーモデルで軟調ペンをラインナップしているのは、パイロットとプラチナ万年筆です。

メーカー製品軟調ペン先
パイロットカスタム 74SF(細軟)/ SFM(細中軟)/ SM(中軟)
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #3776SF(細軟)

残念ながらセーラー万年筆には軟調ペンがありません。


パイロット Custom 74

パイロットの創業(1918年)から74年目(1992年)に発売されたカスタム 74は、30年以上愛され続けているロングセラーモデルです。

ペン先は11種類あり、軟調ペン先もSF(ソフト・ファイン)、SFM(ソフト・ファインミディアム)、SM(ソフト・ミディアム)の3種類が用意されています。これだけペン先の種類があると迷ってしまいますが、この11種類を全て試すことができるカスタム74試筆台というのが全国各地にあります。近くにあれば是非軟調ペン先の書き味を体験してみてください。

※ C(コース)とMS(ミュージック)は、19,800円(税込)

パイロットでは、ニブサイズ(ペン先の大きさ)を号数で表しています。Custom 74は14K 5号ですが、10号と15号のサイズもラインナップされています。

ニブサイズが大きくなると金の使用量も増えるため、価格も高くなります。

カスタムニブ・サイズ価格(税込)
Custom 7414K 5号¥17,600
Custom 74214K 10号¥26,400
Custom 74314K 15号¥39,600

10号以上のペン先には、SU(スタブ)、FA(フォルカン)、WA(ウェーバリー)といった特殊なペン先もあります。


Custom 74のデザインが好きになれない方へ

カスタム74の特徴である『丸いクリップ』が好きになれませんでした。カスタム ヘリテイジ 91は、同じ14K 5号のペン先ですが、ロジウム仕上げにシルバーのパーツで統一されたシンプルなボディデザインが魅力です。※写真はCustom Heritage 912

Custom Heritage 912 SM

両橋が丸いバランス型のCustom 74に対し、両端が平らなベスト型のHeritage 91は、若干全長が短くなりますが、基本的な仕様は同じです。

比較項目Custom 74Custom Heritage 91
デザインバランス型ベスト型
ペン先14K 5号14K 5号 ロジウム仕上げ
ペン種EF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB
サイズ最大径φ 14.7mm 全長 143mm最大径φ 14.7mm 全長 137mm

カスタム ヘリテイジにもニブサイズが10号のCustom Heritage 912がありますが、15号はありません。

カスタム ヘリテイジニブ・サイズ価格(税込)
Custom Heritage 9114K 5号 ロジウム仕上17,600円
Custom Heritage 91214K 10号 ロジウム仕上26,400円

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー

3776という数字は、日本最高峰である富士山の標高に由来し、「日本最高峰の万年筆」を目指すというプラチナ万年筆の想いが込められているとあります。

#3776 センチュリーの最大の特徴は、大きなペン先と、インクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を搭載したキャップです。この機構のおかげで、年に数回しか使わない場合でも、万年筆をスムーズに使い始めることができるという優れものです。

#3776には軟調ペン先もラインナップされていますが、SF(細字軟)のみとなっています。

#3776 Century 字幅の種類

公式サイトでは「柔らかいペン先 筆圧により少し太い字も書ける」と説明されていますが、写真だけでは細字と細軟の違いが分かりづらいかもしれません。しかし、#3776 センチュリー 試筆台設置店では、全種類のペン先の書き味を試すことができます。


中字?細字?万年筆の字幅選び

手帳やノートに細かい字を書くことが多いなら、細字の万年筆が適しています。しかし、万年筆ならではの個性豊かな字を楽しみたいなら、中字がおすすめです。特に中字の軟調ペンは、筆圧によって字幅に変化が生まれるため、筆圧をかけずに書くことで細めの字を書くことも可能です。

下写真は、Custom Heritage 912 SM(中字軟)で筆圧を入れて書いたとき(上)と筆圧をかけないで書いたとき(下)の線の太さの違いです。同じペン先でこれだけ太さの違いを出せます。

Custom Heritage 912 SM:筆圧による字幅の違い

中字の軟調ペンを使うことで、万年筆の正しい書き方である「筆圧をかけない書き方」をマスターできます。もし太い字幅が好きになれないという場合には、SM(中字軟)より少し字幅の細いSFM(中細字軟)という選択肢もあります。

しかし、万年筆を1本手に入れると、きっともう1本欲しくなるはずです。最初にSM(中字軟)を選んでおけば、2本目にはSF(細軟字)を選ぶことができ、中字と細字の字幅の違いを楽しめます。

