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Post Date:2025年7月28日 

フォルカンで書く、ゆっくりの美学

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

PILOTのCustom Heritage 912 SM を手にして、「万年筆の書き方」を初めて意識するようになり、「書くことの楽しさ」にも惹かれていきました。

そこから、「もっと美しく書きたい」という気持ちが芽生え、行書の練習を始めることに。

軟調ペンで紙の上をなぞるように書く、そのなめらかな筆致は、行書にぴったりだと感じていました。

ところが、WANCHERの小太刀ニブに出会って、字幅の変化の面白さと表現の奥深さにハッとさせられたのです。

小太刀のしなやかな書き味を楽しんでいるときに、ふと頭をよぎったのが――「そういえば、PILOTのFA(ファルカン)って、どうなんだろう?」


フォルカン(FA)ニブとは?筆のようにしなる特殊ペン先

「フォルカン(FA)」は、パイロットが開発した特殊ペン先のひとつです。筆のようなしなりと、線に強弱をつけられる表現力で、多くの書き手に支持されています。

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

フォルカンニブの語源と形状

「Falcon(ファルコン)」とは、英語で「ハヤブサ」を意味します。その名の通り、ペン先はハヤブサのくちばしのように細く長く湾曲した独特の形状をしています。

Custom 743 FA と Heritage 912 SMのペン先を比較する

この形により、スリット(ペン先の割れ目)が通常より深く、しなりやすく設計されているのが特徴です。筆圧をかけるとペン先が左右に開き、インクの出方が変化して線が太くなり、筆圧を抜けば細くなる ― そんな筆のような書き味を万年筆で実現しているのが、フォルカンニブです。


FAニブと軟調ペン先の違い

パイロットの SM(Soft Medium)や SF(Soft Fine)など、“S”のついたペン先は「軟調ペン先」と呼ばれています。

これらは、しなやかさとクッション性が特徴で、長時間の筆記でも手が疲れにくく、万年筆初心者にも扱いやすい設計です。

一方で FA(フォルカン)ニブは、筆圧をかけるとスリットが左右に大きく開き、字幅に明確な変化が生まれるように作られています。

筆圧でスリットが広がり太い筆致となるフォルカン

そのしなりを活かして、線に“表情”をつけることができる、表現重視のペン先なのです。

下表は、フォルカン(FA)と軟調ペン先(SM,SFM,SF)の違いです。

項目FA(フォルカン)ニブ軟調ペン先(SM, SFM,SF)
線の強弱表現◎ 筆圧で細〜太まで大きく変化する△ 緩やかに変化するが基本は一定
しなり◎ よくしなる。スリットが大きく開く◯ やわらかく沈み込む感覚。スリットの開きは小さい
書き味表現力が高く繊細。筆のような筆致表現が可能なめらかでクッションのある書き心地。長時間筆記に向く
扱いやすさ△ 慣れが必要。筆圧やスピードのコントロールに注意◎ 万年筆初心者でも扱いやすい

フォルカンニブには、筆圧によって細〜中〜太の線を描き分けることができます。


フォルカンニブを搭載した主なモデル

フォルカン(FA)ニブを搭載できるパイロットの日本国内向けモデルは、以下の3つです:

  • Custom(カスタム) 743 FA(14K・15号ニブ)
  • Custom(カスタム) 742 FA(14K・10号ニブ)
  • Custom Heritage(カスタム ヘリテイジ) 912 FA(14K・10号ニブ)

※「14K」とは、金の含有量を表す記号です。Kは Karat(カラット) の略で、金の純度を示す単位です。24Kを純金(100%)とし、14Kは24分の14、すなわち約58.3%の純金を含んでいることを意味します。

モデル名ペン先
サイズ
FAニブ
対応
備考
Custom 74315号✅ありパイロット唯一の15号 FAニブ搭載モデル。しなりが強く、線の強弱を出しやすい
Custom 74210号✅あり743よりやわらかさは控えめ、適度なしなりと安定した筆記バランス。
Custom Heritage 91210号✅あり742と同じく10号FAニブ、742よりもコンパクトで軽量・細身

Custom 742とCustom 912は同じ10号FAニブですが、デザインが大きく異なり、書き味やバランスに微妙な違いがあります。以下はその比較表です。

項目Custom 742 FACustom Heritage 912 FA
ペン先10号 FA(共通)10号 FA(共通)
軸の形状バランス型ベスト型
最大軸径約14.5mm約13.5mm
全長(キャップ付き)約146mm(やや長め)約137mm
重量(インクなし)約24g(やや重め)約19g
筆記バランスやや重めで後ろ寄り(胴軸側に重さあり)やや軽く、前重心(指先に近い)
装飾トラディショナルな金モダンでシンプルな銀
コンバーターCON-70(共通)CON-70(共通)

行書を練習するのに最適なFAニブを持つ万年筆は?

