2020年3月、米国の探査衛星「ネオワイズ」が発見したネオワイズ彗星。次回地球に接近するのは5,000年先という壮大なロマンです。7月中旬から夕方から夜にかけて観測できるとありました。
事前の情報では肉眼でも見える3−4等星程度の明るさとあります。
国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編 に明るさによる星の数の違いというのがあります。肉眼では1等星から6等星まで確認できるとあります。しかし、東京では3等星でかなり見えづらくなります。
具体的に確認できる3等星は、北斗七星の中で確認できます。”おおくま座” の一部である北斗七星は6つが2等星で、1つが3等星です。
夜空を見上げてみると、北斗七星のメグレズは目を凝らして辛うじて見えます。やっぱり東京では3等星が限界のようです。
残念ながら雨が続き観測のチャンスがなかなか来なかったのですが、束の間の晴れ間を縫って天体双眼鏡を持って出かけてみました。
暫く肉眼で北西の空を眺めていましたが、心待ちしていた尾を引く”ほうき星”はどこにも見当たりません、、、、。
そこで天体双眼鏡を使ってみると尾を引く星がクッキリと見えました。
「ありがとう、天体双眼鏡!」
追記:
あとで知りましたが、彗星の場合は同じ等級の星より暗く感じるという記載を見つけました。
彗星の等級は、同じ等級の星と比較したときに、ぼんやり見える部分すべてを含めた光量が等しくなるという意味で、同じ見え方であるということではありません。一般的に彗星の場合は、同じ等級の星より暗く感じられます。
双眼鏡で天体観測
ネオワイズ彗星で活躍してくれた Vixen REGALO 7x50 ですが、以前、知人から双眼鏡なら気軽に天体観測ができるから「Vixen(ビクセン)の7x50ぐらいを探してみたら」というアドバイスで購入したものです。Amazonで確認すると2013年3月に購入していました。
購入してから7年が経っていますが、いまだに何の不都合もなく使えています。
7x50を選択する理由
7x50というのは、倍率が7倍で口径が50mmという双眼鏡です。ネオワイズ彗星を見るときに他の双眼鏡と比べてみて実感できましたが、天体観測に使う双眼鏡では、倍率よりも明るさが重要となります。この明るさの指標となる ひとみ径 は下記の式で求まります。
ひとみ径を2乗した数値が"明るさ"です。
7x50の双眼鏡は、上記の計算式から、ひとみ径は、7.1mmで、明るさは、50.4 となります。
明るいところから急に暗いところに入って目が見えなくなった経験はありませんか?徐々に目が慣れてくると見えてきますが、これは瞳孔が開いてより多くの光を取り込めるようになるからです。人の瞳孔は、明るいときには2mmまで閉まり、暗いときには7mm程度まで開いて取り込む明かり量を調整しています。
真っ暗な場所で最大7mmまで瞳孔が開いているとすると、それよりもひとみ径 が小さい双眼鏡で見たときには像が暗くなってしまいます。つまり、ひとみ径 が暗いときの人の瞳孔と同じ7mmが天体観測で最も効率的に明かるさを取り込めるということです。この ひとみ径 7mmから逆算した、「倍率が7倍で、レンズ口径が50mm」 の双眼鏡が暗い場所での天体観測に向いていると言われている所以です。
お勧めの天体双眼鏡
ひとみ径 と共に双眼鏡の性能を決めるレンズも大切です。ガラス硝材の一種で高い屈折率が特徴の Bak4(Bak4>Bak7)が採用されていてるものを、また光の透過率を上げ視野を明るくするためのレンズ加工のコーティングは、単層コーティング(マゼンタコート)よりも多重層コーティング(マルチコート)の方が優れて(PFMコート>マルチコート>マゼンタコート)いますので、
- Bak4
- マルチコート
と記載がある双眼鏡を選びましょう。
あと気にする点としては、実視界とアイレリーフです。実視界は、双眼鏡を動かさずに見ることができる範囲で角度が広い方が見える範囲が広いということになります。アイレリーフは双眼鏡からどの程度レンズから目を離せるかの距離で、眼鏡をしている場合には、15mm以上が必要とあります。
また三脚が付けられるかも大切です。7倍の双眼鏡でも手振れがあり、月のクレーターなどを観測するときも三脚で固定した方がじっくりと観測できます。
今回、オススメする天体双眼鏡は上記の条件を満たしており、天体望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡などを光学製品を専門として実売価格で2万円以下(2020.07時点)で購入できる Vixen(ビクセン)、Kenko Tokina(ケンコー・トキナー)、MIZAR(ミザール)から選びました。しっかりとしたものを購入すれば長く楽します。
会社 | Vixen | Kenko Tokina | MIZAR |
製品名 | ASCOT ZR 7x50WP | Artos 7×50 | BK7050 |
倍率 | 7倍 | 7倍 | 7倍 |
レンズ有効径 | 50mm | 50mm | 50mm |
プリズム材質 | Bak4 | Bak4 | Bak4 |
