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Post Date:2025年10月13日 

静かな時間を淹れる珈琲道具 ― セラミックフィルターとドリップポット

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター&coresドリップポット

CORES(コレス)のゴールドフィルター C246BKで淹れるコーヒーは、表面にオイルが浮かび、豊かな香りと力強いコクが楽しめます。

cores ゴールドフィルター C246BK

しかし齢を重ねていくと、“まろやか” で “澄んだ後味”を求めるようになってきました。

そんなときに見つけたのが、陶器が持つ多孔質という特徴を生かした、SANCERA139の陶器製フィルターです。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

日本の伝統的な焼き物(波佐見焼)がフィルターになる――そこには、日本ならではの知恵と技術、そして美しさが詰まっています。


波佐見焼とSANCERA139

SANCERA139 は、長崎県東彼杵郡波佐見町(はさみちょう)に本社を置く「株式会社 燦セラ(SANCERA Co., Ltd.)」が、波佐見焼の技術と多孔質セラミック技術を組み合わせて製造している製品です。

波佐見焼は、実用性と美しさを兼ね備えた長崎県の焼き物。陶器ならではの温かみと、現代の暮らしに寄り添うデザイン、そして新しい技術を柔軟に取り入れる姿勢が特徴です。

近年では「SANCERA139」「HASAMI」「natural69」など、モダンでシンプルな波佐見焼ブランドが多く登場しています。

その中でも、波佐見焼の伝統技術から生まれたSANCERA139 セラミックコーヒーフィルターは、まさにその精神を受け継ぎ、土の力と現代の感性が調和した逸品です。

AmazonなどではEthicalHouse(エシカルハウス)から波佐見焼 ニューセラミックコーヒーフィルター&ドリッパーとして販売されていますが、SANCERA(株式会社 燦セラ)のOEM製品です。

フィルター本体にSANCERA 139 MADE IN JAPANと刻まれています。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

セラミックフィルター × CORESドリップポット 理想のペアリング

SANCERA(燦セラ)Kuromaru|黒丸 セラミックコーヒーフィルタと、CORES(コレス)ドリップポット C470の相性はとてもよいです。

黒丸セラミックコーヒーフィルターは、とてもシンプルなデザイン。CORESのドリップポットも同じくミニマルで、取っ手がなく、容量も約300mlと小型です。どちらも機能性とデザイン性を兼ね備えた道具といえます。

CORES(コレス)ドリップポット C470

またCORESドリップポットは、持ち手のないすっきりとした形状で、注ぎ口も横に張り出していないため、使わないときも収納の邪魔になりません


☕️ なぜ相性が良いのか

セラミックフィルターとCORESドリップポット。このふたつが相性の良い理由は、互いの特徴を引き出し合っているからです。

① 黒丸 セラミックコーヒーフィルター:やわらかい抽出
  • フィルター部分が多孔質セラミックなので、お湯がじんわりと一定のスピードで自然に落ちる。
  • 紙を使わないため、コーヒーオイルがそのまま抽出され、味がまろやかで厚みが出る。
  • 抽出スピードがやや遅めなので、湯量と注ぎ方のコントロールが大切になる。
② CORES ドリップポット C470:細く安定した湯流
  • 約6mmという細口ノズルでピンポイントに注げるため、セラミックフィルターの抽出速度にぴったり合わせられる。
  • ハンドルがなく、掴み手から注ぎ口までの距離が近いので湯のコントロールがしやすく、粉の層を乱さず旨味の中心だけをじっくり引き出せる
  • ステンレス製で保温性が高く、安定した温度を保ちやすい。

セラミックフィルターのゆっくりとした抽出に、CORESドリップポットの繊細な湯の流れがぴたりと合う。それぞれの個性が、まろやかで澄んだ一杯を生み出します。


🔧 ちょっとしたコツ

セラミックフィルターは、お湯の通りがゆっくり。そのため、温度と注ぎ方のひと工夫で味わいがぐっと変わります。以下のポイントを意識すると、よりまろやかで澄んだ一杯に仕上がります。

  1. フィルターをあらかじめ80〜85℃のお湯で温める
  2. 蒸らしは20〜30秒、少量ずつ注ぐ
  3. 抽出全体は2分30秒〜3分を目安に

セラミックフィルターはお湯の通りがゆっくりなので、蒸らしは短めに。約20〜30秒ほど待ち、ガスが抜けて粉が少し沈んだら、ゆっくりと抽出を始めます。


🌿 味わいの特徴

セラミックフィルター × ドリップポットで淹れたコーヒーは:

