発酵器で菌活のすすめ(自家製 甘酒編) | 象と散歩 で、発酵器での甘酒生活のすすめについて書きましたが、今回は、同じ発酵器で作るヨーグルトについてです。そもそも クビンス ヨーグルト&チーズメーカーを購入したのは、自家製ヨーグルトに興味をもったことからでした。
ヨーグルトとは
まずは、ヨーグルトとは何かについてです。ヨーグルトを買ってくると食品表示には「はっ酵乳」と記載されています。はっ酵乳?と思って調べてみると、日本では、ヨーグルトは、厚生労働省の 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 おいて「発酵乳」として位置づけられていいます。
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における発酵乳の規格基準等の見直しについて」 に成分規格がわかりやすくまとめてありましたので引用します。
種類別の表示は発酵乳、成分としては
- 無脂乳固形分 8.0%以上
- 乳酸菌・酵母数 1,000万以上
です。
また、ヨーグルトには国際規格もあり、こちらでは乳酸菌の菌種が、ブルガリア菌及びサーモフィラス菌であると定義されています。
FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)の国際規格では、「ヨーグルト(“Yoghurt”)とは、ブルガリア菌及びサーモフィラス菌の作用により、乳及び乳製品を乳酸発酵して得た凝固乳製品をいう。任意添加物(粉乳・脱脂粉乳・ホエー粉など)の添加は随意だが、最終製品中には、これらの微生物が多量に生存していなければならない」と記されています。
はっ酵乳、発酵乳?
もうひとつ気になったのは、「はっ酵乳」というひらがな交じりの表記です。下記はグリコのおいしいカスピ海の食品表示です。
旧字体では「醗酵」という漢字が使われていたようですが、醗という感じが常用漢字に含まれていないため、現在では、発酵という漢字が一般的に使われています。上述した厚生労働省の 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 でも「発酵」という漢字が使われています。しかし、一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会 では「はっ酵乳」です。おそらく各食品メーカーは、外郭団体の慣例に従っているのではないでしょうか。
豆乳ヨーグルトを楽しもう
プレーンヨーグルトは、スーパーなどで安く手に入るので、普通にヨーグルトを作っていたのではモチベーションが維持できません。ヨーグルトメーカー(発酵器)を購入するのであれば、豆乳ヨーグルトを作りましょう。
牛乳のタンパク質が乳酸菌によって凝固したのがヨーグルトですが、豆乳は ”畑の肉” と呼ばれる大豆の搾り汁なので植物性のタンパク質を多く含んでいます。この植物性タンパク質も酸(乳酸菌)によって凝固するので植物性ヨーグルトとなります。
豆乳は、にがり(塩化マグネシウム)を加えれば豆腐となり、酸(乳酸菌)を加えると豆乳ヨーグルトになるという、和風にも洋風にも合わせてくれる”いなせ”な奴です。
豆乳ヨーグルトは、豆腐っぽくて青臭いとも評されていますが、まろやかなすっぱさで、牛乳で作るヨーグルトよりも美味しいですし、何よりもよりヘルシーです。
豆乳にも含まれる大豆イソフラボンは、抗酸化物質のひとつで、細胞を破壊する活性酸素の働きを抑えてくれるそうです。また女性ホルモン「エストロゲン」と分子構造が似ているため、女性の美容や更年期障害にも効果があるといわれています。
豆乳ヨーグルトには成分無調整豆乳を
販売されている豆乳類は、豆乳類の日本農林規格:農林水産省 (JAS規格)で、豆乳(成分無調整)、調製豆乳、豆乳飲料の3種類に分類されています。簡単にいえば、原材料として大豆以外が使われているかということと、大豆固形分の含有率による区分です。
豆乳 (成分無調整) |
原材料は大豆(大豆豆乳液) 大豆固形分 8%以上 |
調製豆乳 | 大豆豆乳液等に調味料等を加えたもの 大豆固形分 6%以上 |
豆乳飲料 | 調製豆乳にフルーツなどを加えたもの 大豆固形分 2%以上 |
