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Post Date:2025年7月28日 

フォルカンで書く、ゆっくりの美学

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

PILOTのCustom Heritage 912 SM を手にして、「万年筆の書き方」を初めて意識するようになり、「書くことの楽しさ」にも惹かれていきました。

そこから、「もっと美しく書きたい」という気持ちが芽生え、行書の練習を始めることに。

軟調ペンで紙の上をなぞるように書く、そのなめらかな筆致は、行書にぴったりだと感じていました。

ところが、WANCHERの小太刀ニブに出会って、字幅の変化の面白さと表現の奥深さにハッとさせられたのです。

小太刀のしなやかな書き味を楽しんでいるときに、ふと頭をよぎったのが――「そういえば、PILOTのFA(ファルカン)って、どうなんだろう?」


フォルカン(FA)ニブとは?筆のようにしなる特殊ペン先

「フォルカン(FA)」は、パイロットが開発した特殊ペン先のひとつです。筆のようなしなりと、線に強弱をつけられる表現力で、多くの書き手に支持されています。

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

フォルカンニブの語源と形状

「Falcon(ファルコン)」とは、英語で「ハヤブサ」を意味します。その名の通り、ペン先はハヤブサのくちばしのように細く長く湾曲した独特の形状をしています。

Custom 743 FA と Heritage 912 SMのペン先を比較する

この形により、スリット(ペン先の割れ目)が通常より深く、しなりやすく設計されているのが特徴です。筆圧をかけるとペン先が左右に開き、インクの出方が変化して線が太くなり、筆圧を抜けば細くなる ― そんな筆のような書き味を万年筆で実現しているのが、フォルカンニブです。


FAニブと軟調ペン先の違い

パイロットの SM(Soft Medium)や SF(Soft Fine)など、“S”のついたペン先は「軟調ペン先」と呼ばれています。

これらは、しなやかさとクッション性が特徴で、長時間の筆記でも手が疲れにくく、万年筆初心者にも扱いやすい設計です。

一方で FA(フォルカン)ニブは、筆圧をかけるとスリットが左右に大きく開き、字幅に明確な変化が生まれるように作られています。

筆圧でスリットが広がり太い筆致となるフォルカン

そのしなりを活かして、線に“表情”をつけることができる、表現重視のペン先なのです。

下表は、フォルカン(FA)と軟調ペン先(SM,SFM,SF)の違いです。

項目FA(フォルカン)ニブ軟調ペン先(SM, SFM,SF)
線の強弱表現◎ 筆圧で細〜太まで大きく変化する△ 緩やかに変化するが基本は一定
しなり◎ よくしなる。スリットが大きく開く◯ やわらかく沈み込む感覚。スリットの開きは小さい
書き味表現力が高く繊細。筆のような筆致表現が可能なめらかでクッションのある書き心地。長時間筆記に向く
扱いやすさ△ 慣れが必要。筆圧やスピードのコントロールに注意◎ 万年筆初心者でも扱いやすい

フォルカンニブを搭載した主なモデル

フォルカン(FA)ニブを搭載できるパイロットの日本国内向けモデルは、以下の3つです:

  • Custom(カスタム) 743 FA(14K・15号ニブ)
  • Custom(カスタム) 742 FA(14K・10号ニブ)
  • Custom Heritage(カスタム ヘリテイジ) 912 FA(14K・10号ニブ)

※「14K」とは、金の含有量を表す記号です。Kは Karat(カラット) の略で、金の純度を示す単位です。24Kを純金(100%)とし、14Kは24分の14、すなわち約58.3%の純金を含んでいることを意味します。

モデル名ペン先
サイズ
FAニブ
対応
備考
Custom 74315号✅ありパイロット唯一の15号 FAニブ搭載モデル。しなりが強く、線の強弱を出しやすい
Custom 74210号✅あり743よりやわらかさは控えめ、適度なしなりと安定した筆記バランス。
Custom Heritage 91210号✅あり742と同じく10号FAニブ、742よりもコンパクトで軽量・細身

Custom 742とCustom 912は同じ10号FAニブですが、デザインが大きく異なり、書き味やバランスに微妙な違いがあります。以下はその比較表です。

項目Custom 742 FACustom Heritage 912 FA
ペン先10号 FA(共通)10号 FA(共通)
軸の形状バランス型ベスト型
最大軸径約14.5mm約13.5mm
全長(キャップ付き)約146mm(やや長め)約137mm
重量(インクなし)約24g(やや重め)約19g
筆記バランスやや重めで後ろ寄り(胴軸側に重さあり)やや軽く、前重心(指先に近い)
装飾トラディショナルな金モダンでシンプルな銀
コンバーターCON-70(共通)CON-70(共通)

行書を練習するのに最適なFAニブを持つ万年筆は?