また、プラチナ万年筆にはSM(中字軟)がないため、最初にパイロットの中字軟を選び、2本目にプラチナ万年筆のSF(細軟字)を選ぶと、メーカーやデザインの違いも楽しめます。


ファースト万年筆にオススメの一本

ファースト万年筆を選ぶ際に大切なポイントは2つあります。

  1. 万年筆らしい文字が書けること
  2. 筆圧をかけない書き方を習得できること

この2つのポイントを満たすためには、以下の3つの条件を満たす万年筆を選びましょう。

  1. 日本の万年筆メーカーの定番モデル
  2. 金ペン(14K)
  3. 中字の軟調ペン

これらの条件を考慮すると、選択肢として残るのは、パイロットのCustom 74 SM(ソフト・ミディアム)、またはCustom Heritage 91 SM(ソフト・ミディアム)です。どちらにするかは、あなたのデザインの好みで選んでください。


正しい万年筆の持ち方

万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. "中指の横腹"と"親指と人差し指の間"に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. "親指"と"人差し指"で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

万年筆の正しく持てれば、筆圧をかけずに書くというのにも慣れてきます。

14K軟調万年筆で万年筆ライフを楽しんでください!

2024年2月5日

万年筆沼へようこそ!21K中字と14K軟調中字の違いとは

MDノートとプロフェッショナルギア 金 中字

ジャーナリングを始めるにあたって、速く長時間書き続けられる万年筆を探していました。 14金 軟調中字21金 中字で悩んだ末、14金 軟調中字のパイロット ヘリテイジ912 SM(ソフトミディアム)を選びました。

しかし、21金のペン先もずっと気になっていたため、物欲の赴くままにセーラー万年筆 プロフェッショナルギア 金 中字も購入。

そこで今回は、14金 軟調中字21金 中字を実際に使用した書き心地の違いについてレビューします。


プロフェッショナルギアの特徴

セーラー万年筆のフラッグシップモデルであるプロフェッショナルギアは、2003年に発売されました。発売当初の中字の価格は2万円(税別)でしたが、その後、原材料費や人件費、物流費などの上昇の影響を受け、2回の価格改定が行われました。

2020年まで価格が据え置かれていたのも驚きですが、ここ数年で価格が1.5倍に上昇しています。

下図は、ペン先の原材料である金とイリジウム(ペンポイント)の価格推移と、プロフェッショナルギアの価格推移を比較したものです。

万年筆の原材料の価格推移とプロフェッショナルギアの価格推移
※ イリジウムは表を整えるために0.3g単位に変換

プロフェッショナルギアの価格改定は、原材料費の高騰からも理解はできるのですが、、、。


21Kのペン先の魅力

プロフェッショナルギアの最大の特徴は、21金のペン先です。セーラー万年筆は1969年以来、50年以上にわたり21金のペン先の開発と製造にこだわり続けている、世界で唯一の21金のペン先を使用する万年筆メーカーです。

高い加工技術とコストの影響が受けいやすい21金のペン先をこの先も提供していってもらいたいと思います。

「プロフェッショナルギア 金」の21金のペン先は、ゴールドとロジウムのバイカラーが美しく、高級感のある仕上がりです。2021年1月製造分から、ペン先の刻印が新しいロゴに変更となり、従来の「1911」の刻印もなくなりました。

プロフェッショナルギア 金 中字のペン先

ペン先の刻印の21Kの下にある875は、「21金」の金の含有量である87.5%を示しています。


万年筆の金ペンのK表記について

万年筆の金ペンには、14K、18K、21Kなどの記載がありますが、これは金の含有率を表しています。金の純度はカラット(K)という単位で表され、24分率という特殊な基準が使われています。

具体的には、以下のように換算できます。

  • 24K = 24/24 = 100%
  • 21K = 21/24 = 87.5%
  • 14K = 14/24 = 58.3%

数字が大きくなるほど金の含有率が高くなり、より柔らかい書き心地になる傾向があります。

下記は、一般的な万年筆のペン先の金の含有率による違いです。

  • 14K:比較的硬めの書き心地で、耐久性に優れている
  • 18K:14Kと21Kの中間の硬さで、滑らかな書き心地と耐久性のバランスが取れている
  • 21K:柔らかい書き心地で、筆記時の負担が少なく、滑らかなインクフローを楽しめる

セーラー万年筆の21Kと14Kの違いについては下記の説明がありました。

【図】セーラー万年筆:21金ペン先の特徴

セーラー万年筆の21Kペン先は、しなやかな弾力と安定性を両立するように設計されています。適度な柔らかさによって、軽いタッチで線の強弱やインクの濃淡を表現することができます。また、ペン先の開きを抑えることで、インクフローの安定性を実現しています。


短軸の利点?

