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Post Date:2024年7月7日 

万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とは

Custom Heritage 912 SM

金ペンの軟調万年筆(Custom Heritage 912 SM)を使うことで、「筆圧をかけずに書く」という感覚を指先で理解できました。ボールペンよりも筆圧をかけていないつもりでしたが、万年筆の正しい書き方を理解できていなかったようです。

「筆圧をかけない書き方」に慣れると、万年筆がいかに優れた『書く道具』であるかを実感できます。また、ペン先が柔らかいと、中字の万年筆でも細めの字も書くことができます。

筆圧をかけずに書くためには、軽くペンを握れる太めのボディと、柔らかいペン先がポイントです。

逆に、万年筆に慣れていなく筆圧をかけて書く人には、グリップが細く、硬いペン先で字幅が細い万年筆が書きやすい万年筆となります。


定番エントリーモデルの14K 軟調万年筆を選ぶ

ファースト万年筆には、定番のエントリーモデルである14K軟調万年筆を選びましょう。

万年筆はもともと筆圧をかけずに書く筆記具でしたが、現代ではシャープペンシルやボールペンに慣れている人が多く、筆圧をかけても書きやすい万年筆が新たな常識となっています。

しかし、万年筆本来の書き味を楽しむためには、筆圧をかけずに書くことを意識することが大切です。初めて万年筆を選ぶ際は、日本メーカーの定番エントリーモデルの中から、14Kの軟調ペン先を採用したものを選ぶのがオススメです。


定番のエントリーモデルから選ぼう!

日本の万年筆メーカーは、日本語の「とめ・はね・はらい」といった漢字の特徴を意識して万年筆を製造しています。定番のエントリーモデルは、長年多くの万年筆ファンに愛されており、ファースト万年筆として間違いのない選択と言えるでしょう。

日本の代表的な万年筆メーカーの定番エントリーモデルの金ペンは以下の通りです(価格は2024年10月1日時点)。

メーカー製品ペン先価格(税込)
パイロットカスタム 7414K 5号¥22,000
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #377614K 大型¥22,000
セーラー万年筆プロフィット スタンダード14K 中型¥17,600
プロフェッショナルギア スリム

数年前までは、少し背伸びをすれば手が届く価格帯だったエントリーモデルの金ペンですが、度重なる価格改定により、2024年現在では発売時の1.6倍から2倍にまで値上がりしています。それでも、「一生モノ」と考えると、購入する価値は十分にあります。

以下は、2019年以降の価格改定履歴です。人件費、物流費、そして万年筆のペン先の金やイリジウムといった原材料価格の高騰で、仕方がないのかもしれませんが、お財布的には厳しくなりました。

価格改定履歴
Custom74#3776Profit
発売時¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)
2019年¥12,000
(税込 ¥13,200)
¥13,000
(税込 ¥14,300)
¥14,000
(税込 ¥15,400)
2021年¥18,000
(税込 ¥19,600)
2022年¥16,000
(税込 ¥17,600)
2024年¥16,000
(税込 ¥17,600)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
※ 発売年によって税率が異なるので、発売時の価格は税抜価格です

金ペンを使おう!

万年筆のペン先にはステンレスと金がありますが、紙に触れたときの「しなり」が大きく異なります。ステンレス製のペン先は硬いため、たわみを感じられません。

一方、金製のペン先は柔らかく、筆圧に合わせてしなやかにたわむため、滑らかな書き心地が楽しめます。エントリーモデルは14Kですが、金の含有量が多いほどペン先が柔らかくなるため、予算が許せば18Kや21Kの万年筆を選ぶのもオススメです。


軟調ペンという選択

定番のエントリーモデルは、筆圧をかけて書くことに慣れている万年筆初心者でも書きやすいように、ペン先のしなりを少なくし、スリットがあまり広がらないように設計されています。

例えば、パイロット CUSTOMのスペシャルサイトでは、Custom74について以下のように説明されています。

ボールペンの広がりにより、強い筆圧が一般化した日本人に合った書き味を目指したシリーズ。硬いタッチを基本に軟字も用意し、なめらかな書き味を実現。 ペン先は発売当時8種類、6年後の1998年に3種類追加し、現在の11種類に。

【引用】CUSTOMスペシャルサイト

Custom74の前身である、Custom67は、今より「しなり」がある軟らかいペン先だったといいます。時代と共に硬質化しているのは、他メーカーのエントリーモデルの万年筆にも共通する傾向と言えるでしょう。

しかし、金ペン先本来の「しなやかさ」を活かしつつ、筆圧をかけてもインクフローが安定しているだけの万年筆では、万年筆らしさや個性が失われてしまいます。

そこでおすすめしたいのが、ペン先を意図的に柔らかくした「軟調ペン」です。

PILOT Custom Heritage 912 SM(ソフトミディアム)のペン先

軟調ペンは、筆圧によって筆跡に強弱をつけやすく、ボールペンにはない万年筆ならではの感触を味わえます。また、自然と筆圧をかけずに書く習慣が身につくというメリットもあります。

エントリーモデルで軟調ペンをラインナップしているのは、パイロットとプラチナ万年筆です。

メーカー製品軟調ペン先
パイロットカスタム 74SF(細軟)/ SFM(細中軟)/ SM(中軟)
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #3776SF(細軟)