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

今回、FAニブの万年筆を購入する目的は「行書を練習すること」。その観点で、3モデルを「行書適性」で比較してみました。

モデル名適性理由・特徴
Custom 743 FA最適15号FAニブは筆のようにしなり、線の強弱が自在。はね・はらいが自然に出せる。漢字の表現に最も適している。
Custom 742 FA高適性10号FAニブ。適度な重量感と安定した筆記バランスで、とめ・はね・はらいが決まりやすく、行書に非常に向いている。
Custom Heritage 912 FA良い同じ10号FAニブ。軽快で扱いやすく、日常筆記としての行書にも適している。やや速書き向き。

当初は Custom 742 FA にしようかと思っていましたが、「ペン先が大きい方が軟らかい」というこれまでの経験と、PILOTの15号ニブの期待から、最終的に Custom 743 FA をポチり。


価格改定について

2024年10月1日より、パイロットの価格改定で、

  • Custom 742 / Custom Heritage 912:26,400円 → 33,000円
  • Custom 743:39,600円 → 44,000円

と、かなりの値上げ幅ですが、ECでは割引価格で購入可能です。

また、パイロットのCustomシリーズは量産型で品質も安定しているため、信頼できるショップであればネットでの購入でも安心です。


Custom 743 FAを使ってみて

Custom 743 FAのペン先は、軟らかすぎず、ちょうどいいしなり具合です。少し筆圧をかけることで字幅に大きく変化を出せます。

字幅の変化が楽しめる14K 15号フォルカン

体感としては、ペン先の軟らかさは以下の順で感じられます:
Custom Heritage 912 SM < Custom 743 FA < Platinum #3776 SF(細軟)

いちばん軟らかい #3776 SFは、少しの筆圧で大きくしなりますが、字幅は大きく変化しません。

一方、742 FAは、筆圧をほんの少しかけるだけでペン先がぐっと開き、線がふわりと太くなる。力を抜けば、スッと線が細く戻る。この「入りと抜きの動き」が心地よい筆致です。

反対に、強い筆圧で書く方には不向きかもしれません。軽やかなタッチでリズムよく書くときに、その魅力が際立ちます。


普段使いは軟調ペン、表現したいときはFA

PILOTの軟調ニブ(SMやSFM)は、どちらかというと日常的な筆記やメモに向いています。少し速く書くような場面でも、ペン先がスムーズに追従してくれるのが魅力です。

そうした特性から、Custom Heritage 912 は、ジャーナリングなど日々の記録に最適な一本といえるでしょう。

それに対して、フォルカンニブは「丁寧に書こう」という気持ちにさせてくれます。書くスピードは少し落ちるけれど、その分、書くことの楽しさや奥深さを感じられる。そんなペン先です。そして字の表現力を高めてくれるのでまさに行書の練習にピッタリな万年筆です。


行書に適した万年筆とは

最後に、自分が所有している万年筆の中から、行書に適していると感じたモデルを比較してみました。

モデル名線の表情しなり感書き味の特徴行書への適性
Pilot Custom 743 FA◎(筆のようにしなる)筆圧で線が変化、とめ・はね・はらいもダイナミックに表現できる最適
WANCHER 小太刀ニブ✕(しなりはない)筆圧とペン先の角度で、線の変化を自在に表現高適性
Custom Heritage 912 FA◯(自然なやわらかさ)軽く扱いやすく、筆圧で少し線に変化が出せる良い
WANCHER 渓流ニブ✕(しなりはない)やや太めの字幅で、滑らかに線の強弱が出せる良い
Platinum #3776 SF◎(ふわりとした柔らかさ)クッション感のある柔らかさ。一部向く

