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2024年9月18日

初心者の太字万年筆の選び方!カスタム67 Bの実力は?

PILOT CUSTOM 67 <B>

太字の万年筆を使ってみたいけど、普段使いになるのか分からないし、、。そんな風に悩んだことはありませんか?太字は、文字に力強さと個性を与え、手書きの楽しさをさらに深めてくれる存在です。

「中古の万年筆なら気軽に試せるかも!」と思い、カスタム67 Bを中古で購入。

1985年発売のパイロットカスタム67は、同社の67周年記念モデルとして登場した、14金5号の万年筆です。カスタム74の前身モデルとしても知られています。67には太字の字幅もあり、太字を日常的に使う機会は多くないけど、金ペンならではの太字の書き味を味わいたい方にオススメです。

カスタム74よりもシンプルなデザインのカスタム67は、飽きのこない美しさで長く愛用できそうです。定番モデルのため中古市場でも比較的多く流通しており、状態の良いものが安価で入手できるのも魅力です。


Custom 67のペン先(ニブ)

5号サイズのペン先は、10号サイズのCustom Heritage 912のペン先と比べるとコンパクトです。ペン先には、PILOT 14K585 5 Bと刻印されています。

Custom67 Nib 14K 585 5 B
  • 14K:14金
  • 585:金の含有率 58.5%
  • 5:5号サイズのペン先
  • B:字幅 Bold(太字)

横からみるとボールドなので四角い大きなペンポイントが目立ちます。

Custom67 Nib(横から)

こちらは裏側になります。

Custom67 Nib(裏側)

デザイン

カスタム67は細身のボディで、万年筆初心者にも握りやすい太さです。カスタム74と同様に樹脂製のバランス型ですが、経年劣化のせいか、74に比べてややプラスチック感があります。

Custom67

キャップのリングは、カスタム74の太いリングとは対照的に、細いリングが2本です。キャップの縁に「CUSTOM 67 JAPAN」が控えめに刻まれています。

Custom67 キャップ

クリップの丸い玉はカスタム74と同じデザインですが、キャップと軸の両端のリングがより細く、全体として質素な印象を与えます。

Custom67 尻軸


コンバーターも使える

初期型のカスタム67の尻軸には、バランサー(オモリ)が入っているので、コンバーターのCON-70が入らないとありますが、入手したカスタム67は初期モデルではないのでCON-70が装着できました。

パイロット コンバーター CON-70

Custom 67の書き心地

14K 5号サイズのペン先はコンパクトですが、太字のペン先はインクフローが多く、筆圧をかけずに滑らかに書けます。気持ちよく太い文字が書けるペン先です。

しかし、字幅が太ければ柔らかいというわけではないといいうことが実感できました。

ペン先に力を入れると"しなり"はあります。

Custom67 ペン先のしなり

しかし、金ペンや軟調ペンの書き味に慣れてしまっということもありますが、書き味は滑らかですが、決して柔らかくはありません。どちらかといえば、硬く筆圧をかけても書きやすい万年筆に仕上がっています。

カスタム74試筆台で試した<B:太字>と比べてもあまり変わらない気がします、、。


パイロットのペン先はいつから硬化したのか?

100年の歴史 | パイロット100周年記念サイト - PILOT には、1972年に発売された「カスタム」シリーズでは「現代の日本人にあった、日本の文字のための万年筆」と謳われています。

もう少し前に遡っても、硬化の兆しが見られます。1968年に発売された「エリートS」は、Yシャツのポケットに収まるショートサイズの万年筆でしたが、このサラリーマンをターゲットとした万年筆が、携帯性と実用性を兼ね備えたペン先の硬化の始まりだったのではないかと思われます。

「エリートS」は復刻版として「エリート95S」として、現在も発売されています。

1960年代から1970年代にかけての0.5mmのシャープペンシル、そしてボールペンの普及に伴って筆圧をかけて書くことが一般的になってきました。万年筆もまた、硬めのペン先にすることで、耐久性を高め、ボールペンやシャープペンシルに慣れたユーザーにとっても使いやすいように日常の筆記用具として進化してきたのではないでしょうか。

そして、実用的な万年筆が硬化する中で、柔らかい万年筆の書き味を求める声に応えたのが、軟調ペン先なのではないかと思います。


14K 5号の太字は必要か?

