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Post Date:2010年2月22日 

顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その2)

顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム」で、7つのロックイン戦略の中で「インティマシー・ロックイン」、「メンバーシップ・ロックイン」について紹介しましたが、今回は、「コンビニエンス・ロックイン」、「ブランド・ロックイン」、「ラーニング・ロックイン」についてです。全3回に分けて7つの顧客ロックイン戦略について説明をしています。

第1回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム

  • インティマシー・ロックイン
  • メンバーシップ・ロックイン

第2回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その2) 

  • コンビニエンス・ロックイン
  • ブランド・ロックイン
  • ラーニング・ロックイン

第3回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その3)

  • コミュニティ・ロックイン
  • シリーズ・ロックイン

参考にした文献は下記になります。

2001年のHBRに掲載された「顧客ロックイン戦略」。著者は、NRIの中川理氏、日戸浩之氏、宮本浩之氏で、7つのロックイン戦略についてわかりやすく記載されています。

ハーバードビジネスレビューは、単価の高い雑誌ですが、たまに読みたくなる記事が掲載されます。過去記事は、バックナンバーを購入してもよいですが、ハーバード・ビジネス・ライブラリーやブックネストから単体の記事として購入することもできます。(2020.1.6 削除)

今回、ブックネストを使ってyukiセレクションに顧客ロックイン戦略を紹介しておりますので、興味がある方は、購入して全文を読んでみてください。(2020.1.6 削除)

バックナンバー(電子版)を購入するか、ハーバードビジネスレビューを定期購読してDHBRオンライン会員になると、こちらから読めます。(2020.1.6 追記)

また顧客ロックイン戦略については、ダイヤモンド社発刊の戦略実践ノートの第一章にも掲載されているので、こちらも参考にしてみてください。

戦略実践ノート
著者: 野村総合研究所 コンサルティング・セクター
出版社:  ダイヤモンド社
発売日: 2004/10/7
価格: ¥1,890


顧客ロックイン戦略

顧客ロックイン戦略の中で、ロックイン戦略とは、顧客との長期的関係を構築するためのさまざまな戦略を、顧客サイドの視点からロジックを組み立て、体系づけたものであり、CRMの概念に体系的な戦略を適用するものであるとあります。

下記は、顧客ロックイン戦略について自分の理解でまとめたものです。


コンビニエンス・ロックイン

コンビニエンス・ロックインとは、商品やサービスの利用しやすさ(アクセスしやすさ)により顧客をロックインする戦略で、「ワンストップ型」と「補充型」があります。


ワンストップ型

ここに来れば、必要なものはすべてあります。といった、比較商品や、同時購入する商品を1箇所で提供し、顧客の利便性を高める方式です。そう考えると百貨店もワンストップ型ですね。複数の店舗を集めて利便性を高めるショッピングモール、POSで管理して売れ筋商品しか店頭に並べないコンビニエンスストアもこの部類です。これをネットで展開しているのが、楽天市場やYahoo!ショッピングになります。

またひとつのリアル店舗ですべての商品を取り揃えることは現実的には不可能ですが、店舗を保有しないことでロングテールに応えたAmazonもこのワンストップ型ですね。

ワンストップ型の場合は、また商品の“探しやすさ”、“比較しやすさ”といったユーザビリティも必要となります。これもネットでは、かなりの範囲で実現されてきました。また後述する「コミュティ・ロックイン」とも関連しますが、“比較しやすさ”を実現する方式として商品レビューなどがあります。


補充型

必要なときに必要な分だけを提供するといった融通性で顧客をロックインする方式です。書の中でも代表例として挙げられているのが、「富山の薬売り」です。office glicoも菓子の新たな需要を創出するという以外にも、ビジネスモデルとして「富山の薬売り」の補充型を真似ています。

またサザエさんに出てくる酒屋のサブちゃんのような御用聞きは、この補充型のロックイン戦略の典型例です。

ワンストップ型にしても補充型にしても需要喚起が必要であるとありますが、そういう意味では酒屋のサブちゃんは「醤油そろそろ切れていませんか?」と磯野家に商品を提案しています。ワンストップ型の同時購入でも、以前ブログにも記載したデータマイニング界の都市伝説となっている「ビールとオムツ」に見られるようなリコメンデーションが必要となります。Amazonが導入している協調フィルタリング形式のレコメンデーションはまさにこれに該当します。


ブランド・ロックイン

商品やサービス、企業そのもののブランド力によって顧客をロックインします。○○なら××といった具合に、顧客はロックインされると具体的な商品名や企業名を連想できるようになります。