行書に適した万年筆を選ぶとき、ポイントになるのは「線の変化のつけやすさ」だと感じています。

Custom 743 FAのように、しなりによって筆圧をそのまま線に反映できるモデルは、まさに筆のような感覚で書くことができます。一方、小太刀ニブのようにしなりがなくても、筆圧や角度によってダイナミックな線が引けるタイプも魅力的です。

何にしても「筆圧をかけずに書く」という、万年筆本来の書き方がベースになります。

まずは少し細めの軟調ペンで、軟らかいペン先の感覚に慣れるところから始めるのが良いのではないでしょうか。


やっぱり一本差しのケースを

新しく迎えたCustom 743 FAにも、以前こちらで紹介したFREESEの一本差し万年筆ケースを購入しました。

革の品質には多少のばらつきがありますが、1,000円とは思えないクオリティです。裏地には肌触りのよい柔らかなスエードが使われていて、しっかりと万年筆を守ってくれます。作りはシンプルですが、見た目も悪くありません。

ディープグリーン(プロギア)、ブラウン(#3776)、ブルー(Heritage 912)、レッド(Custom67)と使ってきたので、今回はブラックを選びました。


次はエラボー、、、?

PILOTのソフトニブ、そしてフォルカンと試してきたので、「自然な書き味でファンも多い」と言われる ELABO(エラボー)も、次はぜひ使ってみたいところです。

ソフトニブでは中字を選んだので、エラボーを買うなら細字?金属軸より樹脂の方が軽くてよい?

嗚呼、物欲の神が騒いでいます……。

Post Date:2025年6月29日 

ノート以上、ノート未満。紙を“考える道具”に変える Paper Jacket FLEX

Paper Jacket FLEX と仲間たち

パソコンやスマホで何でも記録できる時代にあっても、「手書き」で考える時間には特別な価値があります。書くことで思考は進み、ペン先が紙の上を走ると、頭の中が少しずつ整理されていきます。

そんな手書きの良さを日常に取り入れたいけれど、ノートにびっしりと書き残すほどでもない。むしろ、アイデアの断片や思考のプロセスは、「書いては捨て」「書いては捨て」を繰り返して育てていきたい!

そんな、残すより、考えるためのツールが、「ノート未満、でもノート以上」という新しいノートの形です。

  • コピー用紙を、“思考の道具”に変える
  • “綴じないノート”で、発想はもっと自由に
  • ミニマルに、スマートに持ち歩く

この共通コンセプトのもとに生まれた、ノートのようでノートでない、スマートなプロダクトがこちらの3商品です。

  • PAPER JACKET® FLEX(BUTTERFLY BOARD)
  • SlideNote(研恒社 PageBase事業部)
  • CLIPNOTE(コクヨ)

先ずはその中でも、「最強ツール」とも言える存在——バタフライボードの PAPER JACKET® FLEX からレビューしていきます。


Paper Jacket FLEXを選ぶ理由

これまで「バタフライボード」や「バタフライボード Notes」など、バタフライボード社の製品を使ってきましたが、どれも製品コンセプトが一貫して明快であることに魅力を感じています。

PAPER JACKET® FLEX もその例にもれず、コピー用紙をマグネット × テコの原理で“ジャケット”のように包み込み、ノートとして使える設計になっています。

Paper Jacket FLEX のクリップ部分は薄い

同じようなコンセプトを持つSlideNoteやCLIPNOTEと比べても、“書く”という本質的な機能において、PAPER JACKET® FLEX が“最強”と呼べる理由があります。

  • フレックスカバーは360度開閉可能。フラット性に優れて折り畳んでも書きやすい。
  • 立ったままでも快適に書ける硬さがあります。
  • 挟む部分が少ないので無駄なく書くことができます。
Paper Jacket FLEX - 360度開閉可能なカバーで抜群のフラット性

Paper Jacket FLEXは書くことに集中できる

PAPER JACKET® FLEX を使ってまず感じたのは、「紙に書く」という行為に集中できる心地よさです。どのページも180度フラットに開くことができるMDノートを愛用していますが、それに近い満足度があります。

Paper Jacket FLEXは書くことに集中できる

これは、単なるペーパーホルダーではなく、“書くための道具”としての完成度が高いからこそ得られる体験だと思います。


✅ 安定感があるから、どこでも書ける

立ったまま、膝の上、電車の中、カフェの狭いテーブル、どんな場所でもしっかりとした書き心地が得られるのは、ジャケットのボードとしての硬さのおかげ。A3用紙を挟んで広げて使えば、持ち歩き用のミニホワイトボードにもなります。


