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2010年5月18日

顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その3)

暫く間があいてしまいましたが、今回は、ロックイン戦略の3回目としてコミュニティ・ロックインとシリーズ・ロックインの説明となります。

3回に分けて7つの顧客ロックイン戦略について説明をしていますので過去記事については下記を参照願います。

第1回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム

  • インティマシー・ロックイン
  • メンバーシップ・ロックイン

第2回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その2) 

  • コンビニエンス・ロックイン
  • ブランド・ロックイン
  • ラーニング・ロックイン

第3回 顧客ロックイン戦略-CRMの戦略フレーム(その3)

  • コミュニティ・ロックイン
  • シリーズ・ロックイン

参考にした文献は下記になります。

2001年のHBRに掲載された「顧客ロックイン戦略」。著者は、NRIの中川理氏、日戸浩之氏、宮本浩之氏で、7つのロックイン戦略についてわかりやすく記載されています。

ハーバードビジネスレビューは、単価の高い雑誌ですが、たまに読みたくなる記事が掲載されます。過去記事は、バックナンバーを購入してもよいですが、ハーバード・ビジネス・ライブラリーやブックネストから単体の記事として購入することもできます。(2020.1.6 削除)

今回、ブックネストを使ってyukiセレクションに顧客ロックイン戦略を紹介しておりますので、興味がある方は、購入して全文を読んでみてください。(2020.1.6 削除)

バックナンバー(電子版)を購入するか、ハーバードビジネスレビューを定期購読してDHBRオンライン会員になると、こちらから読めます。(2020.1.6 追記)

また顧客ロックイン戦略については、ダイヤモンド社発刊の戦略実践ノートの第一章にも掲載されているので、こちらも参考にしてみてください。

戦略実践ノート
著者: 野村総合研究所 コンサルティング・セクター
出版社:  ダイヤモンド社
発売日: 2004/10/7
価格: ¥1,890


顧客ロックイン戦略

顧客ロックイン戦略の中で、ロックイン戦略とは、顧客との長期的関係を構築するためのさまざまな戦略を、顧客サイドの視点からロジックを組み立て、体系づけたものであり、CRMの概念に体系的な戦略を適用するものであるとあります。下記は、顧客ロックイン戦略について自分の理解でまとめたものです。

コミュニティ・ロックイン

コミュニティへの参加を促し、参加者を増加させることで、他に帰属させない状態を作り出して、より強固に囲い込みを行う方法です。この考え方は、ネットワーク外部性と類似しています。


プロトコル連鎖型

Windowsを購入すると、ワープロソフトはWord、スプレッドシートはExecelというように、プロトコルを媒介として商品の連鎖が作られます。同様に家庭用ゲーム機でもWii-Fitやマリオ目当てでWiiを購入すると、その後購入するソフトは必然的にWii専用のソフトウェアでなければなりません。

この場合、購入者が多ければ、多いほど参入する企業もソフトの数も多くなり、購入者にとってもメリットが大きくなります。またワープロソフトやスプレッドシートに関しては他者との互換性という意味で、デファクトスタンダードとなり優位性が働きます。


ノン・プロトコル型

明確なプロトコルがなくともあるコミュニティで暗黙のルールや標準、常識となることでロックインすることです。コミュニティに属していることで、その事に従わないことへの不安がかきたてられることを利用しています。「女子高生の常識」とか「今年の流行」、「話題のドラマ」などは、これをうまく利用しているのではないでしょうか。最近話題のiPadもプロトコル型とノン・プロトコル型を上手に併用しているのではないかと思います。

またコミュニティという側面では、インターネットの普及により多種多様なコミュニティの形態が出てきて、企業側も単なるロックインとしてだけではなく、マーケティング活動の場や商品開発の場としても活用するようになってきています。また双方向、企業という組織ではなく、個人を見せるといった方法も主流となりつつあります。

パナソニック株式会社が運営する会員サイト「CLUB Panasonic」は、購入者向けのコミュニティサイトですが、購入後のサポートや消耗品の販売だけではなく、新製品の案内、特別販売、購入者のクチコミなど様々なマーケティング活動の場としても活用しているように伺えます。また男性用も発売されたワコールのクロスウォーカー(CROSS WALKER)のスタスタ部(2016年からMyWacaolと統合)は、クロスウォーカーを継続して利用するような仕組み作りができています。その他にもコカ・コーラ パークなどは、飲料メーカーを越えたコミュティを形成しています。