  • 苦味がまるく、酸味がやわらかい
  • コーヒーオイル由来の香りとコクがしっかり残る
  • 後味がとてもクリーンで、雑味がない

コレス ドリンクポットでゆっくりとお湯を注ぐと、陶器のフィルターから静かに立ちのぼる香りが広がり、まろやかで澄んだ一杯が静かに完成します。

美濃焼 ぶるー浪漫 デミダスカップ

お手入れと使い方のコツ

金属フィルターは洗うだけで特別なお手入れは必要ありませんが、セラミックフィルターは長く使うためのちょっとした手間が必要です。

Ethical House(エシカルハウス)の公式YouTubeに公開されている「珈琲フィルターのいつものお手入れ編」という動画では、正しいメンテナンスの方法が丁寧に紹介されています。ただ、これを毎回行うのは、正直なところ少し大変です。

以下は、そのお手入れを簡略化したバージョンです。時間がないときは、①〜②を行ったあとに水を張った鍋に浸しています

洗浄は、セラミックフィルターの多孔質構造に詰まった微粉やオイルを取り除くためのもの。つまり、「フィルターの孔を呼吸させる」作業です。


🫧日々の簡略お手入れ

セラミックフィルターは、使うたびに少しずつコーヒーオイルや微粉が孔に溜まります。日々の小さな手入れを重ねることで、いつでも澄んだ味わいを保つことができます。

簡単お手入れ手順
  1. 使い終わったら、すぐにぬるま湯で裏から洗う
  2. 内側を洗ってさっと濯ぐ
  3. 鍋にお湯を張り、フィルターを自重で沈める
  4. フィルター内部にお湯が溜まったら鍋の外に捨てる
  5. 3〜4を数回繰り返す
  6. 最後にもう一度、全体をお湯で流して完了
💡 ポイント
  • 洗剤は使わない(孔を詰まらせる原因になります)
  • 使い終わったらできるだけ早く洗うのが一番のコツ

🔥 月に1度は煮沸を

抽出速度が遅くなっていなくても、定期的な煮沸洗浄で目詰まりを防ぎましょう。

こちらもEthical House(エシカルハウス)の公式YouTubeに公開されている「珈琲フィルターのスペシャルケア編」を参考にするのがおすすめです。

お湯を沸かした鍋にフィルターを入れ、5〜10分ほど煮沸するだけでリフレッシュ。こびりついた微粉や油分が抜けて、抽出スピードと風味が蘇ります。

少し手間はかかりますが、その分だけ“土のフィルター”は息を吹き返し、次の一杯をより澄んだ味にしてくれます。


残念な点と工夫

セラミックフィルターは、機能的にもデザイン的にもとても魅力的なのですが、ひとつだけ残念なのは付属の樹脂製ホルダーです。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター

見た目がややチープで、フィルターをしっかり支える形状にもなっていません。そのため、以前から使っている木製のコーヒードリッパーホルダーを合わせて使っています。

波佐見焼 セラミックコーヒーフィルター&木製ホルダー

陶器と木の組み合わせは、見た目のバランスもよく、何よりもコーヒーを淹れる時間が少しあたたかく感じられます。

またシンプルなデザインのHARIO(ハリオ)のサーバーも長年愛用しています。

コーヒーを淹れる時間を、少しだけ丁寧にしてくれる道具。SANCERA139とCORES C470は、そんな存在です。

Post Date:2025年10月4日 

炊き立ての味を再現――かもしか道具店「陶の飯びつ」1.5合の秘密

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

長谷園の土鍋「かまどさん」で炊いたご飯は本当に美味しい。けれど、残ったご飯はラップに包んで冷蔵庫へ入れ、食べるときはレンチンするのが定番です。

土鍋は保温ができないので、二日目に限らず冷めてしまえば結局はレンチン頼み。お米の価格が上がっている今だからこそ、温め直したご飯も炊き立てのように美味しく味わいたいものです。

そこで前から気になっていたのが、同じ長谷園の陶器製ご飯保存容器「陶珍」。「おひつ(お櫃)」「めしびつ(飯櫃)は、炊きあがったご飯を移して保存・保温するための容器です。