✅ 用紙の入れ替えがスムーズでストレスがない

ノートやリング式の綴じ具と違い、“マグネット×てこ“の構造により、1枚の用紙でも30枚の束でもしっかり固定。「差し替えたい」「まとめたい」「順番を変えたい」と思った瞬間に、スッと対応できるのも大きな魅力です。


✅ 書きやすさを損なわない構造

綴じ部分が非常にスリムなので、紙の端までしっかり書けるというのも見逃せないポイント。書く面を無駄なく使えることが、ストレスの少ない筆記につながっています。

Paper Jacket FLEX は、こんなシーンにぴったり

  • 思考整理やアイデア出しに使うラフなスケッチ帳として
  • 会議メモやタスクの一時的なまとめ紙として
  • カフェの狭いスペースや、公園の椅子など書くスペースがない場所でも活躍

⚠️ Paper Jacket FLEXの気になる点

PAPER JACKET® FLEX は機能的には完成度の高い非常によくできた製品ですが、実際に使っていて「もう一歩」と感じた点をいくつかあげておきます。


ジャケットの素材がややチープに感じる

素材はPVC(ポリ塩化ビニール)と記載されていますが、見た目・手触りともに「ザ・ビニール」といった質感で、正直チープな印象を受けます。さらに、素材が少し撓んでしまいます。

機能的には問題ないのですが、手に取ったときにもう少し“道具としての所有感”や質感の高さがあれば、より愛着が湧きやすく、長く使いたくなると感じました。


ジャケットを開くときの“つまみ”が気になる

ジャケットを開閉する際に指をかける“つまみ”部分のデザインも、正直チープな印象があります。開けやすさという点では十分に機能していますが、毎回手に触れる場所だけに、もう少しスマートで洗練された形状だったら嬉しいというのが率直な感想です。

Paper Jacket FLEX つまみのはチープなデザイン

値段が高い、、

A5版で3,850円、A4版では4,400円という価格は、コピー用紙を挟んで使うホルダーとしては、やはり高めの印象を受けます。もちろん、使い込んでいく中で機能性の高さや自由度には十分価値を感じられるのですが、最初に手に取るときの心理的ハードルはそれなりにあります。

この価格帯であれば、もう少し質感やディテールにこだわって欲しかったというのが、率直な気持ちです。


Paper Jacket FLEX - この価格に“価値”はあるか?

PAPER JACKET® FLEX は、決して安い道具ではありません。けれども、「コピー用紙を、どこでも・自由に・スマートに使う」という目的においては代わりになるものがなかなか見つからないという点で、確かに

PAPER JACKET® FLEX は、決して安い道具ではありません。けれども、「コピー用紙を、どこでも・自由に・スマートに使う」という目的において、“唯一無二の道具”ではありませんが、3つの製品の中でも特に“書き心地”に優れていると感じました。

書きたいときにすぐ書けて、終わったらサッと差し替えられる。綴じないからこそ、思考が止まらない。この“紙を使う体験そのもの”に価値を感じられる人には、十分にその価格に見合うプロダクトだと思います。


✅ Paper Jacket FLEX - こんな人にオススメ

  • ノートを「残すため」より「考えるため」に使いたい人
  • 思考の途中段階をどんどん書き出したい人
  • フラットで、どこでも書ける環境を求めている人
  • 道具としての使い心地や機能性にこだわりたい人

おわりに

PAPER JACKET® FLEX は、ノートでもバインダーでもない、“考えるための紙の使い方”を提案してくれるユニークな道具です。すべての人に合うわけではありませんが、「紙を思考のプラットフォームとして使いたい」と感じている人にとっては、とても頼もしい相棒になってくれるはずです。

最後に、今回紹介した PAPER JACKET® FLEX と、同じようなコンセプトを持つSlideNoteとCLIPNOTE、2製品との比較表を掲載しておきます。