また、企業と消費者が商品開発を行うコラボレ-ティッドマーケティングとしては、無印良品の空想無印などは新しい形のコミュティを成しています。

最近では、毎日新聞社が MAINICHI RT(2013年休刊)という、Twitterで多く読まれた記事をツイートされたコメントと共に掲載するタブロイド紙を発刊しました。リアル媒体とネットを双方向性という形で融合した新しいコミュニティの形だと思います。

これらは、ネット時代の新たなマーケティング手法として注目されているソーシャル・ネットワーク・マーケティングのあり方のひとつですが、Twitterなどは、単にフォローしている、フォローされているという非常に緩い形のロックインです。この緩い関係を継続しながら、購入段階では、その関係性を強固にしなければなりません。

これは過去の購買決定プロセスでは通用しないということを意味します。また顧客との関係を企業主導型でコントロールすることも同時に難しくなっています。


シリーズ・ロックイン

個人的には、一番ロックインされている手法です。

シリーズ・ロックインには、すべてを揃えなければ気が済まないという意識を巧みに利用するシリーズ型と、バージョンアップされていくことによって、過去のデータや学習を無駄にしたくないという意識を利用して継続購入させるステップアップ型があります。


シリーズ型

子供の頃に仮面ライダーのカードが付いたスナックが発売されていました。どのカードが付いているかわからないために必要以上に小遣いをスナックに注ぎ込んでいました。また大人になってからもチョコエッグを大人買いしてしまった経験は私だけではないはずです。

また親の意志ではありましたが、日本文学全集、世界文学全集と毎月1冊づつ本屋に取りにいって長期にわたって全巻を揃えていった記憶があります。

最近も、Amzonで思わず購入ボタンを押しそうになってしまった、Kraftwerk(クラフトワーク)の Der Katalogも、今更ながらデジタル・リマスターでドイツ語バージョンを8枚組として揃えて発売するというのは、シリーズ型ロックインとファン心理を上手く利用している例ではないでしょうか。


ステップアップ型

先日、プレステを押し入れで発見したとツイートしましたが、プレステーションは、個人的にはプロトコル 連鎖型にはならず、ビートマニアやりたさにひたすらビートマニアの新しいバージョンが出る度に買い続けました。

現在使用しているiPhoneも、iPodを何世代か経て、iPod Touchになり、iPhoneへと長きに渡ってステップアップしてきています。この調子だときっとiPadも購入してしまうのではないでしょうか。

前述していますが、ステップアップ型は、過去の遺産(データ)や折角覚えた使い方(学習)などを無駄にしたくないと意識が作用しています。確かに一度、保有しているCDをすべてiTunesに落として管理を始めると、データを移行しなければならないという手間暇を考えるとiPodシーリーズ以外の選択肢はあり得なくなっています。


最後に。。。

3回に渡って記載した顧客ロックイン戦略も今回で最後です。10年近く前に書かれたCRMのフレームワークですが、解釈を少し変えるだけで、いまでも十二分に通用するのではないでしょうか。これぞ螺旋的発展というのでしょうか。

そう考えると、ソーシャル・ネットワーク・マーケティングも過去の購買決定プロセスが通用しなくなってきている新しいマーケティング手法と記載しましたが、これもまた螺旋的発展系なのかもしれません。


今日の一曲

Hejira(ヒジュラ)とは、辞書を引くと、イスラム教徒のモハメッドのメッカからの大移動とありますが、アルバムの邦題は「逃避行」。邦題の付け方にセンスの良さを感じます。

ベースにJaco Pastorius(ジャコ・パストリアス)を迎えて、ジャコパスのベースラインとJoni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)のギター、ボーカルとの絶妙なコンビネーションを堪能できます。

特に、1曲目のCoyote(コヨーテ)は、コーラスのかかったギターとジャコパスのベースラインのコンビネーションがとても素敵です。

Shadows and lightでは映像として、とても楽しげに演奏するジャコパスを観ることができます。

Joni Mitchell
Hejira - Coyote

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