ただ『陶珍 小』は1合、『陶珍 大』は2合。いつも2合炊いて、残るのはおよそ1〜1.5合。小では入りきらず、大は直径16cmと大きすぎ。まさに帯に短したすきに長しで、しかも価格もやや高めです。

そこで、ちょうど良いサイズの『1.5合の陶器おひつ』を探すことにしました。


ご飯がふっくら美味しいまま!陶器製おひつの秘密

陶器製のおひつは、冷めたご飯をふっくら美味しく蘇らせてくれます。その秘密は、陶器が持つ水分を吸ったり戻したりする「呼吸するような働き」にあります。


🍚 ご飯を美味しく保つ3つのメカニズム

  1. 適度な水分調整

    陶器は目に見えない小さな穴が無数にある「多孔質(たこうしつ)」構造をしています。このため、炊き立てご飯の余分な水分をいったん吸収し、再加熱時には蒸気として戻してくれるのです。だから、ベタつかず、ふっくらとした食感が保たれます。

  2. じんわり均一加熱

    陶器は熱をゆっくり伝える素材です。電子レンジで温めても、中までじんわりと熱が通り、均一に温まります。そのため、ご飯が乾きにくく、全体がふっくら仕上がります。

  3. においがつかない

    プラスチック容器と違い、陶器はにおいや蒸れがこもりにくいのも特長です。自然素材ならではのやさしい保存力で、炊きたてに近い風味が楽しめます。

だから陶器のおひつを使うと、冷蔵庫で保存しておいたご飯をチンするだけで「炊きたてっぽい!」と感じられます。

陶器製のおひつは、見た目以上に理にかなった暮らしの道具なのです。


1.5合の陶器のおひつ

一口に陶器といっても種類はさまざま。日本のお米を美味しく食べるなら、やはり日本の伝統的な焼き物で作られたおひつを選びたいところです。さらに、ご飯の美味しさを保つための工夫がきちんと明記されている製品であることも大切です。

そこで調べて候補にしたのが、次の3つです。

  • かもしか道具店「陶の飯びつ」1.5合
  • Hangout ライスコンテナ
  • &NE 萬古焼 おひつ 大(ハレとケ)

比較の基準として、長谷園「陶珍(2合)」も加え、1.5合のおひつ3種+陶珍の4つで比べてみました。その中から選んだのは…

項目 かもしか道具店
陶の飯びつ 1.5合
Hangout
ライスコンテナ
&NE ハレとケ
萬古焼 おひつ 大
長谷園
陶珍(2合)
容量 約1.5合 600ml 約1.5合 約2合
サイズ 約 φ15(蓋) × H11cm 約 φ13 × H9.5cm 約 φ17 × H9.5cm 約 φ16 × H10.5cm
重量 約910g 約700g 約860g 約1000g
材質 萬古焼 信楽焼 萬古焼 伊賀焼
電子レンジ
オーブン × - ×
食洗機 - × ×
価格 5,500円 3,850円 4,500円 7,700円

萬古焼(ばんこやき)、信楽焼(しがらきやき)、伊賀焼(いがやき)、いずれも「土に小さな穴が多い=多孔質な陶土」を使うのが特徴です。気孔があることで保存中はご飯の余分な水分を吸い、温め直すときにはその水分を戻してくれます。これが「まるで炊きたて!」と感じられる理由です。


かもしか道具店「陶の飯びつ」に決めた

陶器のおひつは「多孔質な土の性質」を活かしています。ただ、実際には内側に釉薬(ゆうやく=ガラス質のコーティング)が施されている製品がほとんどです。そのため、全面が素焼きのおひつと比べると、水分の調整力は弱くなります。

比較対象とした長谷園の「陶珍」では、ご飯を温める前に蓋に水を含ませるよう説明があります。これは、蓋の部分が素焼きになっていて、水分を吸収・放出して調整できる仕組みを持っていることを示しています。

ふたに吸水させる 温める前に「陶珍」のふたに十分水を含ませます。約1分で水から上げ、表面の水分を拭きます。

もしおひつ全体が釉薬を使わない素焼きであれば、

  • ご飯のデンプンや色が染み込みやすい
  • 水分やにおいを吸いやすく、カビが生えやすい
  • 日常使いでは衛生面の管理が難しい

といった問題が生じます。

こうした課題を考慮してつくられているのが、かもしか道具店「陶の飯びつ」とHangoutライスコンテナです。蓋の裏が素焼きになっています。

この「素焼きの部分を活かす設計」がご飯の水分をちょうどよく調整してくれるようになっています。美味しさの秘密はフタにあり。です。

下図は、Hangoutライスコンテナの蓋の裏です。

【引用】Amazon - Hangout Rice container

600mlにおひつに1.5合のごはんが入るのか?

