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2014年3月30日

天体双眼鏡で夜空を眺めよう

Vixen REGARO Z7x50

製品についての情報をアップデータしました(2023.6)
また、2020年度版の天体双眼鏡についての記事もアップしています。
象と散歩: 双眼鏡を持って夜空を見上げよう!

「智恵子は東京には空がないといふ。ほんとの空がみたいといふ。」

あまりにも有名な高村光太郎の智恵子抄「あどけない話」の冒頭の一節です。智恵子は故郷の青空こそが本当の空だと言ったようですが、智恵子抄が出版された1941年当時であれば東京でも満天の星空を臨むことができたことでしょう。いまでは街の灯りに影を潜め随分と少なくなってしまいましたが、それでもベランダから空を見上げるとポツリ、ポツリと星を確認することができます。

少なからず男の子には、天体望遠鏡への憧れがあります。アイザック・ニュートンが発明した大きな口径の反射式天体望遠鏡の側面に立ち、星を観察する姿はまさに羨望のまなざしです。

しかし、実際に天体望遠鏡を使ってみると、憧れと現実は異なりました。友人から使わなくなったという天体望遠鏡(残念ながら屈折式)を借りてみたのですが、セッティングには時間がかかるし、星に照準を合わせるのも一苦労。

丁重に返却したときに「簡単に星を観察したいんだったら"天体双眼鏡"がいいよ。」「Vixen(ビクセン)の7x50ぐらいを探してみたら」とのアドバイス。天体双眼鏡?双眼鏡で星が見えるの?


天体双眼鏡

Vixenは日本屈指の光学機器メーカーで古くから天体望遠鏡や顕微鏡といった好奇心を醸成してくれる宝物を手掛けている会社です。他にも天体双眼鏡を販売しているメーカーもありますが、個人的にも小さな海の生き物にはまっていたときにビクセンのミクロボーイという実体顕微鏡にお世話になっていましたので、友人のいう通りに迷わずVixenの双眼鏡を調べてみました。

7×50というのは、倍率が7倍で口径が50mmということでした。これが一般的な天体双眼鏡のスペックのようです。暗い夜空を見るために集光力の高い50mmといった大きな口径の双眼鏡になります。なぜ天体観測用の双眼鏡で7x50が一般的であるかといえば、双眼鏡の性能を表す「ひとみ径」と関係しています。ひとみ径は、

ひとみ径=対物レンズ有効径÷倍率

で、求められます。つまり7x50の双眼鏡のひとみ径は、50mm÷7≒7.1mmとなります。この7mmというのが人間の瞳孔の最大径(暗闇での瞳孔径)とほぼ同じなので、暗い環境でも肉眼と同じ明るさが得られるとされているようです。

しかし、本当に倍率が7倍ぐらいで天体観測ができるのでしょうか?

7倍というのは70m先のものが1m手前に見える倍率です。流石に土星の輪っかも木星の模様も見ることはできませんが、月のクレーターはハッキリと確認できますし、東京の空にもこんなにもたくさんの星があったのかと驚きます。どのくらい星が見えるかといえば、オリオン座の三ツ星の下にあるオリオン座イオタ星を含む小三ツ星がはっきりと確認することができるくらいです。

オリオン座の三ツ星の下にあるイオタ星

さてビクセンの双眼鏡を調べてみると、アルティマ、アスコット、フォレスタの各シリーズに7x50の双眼鏡がありました。当初はフォレスタ ZR7x50WPにしようと考えていたのですが、Amazonで検索しているとREGARO(レガーロ)Z7x50(販売終了)というものを見つけました。このレガーロというシリーズは量販店用のモデルで低価格が売りでした。防水仕様ではありませんが、アウトドアが中心でなければ問題にはなりませんし、性能的には FORESTA(フォレスタ)ZR 7x50(生産中止)とほぼ同じで、とてもコスパの高い双眼鏡でした。

