空間鋳造の鉄瓶 Egg 大は、アナログな時間を感じさせてくれるお気に入りの一品です。鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかで、抹茶や緑茶だけではなく、珈琲との相性も抜群です。
空間鋳造の鉄瓶
空間鋳造は、南部鉄器の産地、岩手県の水沢で鉄瓶を製作しています。
同じ鉄瓶でも盛岡では、細工を施すことができる「焼き型」を用い、生活道具を多く作っている水沢では、量産が可能な砂で作られた「生型」を鋳型とする製法が多いそうです。空間鋳造も生型を使った製法とあります。
空間鋳造代表 岩清水 久生氏の南部鉄器へのこだわりは下記の映像をご覧ください。
空間鋳造の鉄瓶は、まさに機能美の追求といった感じです。素材の鉄そのものの質感を活かした、普段使いにはぴったりなシンプルなデザインです。
値段はそれなりにしますが、長く大切に使うことを考えれば決して買って損はない逸品です。ただIHには対応していません。IH対応の鉄瓶が必要であれば、後述するOIGEN(及源鋳造)の鉄瓶などもいい感じです。
鉄瓶を育てる
鉄瓶は古くから日本で使われてきたものですから決して取り扱いが難しいわけではありません。
錆についても南部鉄器であれば、「金気止め(かなきどめ)」「釜焼き」という伝統的技法があります。「金気止め・釜焼き」とは、鋳型から取り出した仕上げ前の鉄瓶を 800 - 1000度で真っ赤になるまでじっくりと蒸らし焼きをすることです。これによって鉄瓶の内部に黒さび(酸化被膜)ができ、錆を防ぐ働きをします。
鉄瓶の使用上の注意としては、
- 毎日使う
- 湯沸かし後、鉄瓶が熱いうちにお湯を空ける
- 洗わない(鉄瓶の内側はさわらない)
この3点だけです。
毎日使う
鉄瓶で繰り返しお湯を沸かしていると、「釜焼き」された鉄瓶の内側に「湯垢(ゆあか)」と言われる、水に含まれるカルシウムなどのミネラル成分が徐々に付着して内側が白くなっていきます。この「湯垢」が鉄瓶で沸かしたお湯をまろやかにすると言われています。また「湯垢」は、鉄瓶内側の錆を抑える働きもします。
熱いうちにお湯を空ける
鉄瓶で沸かしたお湯をそのままにして、冷めて水になると錆びてしまいます。お湯を沸かしたら直ぐに使い切るか、ポットなどに移し替えます。蓋を外して鉄瓶の余熱で水分を蒸発させます。鉄瓶の中に水気が残っているようであれば、蓋を外した状態で、目で中の水気がなくなるのを確認しながら空焚きをします(10-20秒ぐらい)。
洗わない
鉄瓶を洗ってしまうと錆を防止するための酸化被膜(黒さび)や湯垢を落としてしまうことになります。錆びさせないためにも美味しいお湯を沸かすためにも決して洗ってはいけません。
鉄瓶で白湯(さゆ)を愉しむ
最近では白湯(さゆ)が美容と健康面から見直されています。鉄瓶で沸かしたお湯は ”まろやか” で、そのまま飲んでも美味しいですし、鉄イオン(2価鉄)が含まれているので、鉄分の補充にもなります。
お茶や珈琲を飲むためだけではなく、デトックスやダイエットのために鉄瓶で沸かしたお湯を白湯として飲むのもおススメです。
白湯(さゆ)の効果
鉄瓶で沸かしたお湯をすこし冷まして50-60℃にした白湯(さゆ)を飲むことで下記の効果があるといわれています。
- 胃腸を温める(冷え性改善)
- 腸内の老廃物を排出(デトックス効果)
- 内臓を温め基礎代謝を向上(ダイエット効果)
- 新陳代謝の促進(便秘改善、美肌効果)
- 鉄イオンの補給(貧血予防)
白湯は朝飲むのが効果的だといわれています。朝起きたら食事の前に白湯を飲んで、身体をゆっくりと目覚めさせて体内バランスを整えましょう。白湯だけだと飲みづらければレモン果汁を少し加えます。
朝白湯のためには、寝る前に鉄瓶で沸かしたお湯をマグボトルに入れておきます。そうすれば、目覚めたときにちょうどよい温度の白湯になっています。
アーユルヴェーダ的 白湯(さゆ)の作り方
インドの伝統的医学であるアーユルヴェーダでは、自然界にある vata:ヴァータ(風)、pitta:ピッタ(火)、kapha:カパ(水)の3つのエネルギーの調和が重んじられています。
そのため ”水” を “火” にかけて、沸騰してから10-15分煮立たせることによって “風” を送り込むことができ、3つのエネルギーのバランスがとれるそうです。
鉄瓶でお湯を沸かす時には蓋を少しずらして隙間をあけると吹きこぼれもなく、アーユルヴェーダ的には、風(空気)も送り込めます。
鉄瓶を選ぶ
鉄瓶と記載があっても内部が琺瑯(ホーロー)加工されているものがあります。これだと見た目だけで鉄瓶の意味がありません。
清水の舞台から飛び降りる気概で空間鋳造の鉄瓶を購入しましたが、南部鉄瓶は、それなりの値段がします。長く使うことを考えて妥協せずにデザイン的にも自分の気に入ったものを選びましょう。
またIHコンロを利用しているのであればIH対応かの確認が必要です。
IH対応 の OIGEN(及川)鉄瓶
鉄瓶を選ぶときの候補のひとつだったのが、OIGEN(及源)の鉄瓶です。及源鋳造も岩手県の水沢にありますが、OIGENは、伝統工芸品である南部鉄器を価格面と技術面でイノベーションしています。
OIGEN 鉄瓶 まろみアラレは、IH対応です。余談ですが、IHコンロでは電気を通す素材であれば使えると思っていたのになぜ鉄でできている鉄瓶でもIHで使えないものがあるのでしょうか、、、。
OIGENでは黒さびを内部に付けるために「金気止め・釜焼き」ではなく、岩手大学と共同開発し、特許出願した「上等焼」によって、安定した酸化皮膜を作っているとあります。鋳物の革新技術「上等焼」を武器に 新規市場を開拓 を読むと、中国の安価製品に対抗するために1万円台の製品の販売を始めたが「鉄瓶が錆びた」という苦情があり、これに対応するためにムラが無くタワシでこすってもはがれない酸化皮膜を開発したと記載されています。
自分がOIGENではなく、空間鋳造の鉄瓶を選んだ理由は、個人的価値観で伝統的製法とデザイン(アラレ文様より無垢の鉄瓶の方がカッコいい)ということを重んじたからにすぎません。
CAPTAIN STAG(キャプテンスタッグ)の鉄瓶
アウトドア用品のキャプテンスタッグからなぜか鉄瓶が販売されている中国製の鉄瓶です。この鉄瓶の魅力は価格だけでした。適正水量は1.0ℓとありますが、重量は2.7Kgとかなり重いです。
キャプテンスタッグのアウトドア用品は使っていますが、しっかりとした製品が多いので、高いお金は出したくないけど、取りあえず鉄瓶を使ってみたいというのであれば選択肢になり得る商品ではないかと思います。
鉄瓶で沸かした湯で点てる抹茶は格別です。是非、お気に入りの鉄瓶を探して鉄瓶生活を愉しんでください。