コーティング | PFMコート | マルチコート | マルチコート |
実視界 | 6.4° | 6.5° | 5.7° |
アイレリーフ | 17mm | 18.1mm | 20mm |
重量 | 1,015g | 880g | 840g |
防水 | ◯ | ◯ | ー |
三脚装着 | 可 | 可 | 可 |
実売価格 | 17,375 | 13,757 | 7,523 |
Vixen ASCOT ZR 7x50WP
ビクセンは、1949年創業で天体望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡などを製造・販売している会社です。会社のビジョンは、「星を見せる会社」になることとあり、星空観望会を始めとする「星を見せるイベント」なども熱心に開催しています。また女性にもっと天文を楽しんでもらえるよう、2009年に ”宙(そら)ガール” として手軽に楽しめる天体双眼鏡(8x21)セットを販売していました。
アスコット ZRx50WPは、紹介する天体双眼鏡の中では最も高価ですが、天体双眼鏡でVixenを外す訳にはいきません。防水設計もされており、野外での夜露や急な雨などでも安心して利用できます。
Kenko Artos 7x50
ケンコー・トキナーは、1957年創業です。ホームページでは、2020年7月 姿を現したネオワイズ彗星! | ケンコー・トキナー と、ネオワイズ彗星の情報など、天文に関する情報を提供してくれているので時々訪れています。アートス 7x50 は防水加工もされており、十分な性能です。
また安価な入門用のミラージュ 7x50 がありますが、こちらはプリズム材質がBak4でない、コーティングも単層コート(マゼンタコート)と性能的には若干見劣りします。
MIZAR BK7050
ミザールテックは、1952年創業で、1957年から「安価で誰でも楽しめる望遠鏡を作ろう」と望遠鏡、顕微鏡の製造・販売を始めたとあります。BK7050は防水加工でないということから定価も実売価格も安価です。防水でない双眼鏡を使っていますが、野外でも濡れないように気を付けていれば通常の使い方では問題ありません。プリズムはBak4、マルチコーティングも施されています。ただ実視界についてAmazonの製品紹介では、6.4°とありますが、ホームページ上は5.7°となっていたのでこちらの数値を掲載しました。5.7°だとするとVixen、Kenkoの双眼鏡と比べて若干視野が狭く感じるハズです。
天体双眼鏡も三脚を使うと簡単
都内からでも簡単に天体観測を楽しめるお月様ですが、色々な姿を見せてくれるので飽きずに楽しめますが、月を楽しむのであれば、
- 三日月
- 半月
のときがお勧めです。
三日月で地球の淡い灯りを感じる
月は太陽の光を反射しているので明るく見えるのですが、三日月をよくみると太陽に照らされていない部分も見えます。これは地球照といって太陽の光を地球が反射して月を照らしている部分です。
地球照(ちきゅうしょう、英語:earthshine)とは、月の欠けて暗くなっている部分が、地球に照らされて、うっすらと見える現象である。
【引用】地球照 - Wikipedia
地球に照らされた月も天体双眼鏡で眺めると趣があります。
半月でクレーターを堪能する
クレータがハッキリと見えるのは半月のときです。7x50の天体双眼鏡でも月がこんなにもボコボコしているのだと感動します。(下写真は望遠鏡の映像)
ただ、7倍の双眼鏡でも手に持って観測していると手振れでしっかりとは見えません。
双眼鏡にビノホルダーを取り付ければ、三脚が使用できるようになります。
双眼鏡にビノホルダーを取り付けるネジ穴は統一企画なので、各社のビノホルダーを取り付けることができます。
三脚より一脚が便利
三脚はしっかりと双眼鏡を固定してくれるので月などを固定してみるには向いていますが、あちらこちらと夜空を探索するのは不便です。自立はしませんが、一脚でも手振れ防止にはなりますし、組み立ても片付けもススっと脚を伸ばすだけで超簡単です。
こちらは、一脚としても小型三脚としても使えます。
星座早見版
色々なアプリもありますが、やっぱりアナログに原点回帰です。紙製だとすぐにボロボロになってしまいますが、こちらの星座早見版は樹脂製です。また蛍光なので薄暗い中でも確認しやすくなっています。
星座版の日付と時間を合わせますが、星座版は緯度経度東経135度の子午線を基点として作成されていて、場所でいうと兵庫県明石市になります。住んでいる地域の緯度によっては星座版と実際に見える星の位置が異なるので調整が必要です。版には東京や福岡といった記載がありますが、東京であれば東経140度なので、子午線と5度ずれているので5日戻します。また福岡であれば東経130度なので5日先に進めます。
天体双眼鏡で夜空に輝く過去の光を眺めるのは格別な時間の過ごし方です。星座の星々が確認できたら、星座についてのギリシャ神話を調べていくのもまた一興です。
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