ブランド・ロックインは、顧客との直接の接点を持ちにくいメーカーにとってのロックイン戦略の選択肢のひとつであるとありますが、現状では、ネットでのコミュニケーションが発展し、ユーザー登録時にメールアドレスを取得したり、マイページを展開することによって、各メーカーも直接顧客とコミュニケーションを試みています。

ソニー友の会、Club Panasonicなどは、ユーザー登録という形式を取っていますが、アフターフォローによる顧客満足度の向上だけではなく、新商品の紹介、消耗品のダイレクト販売、顧客ニーズの把握といった新たなメーカーの顧客との関わり方を示唆しています。

またブランド力は、一旦、綻びをみせると一気に失墜するリスクがあります。エコカーならプリウスを築き上げたトヨタ自動車も、最近のリコール問題から、どのように信頼回復できるかが鍵となっています。


ラーニング・ロックイン

慣れているから使い続けたい、知っている人に聴きたい、といった学習という要素に関連するロックイン戦略で、下記に分類されています。


ラーニング・プラス

顧客自身が学習し、慣れ親しんだ結果、知識やノウハウといったサンクコストによってロックインする方法です。また利用者数が増えれば、そのルールがデファクトスタンダードとなり、更に強い効力を発揮するとあります。

マイクロソフトのWindowsなどがその典型です。Windowsに慣れしたしんできたユーザーは、性能面や価格で優れているからといってLinuxに移行するようなことはありませんでした。またマイクロソフトはOSだけではなくワープロソフトやスプレッドシートでも、その地位を確立するためにプリインストールに固執していたのでしょう。


ベンチマーク・ラーニング

熟知している人を真似る、参考にするといった心理を利用してロックイン戦略に結びつけるのが、ベンチマークラーニングです。CMで有名人を起用するのもこの心理作用を利用しているのだと思います。

店長ブログなどもこの部類に属すると思います。ネットでは、集合知という形でも進化し、はてな、教えて!goo、OKWaveなどが該当します。また商品レビューもベンチマークラーニングです。但し、Amazonや価格.comに記載されている商品レビューが実際の利用者かどうかはわかりません。そういった意味では、前述したClub Panasonicなどユーザー登録している方のレビューというのは、実際の購入者であることがわかるので、今後の商品レビューのあり方を考える上での参考となるのではないでしょうか。


ラーニング・プロポジション

自分のことをよくわかってくれている。と思わせる提案を行って顧客をロックインします。このため企業は、顧客に関する十分な知識や情報が必要となるとあります。デパートの渉外担当などが該当するのではないでしょうか。顧客のデータを必要とするため嘗ては限られた上位顧客にしか適応できませんでしたが、技術の進歩により、大量のデータを蓄積し、高速に処理ができるようになり、データベースマーケティング、ワントゥワンマーケティングを実践する企業が増えてきています。

最近では、ネットでの行動履歴に基づく広告やレコメンデーションもできるようになってきています。もともと顧客を理解し、顧客にあった提案をするというのがCRMの原点でもあり、更に進化を遂げていく領域ではないかと思います。


ラーニング・アウトソース

専門家にすべてを委ねることで起こるロックインとあります。顧客側の観点でみるとサーチコストをゼロに近づけることができます。名前の通り、例でも企業のアウトソーシングがあげられていますが、BtoCの観点で考えると、図書館司書やソムリエ的な発想で、人手はなくオートマチックに旅行や本、趣味事などに関しての商品やサービスの組み立てをするといった点では、まだまだ改善の余地はあると思います。

釣りもしたことがない人が、エギングを始めるといっても、道具として何が必要であるか、どのように釣ればよいのか、どこで釣ればよいのかと、わからないことだらけです。この解決策として、集合知に頼る方法もありますが、専門的知識を必要とするものであれば、専門家にすべてを委ねるというのは楽な解決方法ではあります。

ということで、

コミュニティ・ロックイン、シリーズ・ロックインについては、また次に記載します。


今日の一曲

Brain Enoのアンビエントシーリズの第1作が、この Music for Airpots です。テープループの代表作でもあり、テープによるループの位相がとても気持ちよく、ゆっくりと身体に染み込んできます。レコードのジャケットにはプラス・マイナスを逆に接続したスピーカを追加して聴くようにと記載されていました。

随分前になりますが、ベルギーからスイスに向かうのでスイス航空に搭乗した際にBGMとして1/1が流れていました。流石と思ったのですが、そのスイス航空も今はありません。

そんな Music for Airpots を “Bang on a Can All-Stars” が機械的に造られた位相を生演奏によって再現しています。実はこのCDは、ベンチマーク・ラーニングでロックインされた結果として購入した1枚です。

Bang on a Can All-stars - Music for Airports

Amazon Music でも Music for Airports: Live (Bang On A Can All-Stars) を聴くことができます。

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