項目 / 製品名SlideNoteCLIPNOTEPaper Jacket FLEX
メーカーLIHIT LAB.コクヨバタフライボード
綴じ方スライド式リングレス樹脂製クリップ(ワンプッシュ開閉式)マグネット × てこの原理によるホルダー
素材感・作りプラスチック樹脂PVC
紙の安定性高(しっかり固定)中〜高(最大25枚でも安定)非常に高い(1〜30枚でもしっかり保持)
収納可能な紙の枚数最大30枚最大25枚最大30枚
フラット性❌リングが干渉し完全にはフラット不可⭕やや浮きやすいが比較的フラット✅完全フラット。どこでも書きやすい
対応サイズA5、A4A4A5、A4
価格帯(目安)1,600円(A5)、2,222円(A4)702円3,850円(A4)、4,400円(A5)

持ち運ばないならバインダーもありかも

Paper Jacket の「マグネットで挟む」という機構が非常に使いやすかったこともあり、私は同じコンセプトのセキセイ・クリップボード・ベルポストも併用しています。

セキセイ クリップボード ベルポストのマグネットクリップ部

デザインもスマートで、持ち運ばないならこれもありです。

Paper Jacket FLEX と セキセイ クリップボード ベルポスト
Post Date:2025年4月7日 

【中華万年筆】Hongdian 620 Bent Nib『ミニふでニブ』の魅力

Hongdian 620 Bent Nib ミニふでニブ

つけペンのHocoro 筆文字を持っていますが、筆のように抑揚のある線を生み出すのはとても魅力的です。一方で大きく湾曲したペン先は、扱いが難しいと感じることもあり、ペン先の曲がりがより少ないタイプのBent Nibを試してみたいと思うようになりました。

手頃な価格で、驚くほど多様なペン先に出会えるのが中華万年筆の大きな魅力ですよね。ついつい『これも試してみたい!』と手が伸びてしまいます。そんな中華万年筆の中から、写真で見た感じペン先の曲がりが比較的穏やかそうな『Hongdian 620 Bent Nib』を発見!

実際に使ってみると、Hocoroとはまた違った書き味で、抑揚は少ないながらもペン先の角度で線の表情が変わり、不思議と味のある、個性的な文字が書ける面白い一本です。


Bent Nib(ベントニブ)とは?

「Bent」は英語で、動詞「bend」の過去形・過去分詞であり、形容詞としても使われます。「曲がった」「湾曲した」という意味で「Bent Nib」はペン先が意図的に曲げられている形状です。

Bent Nibの中でも、特に大きく湾曲した形状のものは、日本では『ふでペン先』や、英語圏では『Fude Nib(フデニブ)』などと呼ばれることもあります。具体的には、このような形状をしています。

Jinhao 100 クラシック ベントニブ
【引用】Amazon - Jinhao 100 クラシック ベントニブ

こちらはセーラー万年筆「ふでDEまんねん」のペン先です。

WANCHER x SALOR ふでDEまんねん
【引用】Amazon - WANCHER×SAILOR ふでDEまんねん

そしてこちらWANCHER x 呉竹「長閑万年筆」のペン先です。

WANCHER x 呉竹 長閑万年筆
【引用】Amazon - WANCHER x 呉竹 長閑万年筆 - 黒霞

これらのペン先は、写真のように、ペン先が大きく上向きに湾曲しているのが特徴です。

ベントニブの主な特徴としては、以下の点が挙げられます。

  • 筆記角度による線幅の変化: ペンの角度を変えることで、細字から太字まで、様々な線幅を表現できるものが多いです。これにより、筆で書いたような抑揚のある表現が可能になります。
  • 個性的な表現: 手書き文字に独特のニュアンスや個性を加えることができます。
  • 独特の書き心地: ペン先が紙に当たる角度や面積が通常と異なるため、独特の引っかかりや滑り感を持つことがあります。好みが分かれるポイントですが、この書き心地に魅力を感じる人もいます。

ベントニブは、通常の万年筆とは異なる書き味や表現力を求めるユーザーに適しています。特に、手書きの文字に変化をつけたい方、カリグラフィーに興味がある方、インクの特性を最大限に楽しみたい方などにおすすめです。

ただし、ベントニブは一般的なペン先と比べて扱いが難しく、最適な筆記角度を見つけるのに少し慣れが必要な場合があります。また角度によっては紙への引っかかりを感じることもあります。


Hongdian 620 Bent Nib とは?

