ジャーナリングを始めるにあたって、速く長時間書き続けられる万年筆を探していました。 14金 軟調中字と21金 中字で悩んだ末、14金 軟調中字のパイロット ヘリテイジ912 SM(ソフトミディアム)を選びました。
しかし、21金のペン先もずっと気になっていたため、物欲の赴くままにセーラー万年筆 プロフェッショナルギア 金 中字も購入。
そこで今回は、14金 軟調中字と21金 中字を実際に使用した書き心地の違いについてレビューします。
プロフェッショナルギアの特徴
セーラー万年筆のフラッグシップモデルであるプロフェッショナルギアは、2003年に発売されました。発売当初の中字の価格は2万円(税別)でしたが、その後、原材料費や人件費、物流費などの上昇の影響を受け、2回の価格改定が行われました。
2020年まで価格が据え置かれていたのも驚きですが、ここ数年で価格が1.5倍に上昇しています。
下図は、ペン先の原材料である金とイリジウム(ペンポイント)の価格推移と、プロフェッショナルギアの価格推移を比較したものです。
※ イリジウムは表を整えるために0.3g単位に変換 |
プロフェッショナルギアの価格改定は、原材料費の高騰からも理解はできるのですが、、、。
21Kのペン先の魅力
プロフェッショナルギアの最大の特徴は、21金のペン先です。セーラー万年筆は1969年以来、50年以上にわたり21金のペン先の開発と製造にこだわり続けている、世界で唯一の21金のペン先を使用する万年筆メーカーです。
高い加工技術とコストの影響が受けいやすい21金のペン先をこの先も提供していってもらいたいと思います。
「プロフェッショナルギア 金」の21金のペン先は、ゴールドとロジウムのバイカラーが美しく、高級感のある仕上がりです。2021年1月製造分から、ペン先の刻印が新しいロゴに変更となり、従来の「1911」の刻印もなくなりました。
ペン先の刻印の21Kの下にある875は、「21金」の金の含有量である87.5%を示しています。
万年筆の金ペンのK表記について
万年筆の金ペンには、14K、18K、21Kなどの記載がありますが、これは金の含有率を表しています。金の純度はカラット(K)という単位で表され、24分率という特殊な基準が使われています。
具体的には、以下のように換算できます。
- 24K = 24/24 = 100%
- 21K = 21/24 = 87.5%
- 14K = 14/24 = 58.3%
数字が大きくなるほど金の含有率が高くなり、より柔らかい書き心地になる傾向があります。
下記は、一般的な万年筆のペン先の金の含有率による違いです。
- 14K:比較的硬めの書き心地で、耐久性に優れている
- 18K:14Kと21Kの中間の硬さで、滑らかな書き心地と耐久性のバランスが取れている
- 21K:柔らかい書き心地で、筆記時の負担が少なく、滑らかなインクフローを楽しめる
セーラー万年筆の21Kと14Kの違いについては下記の説明がありました。
セーラー万年筆の21Kペン先は、しなやかな弾力と安定性を両立するように設計されています。適度な柔らかさによって、軽いタッチで線の強弱やインクの濃淡を表現することができます。また、ペン先の開きを抑えることで、インクフローの安定性を実現しています。
短軸の利点?
プロフェッショナルギアは、他の万年筆と比べて同軸が少し短く、全長129mmです。短軸のメリットは、携帯性の良さです。シャツの胸ポケットにも収まる長さで、持ち運びに便利です。
軸長140mmのパイロット カスタムヘリテイジ912と比較した写真がこちらです。
キャップを外して書くと、掌に収まる長さで「短っ!」と感じますが、尻部にキャップを装着すると全長149mmとなり、筆記に適した長さになります。
また、重心のバランスもキャップを尾部にはめた方が良いです。
プロフェッショナルギア 中字の書き味
プロフェッショナルギアの中字は、インクフローが非常に良好で、筆圧をかけずに速く書いても線がかすれたり、インクが出ないといったことがありません。軽いタッチで素早く長い線を描いても、安定したインク供給が行われていることがよくわかります。
インクフローが良いといっても、パイロット カスタムヘリテイジ 912 ソフトミディアムと比べるとインク量は少なく、中字でも細い線もきれいに書けます。そのため、日本語(漢字)を書くのに適した中字の万年筆と言えます。
フェザータッチと呼ばれているので、21Kはもっと柔らかいだろうというイメージがありましたが、実際に書いてみると、紙へのペン先のタッチは「カスタムヘリテイジ912 SM」の方が柔らかいと感じました。これはインク供給量にも起因していると思いますが、プロフェッショナルギア中字の書き心地をオノマトペで表すと「さらさら」です。「ぬらぬら」とした書き心地を求めるなら「カスタムヘリテイジ912 SM」です。
ペン先の大きさ
下の写真は、パイロット カスタムヘリテイジ912 SMとの比較です。「大判」という表示から、もっと大きいイメージを持っていましたが、ペン先の大きさはパイロットの10号のペン先とほぼ同じです。
違うメーカーで、ペン先のタイプも中字と軟中字の比較となりますが、前述した通り書き心地が違うので、使う人の好みとなってしまいます。
万年筆 | ペン先 | 筆感 | 書き心地 |
---|---|---|---|
Professional Gear | Medium 21K |
さらさら | 硬すぎず柔らかすぎない絶妙なバランス |
Custom Heritage 912 | Soft Medium 14K |
ぬらぬら | 筆圧によって線の太さを変化させることができ、繊細な表現が可能 |
21Kはインク供給量が多くなくても途切れがないという点を考慮すると、ジャーナリングのように速く書き続けるための万年筆であれば、プロフェッショナルギアの方が向いていると考えられます。
プロフェッショナルギアのデメリット
最大のデメリットは価格です。
販売価格は、33,000円(税込)です。Amazonや楽天で安価に購入できる場合もありますが、最初の1本としては、選びづらい価格帯と言えるでしょう。
もう一つのデメリットは、デザイン性の選択肢が少ないことです。
飽きのこないシンプルなデザインで、ボディカラーはブラックのみ、装飾部は金か銀を選択できます。年齢、性別を問わず、長く使える落ち着いたデザインとカラーですが、選択肢が少ないと感じられる方もいるかもしれません。インペリアブラックというカラーも存在しますが、価格はさらに高くなります。
プロフェッショナルギアは買うべき一本か?
LAMY SafariやMD万年筆も書き心地は良いと感じていましたが、14金 軟調中字や21金の中字を使ってみると、素人でもわかる歴然たる差があります。特に、万年筆らしい字が書ける中字のペン先は、価格によって差が大きく出ます。
プロフェッショナルギアの中字は、滑らかで柔らかい書き心地と、鮮明なインクフローを実現し、細かい字も美しく書ける万能的な万年筆です。
プロフェッショナルギア 中字を使えば、道具にふさわしい美しい字を書きたいという気持ちが自然と湧いてきます。
価格はそれなりにしますが、
- 次の万年筆が欲しくなる
- 書きづらいから使うのをやめてしまう
といったことを考えると、初めての万年筆としてもオススメできます。
万年筆選びに迷っているなら、「プロフェッショナルギア 中字」を検討してみてはいかがでしょうか。滑らかな書き心地と鮮明なインクフローが生み出す至極の筆記体験は、あなたの日々をより豊かに彩り、文字を書く喜びを与えてくれることでしょう。