いまのところ日常的にはあまり多く太字の出番を考えられません。しかし、太字は、より万年筆らしいアーティスティックな文字を表現できます。手紙や葉書を書いたり、一筆箋などを書く方は太字が重宝するかもしれません。

Bold(太字)は、Fine(細字)やMedium(中字)と比べて利用が限定されますが、手書きの幅を広げられる可能性を秘めているので、14K 5号の太字もあっても損はしないと思います。

中古の万年筆にはあたりハズレがありますし、ニブの形状が異なりしなやかと言われている初期モデルでなければ、カスタム74でも同じです。

また同価格帯のプロギアスリム、#3776センチュリーでもいいかもしれません。

しかし、太字を主力として考えるのであれば、14K 5号のペン先では、書き味に物足りさを感じるようになるかと思います。

サイズが大きいペン先は、筆圧に対して多少の弾力性を感じやすく、滑らかな書き心地が得られることが多いので、パイロットであれば10号や15号サイズ。21Kのプロフィット/プロフェッショナルギアの太字をおススメします。

2024年9月15日

名前で勘違い、マグナム ソフトタッチはスチール軟調ペン?

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

柔らかく滑らかな書き心地と、万年筆らしい味わい深い表現力に魅せられ、軟調ペン先の万年筆を愛用するようになりました。

軟調ペンとは、強い筆圧でも書きやすい硬めのペン先と異なり、ペン先に弾力性があり、筆圧をかけるとしなる特徴を持つ万年筆のことを指します。これは金の特性を活かしたペン先で、金ペンの本来の書き味です。

しかし、スチールペン先は、金ペン先と比べると硬く、曲がりにくいので、スチールペン先で軟調ペンというのはありません

「それなら、金ペンの軟調ペンにしよう!」と決断できるお財布の余裕があればいいのですが、金ペンはそれなりの値段がするので、最初の万年筆として勧めるのを躊躇してしまいます。

柔らかい書き味が楽しめる手頃な価格帯のスチールペンがあればよいのに。。。

そんな時に、ソフトタッチ半額セール(1,650円)という魅惑的なキーワードに惹かれ、「ディプロマット マグナム ソフトタッチ」を衝動的にポチってしまいました。

「ソフトタッチ」という響きから、Soft Nib(ソフトニブ:軟調ペン)を連想し、「紙へのタッチがソフトなスチールペン先!」と、勝手に期待を膨らませていました。


ディプロマット マグナム のソフトタッチとは?

ディプロマット(DIPLOMAT)マグナム ソフトタッチは、ドイツの老舗筆記具メーカーのエントリーモデルの万年筆です。ディプロマット マグナムには下記の2種類あります。

  • ディプロマット マグナム
  • ディプロマット マグナム ソフトタッチ

実は、マグナム ソフトタッチとは、ペン先の紙へのタッチがソフトというわけではなく、ボディが「ソフトタッチ仕上げ(マット仕上げ)」になっていて、手にフィットしやすいことでした、、、。

マグナムとマグナム ソフトタッチは、機能やインクフロー、書き心地は基本的に同じです。

確かに通常のマグナムは滑らかな光沢のあるボディです。

DIPLOMAT MAGNUM

そしてこちらが、ディプロマット マグナム ソフトタッチです。カラーバリエーションは、ブラックブルーレッドグレーホワイトの5種類です。

DIPLOMAT MAGNUM Soft Touch

完全なる勘違い、、、、。


書いてみて気がついた驚愕の事実

ディプロマット マグナム ソフトタッチには、F(細字)とM(中字)があります。金ペンを使うようになってからスチールペンの中字を手にしなくなり、気に入っていたMD万年筆も使わなくなってしまったので、細字にしました。

