海水魚の飼育は難しいと思っていました。しかし、3月の地震後に暫くヒーターの電源を止めて熱帯魚が全滅して水槽が空いたこともあり、海水魚の飼育にチャレンジしてみました。写真は現在飼育中のカクレクマノミです。
カクレクマノミの飼育にたどり着くまでに数ヶ月の海水魚飼育のトライアル期間を経ています。最初は、夏の初めに伊豆に行ったときに捕獲したソラスズメダイの飼育からでした。ソラスズメダイはブルーが綺麗なとてもカワイイ魚です。
バケツに携帯用のエアーポンで連れてきたルリスズメダイですが、水槽に移すと海水が足りませんでした。取り敢えず、「海水の塩分濃度は3.5%」という理科で習った知識をもとに1ℓあたり35gの粗塩を溶かした塩水を海水に追加しました。フレーク状の餌もよく食べていたのですが、5匹いたソラスズメダイは10日程で全滅してしまいました。
死滅した原因を考えてみると。
- 海水に追加した塩水がいけなかった
- 塩分濃度が正しくなかった
- その他(ストレス、病気)
色々と調べてみると、水に塩を溶かしたものは、やはり塩水でしかないこと、塩分濃度を計測する比重計というものがあること、海水魚は排泄物や残餌から発生するアンモニアの濃度が高くなると中毒死してしまうこと、アンモニアはバクテリアによって亜硝酸、そして硝酸に分解され無害化されていくこと、などが分かりました。
つまり、海水魚の飼育の注意ポイントは、
- 塩分濃度に気を付ける
- バクテリアを繁殖させる
と、いうことになります。何れも水質に関わる問題です。そこで、解決策としてとったのは、
- 海水比重計の購入
- 海から海水を別タンクで持って帰る(念のために人工海水も購入)
- バクテリア補充液とライブロックを購入
海水比重計
海水の濃度を測る比重計(ボーメ計)というのがありました。比重とはウィキペディアで調べると、
比重(ひじゅう)とは、ある物質の密度(単位体積あたり質量)と、基準となる標準物質の密度との比である。通常、固体及び液体については水(温度を指定しない場合は 4 °C)、気体については、同温度、同圧力での空気を基準とする。
と、あります。海水魚の飼育では、比重が1.023~1.024と記載されているので、1気圧水温4℃の水よりも1.023~1.024倍重いということのようです。また水温によっても比重は変化し、水温が上がれば比重は下がるようです。ヒーターで温度設定している場合は、その温度で比重を計測するのがよさそうです。
比重計の計測タイプも幾つかあるようですが、測定が簡単なものを選んでみました。候補としては、テトラ ハイドロメーター(比重計)とDEEP SIX(比重計)を考えましたが、結局、普段からお世話になっているTetraの比重計を購入しました。Tetraの比重計ではブルーゾーンが1.020から1.024となっています。比重は低くても大丈夫ということなのでしょうか。
測定方法は簡単で水槽に入れて容器の中に水を浸してから取り出して、水平なところに置いてしばらくするとメモリが比重を指します。海水も測定してみましたが、水温20℃で1.026でした。水分が蒸発して塩分濃度が高くなっていたようです。海水魚の飼育では、蒸発した分の水を補給しなければいけないということを数値で実感しました。
採取してきた海水魚の飼育する場合は、海水を汲んでくることができますが、補充することも考えて人工海水(テトラ マリンソルトプロ 50L)も購入してみました。
バクテリアを繁殖させる
海水魚の排泄物や残餌から発生するアンモニアを分解させるためにはバクテリアが必要とあります。特に新規で水槽を立ち上げたときにはバクテリアが存在しないので、バクテリアの繁殖は必須のようです。
バクテリア溶剤
海水用の硝化バクテリアを使います。値段はピンキリです。最初の頃は高いものも購入してみました、ジェックス サイクル 250ml などで十分かと思います。(追加:2020.5.30)