豆乳飲料では試していませんが、成分無調整豆乳でも調整豆乳でも何れでも豆乳ヨーグルトを作ることができました。しかし、豆乳のタンパク質を乳酸菌で凝固する必要があるので、失敗しないために大豆固形分は8%以上の豆乳で、添加物のない成分無調整豆乳を使いましょう。
豆乳ヨーグルトは、牛乳と比べて固まり難いのでタイマーを長めにセットします。途中で様子をみて固まっているようでしたらヨーグルトメーカーから取り出します。
種菌となるヨーグルト
市販されているヨーグルトを購入して、色々と試して自分好みの味を見つけてください。プレーンヨーグルト(ブルガリアやビヒダス)であれば、間違いなく上手にできます。
あとは実験くんです。豆乳1000mlに対して種菌となるヨーグルトは100gで十分ですが、固まり難いときは、発酵温度、発酵時間、そして、種菌となるヨーグルトの量も変えてみてください。
温度設定はブルガリアヨーグルトなら42℃、ビヒダスでは37℃です。ヨーグルトメーカーのTANICA(タニカ)には、色々な種ヨーグルトを使ったレシピ(発酵食品試作報告書 | タニカ電器)があります。カテゴリに豆乳もありますので、こちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。
出来上がった豆乳ヨーグルトを小分けして植え継ぐことで、次回の種ヨーグルトとして使えるようですが、味と衛生面からも毎回購入したヨーグルトを使うことをお勧めします。
レシピポイント✔ ヨーグルト 100-150g + 豆乳 1,000ml
✔温度設定 42℃ (ブルガリアヨーグルト)、37℃(ビヒダス)
✔ タイマー設定 8時間
豆乳ギリシャヨーグルトの作り方
豆乳ヨーグルトができたら、次はギリシャヨーグルトも作ってみましょう。ギリシャヨーグルトとは、ウィキペディアに下記のようにあるように水切りして乳清(ホエー)を除去した固めのヨーグルトです。
ギリシャヨーグルト(英語: Greek yogurt)は、水切り製法(straining)で作られるチーズのように乳清や水分を取り除いた多少固めのヨーグルト。
種ヨーグルトにもギリシャヨーグルトを使うと美味しくできます。森永 濃密ギリシャヨーグルト PARTHENO(パルテノ)プレーン がおススメです。
ギリシャヨーグルトの作り方は、いたって簡単で、発酵が終了した豆乳ヨーグルトをヨーグルトメーカーに付属する水切り器に移して冷蔵庫で一晩(6時間)寝かせるだけです。
水が容器に落ち、濃厚な豆乳ギリシャヨーグルトの出来上がりです。
レシピポイント✔ パルテノン プレーン 100g + 豆乳 1,000ml
✔ 温度設定 42℃
✔ タイマー設定 8時間
✔水切り器に移して冷蔵庫で6時間熟成
とろーり、カスピ海ヨーグルト
最後が中温性(20~30℃)のヨーグルトであるカスピ海ヨーグルトの作り方です。カスピ海ヨーグルトは、粘りと酸味が少ないまろやかさが特徴のヨーグルトです。カスピ海ヨーグルトの粘り気は、クレモリス乳酸菌が発酵によって生成するEPS(Exopolysaccharide:エキソ ポリ サッカライド)によるものだとあります。クレモリス菌の発酵には中温(20~30℃)で6-48時間が必要です。
カスピ海ヨーグルトのルーツ
カスピ海ヨーグルトのルーツ|カスピ海ヨーグルトとは?|カスピ海ヨーグルト研究会 によると、カスピ海ヨーグルトのルーツは、家森幸男 京都大学名誉教授が1986年に長寿国であるコーカサス地方のジョージア(旧グルジア)から持ち帰った食品サンプルからフジッコ株式会社が「クレモリス菌FC株」を分離・純粋培養したことが始まりとあります。
余談ですが、グルジアとは、ロシア語に由来する呼び方でしたが、2015.4.14に日本政府は呼称を英語読みの「ジョージア」と変更しました。Google Earth でもジョージアと表示されています。しかし、現地語での国名は「サカルトベロ」です。このように現地語と異なる国の呼称を「エクソニム(exonym)」といいます。日本も海外からはJapan(英語)、Japon(仏語) などと呼ばれていますので同様ですね。
豆乳カスピ海ヨーグルトの作り方
カスピ海ヨーグルトは低温で発酵させるためか、豆乳100%だと固まり難いです。応用編!豆乳カスピ海ヨーグルトを作る|カスピ海ヨーグルト研究会 では、豆乳と牛の比率を 7:3、豆乳 700ml、牛乳 300ml、カスピ海ヨーグルト 100gとなっています。