ニブは、こんな感じです。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch NIb <F>

ディプロマットのホームページを見ると、マグナムの商品ページにも手作業で作りあげられているとの記載があります。

革新と伝統的な職人技

すべての製造プロセスは手作業です。ディプロマットの筆記具にインスピレーションを感じ、驚きを体験してください。すべての人に書くこと、描くことの素晴らしい体験を提供します。

【引用】Magnum - Diplomat

またホームページに人間工学に基づいたグリップゾーンによって1年生の子供でも使いやすい万年筆だとありますが、グリップ部分は中指にペンを乗せて親指と人差し指で支えやすいような構造になっています。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

にしても、小学一年生から万年筆を使うとは、流石、万年筆の聖地、ドイツです。

LAMMY Safariとは違い、このガイダンスとなる部分の角度がキツくないので、力を入れずに軽くペンを支えるように持てます。軽く握れるので筆圧をかけずに書くことができます。

ディプロマット マグナムのF(細字)は太めの細字で、細めのLAMMY SafariのM(中字)と同じぐらいの字幅です。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch <F>とLAMMY Safari <M>

細からず、太からず、ちょうどいい感じで、書き味も滑らかです。

「あれ、これとっても書きやすいかも」

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch <F>

スチールニブは基本的に硬い書き味ですが、ディプロマット マグナムのニブは比較的滑らかなスラスラとした書き味です。軟調というほどの弾力性はありませんが、僅かながら弾力を感じます。また筆圧をかけなくてもスムーズにインクが流れるので、軽い筆圧で滑らかに書けます。

これは、『調』の称号を与えてもいいかもしれません。

こちらはペン先の裏側ですが、ペン芯からペン先(ニブ)が大きく出ています。ニブを支えている部分が少ないためにスチールペン先でも柔軟性を出せるのかもしれません。

ディプロマット マグナム ソフトタッチのペン先を裏から見た図

ディプロマット マグナム というスチール軟調ペン

ディプロマット マグナム ソフトタッチは、スチールペンでありながら、驚くほど滑らかな書き味とコスパの良さが魅力の万年筆です。軟調ペンを求めているけど、高価な金ペンはちょっと…という方におすすめです。

勿論、ゴールドニブ(金ペン)の軟調ペンと比べてしまうと歴然たる差はありますが、万年筆ならでは書き心地を感じられるコスパの高いスチール軟調ペンです。

インクカートリッジは、欧州規格なので色々なものを使えます。またディプロマット専用のコンバーターもあります。

マグナム ソフトタッチは、写真だと洗練されたモダンな印象ですが、実物はもっとチープな感じです。しかし、このシンプルなデザインとチープな質感には、背伸びをしない謙虚さと堅実さ、そしてテクノポップを感じます。この万年筆であれば、カバンに気軽に放り込み、日常的に使えます。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

何よりも、チープな外見からは想像できない、この書き心地を選ぶ価値があると思います。AmazonではF(細字)は、ホワイトブラックブルーが楽天より安価で購入可能です。

是非、ディプロマット マグナム ソフトタッチで調を堪能してください!

2024年9月1日

定番の逸品、#3776センチュリーSF(細軟)で味わう軟調ペン先の世界

Platinum #3776 Century SF

軟調ペン先の魅力に惹かれ、店舗に設置されていた#3776試筆台でSF(細軟)を試し書きしてみたら、突然の物欲の神様の降臨。定番万年筆は個体差がほとんどないので安価に買えるネットでも安心です。 #3776 センチュリー ロジウム ブラックダイヤモンド 細軟(SF:Soft Fine) をポチり。


軟調ペンとは?