プロフェッショナルギアは、他の万年筆と比べて同軸が少し短く、全長129mmです。短軸のメリットは、携帯性の良さです。シャツの胸ポケットにも収まる長さで、持ち運びに便利です。

軸長140mmのパイロット カスタムヘリテイジ912と比較した写真がこちらです。

パイロット カスタムヘリテイジ912とセーラー万年筆 プロフェッショナルギアの長さの違い

キャップを外して書くと、掌に収まる長さで「短っ!」と感じますが、尻部にキャップを装着すると全長149mmとなり、筆記に適した長さになります。

パイロット カスタムヘリテイジ912とセーラー万年筆 プロフェッショナルギアの尻部にキャップを装着したときの長さの比較

また、重心のバランスもキャップを尾部にはめた方が良いです。


プロフェッショナルギア 中字の書き味

プロフェッショナルギアの中字は、インクフローが非常に良好で、筆圧をかけずに速く書いても線がかすれたり、インクが出ないといったことがありません。軽いタッチで素早く長い線を描いても、安定したインク供給が行われていることがよくわかります。

プロフェッショナルギア 金 中字で長い線を書く

インクフローが良いといっても、パイロット カスタムヘリテイジ 912 ソフトミディアムと比べるとインク量は少なく、中字でも細い線もきれいに書けます。そのため、日本語(漢字)を書くのに適した中字の万年筆と言えます。

中字なので細い線が美しいプロフェッショナルギア

フェザータッチと呼ばれているので、21Kはもっと柔らかいだろうというイメージがありましたが、実際に書いてみると、紙へのペン先のタッチは「カスタムヘリテイジ912 SM」の方が柔らかいと感じました。これはインク供給量にも起因していると思いますが、プロフェッショナルギア中字の書き心地をオノマトペで表すと「さらさら」です。「ぬらぬら」とした書き心地を求めるなら「カスタムヘリテイジ912 SM」です。


ペン先の大きさ

下の写真は、パイロット カスタムヘリテイジ912 SMとの比較です。「大判」という表示から、もっと大きいイメージを持っていましたが、ペン先の大きさはパイロットの10号のペン先とほぼ同じです。

パイロット カスタムヘリテイジ912とセーラー万年筆 プロフェッショナルギアのペン先比較

違うメーカーで、ペン先のタイプも中字と軟中字の比較となりますが、前述した通り書き心地が違うので、使う人の好みとなってしまいます。

万年筆 ペン先 筆感 書き心地
Professional Gear Medium
21K
さらさら 硬すぎず柔らかすぎない絶妙なバランス
Custom Heritage 912 Soft Medium
14K
ぬらぬら 筆圧によって線の太さを変化させることができ、繊細な表現が可能

21Kはインク供給量が多くなくても途切れがないという点を考慮すると、ジャーナリングのように速く書き続けるための万年筆であれば、プロフェッショナルギアの方が向いていると考えられます。


プロフェッショナルギアのデメリット

最大のデメリットは価格です。

販売価格は、33,000円(税込)です。Amazonや楽天で安価に購入できる場合もありますが、最初の1本としては、選びづらい価格帯と言えるでしょう。

もう一つのデメリットは、デザイン性の選択肢が少ないことです。

飽きのこないシンプルなデザインで、ボディカラーはブラックのみ、装飾部は金か銀を選択できます。年齢、性別を問わず、長く使える落ち着いたデザインとカラーですが、選択肢が少ないと感じられる方もいるかもしれません。インペリアブラックというカラーも存在しますが、価格はさらに高くなります。


プロフェッショナルギアは買うべき一本か?

LAMY SafariやMD万年筆も書き心地は良いと感じていましたが、14金 軟調中字や21金の中字を使ってみると、素人でもわかる歴然たる差があります。特に、万年筆らしい字が書ける中字のペン先は、価格によって差が大きく出ます。

プロフェッショナルギアの中字は、滑らかで柔らかい書き心地と、鮮明なインクフローを実現し、細かい字も美しく書ける万能的な万年筆です。

プロフェッショナルギア 中字を使えば、道具にふさわしい美しい字を書きたいという気持ちが自然と湧いてきます。

価格はそれなりにしますが、

  • 次の万年筆が欲しくなる
  • 書きづらいから使うのをやめてしまう

といったことを考えると、初めての万年筆としてもオススメできます。

万年筆選びに迷っているなら、「プロフェッショナルギア 中字」を検討してみてはいかがでしょうか。滑らかな書き心地と鮮明なインクフローが生み出す至極の筆記体験は、あなたの日々をより豊かに彩り、文字を書く喜びを与えてくれることでしょう。