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

今回、FAニブの万年筆を購入する目的は「行書を練習すること」。その観点で、3モデルを「行書適性」で比較してみました。

モデル名適性理由・特徴
Custom 743 FA最適15号FAニブは筆のようにしなり、線の強弱が自在。はね・はらいが自然に出せる。漢字の表現に最も適している。
Custom 742 FA高適性10号FAニブ。適度な重量感と安定した筆記バランスで、とめ・はね・はらいが決まりやすく、行書に非常に向いている。
Custom Heritage 912 FA良い同じ10号FAニブ。軽快で扱いやすく、日常筆記としての行書にも適している。やや速書き向き。

当初は Custom 742 FA にしようかと思っていましたが、「ペン先が大きい方が軟らかい」というこれまでの経験と、PILOTの15号ニブの期待から、最終的に Custom 743 FA をポチり。


価格改定について

2024年10月1日より、パイロットの価格改定で、

  • Custom 742 / Custom Heritage 912:26,400円 → 33,000円
  • Custom 743:39,600円 → 44,000円

と、かなりの値上げ幅ですが、ECでは割引価格で購入可能です。

また、パイロットのCustomシリーズは量産型で品質も安定しているため、信頼できるショップであればネットでの購入でも安心です。


Custom 743 FAを使ってみて

Custom 743 FAのペン先は、軟らかすぎず、ちょうどいいしなり具合です。少し筆圧をかけることで字幅に大きく変化を出せます。

字幅の変化が楽しめる14K 15号フォルカン

体感としては、ペン先の軟らかさは以下の順で感じられます:
Custom Heritage 912 SM < Custom 743 FA < Platinum #3776 SF(細軟)

いちばん軟らかい #3776 SFは、少しの筆圧で大きくしなりますが、字幅は大きく変化しません。

一方、742 FAは、筆圧をほんの少しかけるだけでペン先がぐっと開き、線がふわりと太くなる。力を抜けば、スッと線が細く戻る。この「入りと抜きの動き」が心地よい筆致です。

反対に、強い筆圧で書く方には不向きかもしれません。軽やかなタッチでリズムよく書くときに、その魅力が際立ちます。


普段使いは軟調ペン、表現したいときはFA

PILOTの軟調ニブ(SMやSFM)は、どちらかというと日常的な筆記やメモに向いています。少し速く書くような場面でも、ペン先がスムーズに追従してくれるのが魅力です。

そうした特性から、Custom Heritage 912 は、ジャーナリングなど日々の記録に最適な一本といえるでしょう。

それに対して、フォルカンニブは「丁寧に書こう」という気持ちにさせてくれます。書くスピードは少し落ちるけれど、その分、書くことの楽しさや奥深さを感じられる。そんなペン先です。そして字の表現力を高めてくれるのでまさに行書の練習にピッタリな万年筆です。


行書に適した万年筆とは

最後に、自分が所有している万年筆の中から、行書に適していると感じたモデルを比較してみました。

モデル名線の表情しなり感書き味の特徴行書への適性
Pilot Custom 743 FA◎(筆のようにしなる)筆圧で線が変化、とめ・はね・はらいもダイナミックに表現できる最適
WANCHER 小太刀ニブ✕(しなりはない)筆圧とペン先の角度で、線の変化を自在に表現高適性
Custom Heritage 912 FA◯(自然なやわらかさ)軽く扱いやすく、筆圧で少し線に変化が出せる良い
WANCHER 渓流ニブ✕(しなりはない)やや太めの字幅で、滑らかに線の強弱が出せる良い
Platinum #3776 SF◎(ふわりとした柔らかさ)クッション感のある柔らかさ。一部向く

行書に適した万年筆を選ぶとき、ポイントになるのは「線の変化のつけやすさ」だと感じています。

Custom 743 FAのように、しなりによって筆圧をそのまま線に反映できるモデルは、まさに筆のような感覚で書くことができます。一方、小太刀ニブのようにしなりがなくても、筆圧や角度によってダイナミックな線が引けるタイプも魅力的です。