軟調ペン先(ソフトニブ)は、通常のペン先よりも薄めに作られ、ペン先の形状や材料の配合にも工夫が施されているため、柔軟で弾力のある書き心地を提供してくれます。

軟調ペン先の大きな魅力は、その柔らかさを活かした書き心地と表現力です。筆圧をかけるとペン先が広がり、太い線が書けますが、軽く書くと細い線となるため、抑揚がある字を書くことができます。

現在の日本メーカーの定番万年筆は、ボールペン等で強い筆圧が一般化した日本人に合わせているので、強い筆圧で書いても安定して書けるように、あまりしならずスリットが広がらないように硬めの硬質ペン先(ハードニブ)となっています。

しかし、これは万年筆の良さを失っていることにもなります。

万年筆で書いた文字には味わい深さがありますが、これは筆圧、ペン先の角度、筆記速度などの違いによって生まれる以下の要素によって生じます。

  1. インクの濃淡
  2. 線の太さ
  3. 線の抑揚(強弱)
  4. 筆致の柔らかさ

これは、 ペン先が柔らかく字幅が広い万年筆で筆圧をかけずに書くことで生まれる味わいです。硬いペン先細い字幅の万年筆は、ボールペンのように書けますが、万年筆の良さを半減させてしまいます。

この万年筆の本来のよさを実感させてくれるのが「軟調ペン先」です。


#3776 センチュリー 細軟の独特な書き味

#3776センチュリーSFは、同じ軟調ペン先のPILOTのカスタムヘリテイジ912 SM(中字軟) と比べると、筆圧を加えたときに大きくペン先がしなる(湾曲する)のがよくわかります。

しかし、細字ということもあってか、ペン先が大きくしなってもスリットがそれほど広がらず、字幅が大きく変化することなく安定して書けます。それでも、筆圧をかけないときと、かけたときの字幅の違いによって、文字に抑揚を表現することができます。

下の写真は、「大」の横棒だけ筆圧をかけた例です。

#3776 Century SF の字幅の違い

SF(細軟)のペン先は大きくしなりますが、他のセンチュリーのペン先と同様にやや硬めで、書くときに「カリカリ」とした感触があります。特に細かい字を書く際には「サクサク」と軽快に紙を滑るような感覚の中にしっかりとしたフィードバックがあり、繊細で正確な書き心地を提供します。SF(細軟)のペン先は、大きくしなる一方で、#3776特有のしっかりとしたタッチを感じさせる書き心地です。

この「しなり」と「カリカリ」としたペンタッチが、#3776 SF(細軟)特有の独特の書き心地を生み出しています。この大きくしなるペン先では、筆圧をかけ続ける書き方では書きづらいので、筆圧をかけない書き方が求められます。

また、細字の軟調ペン先なので、細く小さな字が書けます。手帳やノートなどに小さな字を書くのに適しています。しかし、ペン先がしなる特性上、速く書くのには不向きです。


#3776 センチュリーのデザイン

#3776センチュリーは、プラチナ万年筆が誇るフラッグシップモデルであり、シンプルでありながらもエレガントなシルエットを持ち、無駄のない直線的なラインが特徴です。このデザインは、クラシックな美しさと機能性を兼ね備えており、時代を超えて愛される普遍的な魅力を持っています。

微かに透けて見えるボディは美しい光沢を放ちます。

#3776 Century ブラックダイヤモンド

ブラックインブラックとブラックインダイヤモンドで悩みましたが、ロジウムメッキ仕上げ(シルバー)の方が、落ち着いた色合いなので、ロジウムフィニッシュ ブラックダイヤモンドを選びました。

#3776 センチュリーは、ペン先の横の張り出しが広くとられているためペン先が大きく見えます。万年筆はペン先が大きい方がカッコよく見えるので、カスタムヘリテイジも5号ではなく、10号の912にしましたが、カスタムヘリテイジの10号と比べても見栄えがいいです。

(左)Custom Heritage912 (右)#3776 Century 14K

#3776のスリップシール機構

万年筆は暫く使わないでいると、インクが出なくなったり、最悪、万年筆が使えなくなってしまいます。

#3776のキャップに搭載されたスリップシール機構は、キャップを閉めるときに空気を遮断する構造になっており、インクが長期間使用されない場合でも、常に書き出しがスムーズです。この機能は、プラチナが他社との差別化を図るために開発したもので、日常使いの万年筆としての実用性を高めています。


パイロットとプラチナの軟調ペン先どちらをファースト万年筆に選ぶべきか?