ライブロック
バクテリアが生息するライブロックを水槽に投入する方法もあります。ライブロックとは、まさに生きている岩でウィキペディアには、
ライブロック(Live rock)とは、珊瑚礁を形成する浅海において主に死サンゴの骨格が風化し、表層に様々な生物群集が繁殖した状態のものを指す。ベルリン式、さらに広い意味でのナチュラルシステムでのリーフアクアリウム飼育に必須なアイテムである。これに生息する無脊椎動物やバクテリアなどの生物群集が閉鎖環境下の水質維持に貢献するからである(硝化・脱窒)。
と、あります。海水魚に飼育に必要なバクテリアは、ろ過材のやライブロックに繁殖するということと、水槽のインテリアにもなるかと思いライブロックも購入してみました。
バクテリア補充液とライブロックをいれたことによりどれくらいバクテリアが繁殖し、アンモニアの濃度が下がったのかは分かりません。水質をテストするためのテトラテスト アンモニア試薬NH3/NH4+(淡水、海水用)というものもありましたが、計測までしなくてもよいのではないかと思い購入はしていません。
海水の比重を適正化し、ライブロックを導入した水槽で試しに飼育してみたのが、館山で捕獲したネンブツダイでした。夏場は特に水の蒸発が早いので、水槽にセロハンテープを貼って、水温24℃で比重1.023となる水位にマーキングをして、3日に一度程度、減った分の水(浄水)を補給していました。
飼育から1ヶ月が過ぎてもネンブツダイたちは元気に水槽で泳いでいましたので、海水魚の飼育は成功でしょうか。結果的には、このネンブツダイ達はパイロットフィッシュの役目を果たしていたようです。役目を終えたネンブツダイはエギングに行ったときに捕獲した漁港でリリースしました。
カクレクマノミの飼育開始
ネンブツダイのリリースと同時に購入したのがカクレクマノミです。見た目もカワイイので買いたかった海水魚のひとつです。またカクレクマノミといえばイソギンチャクも必需品です。
と、いうことでカクレクマノミとイソギンチャクがセットになっていた、カクレクマノミ(2匹)+サンゴイソギンチャクセット(海水)を購入しました。
セットで販売されていますが、注意書きとして、
共生するイソギンチャクはハタゴやセンジュを好みますがサンゴイソギンなどでも時間をかけると入ってくれる場合があります。
日本語も少しウィキペディアにはもう少し否定的に、
イソギンチャクの種類により共生する。カクレクマノミはイソギンチャクの毒から身を守る耐性があるため共生可能なのである。 共生可能なイソギンチャクの種類ハタゴイソギンチャク、シライトイソギンチャク、センジュイソギンチャクである。一方共生しないイソギンチャクはサンゴイソギンチャク、ロングテンタクルアネモネ、イボハタゴイソギンチャク、カマイタダキイソギンチャクである。ただし、共生は個体差があるため共生するイソギンチャクの種類であっても共生しないこともあれば、逆のこともある。
と、記載されています。カクレクマノミとイソギンチャクの相性については、「象と散歩: 初心者のイソギンチャクとカクレクマノミの共生飼育」でも書いていますので、参考にしてください。(追記:2020.5.30)
サンゴイソギンチャクは、褐虫藻による光合成で成長し、基本的に給餌は不要とあるので手間がかからなそうです。ずっと同じところ定着しているイメージがありましたが、実際に飼育していみると、かなり、移動が激しいです。写真はライブロック プレート状(Sサイズ)の上に行儀よく居座っていますが、夜な夜な水槽の中を闊歩していました。暫くしてからライブロック(Sサイズ)の側面に定着するようになりました。
結局、その後にシイライトイソギンチャクをアクアショップで購入してしまいました。こちらはライブロック プレート状(Sサイズ)の上に定着しています。シイライトイソギンチャクも褐虫藻による光合成で成長するので光量が十分にあれば餌は不要とのことですが、茶色が薄れてくるようだったら餌を与える必要があるそうです。