Hangout Rice containerの容量は600ml。

販売サイトによって「1合〜1.5合用」と表記されていますが、他の1.5合サイズのおひつと比べると、最も小ぶりなサイズです、、

炊きあがったごはんの体積は、炊き方(水分量)や盛り付け方によって変わりますが、ふんわりとよそうと1合で、およそ500ml〜600ml程度。

そう考えると、600mlでは1.5合分を入れるには少し余裕が足りないかもしれません。

やはり、もう少し余裕のあるサイズをということで、かもしか道具店「陶の飯びつ」に決めました!


かもしか道具店「陶の飯びつ」を使ってみて

"かもしか道具店"は、三重県菰野町にある萬古焼の窯元・山口陶器が立ち上げた産地ブランドです。

おひつは機能性だけでなく、デザインもシンプルでスリム。色は白と黒がありますが、汚れが目立ちにくい黒を選びました。

蓋の裏は素焼きになっていて、この部分で水分を調整してくれる仕組みです。

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

長谷園「かまどさん」で炊いたご飯を茶碗によそい、残ったご飯を"かもしか道具店「陶の飯びつ」"に移します。炊き立てのご飯を入れると、おひつが余分な水分を吸収してベタつきを防ぎ、美味しい状態で保存できます。

かもしか道具店 おひつ 1.5合 陶の飯びつ

翌日に食べるときは冷蔵庫で保存しますが、スリムな形状なので庫内でもかさばりません。

温め直すときは、蓋をしたまま電子レンジへ。加熱すると、おひつに吸収されていた水分が蒸気となって戻り、ふっくら炊き立てのような食感と味わいがよみがえります。

冷凍庫で凍らしたご飯も、おひつに入れて蓋をしてレンチンすると美味しくよみがえります。

「かもしか道具店 おひつ」は、土鍋炊きの美味しさを損なわずにご飯を保存できる、非常に優れた選択だったと満足しています。

食事のスタイルに合わせて「ふつう」と「こぶり」を選んでください。一食一食を大切にしたい方には、最高の食卓の道具です。

ふつう 小ぶり
約φ15×H12cm 約φ12×H11cm
ごはん1.5合分 ごはん1合分
大凡3膳 大凡2膳

炊飯器で炊いたご飯でも

炊飯器で長時間保温すると、ご飯が固くなる・黄色くなる・臭くなるといった、いわゆる「3K問題」が起こりがちです。せっかく美味しく炊いたお米でも、時間が経つにつれて風味が落ちてしまいます。

炊飯器で炊いたご飯も、陶器のおひつに移して保存すれば、余分な水分を吸収してベタつきを防ぎ、温め直すとその水分を戻してふっくら。炊飯器の保温よりも、美味しさを保つ方法として理にかなっています。

炊飯器派の方でも、「ご飯の美味しさを最後まで楽しみたい」と思ったら、陶器のおひつを試してみる価値があります。

陶器のおひつは、見た目は素朴ですが、とても理にかなった道具です。

「残したご飯も炊き立ての美味しさで味わいたい」――そう感じている方は、ぜひ陶器のおひつを試してみてください。

Post Date:2025年9月13日 

普段使いの一本に+表現力 ― PILOT エラボー

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟

Custom 743 FA(フォルカン)を購入して、「次のELABO(エラボー)で、軟調ペン先は最後にしよう」と考えていました。

そんな折、PILOTが2025年10月1日から価格改定を行うというニュースが入り、エラボー(樹脂軸)も6,000円の値上げ対象に。

現在発売されているエラボーは3代目で、2009年に登場しました。発売当初の価格は 18,000円(税別)で、2024年の価格改定まで15年間も価格は据え置かれていました。

しかしそこからわずか2年の間に3度の価格改定が行われ、2025年10月1日に 32,000円(税別)、税込では35,200円となります、、。

3代目エラボー価格遷移
税抜 消費税率 税込
2009年 3代目エラボー 18,000円 5% 18,900円
2014年04月01日 18,000円 8% 19,440円
2019年10月01日 18,000円 10% 19,800円
2024年01月01日 22,000円 10% 24,200円
2024年10月01日 26,000円 10% 28,600円
2025年10月01日 32,000円 10% 35,200円