何にしても「筆圧をかけずに書く」という、万年筆本来の書き方がベースになります。

まずは少し細めの軟調ペンで、軟らかいペン先の感覚に慣れるところから始めるのが良いのではないでしょうか。


やっぱり一本差しのケースを

新しく迎えたCustom 743 FAにも、以前こちらで紹介したFREESEの一本差し万年筆ケースを購入しました。

革の品質には多少のばらつきがありますが、1,000円とは思えないクオリティです。裏地には肌触りのよい柔らかなスエードが使われていて、しっかりと万年筆を守ってくれます。作りはシンプルですが、見た目も悪くありません。

ディープグリーン(プロギア)、ブラウン(#3776)、ブルー(Heritage 912)、レッド(Custom67)と使ってきたので、今回はブラックを選びました。

Post Date:2024年9月15日 

名前で勘違い、マグナム ソフトタッチはスチール軟調ペン?

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

柔らかく滑らかな書き心地と、万年筆らしい味わい深い表現力に魅せられ、軟調ペン先の万年筆を愛用するようになりました。

軟調ペンとは、強い筆圧でも書きやすい硬めのペン先と異なり、ペン先に弾力性があり、筆圧をかけるとしなる特徴を持つ万年筆のことを指します。これは金の特性を活かしたペン先で、金ペンの本来の書き味です。

しかし、スチールペン先は、金ペン先と比べると硬く、曲がりにくいので、スチールペン先で軟調ペンというのはありません

「それなら、金ペンの軟調ペンにしよう!」と決断できるお財布の余裕があればいいのですが、金ペンはそれなりの値段がするので、最初の万年筆として勧めるのを躊躇してしまいます。

柔らかい書き味が楽しめる手頃な価格帯のスチールペンがあればよいのに。。。

そんな時に、ソフトタッチ半額セール(1,650円)という魅惑的なキーワードに惹かれ、「ディプロマット マグナム ソフトタッチ」を衝動的にポチってしまいました。

「ソフトタッチ」という響きから、Soft Nib(ソフトニブ:軟調ペン)を連想し、「紙へのタッチがソフトなスチールペン先!」と、勝手に期待を膨らませていました。


ディプロマット マグナム のソフトタッチとは?

ディプロマット(DIPLOMAT)マグナム ソフトタッチは、ドイツの老舗筆記具メーカーのエントリーモデルの万年筆です。ディプロマット マグナムには下記の2種類あります。

  • ディプロマット マグナム
  • ディプロマット マグナム ソフトタッチ

実は、マグナム ソフトタッチとは、ペン先の紙へのタッチがソフトというわけではなく、ボディが「ソフトタッチ仕上げ(マット仕上げ)」になっていて、手にフィットしやすいことでした、、、。

マグナムとマグナム ソフトタッチは、機能やインクフロー、書き心地は基本的に同じです。

確かに通常のマグナムは滑らかな光沢のあるボディです。

DIPLOMAT MAGNUM

そしてこちらが、ディプロマット マグナム ソフトタッチです。カラーバリエーションは、ブラックブルーレッドグレーホワイトの5種類です。

DIPLOMAT MAGNUM Soft Touch

完全なる勘違い、、、、。


書いてみて気がついた驚愕の事実

ディプロマット マグナム ソフトタッチには、F(細字)とM(中字)があります。金ペンを使うようになってからスチールペンの中字を手にしなくなり、気に入っていたMD万年筆も使わなくなってしまったので、細字にしました。

ニブは、こんな感じです。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch NIb <F>

ディプロマットのホームページを見ると、マグナムの商品ページにも手作業で作りあげられているとの記載があります。

革新と伝統的な職人技

すべての製造プロセスは手作業です。ディプロマットの筆記具にインスピレーションを感じ、驚きを体験してください。すべての人に書くこと、描くことの素晴らしい体験を提供します。

【引用】Magnum - Diplomat

またホームページに人間工学に基づいたグリップゾーンによって1年生の子供でも使いやすい万年筆だとありますが、グリップ部分は中指にペンを乗せて親指と人差し指で支えやすいような構造になっています。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

にしても、小学一年生から万年筆を使うとは、流石、万年筆の聖地、ドイツです。

LAMMY Safariとは違い、このガイダンスとなる部分の角度がキツくないので、力を入れずに軽くペンを支えるように持てます。軽く握れるので筆圧をかけずに書くことができます。

ディプロマット マグナムのF(細字)は太めの細字で、細めのLAMMY SafariのM(中字)と同じぐらいの字幅です。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch <F>とLAMMY Safari <M>