残念ながらセーラー万年筆には軟調ペンがありません。


パイロット Custom 74

パイロットの創業(1918年)から74年目(1992年)に発売されたカスタム 74は、30年以上愛され続けているロングセラーモデルです。

ペン先は11種類あり、軟調ペン先もSF(ソフト・ファイン)、SFM(ソフト・ファインミディアム)、SM(ソフト・ミディアム)の3種類が用意されています。これだけペン先の種類があると迷ってしまいますが、この11種類を全て試すことができるカスタム74試筆台というのが全国各地にあります。近くにあれば是非軟調ペン先の書き味を体験してみてください。

※ C(コース)とMS(ミュージック)は、27,500円(税込)

パイロットでは、ニブサイズ(ペン先の大きさ)を号数で表しています。Custom 74は14K 5号ですが、10号と15号のサイズもラインナップされています。

ニブサイズが大きくなると金の使用量も増えるため、価格も高くなります(価格は2024年10月1日時点)。

カスタムニブ・サイズ価格(税込)
Custom 7414K 5号¥22,000
Custom 74214K 10号¥33,000
Custom 74314K 15号¥44,000

10号以上のペン先には、SU(スタブ)、FA(フォルカン)、WA(ウェーバリー)といった特殊なペン先もあります。


Custom 74のデザインが好きになれない方へ

カスタム74の特徴である『丸いクリップ』が好きになれませんでした。カスタム ヘリテイジ 91は、同じ14K 5号のペン先ですが、ロジウム仕上げにシルバーのパーツで統一されたシンプルなボディデザインが魅力です。※写真はCustom Heritage 912

Custom Heritage 912 SM

両橋が丸いバランス型のCustom 74に対し、両端が平らなベスト型のHeritage 91は、若干全長が短くなりますが、基本的な仕様は同じです。

比較項目Custom 74Custom Heritage 91
デザインバランス型ベスト型
ペン先14K 5号14K 5号 ロジウム仕上げ
ペン種EF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB
サイズ最大径φ 14.7mm 全長 143mm最大径φ 14.7mm 全長 137mm

カスタム ヘリテイジにもニブサイズが10号のCustom Heritage 912がありますが、15号はありません(価格は2024年10月1日時点)。

カスタム ヘリテイジニブ・サイズ価格(税込)
Custom Heritage 9114K 5号 ロジウム仕上22,000円
Custom Heritage 91214K 10号 ロジウム仕上33,000円

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー

3776という数字は、日本最高峰である富士山の標高に由来し、「日本最高峰の万年筆」を目指すというプラチナ万年筆の想いが込められているとあります。

#3776 センチュリーの最大の特徴は、大きなペン先と、インクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を搭載したキャップです。この機構のおかげで、年に数回しか使わない場合でも、万年筆をスムーズに使い始めることができるという優れものです。

#3776には軟調ペン先もラインナップされていますが、SF(細字軟)のみとなっています。

#3776 Century 字幅の種類

公式サイトでは「柔らかいペン先 筆圧により少し太い字も書ける」と説明されていますが、写真だけでは細字と細軟の違いが分かりづらいかもしれません。しかし、#3776 センチュリー 試筆台設置店では、全種類のペン先の書き味を試すことができます。


中字?細字?万年筆の字幅選び

手帳やノートに細かい字を書くことが多いなら、細字の万年筆が適しています。しかし、万年筆ならではの個性豊かな字を楽しみたいなら、中字がおすすめです。特に中字の軟調ペンは、筆圧によって字幅に変化が生まれるため、筆圧をかけずに書くことで細めの字を書くことも可能です。

下写真は、Custom Heritage 912 SM(中字軟)で筆圧を入れて書いたとき(上)と筆圧をかけないで書いたとき(下)の線の太さの違いです。同じペン先でこれだけ太さの違いを出せます。

Custom Heritage 912 SM:筆圧による字幅の違い

中字の軟調ペンを使うことで、万年筆の正しい書き方である「筆圧をかけない書き方」をマスターできます。もし太い字幅が好きになれないという場合には、SM(中字軟)より少し字幅の細いSFM(中細字軟)という選択肢もあります。

しかし、万年筆を1本手に入れると、きっともう1本欲しくなるはずです。最初にSM(中字軟)を選んでおけば、2本目にはSF(細軟字)を選ぶことができ、中字と細字の字幅の違いを楽しめます。

また、プラチナ万年筆にはSM(中字軟)がないため、最初にパイロットの中字軟を選び、2本目にプラチナ万年筆のSF(細軟字)を選ぶと、メーカーやデザインの違いも楽しめます。


ファースト万年筆にオススメの一本

ファースト万年筆を選ぶ際に大切なポイントは2つあります。

  1. 万年筆らしい文字が書けること
  2. 筆圧をかけない書き方を習得できること

この2つのポイントを満たすためには、以下の3つの条件を満たす万年筆を選びましょう。

  1. 日本の万年筆メーカーの定番モデル
  2. 金ペン(14K)
  3. 中字の軟調ペン

これらの条件を考慮すると、選択肢として残るのは、パイロットのCustom 74 SM(ソフト・ミディアム)、またはCustom Heritage 91 SM(ソフト・ミディアム)です。どちらにするかは、あなたのデザインの好みで選んでください。


正しい万年筆の持ち方

万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. "中指の横腹"と"親指と人差し指の間"に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. "親指"と"人差し指"で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

万年筆の正しく持てれば、筆圧をかけずに書くというのにも慣れてきます。

14K軟調万年筆で万年筆ライフを楽しんでください!

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