値上げ前のいまをチャンスと捉え、思い切ってエラボーを駆け込みで手に入れました。


PILOT ソフト調ニブの系譜

PILOTは「ソフトニブ」と呼ばれる軟調ペン先を多数ラインナップしています。

代表的なのは SF(細字軟)・SFM(中細字軟)・SM(中字軟) といったタイプで、通常のペン先にクッション性のある『しなやかさ』を加えた設計になっています。

軟らかすぎないため、普段の筆記や長時間の使用にも最適で、扱いやすい軟調ニブです。

一方で、FA(Falcon nib)エラボー専用ニブ は、筆圧を加えることでペン先が大きくしなり、細字から太字まで自在に変化させることができます。

「はね・はらい・とめ」といった毛筆的な表現を得意とし、通常のソフト調ニブよりもはるかに豊かな表現力を発揮します。


パイロット軟調ペン先(SF・SFM・SM)の特徴

パイロットの軟調ペン先(SF・SFM・SMなど)は、基本的な形状は通常のニブと同じですが、わずかに柔らかさを加えた設計になっています。

Custom74/742/743、Custom Heritage 912 などで選択できます。

PILOTソフト調のペン種

フォルカンやエラボーのように大きくしなるわけではなく、柔らかいタッチで心地よい筆記感が魅力です。字幅のバリエーションも豊富で、細字から中字、太字まで用途に合わせて選びやすく、日常的な筆記に適しています。

ダイナミック表現力を求めるというよりは、普段の書き心地をより快適にしたい人にぴったりの選択肢です。

さらに、ペン先が適度にしなることで長時間の筆記でも手が疲れにくく、手紙やノート、仕事での使用にも安心して使える点が評価されています。

つまり、パイロットのソフトニブは「表現力」よりも「心地よさ」を重視する人にとって、最も扱いやすい軟調ペン先だと言えます。

金ペン軟調万年筆については下記の記事をご覧ください。


FA(フォルカン)ニブの特徴(Custom 743/742など)

フォルカンは、Custom 743では15号、742では10号という大きなサイズのペン先を持ち、しなり幅が非常に大きいのが特徴です。

ペン先に字幅のバリエーションはなく、筆圧によって細字から太字まで自在に操ることができます。「はね」「はらい」「とめ」といった毛筆のような表現を得意とし、文字に力強さや抑揚を与えることができます。

一方で、インクフローが非常に豊かであるため、紙質によってはにじみや裏抜けが起こりやすい点には注意が必要です。

また、表現力の高さは大きな魅力ですが、日常の細かいメモや長時間の筆記では扱いにくさを感じることもあります。

フォルカンは、実用性よりも表現力を優先する書き手に向いた、個性的なペン先です。

Custom 743 FAニブ(フォルカン)についてのレビューはこちらをご覧ください。


エラボーの特徴

エラボーには金属軸と樹脂軸の2種類がありますが、どちらもエラボー専用に設計されたニブで同じものを備えています。

エラボーは、フォルカンほど大きなしなりはなく、柔らかさはやや控えめですが、その分コントロールしやすく安定感のある書き味が特徴です。

字幅のバリエーションも豊富で、SEF(極細)・SF(細字)・SM(中字)・SB(太字) の中から用途や好みに合わせて選ぶことができます。

普段使いで安定した筆記を保ちながら、必要なときには文字に表現力を加えることができるため、日常と表現性をバランスよく両立できる一本といえるでしょう。

また、フォルカンに比べて扱いやすいため、初心者から中級者まで幅広い層におすすめできるのも魅力です。

エラボーは、ソフトニブとフォルカンの中間的な位置付けにあり、実用性と表現力の両方を求める人にとって最適な選択肢となります。


エラボーのペン先形状

エラボーのペン先は、その形状に大きな特徴があります。海外ではファルコン(はやぶさ)という名前で販売されていますが、根本から先端にかけて大きく湾曲していて、中程で隆起する、猛禽のクチバシのような独特の形状に加工されています。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のペン先