※ 結局、サンゴイソギンチャクの中にカクレクマノミが入ることなく、サンゴイソギンチャクは☆になってしまいました。飼育当時は、青色LEDスポットライトを使っていなかったのですが、共生のことを考えなければお手軽に始められるセットだと思います。(追記:2020.5.20)
そして、下が主役のカクレクマノミです。飼育直後は、いつも二匹で寄り添っていましたが、最近になって一匹がサンゴイソギンチャクを気に入った模様で、いつもサンゴイソギンチャクの中にいます。皮肉なもので善かれと思って購入したシイライトイソギンチャクには近寄りません。カクレクマノミは同サイズだと喧嘩し、大きさが異なってくると雄(小)と雌(大)になるそうです。
カクレクマノミの飼育に必要なもの
カクレクマノミの飼育に必要な水槽セットとしては、標準的なセットで
- 水槽
- 外掛けフィルター(ろ材)
- 照明
- ヒーター
です。水槽は、ペットショップなどで訊ねると必ず大きなものをと言われます。水質の変化を小さくすることを考えると大きな水槽の方がよいのかもしれません。しかし、リビングに大きな水槽を置く場所もないですし、その後のメンテも大変そうです。我が家では、レグラスR-350(20ℓ)を使っています。小さな魚を数匹(カクレクマノミは8cmとありますので、大きくなったら水槽のサイズを再考しなければなりませんが)飼うのであれば問題ありません。
レグラス R-350 クリア4点セット フレームのないすっきりとしたデザインの水槽にライト、フィルター、ガラスブタが付いた4点セットです。水槽はコーナー曲げガラスを使用した大変美しいオールガラスフレームレス水槽レグラスR-350です。水槽幅350mmと扱いやすい小型サイズながらも水容量が20リットルあり、小型魚飼育やや水草育成にも十分お楽しみいただけます。 また、本品は5mm厚のガラスを使ったしっかりとしたつくりの水槽で安心してお使いただけます。 ライトはアーム式ミニライトピクシースノー、フィルターはプロフィットフィルターF2クリアです。両方とも非常にスタイリッシュなデザインで水槽にマッチし、お部屋のインテリアとして空間を彩ります。 【製品内容】 ●水槽:レグラスR-350 ・水槽サイズ:W350×D220×H280mm ・水容量:約20リットル ●照明:アーム式ミニライト ピクシースノー 6700ケルビンのインバータ14W蛍光ランプを採用した小型水槽用の本格的なアーム式ミニライトです。本体カラーはホワイトスノー。すっきりとしたデザインと色でレグラスの美しさに彩りを添えます。 ●フィルター:プロフィットフィルターF2クリア 淡水・海水両用の外掛け式フィルターです。作動音が大変静か、水量調節機能付きですぐにでもスタートできるなど優れた性能を持ち合わせています。色は軽やかなクリアでレグラスやライトとの相性も抜群です。 ●ガラスブタ、水槽マット |
水槽単体で購入した場合は、ろ材として外掛け式のテトラ オートワンタッチフィルターAT-30等の購入が必要です。エアポンプは使っていませんが酸素が足りていないようには見えません。また上記セットにはヒーターが付属していませんのでヒーターも必要となりますが、テトラ 26℃ ミニヒーター 50Wのような小型水槽用の低価格なヒーターで十分です。
テトラ26℃セットヒーター 50W 41cm(20L)以下の水槽に最適です。 特徴 ●自動温度調節器が内蔵されているヒーターです。サーモスタットは必要ありません。 ●自動温度調節器により、水槽水温が5℃~25℃の時、水槽水温を一般的な熱帯魚、水草に適した26℃前後(約26℃±2℃)に維持します。 ●50Wのショートタイプなので小型水槽やプラケース(20L以下)で場所をとりません。 仕様 定格電圧 AC100V 50/60Hz 定格消費電力 50W ヒーター本体サイズ 直径 約23mm×長さ 約145mm コードの長さ 約900mm |