万年筆本来の書き方である筆圧をかけない書き方を学び、万年筆らしい文字を書きたいのであれば、パイロットのカスタムシリーズのSM(中字軟)がベストチョイスです。

Custom Heritage 912 SM は、ペン先のしなりは少ないですが、筆圧によって字幅に大きな差が生じるため、表現力に富んだ書き味が楽しめます。ペン先のタッチは柔らかく書き味は「ぬらっ」とした感じです。

中字より細字がというのであれば、#3776センチュリーの細軟という選択もありかと思いますが、前述した通りセンチュリーの細軟は独特の書き味です。万年筆を初めて使う方にはカスタムシリーズが無難な選択肢ですが、筆圧をかけない繊細な書き方を楽しみたい方には、#3776センチュリーSF(細軟)が最適です。

#3776 センチュリー SFを書きやすいと感じるためには、筆圧をかけない書き方が必要です。

再掲となりますが、下記は、生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

万年筆の持ち方については、象と散歩: 万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とはを参照してください。


柔らかいペン先を求めて

柔らかいペン先を求めて日本の三大万年筆メーカーであるパイロットとプラチナの14K軟調ペン先、そしてセーラーの21Kの定番万年筆のコンプリートです。

#3776 CENTURY, Custom Heritage912, Professional Gear

さて、次に物欲の神様が降臨するのは、どの万年筆を手にしたときなのでしょうか、、。軟ペン繋がりで、エラボー、フォルカン、長刀研ぎ、それともB(太字)、若しくは外国ブランド?

いやいや、初心に戻って大人な字の習得が先か、、、、。

2024年7月7日

万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とは

Custom Heritage 912 SM

金ペンの軟調万年筆(Custom Heritage 912 SM)を使うことで、「筆圧をかけずに書く」という感覚を指先で理解できました。ボールペンよりも筆圧をかけていないつもりでしたが、万年筆の正しい書き方を理解できていなかったようです。

「筆圧をかけない書き方」に慣れると、万年筆がいかに優れた『書く道具』であるかを実感できます。また、ペン先が柔らかいと、中字の万年筆でも細めの字も書くことができます。

筆圧をかけずに書くためには、軽くペンを握れる太めのボディと、柔らかいペン先がポイントです。

逆に、万年筆に慣れていなく筆圧をかけて書く人には、グリップが細く、硬いペン先で字幅が細い万年筆が書きやすい万年筆となります。


定番エントリーモデルの14K 軟調万年筆を選ぶ

ファースト万年筆には、定番のエントリーモデルである14K軟調万年筆を選びましょう。

万年筆はもともと筆圧をかけずに書く筆記具でしたが、現代ではシャープペンシルやボールペンに慣れている人が多く、筆圧をかけても書きやすい万年筆が新たな常識となっています。

しかし、万年筆本来の書き味を楽しむためには、筆圧をかけずに書くことを意識することが大切です。初めて万年筆を選ぶ際は、日本メーカーの定番エントリーモデルの中から、14Kの軟調ペン先を採用したものを選ぶのがオススメです。


定番のエントリーモデルから選ぼう!

日本の万年筆メーカーは、日本語の「とめ・はね・はらい」といった漢字の特徴を意識して万年筆を製造しています。定番のエントリーモデルは、長年多くの万年筆ファンに愛されており、ファースト万年筆として間違いのない選択と言えるでしょう。

日本の代表的な万年筆メーカーの定番エントリーモデルの金ペンは以下の通りです。

メーカー製品ペン先価格(税込)
パイロットカスタム 7414K 5号¥17,600
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #377614K 大型¥22,000
セーラー万年筆プロフィット スタンダード14K 中型¥17,600
プロフェッショナルギア スリム

数年前までは、少し背伸びをすれば手が届く価格帯だったエントリーモデルの金ペンですが、度重なる価格改定により、2024年現在では発売時の1.6倍から2倍にまで値上がりしています。それでも、「一生モノ」と考えると、購入する価値は十分にあります。

以下は、2019年以降の価格改定履歴です。人件費、物流費、そして万年筆のペン先の金やイリジウムといった原材料価格の高騰で、仕方がないのかもしれませんが、お財布的には厳しくなりました。

価格改定履歴
Custom74#3776Profit
発売時¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)
2019年¥12,000
(税込 ¥13,200)
¥13,000
(税込 ¥14,300)
¥14,000
(税込 ¥15,400)
2021年¥18,000
(税込 ¥19,600)
2022年¥16,000
(税込 ¥17,600)
2024年¥16,000
(税込 ¥17,600)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
※ 発売年によって税率が異なるので、発売時の価格は税抜価格です

金ペンを使おう!