また家森幸男氏の著書 大豆は世界を救う―最新研究で実証! 健康・長寿・パワーの鍵は大豆にあった では、豆乳と牛乳の比率は 1:1、豆乳 500ml、牛乳 500ml、カスピ海ヨーグルト 100gです。
勿論、豆乳100%でもカスピ海ヨーグルトを作ることができます。豆乳100%で作るときは、種ヨーグルトとなるカスピ海ヨーグルトを少し多め(豆乳 1,000mlに対して150g)にします。
温度設定は、28℃でタイマーは24時間に設定しました。通常の豆乳ヨーグルトよりも水が多くでて、水の中に浮いているような感じですが、ちゃんと凝固しています。
水切り器で少し水を落としてから混ぜるとクリーミーな豆乳カスピ海ヨーグルトになります。
冷蔵庫で一晩水切りをすると、豆乳ギリシャ・カスピ海ヨーグルトです。”とろーり” というより ”もっちもっち” で、これはこれとして別物として味わえます。
豆乳カスピ海ヨーグルトの種ヨーグルト
カスピ海ヨーグルトの種菌が前述したフジッコ株式会社から販売されていますが、結構なお値段です。
近くのスーパーで購入できるカスピ海ヨーグルトは、フジッコの “カスピ海ヨーグルト 脂肪ゼロ” と グリコの “おいしいカスピ海 脂肪ゼロ”です。
どちらでも豆乳カスピ海ヨーグルトが作れましたが、「クレモリス菌」は中温性の乳酸菌なので、20~30℃という常温に近い温度で、長時間の発酵が必要なため、”おいしいカスピ海”には、下記の注意書きがあります。
同じく、フジッコの”カスピ海ヨーグルト”にも下記の注意書きがあります。
発酵と腐敗は紙一重なので、ご自身の責任のもとで市販のカスピ海ヨーグルトを使って自家製 豆乳カスピ海ヨーグルトにチャレンジしてください。
おいしいカスピ海 200g で確実に豆乳カスピ海ヨーグルトを作る
グリコの ”おいしいカスピ海” には、クレモリス乳酸菌とサーモフィラス乳酸菌が使われています。
グリコの「おいしいカスピ海」は、「クレモリス乳酸菌」と「サーモフィラス乳酸菌」を同時発酵させることで、日本人の味覚に合うおいしさへと仕上げたカスピ海ヨーグルト。
サーモフィラス乳酸菌の培養温度は、(1)乳酸菌の特徴と発酵乳誕生の軌跡 に、37~43℃ とありますので、温度を上げれば、サーモフィラス乳酸菌が発酵して通常の豆乳ヨーグルトができあがります。試しに42℃、8時間で発酵させてみましたが、他のヨーグルトを種菌としたよりも、とろーりとした豆乳ヨーグルトができあがります。
しかし、折角なのでクレモリス乳酸菌を発酵させまるために温度設定は28℃にしましょう。
豆乳カスピ海ヨーグルトは固まり難いので牛乳と混ぜて作るとあったので、それなら牛乳で作られた種ヨーグルトを増やしても同じ効果があるのではないかと思い、豆乳1,000mlに対して種ヨーグルトとなる”おいしいカスピ海”の量を100g、150g、200gと変えてみました。
種ヨーグルトが、100g、150gでは、水が多く出でました。また凝固するまでに28℃で24時間必要でした。しかし、200gまで増やしてみると、ほとんど水が出なくなり、また4-6時間ぐらいできれいに凝固します。
ということで、ケチらずに おいしいカスピ海を200g使いましょう!
プレーンでも美味しいですが、発酵器で菌活のすすめ(自家製 甘酒編) | 象と散歩 で紹介した玄米甘酒をヨーグルトソースにすると更に美味しくなります。
レシピポイント✔グリコ おいしいカスピ海 200g + 豆乳 1,000ml
✔ 温度設定 28℃
✔ タイマー設定 8時間(途中で確認して凝固してたら完成)
おススメのヨーグルトメーカー
下記の製品は、ヨーグルト&チーズメーカ、ヨーグルトメーカー、甘酒メーカー、発酵食メーカーとありますが、ヨーグルト、チーズ、甘酒などの発酵食品をつくるための必要な機能である、温度とタイマーが可変で設定できる発酵器です。ヨーグルトだけをとってみても、好熱性(37~45℃)と中温性(20~30℃)があり、乳酸発酵に必要な時間も異なりますので、温度と時間が設定できる発酵器を購入しましょう。
- 発酵器に必要な機能
- 温度設定が可変(25℃ - 60℃)
- タイマー設定(1時間 - 24時間)
- 家電として好きになれる外観
- 水切りが付属している