少し前に「食料自給率が41%に上昇」というニュースが流れていました。しかし、普段口にする食事の6割もが輸入食品で構成されているようには思えません。
食料自給率とはどのように算出されているのでしょうか。
先ずは、専門誌の方が詳細な記事を掲載しているのではないかと、
日本農業新聞 - e農net を閲覧してみました。
食料自給率41%に上昇/相場高騰で輸入減、生産額ベースでは低下
掲載日:09-08-12
農水省は11日、2008年度の食料自給率が、供給熱量(カロリー)ベースで前年から1ポイント上昇し41%となったと発表した。上昇は2年連続で、統計の残る1965年度以降、初めて。国産のサトウキビや大豆が好天に恵まれるなどして生産量が増える一方で、国際相場の高騰からチーズや大豆油などを中心に輸入が減り、国産比率が相対的に上がった。カロリーベースの自給率が41%になるのは97年度以来11年ぶり。
カロリーベースで、自給率計算の「分母」となる国民1人1日当たり供給熱量は2473キロカロリーと前年比78キロカロリー減り、「昭和40年代の水準」(同省食料安全保障課)まで下がった。同課は、国際価格の高騰による輸入量の減少に加え、消費者のダイエット志向や少子高齢化の影響などが要因とみている。
これに対し、「分子」に当たる国産熱量は1012キロカロリーで、減少幅が同4キロカロリーと小幅に抑えられた。この結果、カロリーベースの自給率は40・9%と、前年の39・8%から1・1ポイント上昇した。
品目別では、国産サトウキビの生産量が増えた砂糖類が0・4ポイント、チーズの輸入減を受けた畜産物が0・3ポイント、大豆の輸入減を受けた油脂類が0・2ポイント、それぞれ自給率を押し上げた。逆に、米は、外食での消費減などを受け0・3ポイントのマイナスに働いた。
一方、生産者の手取りにつながる生産額ベースでの自給率は65%となり、前年比べ逆に1ポイント低下。65年度以降、最低となった。作柄の「裏年」に当たったミカンの生産量が減ったことや、リンゴのひょう害による価格下落、国際相場の高騰を受けた畜産飼料の輸入額増などが大きな下げ要因となった。
【引用:日本農業新聞 - e農net】
ここでいう食糧自給率とは、カロリーベースで計算されているようです。記事にあるように一日の摂取カロリー2,473Kcalのうち、国産の食料品で1,012Kcalを摂取、1,012kcal/2,473Kcal=41%で算出されています。しかしカロリーベースだと日本人が食する低カロリーな野菜などは、適正に評価されているのだろうかという疑問が湧きます。また生産額ベースでの自給率は65%とありますが、この違いは何を意味するのでしょうか?
次にデータ提供もとの
農林水産省 の
食糧自給の部屋 をみます。ここに食料自給率の定義についての説明が掲載されていました。
食料自給率とは
(ア)おもさで計算 食料自給率
国内生産量、輸入量など、その食料の重さそのものを用いて計算した自給率の値を「重量ベース自給率」といいます。
(イ)カロリーで計算 食料自給率
食料の重さは、米、野菜、魚、、、どれをとっても重さが異なります。重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロリーを用いて計算した自給率の値を「カロリーベース総合食料自給率」といいます。カロリーベース自給率の場合、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます。日本のカロリーベース総合食料自給率は最新値(平成20年度概算値)で41%です。
(ウ)生産額で計算 食料自給率
カロリーの代わりに、価格を用いて計算した自給率の値を「生産額ベース総合食料自給率」といいます。比較的低カロリーであるものの、健康を維持、増進する上で重要な役割を果たす野菜やくだものなどの生産等がより的確に反映されるという特徴があります 。日本の生産額ベース総合食料自給率は最新値(平成20年度概算値)で65%です。
【引用:農林水産省/食糧自給率とは】
3種類の食料自給率について定義があり、ニュースなどで大きく取り上げられていたのは、(イ)のカロリーベース総合食糧自給率です。(ウ)の生産額ベース総合食料自給率の説明では、野菜やくだものなどの生産等がより的確に反映されるという特徴があります。という記載はありますが、価格の変動による影響を避けるためにカロリーベースを適用しているのでしょうか。
また
農林水産省/食糧自給表 に詳細のデータが記載されています。ここに掲載されている「
平成20年度食料自給率をめぐる事情 」には内訳が記載されています。
黄色で示されているの部分は、国産の飼料で生産される畜産物は17%しかないけど輸入飼料で生産される畜産物を含めると68%になることを表しています。つまりスーパーで購入する国産と記載されたお肉でも、輸入飼料を使用していると国産にはならないということになります。しかし、飼料には安価な輸入物を利用していることは容易に想像できます。
畜産物の自給率を68%で計算すると、
カロリーベースの食糧自給率は49% になります。
食生活の変化によって摂取カロリーの構成比が変化していることを示すために下記のグラフを作成してみました。昭和35年では摂取カロリーの半分は米からでした。それが平成20年には半減しています。代わりに増加したのは、畜産物と油脂類(肉と油)です。小麦については以外にも微増です。
統計データのまやかし 食料自給率41%といわれると何となく危機感を抱きますが、65%だと「まあまあ」かと思います。正しくデータを読まないと本質を見失ってしまいます。そんな一例として食料自給率をとりあげてみました。
農林水産省チャンネル 今回、食糧自給率を調べる中で、YouTubeに公式チャンネル、
農林水産省チャンネル の存在を知りました。ここにある『
Ensuring the Future of Food 』(日本語字幕版は『
食料の未来を確かなものにするために(第1部) 』)は秀逸な作品ですが、食糧自給率40%が強調されています。