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2010年1月17日

顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム

NHKの「出社が楽しい経済学」の第2シリーズが再放送されています。第1シリーズも昨年末に再放送されていたので何回か見ましたが、エロティシズムを感じさせる喋り方でキーワードを繰り返す外人は、NHKとしては意外な感じでしたが、キーワードは重要なものばかりです。

日経BP社から「出社が楽しい経済学」DVDブックとして全4巻発売されているので人気があった番組だと思われます。

「出社が楽しい経済学」DVDブック第1巻
「サンクコスト」「機会費用」「比較優位」

「出社が楽しい経済学」DVDブック第2巻
「インセンティブ」「モラルハザード」「逆選択」

「出社が楽しい経済学」DVDブック 第3巻
「価格差別」「裁定」「囚人のジレンマ」

「出社が楽しい経済学」DVDブック 第4巻
「共有地の悲劇」「割引現在価値」「ネットワークの外部性」

そんな出社が楽しい経済学の第2シリーズ第1回の放送は、「ロックイン」でした。ロックインとは、“人や企業の行動が、何らかの理由によってある方向に固定化していくこと“と説明されています。またロックインされた顧客をスイッチさせるには、コストが必要になると説明されています。

スイッチング戦略も、顧客獲得のための施策になりますが、例えば割引券をもらった店舗を利用したとしても、継続してその店舗を利用するかどうかはわかりません。そこでロックインするための施策が必要となります。

企業にとって顧客を固定化していくことは重要な施策になります。顧客戦略を考える上で、Acquistion(アクイジョン:新規顧客獲得)とRetention(リテンション:既存顧客維持)を比較した場合、新規顧客獲得費用よりも既存顧客維持費用の方が低コストであるといわれています。そのため多くの企業でCRM施策を必要とするのです。

IT先行でCRMが語られていた2000年頃に、CRM戦略について体系立てて説明されているものを探していましたが、なかなかヒットするものがありませんでした。そんなときにハーバードビジネスレビューに「顧客ロックイン戦略」が掲載されました。2001年当時の内容ですが、今になってもう一度読んでもフレームワークとして十分に使える内容です。

戦略実践ノート
著者: 野村総合研究所 コンサルティング・セクター
出版社:  ダイヤモンド社
発売日: 2004/10/7
価格: ¥1,890




著者は、NRIの中川理氏、日戸浩之氏、宮本浩之氏で、7つのロックイン戦略についてわかりやすく記載されています。

ハーバードビジネスレビューは、単価の高い雑誌ですが、たまに読みたくなる記事が掲載されます。過去記事は、バックナンバーを購入してもよいですが、ハーバード・ビジネス・ライブラリーやブックネストから単体の記事として購入することもできます。(2020.1.6 削除)

今回、ブックネストを使ってyukiセレクションに顧客ロックイン戦略を紹介しておりますので、興味がある方は、購入して全文を読んでみてください。(2020.1.6 削除)

バックナンバー(電子版)を購入するか、ハーバードビジネスレビューを定期購読してDHBRオンライン会員になると、こちらから読めます。(2020.1.6 追記)

また顧客ロックイン戦略については、ダイヤモンド社発刊の戦略実践ノートの第一章にも掲載されているので、こちらも参考にしてみてください。

戦略実践ノート
著者: 野村総合研究所 コンサルティング・セクター
出版社:  ダイヤモンド社
発売日: 2004/10/7
価格: ¥1,890


顧客ロックイン戦略

顧客ロックイン戦略の中で、ロックイン戦略とは、顧客との長期的関係を構築するためのさまざまな戦略を、顧客サイドの視点からロジックを組み立て、体系づけたものであり、CRMの概念に体系的な戦略を適用するものであるとあります。

下記は、7つの顧客ロックイン戦略について自分の理解でまとめたものです。

今回は、インティマシー・ロックインとメンバーシップ・ロックインについてですが、3回に分けて7つの顧客ロックイン戦略について説明しています。

第1回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム

  • インティマシー・ロックイン
  • メンバーシップ・ロックイン

第2回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その2) 

  • コンビニエンス・ロックイン
  • ブランド・ロックイン
  • ラーニング・ロックイン

第3回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その3)

  • コミュニティ・ロックイン
  • シリーズ・ロックイン

インティマシー・ロックイン

intimacyとは、親密と親交を意味します。つまり馴染みや親しみといった人に対する、好意や親近感から生じるロックインです。これを戦略と呼べるかは疑問ですが、行きつけの喫茶店のマスター、いつも昼を食べる定食屋の店員さんなどがいるからといって通うのは、インティマシー・ロックインされていることになります。ネットや大手企業などでは難しい戦略かと思いきや、CMに起用されているタレントやキャラクターなどへの愛着を利用することもインティマシー・ロックインというそうです。


メンバーシップ・ロックイン

メンバーシップロックインとは、入会金というサンク・コスト(埋没費用)や貯めたポイントを無駄にしたくないという意識を利用したロックインで、会員制方式とポイント制方式の2種類があるとあります。


会員制方式

会員になった顧客に割引などの特典を与え、入会金というサンク・コスト(埋没費用)を先払いさせることで、顧客は元をとらなければならないという意識が働きロックインされます。会員制スーパー「コストコ」、会員制リゾートホテル、ゴルフ会員権など古くから用いられている戦略です。


ポイント制方式

購買代金に応じてポイントを付与して、貯まったポイントによって特典が得られる仕組みです。ポイント制度は、アメリカン航空が導入したFFP(Frequent Flyer Point)が最初であるといわれていますが、現在ではFSP(Frequent Shopper Program)を多くの企業が導入しています。

但し、①ディスカウントにつながりにくいものとすること、②指数関数的に魅力を高め上位顧客に優位であること、の二点が留意点です。

またFSPを導入することにより、ポイントを付与するだけではなく、誰が、いつ、どこで、何を購入したといったデータを蓄積し、購買履歴に基づいたリコメンデーション、販促活動、クローズド・キャンペーンなどは、現在では多くの企業が実施しています。

優良顧客をポイントで優遇するだけではなく、優良顧客の嗜好、行動履歴を知ることにより、更にロックインを深めることができるようになります。

顧客ロックイン戦略には、上記の他、「コンビニエンス・ロックイン」、「ブランド・ロックイン」、「ラーニング・ロックイン」、「コミュニティ・ロックイン」、「シリーズ・ロックイン」がありますが、これらについては、次回以降で説明したいと思います。

下記は、顧客ロックイン戦略をマインドマップで記載したものです。


今日の一曲


ロックイン戦略のロックは、"L"ですが、こちらは、"R"のロックから始まる「Rock 'N' Roll Suicide」です。

オリジナルは、David Bowieの「Ziggy Stardust」に収録されていますが、今日の一曲は、Gwyneth Herbert(グウィネス・ハーバート)のカバーバージョンでアルバム「All the Ghosts」のボーナス・トラックとして収録されています。


Gwyneth Herbertは、英国の女性シンガーで、ハスキーな声でJazzyな曲を奏でます。今回オススメのRock "N" Roll Suicideもアコギとハスキーな歌声に痺れます。

また「All the Ghosts」に収録されている「Put Your Mouth Where Your Money is」も超カッコいいです。

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