※購入時は¥ 9,950でしたが、現在は Ascot ZR 7×50WP よりも高値で販売されています


天体観測用双眼鏡の選択ポイント

天体観測の双眼鏡の選択のポイントとなるのは、明るさ、レンズ(プリズム)とコーティング、それに視界幅です。7x50の双眼鏡であれば計算上のひとみ径と明るさは同じです。

次にレンズ(プリズム)についてですが、一般的な屈折式の天体望遠鏡は上下がさかさまに見えてしまいます。これが星を探す上での違和感でもあるのですが、双眼鏡はポロプリズム(プリズム2個:左右で4個)で、上下が逆にならないように屈折させて像を正立させます。

Bak4というのは光学ガラスのコードナンバーで、屈折率の高いプリズムで明るくクリアに見ることができます。安価な双眼鏡の場合はBak4よりも屈折率の低いBK7が使用されています。

またコーティングは光の透過率を上げ視野を明るくするためのレンズ加工ですが、マルチコート<フリーマルチコート<PFMコートとランクされています。マゼンタコートは、単層コートです、

下記は、2023年6月現在で、購入可能な7×50の天体双眼鏡の比較表になります。

メーカー Vixen Nikon Kenko MIZAR
製品名 ASCOT ZR 7×50WP AEX 7X50 Artos 7×50 Mirage 7×50 BK-7050
倍率
対物レンズ有効径 50mm 50mm 50mm 50mm 50mm
プリズム材質 BaK4 ポロプリズム BaK4 ポロプリズム BaK4
コーティング マルチコート マルチコート マルチコート マゼンタコート マゼンタコート
実視界 6.4° 6.4° 6.5° 6.8° 5.7°
見掛視界 44.8° 44.8° 43.4° - -
1000m先視野 112m 112m 113.6m 118.8m -
ひとみ径 7.1mm 7.1mm 7.1mm 7.1mm 7.1mm
明るさ 50.4 50.4 50.4 50.4 51
アイレリーフ 17.0mm 17.1mm 18.1mm 20.0mm 20.0mm
至近距離 9.0m 7.0m 10m - -
サイズ(HxWxD) 170×188
×63mm
179×196
×68mm
165×185
×77mm
167×198
×65mm
180×185
×75mm
重さ 1015g 1,000g 880g 790g 840g
防水 防水 防水 防水 なし なし

実視界/見掛視界
双眼鏡を動かさずに見ることができる範囲で広い方が迫力があり見やすい。

1000m先視野
1000m先の視野。2×1000m×tan(実視界÷2)で求まるため実視界によって決まる。

ひとみ径
双眼鏡の明るさを表す目安で、対物レンズ有効径÷倍率で求まります。人間の瞳孔よりも双眼鏡のひとみ径が小さい場合、光が十分に集められないため暗く感じます。直径が大きいほど視界が明るく見えます。

アイレリーフ
双眼鏡を覗くときのレンズから最大位置で15mm以上あれば眼鏡を着用して利用可能

明るさ
アイレリーフの二乗値 (対物レンズ有効径÷倍率)で値が大きいほど明るく見えます。倍率が同じであれば口径が大きいほど明るく見える。

Nikon AEX 7X50 には、BaK4との記載はありません。また、Kenko Mirage 7×50 は、上位機種のBK-7050にはBaK4と記載があるのでBK7が使われているのではないかと思います。


いまどきの星座早見表

天体観測をする上で欠かせないのがコンパスと星座早見表ですが、いまどきはスマホやタブレットのアプリを使った方が賢明です。

星座表iconおススメのアプリは星座表(iPhone版)星座表(iPad版)です。iOS以外でもWindowsアプリ版Android版があり様々なデバイスに対応しています。外出先で天体観測をするのであればスマホ方が便利ですが、タブレット版の方が画面も大きく使い勝手がいいです。無料版でも星の名前や星座を調べる分には十分ですし、GPSとARにも対応しているので夜空の星と重ねながら観測できます。先ずは肉眼でハッキリと見える星を探してから相対的に探していくとわかりやすいかと思います。天体観測には必需品なアプリです。

iPhone版のダウンロード

iPad版のダウンロード

アプリよりもやっぱり本だよねというのであれば、『双眼鏡で星空ウォッチング 第3版』、『星を楽しむ 双眼鏡で星空観察』がおススメです。双眼鏡での天体観測について丁寧に解説されており、季節ごとに双眼鏡で見られる特徴的な天体や星座が図解されています。