水槽の用意ができたら飼育用の海水を作ります。
- 人工海水
- サンゴ砂
- 比重計(ハイドロメーター)
- バクテリア
- ライブロック
パイロットフィッシュを入れた方がバクテリアの繁殖に良いようですが、その後にカクレクマノミを飼育する予定があるのであれば、先にイソギンチャクを投入してもよいのかもしれません。底砂には、サンゴ砂(パウダー)がよいとありますが、もともと使っていたもっと粒の大きいサンゴ砂(ミディアム)1リットルのようなものを使っています。レグラスR-350(20ℓ)であれば底砂は1ℓあれば十分です。
サンゴ砂 ミディアム |
人工海水(テトラ マリンソルトプロ 50L)はテトラ コントラコロライン(500ml)などでカルキを抜いた水で作ります。計りで量ってから人工海水を作ったとしてもテトラ ハイドロメーター(比重計)で比重を測定します。自分の水槽の比重は24℃で1.022にしています。前述しましたが、このときの水位を水槽にセロハンテープなどを貼ってマジックインキでマーキングしておきます。後は水位が下がればカルキを抜いた水を補充していけば、さほど海水の比重は変わりません。
次に人工海水にバクテリア補充液とライブロックを投入します。できれば、カクレクマノミとイソギンチャクは、数日経ってから投入しましょう。
そしていよいよ真打ちの登場です。カクレクマノミもネットで販売している業者もありますが、魚は心配だからというのであればアクアショップなどでも1匹¥1,500程度で購入できます。カクレクマノミは縄張り意識が高いので小型水槽を使うのであれば欲張らず2匹で飼育しましょう。
カクレクマノミ 【飼育要件】 最大全長 → 11cm 温度 → 24度前後 餌 → 人工飼料、活または冷凍イサザアミ 混泳 → 近縁種とは注意が必要(他魚とは基本的に可) サンゴとの飼育→ 基本的に可 【種類詳細】 クマノミの中でももっとも人気のある種類で通常オレンジに3本のバンドが入りますがブリード個体には消失したり乱れた模様のものも存在します。飼育は容易で人工飼料にもすぐに餌付いてくれますが性格は温和ですので他のクマノミや攻撃的な生体との混泳は避けた方が無難です。イソギンチャクと共生することで有名です。イソギンチャクの毒に耐性のあるクマノミは敵から守ってくれる代わりにエサを運んであげることもあります。共生するイソギンチャクはハタゴやセンジュを好みますがサンゴイソギンなどでも時間をかけると入ってくれる場合があります。ただしこれは必ずしも必要なものではありません。 はじめに生まれてくる個体は全てオスで群れの一番大きなものがメスになり、それが死ぬと次に大きなオスがメスに性転換します。これは水槽内でも同じことが起こるのでサイズの違う個体を入れておくとペアになる確率が高いようです。 ちなみにクマノミの語源は歌舞伎の化粧である隈取りの様な模様をしていることから、隈の魚(み)と言われたことから由来しています。 お送りする個体は体長約2~3cm程度となります。 個体サイズや模様、雌雄の指定についてはお受け致しかねますのでご了承下さい。 |
餌は、カクレクマノミはお上品な小さな口なのでテトラ マリン グラニュールやプロバイオティクス メガバイトレッド Sなどの小さな餌を食べきる量で与えましょう。我が家のカクレクマノミにはプロバイオティクス メガバイトレッド Sを与えています。
初期投資は多少必要ですが、正しく海水さえ作れれば決して海水魚の飼育は難しくないということがわかりました。是非、可愛いカクレクマノミで癒やされてください。
※ 2年半の飼育を経て改めて「カクレクマノミの飼育は簡単?」という内容で記載していますので こちら もご覧になってください。
カクレクマノミとイソギンチャクの飼育に必要な機材は、”カクレクマノミとイソギンチャクの飼育に” で紹介しています。