万年筆のペン先にはステンレスと金がありますが、紙に触れたときの「しなり」が大きく異なります。ステンレス製のペン先は硬いため、たわみを感じられません。

一方、金製のペン先は柔らかく、筆圧に合わせてしなやかにたわむため、滑らかな書き心地が楽しめます。エントリーモデルは14Kですが、金の含有量が多いほどペン先が柔らかくなるため、予算が許せば18Kや21Kの万年筆を選ぶのもオススメです。


軟調ペンという選択

定番のエントリーモデルは、筆圧をかけて書くことに慣れている万年筆初心者でも書きやすいように、ペン先のしなりを少なくし、スリットがあまり広がらないように設計されています。

例えば、パイロット CUSTOMのスペシャルサイトでは、Custom74について以下のように説明されています。

ボールペンの広がりにより、強い筆圧が一般化した日本人に合った書き味を目指したシリーズ。硬いタッチを基本に軟字も用意し、なめらかな書き味を実現。 ペン先は発売当時8種類、6年後の1998年に3種類追加し、現在の11種類に。

【引用】CUSTOMスペシャルサイト

Custom74の前身である、Custom67は、今より「しなり」がある軟らかいペン先だったといいます。時代と共に硬質化しているのは、他メーカーのエントリーモデルの万年筆にも共通する傾向と言えるでしょう。

しかし、金ペン先本来の「しなやかさ」を活かしつつ、筆圧をかけてもインクフローが安定しているだけの万年筆では、万年筆らしさや個性が失われてしまいます。

そこでおすすめしたいのが、ペン先を意図的に柔らかくした「軟調ペン」です。

PILOT Custom Heritage 912 SM(ソフトミディアム)のペン先

軟調ペンは、筆圧によって筆跡に強弱をつけやすく、ボールペンにはない万年筆ならではの感触を味わえます。また、自然と筆圧をかけずに書く習慣が身につくというメリットもあります。

エントリーモデルで軟調ペンをラインナップしているのは、パイロットとプラチナ万年筆です。

メーカー製品軟調ペン先
パイロットカスタム 74SF(細軟)/ SFM(細中軟)/ SM(中軟)
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #3776SF(細軟)

残念ながらセーラー万年筆には軟調ペンがありません。


パイロット Custom 74

パイロットの創業(1918年)から74年目(1992年)に発売されたカスタム 74は、30年以上愛され続けているロングセラーモデルです。

ペン先は11種類あり、軟調ペン先もSF(ソフト・ファイン)、SFM(ソフト・ファインミディアム)、SM(ソフト・ミディアム)の3種類が用意されています。これだけペン先の種類があると迷ってしまいますが、この11種類を全て試すことができるカスタム74試筆台というのが全国各地にあります。近くにあれば是非軟調ペン先の書き味を体験してみてください。

※ C(コース)とMS(ミュージック)は、19,800円(税込)

パイロットでは、ニブサイズ(ペン先の大きさ)を号数で表しています。Custom 74は14K 5号ですが、10号と15号のサイズもラインナップされています。

ニブサイズが大きくなると金の使用量も増えるため、価格も高くなります。

カスタムニブ・サイズ価格(税込)
Custom 7414K 5号¥17,600
Custom 74214K 10号¥26,400
Custom 74314K 15号¥39,600

10号以上のペン先には、SU(スタブ)、FA(フォルカン)、WA(ウェーバリー)といった特殊なペン先もあります。


Custom 74のデザインが好きになれない方へ

カスタム74の特徴である『丸いクリップ』が好きになれませんでした。カスタム ヘリテイジ 91は、同じ14K 5号のペン先ですが、ロジウム仕上げにシルバーのパーツで統一されたシンプルなボディデザインが魅力です。※写真はCustom Heritage 912