Hongdian 620 Bent Nib に興味をもったのは、Amazonで見かけたこのペン先の写真がきっかけでした。一般的な大きく曲がったBent Nib(ふでペン先)と比べて、ペン先が上向きに曲がっている部分がとても短く、まるで『ミニふでペン先』とでも呼びたくなるような形状です。

「これなら書きやすく、普段使いの万年筆になる?」そう思ったのが第一印象です。

Hongdian 620 Bent Nib
【引用】Amazon - Hongdian 620 Bent Nib

そして、こちらが実際に購入した Hongdian 620 Bent Nib のペン先です。

Hongdian 620 Bent Nib ミニふでニブ

大きめのペンポイントをペン先に付けて、固まらないうちにグイッと押し付けて曲げたような形状です。紙に当たる部分がやや広く、緩やかにカーブするように研がれているので、この面を紙に当てる角度で線の太さが変わるのだと思います。

Hongdian 620 Bent Nib ミニふでニブ

この形状は、セーラー万年筆の「hocoro 筆文字」と比べると、その違いがよく分かります。

hocoro 筆文字 と Hongdian 620 Bent Nib ミニふでニブ

hocoroのペン先は大きく反り返っていますが、Hongdian 620の曲がり具合はそれよりも穏やかです。それでも、先端がしっかり上を向いています。

こちらはニブの上からの写真です。

Hongdian 620 Bent Nib ミニふでニブ

ニブには1997 Hong Dianと刻印がありますが、その下は読めません。Bent NibにはF(細字)やM(中字)といった字幅を示す刻印はありません。

仕様についても見てみましょう。

  • 長さ(収納時): 約 136 mm
  • 太さ(最大径): 約 14 mm (グリップ部分は約13mm)
  • 重さ: 約 34 g
  • 材質: 金属(具体的な種類は不明)

細めのボディですが、金属製のため適度な重みがあります。カラーバリエーションには、自分が購入した銀色(シルバー)以外に、ライトグリーン赤色(レッドメタル)があります。キャップはネジ式なので密閉性が高いので、インクが乾いて書けなくなることもなさそうです。またコンバーターが付いているのでインクを充填すれば直ぐに使えます。


書き味はどう違う? Hocoro 筆文字 vs Hongdian 620 Bent Nib 書き比べ

前の章でペン先の形状の違いを見ましたが、ここでは実際にセーラーの「hocoro 筆文字」と、私が『ミニふでニブ』と称する Hongdian 620 Bent Nib の書き味を比べてみます。

まず、ペン先の角度によってどれくらい線の太さが変わるか見てみます。

  • Hocoro 筆文字は、ペンを立てれば細線、寝かせれば極太線と、ダイナミックに線幅が変化します。まさに筆で書いたような表現力です。変化の幅で言うと、感覚的には一般的な万年筆の中字から太字くらいまでをカバーします。
  • Hongdian 620『ミニふでニブ』も、ペンを立てれば細めに、寝かせれば太く書けます。しかし、Hocoroと比べるとその変化はかなり穏やかです。極端な太い線は出ませんが、変化が緩やかな分、線幅をコントロールしやすいというメリットがあります。こちらは細字から中字の範囲での変化が中心です。

実際に同じ文字を書いて並べてみると、その表現力の差は一目瞭然です

hocoro 筆文字 と Hongdian ミニふでニブの比較

Hongian 620 Bent Nib は、ペン先の曲がりが穏やかな分、Hocoro 筆文字よりも一般的な万年筆に近い感覚でペンを運べます。書き出しの引っかかりも少なく、スムーズに書けます。筆文字と比べると、格段にコントロールしやすいと感じました。

また字幅が細いので、細かい字でも字が潰れることがありません。手帳やノートなどにも使える万年筆です。


まとめ

Hongdian N8(ロングナイフニブ)、Jinhao Dadao 9019(心電図ビッグニブ)に続く、中華万年筆 第3弾として Hongdian 620(ミニふでニブ)の紹介でした。

Hongdianの特殊ニブは、ロングナイフニブも、今回の『ミニふでニブ』も、期待以上、お値段以上の価値を提供してくれます。特に、この『ミニふでニブ』は、ユニークな書き味でありながら扱いやすく、手帳のメモ書きもできる細い字幅は、使い勝手がよく、普段使いができる万年筆です。

Bent Nibに興味がある方、手書きの字により個性を加えたい方には、まさに一本持っていて損のない万年筆と言えるでしょう。

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