ペン芯はフラットで櫛溝がないのが特徴です。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のペン芯

筆圧を加えるとニブがしなるように開き、細字から太字まで滑らかに変化させることができ、毛筆のような抑揚ある筆跡を生み出します。

さらに、中央の切り割り(スリット)が通常のペン先よりも長く設計されている点も特徴的です。この長いスリットによって柔軟性が高まり、軽い力でも『しなり』やすくなっています。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のスリット

ただし、フォルカンほどの極端な動きではなく、適度な抑えが効いているため、安定した書き味を保てるのがエラボーならではの魅力です。

フォルカンとの比較です。同じしなりを作り出すニブですが形状は大きく異なります。

FAニブとELABOの比較

実際にエラボーを使ってみて(レビュー)

エラボーの第一印象は「華奢?」というものでした。他のパイロットの万年筆と比べると、やや細く短く、握った感触もスリムに感じます。

万年筆軸径長さ重さ
ELABOφ14.4mm137mm18.0g
Custom74φ14.7mm143mm17.4g
Custom Heritage912φ15.7mm137mm20.0g
Custom 743φ15.7mm149mm25.0g

特にフォルムが似ているCustom Heritage912と比べるとかなり痩せっぽちです。

Custom Heritage 912 と ELABO の比較

肝心の書き味ですが、フォルカンはしなり幅が大きく、筆圧のコントロール次第で線が劇的に変化します。一方エラボーは、そのダイナミックさが抑えられており、「しなるけれど書きやすい」万年筆という印象です。

また、軟調ペン先のSM(中字軟)と比べると、エラボーには明確なしなりがあり、字に表現力を加えられます。

フォルカンやソフトニブと比べると、エラボーの魅力は「柔らかさ」「表現力の幅」「扱いやすさ」のバランスにあります。

軽く筆圧を加えると線に表情が生まれますが、フォルカンほどの大きな変化ではなく、安心してコントロールできる範囲に収まっています。

インクフローも過剰ではなく安定しており、長時間の筆記でも疲れにくいのは大きな利点です。

フォルカンが「豊かな表現力を発揮する一本」だとすれば、エラボーは「日常の筆跡に静かな彩りを添える一本」と言えるでしょう。

エラボーは、手帳やノートなど、細かい字を多く書く毎日の筆記にピッタリです。


どんな人におすすめか

エラボーは、万年筆らしい「筆圧をかけない書き方」ができないと扱いづらさを感じる万年筆です。そのため、まったくの初心者よりも、ある程度万年筆に慣れた人に適しています。

ただし、金ペンの価格高騰を踏まえると、万年筆デビューをエラボーで飾るという選択肢も十分に考えられます。その場合は、まず「万年筆の正しい持ち方」を意識することから始めてください。

ソフトニブ以上にニュアンスを表現できる一方で、フォルカンほど大きなしなりはないため、ノートや手帳など日常の筆記で自然に文字に味わいを加えられるのが魅力です。

また、「フォルカン(FAニブ)が気になるけれど、自分に使いこなせるかが不安」という人にとって、適度な表現力で扱いやすいエラボーは最適な選択肢です。


万年筆の持ち方

筆圧をかけない書き方をするには、万年筆を軽く持つことが大切です。強く握るのではなく、人差し指と親指で軽く支えるのが正しい持ち方です。

万年筆の持ち方をGPT5で生成してみました。

万年筆の正しい持ち方
万年筆の正しい持ち方:Created by GPT5
  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. 中指の横腹親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. 親指人差し指で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

下の例では、ペンを持つ指に力が入りすぎて、人差し指が反り返ってしまっています。実は、自分も以前はこのような持ち方をして書くときは力が入っていました…。

ペンを持つ手に力が入ってしまっている例:Created by GPT5

書道家の大江静芳氏の動画を参考に、万年筆の正しい持ち方を身につけましょう。


まとめ 〜普段使いの一本に+表現力〜

Custom 743 FAのようなダイナミックな表現力も魅力的ですが、エラボーは日常に優しく彩りを添えてくれます。今回は手帳用の万年筆として細字を選んだため、字幅の変化はさらに控えめに感じます。

ELABOの筆致

まさに「普段使いの一本に+表現力」という言葉がふさわしい存在だと感じました。

ソフトニブよりも一歩深い表現を楽しみたい人、フォルカンほどのクセは要らないけれど柔らかさを求めたい人にとって、エラボーはちょうど良い答えになるでしょう。

普段使いの一本にさりげない表現力を加えてくれる ーー それがPILOT ELABO(エラボー)です。

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