Custom Heritage 912 SM

両橋が丸いバランス型のCustom 74に対し、両端が平らなベスト型のHeritage 91は、若干全長が短くなりますが、基本的な仕様は同じです。

比較項目Custom 74Custom Heritage 91
デザインバランス型ベスト型
ペン先14K 5号14K 5号 ロジウム仕上げ
ペン種EF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB
サイズ最大径φ 14.7mm 全長 143mm最大径φ 14.7mm 全長 137mm

カスタム ヘリテイジにもニブサイズが10号のCustom Heritage 912がありますが、15号はありません。

カスタム ヘリテイジニブ・サイズ価格(税込)
Custom Heritage 9114K 5号 ロジウム仕上17,600円
Custom Heritage 91214K 10号 ロジウム仕上26,400円

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー

3776という数字は、日本最高峰である富士山の標高に由来し、「日本最高峰の万年筆」を目指すというプラチナ万年筆の想いが込められているとあります。

#3776 センチュリーの最大の特徴は、大きなペン先と、インクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を搭載したキャップです。この機構のおかげで、年に数回しか使わない場合でも、万年筆をスムーズに使い始めることができるという優れものです。

#3776には軟調ペン先もラインナップされていますが、SF(細字軟)のみとなっています。

#3776 Century 字幅の種類

公式サイトでは「柔らかいペン先 筆圧により少し太い字も書ける」と説明されていますが、写真だけでは細字と細軟の違いが分かりづらいかもしれません。しかし、#3776 センチュリー 試筆台設置店では、全種類のペン先の書き味を試すことができます。


中字?細字?万年筆の字幅選び

手帳やノートに細かい字を書くことが多いなら、細字の万年筆が適しています。しかし、万年筆ならではの個性豊かな字を楽しみたいなら、中字がおすすめです。特に中字の軟調ペンは、筆圧によって字幅に変化が生まれるため、筆圧をかけずに書くことで細めの字を書くことも可能です。

下写真は、Custom Heritage 912 SM(中字軟)で筆圧を入れて書いたとき(上)と筆圧をかけないで書いたとき(下)の線の太さの違いです。同じペン先でこれだけ太さの違いを出せます。

Custom Heritage 912 SM:筆圧による字幅の違い

中字の軟調ペンを使うことで、万年筆の正しい書き方である「筆圧をかけない書き方」をマスターできます。もし太い字幅が好きになれないという場合には、SM(中字軟)より少し字幅の細いSFM(中細字軟)という選択肢もあります。

しかし、万年筆を1本手に入れると、きっともう1本欲しくなるはずです。最初にSM(中字軟)を選んでおけば、2本目にはSF(細軟字)を選ぶことができ、中字と細字の字幅の違いを楽しめます。

また、プラチナ万年筆にはSM(中字軟)がないため、最初にパイロットの中字軟を選び、2本目にプラチナ万年筆のSF(細軟字)を選ぶと、メーカーやデザインの違いも楽しめます。


ファースト万年筆にオススメの一本

ファースト万年筆を選ぶ際に大切なポイントは2つあります。

  1. 万年筆らしい文字が書けること
  2. 筆圧をかけない書き方を習得できること

この2つのポイントを満たすためには、以下の3つの条件を満たす万年筆を選びましょう。

  1. 日本の万年筆メーカーの定番モデル
  2. 金ペン(14K)
  3. 中字の軟調ペン

これらの条件を考慮すると、選択肢として残るのは、パイロットのCustom 74 SM(ソフト・ミディアム)、またはCustom Heritage 91 SM(ソフト・ミディアム)です。どちらにするかは、あなたのデザインの好みで選んでください。


正しい万年筆の持ち方

万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. "中指の横腹"と"親指と人差し指の間"に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. "親指"と"人差し指"で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

万年筆の正しく持てれば、筆圧をかけずに書くというのにも慣れてきます。

14K軟調万年筆で万年筆ライフを楽しんでください!