REGARO(リガーロ)Z7×50の使用感

REGARO(リガーロ)Z7x50を購入してから1年以上経ちますが、自宅のベランダからiPadを持ちながら季節ごとの星の移り変わりを楽しんでいます。双眼鏡なので準備も手間も必要ありません。ケースから出してキャップを外すだけです。月のクレーターが観察できるだけでも喜んでしまっています。クレーターの観察方法については下述の日経の記事にもありますが、満月では明るすぎて凹凸がハッキリしないので、月が欠けた半月程度のときに観察してみましょう。妙にゴツゴツと立体感があってとてもリアルです。

難点は、やはり重量と手ブレでしょうか。825g の双眼鏡を上に向けて持っていると、次第に手がプルプルしてきます。また7倍でも手ブレが結構気になるので、月のクレーターをじっくり観察するために専用の三脚ホルダーサンワサプライ マルチスタンド(一脚)を購入しました。一脚を選んだ理由は手軽さからです。固定はできませんが手ブレはかなり軽減されます。

とても気に入っている商品ですが、やはり難点は重量です。男性でも重く感じるので女性や子供にとっては重過ぎです。この重さの原因は口径が50mmといった大きな双眼鏡だからです。そしてなぜ7x50の双眼鏡を選んだかといえば、ひとみ径の7.1mmからです。

ひとみ径については、幾つかの記事を読んでいたのですが、SKY&TELESCOPEという雑誌の記事に面白い記載がありました。これによると瞳孔(Pupil)の大きさ個人差があり、9mmの人もいれば、4mmしか開かない人もいる。しかも加齢によって小さくなると。

For one thing, your eye's pupil shrinks in bright light and expands in the dark. Just how big it can get under a starry sky is the subject of much misunderstanding. The ancient dogma on this topic, printed in countless books, says "The human pupil dilates to a maximum diameter of 7 millimeters." Therefore 7 mm is supposed to be the ideal maximum size for the exit pupil of binoculars or a telescope.

This is the reasoning behind the popular 7x50 "night glass" binocular. Divide its 50-mm aperture by its 7-power magnification and you get an exit pupil 7.1 mm across, just about right.

But it ain't necessarily so. Everybody is different.

Some of us have night-owl pupils that enlarge to nearly 9 mm in the dark; others don't make it to 4 mm. After young adulthood there's a gradual downward trend with age — slowly at first, then more rapidly from about age 30 to 60, then slowly again in your later years. But even among people the same age there's a good 3 mm of scatter, so that some 70-year-olds outdo some teenagers.

しかも考えてみれば真っ暗闇の中で天体観測をしているわけではないので、もう少し口径の小さな双眼鏡でも十分に天体観測ができるのではないかとも思えます。また昨年秋に日経の記事にあった「月のクレーター、双眼鏡でも鮮明、秋の天体観測入門」では、6倍の双眼鏡でも鮮明に月のクレーターが観察できるとあります。Vixen(ビクセン)でいえば、6×30の「アトレックライトII BR6×30WP」が該当します。


Vixen アトレックII BR6x30WP

倍率6倍、対物レンズ有効径32mm、ひとみ径は5mmで、明るさ25、重量は500gです。7×50と比べると倍率も口径も小さいですが、家族で楽しむ天体観測用の双眼鏡として考えるのであれば、手ブレも少なくなりますし、軽量モデルの選択はありかと思います。


7×50の天体双眼鏡

2023.6現在、7x50の天体双眼鏡で入手可能なモデルは、下記となります。

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