細からず、太からず、ちょうどいい感じで、書き味も滑らかです。

「あれ、これとっても書きやすいかも」

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch <F>

スチールニブは基本的に硬い書き味ですが、ディプロマット マグナムのニブは比較的滑らかなスラスラとした書き味です。軟調というほどの弾力性はありませんが、僅かながら弾力を感じます。また筆圧をかけなくてもスムーズにインクが流れるので、軽い筆圧で滑らかに書けます。

これは、『調』の称号を与えてもいいかもしれません。

こちらはペン先の裏側ですが、ペン芯からペン先(ニブ)が大きく出ています。ニブを支えている部分が少ないためにスチールペン先でも柔軟性を出せるのかもしれません。

ディプロマット マグナム ソフトタッチのペン先を裏から見た図

ディプロマット マグナム というスチール軟調ペン

ディプロマット マグナム ソフトタッチは、スチールペンでありながら、驚くほど滑らかな書き味とコスパの良さが魅力の万年筆です。軟調ペンを求めているけど、高価な金ペンはちょっと…という方におすすめです。

勿論、ゴールドニブ(金ペン)の軟調ペンと比べてしまうと歴然たる差はありますが、万年筆ならでは書き心地を感じられるコスパの高いスチール軟調ペンです。

インクカートリッジは、欧州規格なので色々なものを使えます。またディプロマット専用のコンバーターもあります。

マグナム ソフトタッチは、写真だと洗練されたモダンな印象ですが、実物はもっとチープな感じです。しかし、このシンプルなデザインとチープな質感には、背伸びをしない謙虚さと堅実さ、そしてテクノポップを感じます。この万年筆であれば、カバンに気軽に放り込み、日常的に使えます。

DIPLOMAT MAGNUM SoftTouch

何よりも、チープな外見からは想像できない、この書き心地を選ぶ価値があると思います。AmazonではF(細字)は、ホワイトブラックブルーが楽天より安価で購入可能です。

是非、ディプロマット マグナム ソフトタッチで調を堪能してください!

Post Date:2024年9月1日 

定番の逸品、#3776センチュリーSF(細軟)で味わう軟調ペン先の世界

Platinum #3776 Century SF

プラチナ万年筆の“軟調ペン先”、「Platinum #3776 センチュリー SF(細軟)」を実際に試してみたい――そう思い、#3776センチュリーの全ニブを試せる「#3776 CENTURY 万年筆試筆台 設置店」を探して訪れてみました

#3776センチュリーSF(細軟)は、細字なのに軽く書くだけでスッとインクが流れ、やわらかく、しなやかな書き味に感動し、思わず物欲の神様が降臨。

……とはいえ、ネットの価格の魅力には勝てず、自宅に戻ってポチることに。

個体差の少ない定番モデルだから、ネット購入でも安心。ロジウム仕上げのブラックダイヤモンド 細軟(SF:Soft Fine) を手に入れました。


軟調ペンとは?

軟調ペン先(ソフトニブ)は、通常のペン先よりも薄めに作られ、ペン先の形状や材料の配合にも工夫が施されているため、柔軟で弾力のある書き心地を提供してくれます。

軟調ペン先の大きな魅力は、その柔らかさを活かした書き心地と表現力です。筆圧をかけるとペン先が広がり、太い線が書けますが、軽く書くと細い線となるため、抑揚がある字を書くことができます。

現在の日本メーカーの定番万年筆は、ボールペン等で強い筆圧が一般化した日本人に合わせているので、強い筆圧で書いても安定して書けるように、あまりしならずスリットが広がらないように硬めの硬質ペン先(ハードニブ)となっています。

しかし、これは万年筆の良さを失っていることにもなります。

万年筆で書いた文字には味わい深さがありますが、これは筆圧、ペン先の角度、筆記速度などの違いによって生まれる以下の要素によって生じます。

  1. インクの濃淡
  2. 線の太さ
  3. 線の抑揚(強弱)
  4. 筆致の柔らかさ

これは、 ペン先が柔らかく字幅が広い万年筆で筆圧をかけずに書くことで生まれる味わいです。硬いペン先細い字幅の万年筆は、ボールペンのように書けますが、万年筆の良さを半減させてしまいます。

この万年筆の本来のよさを実感させてくれるのが「軟調ペン先」です。


#3776 センチュリー 細軟の独特な書き味

#3776センチュリーSFは、同じ軟調ペン先のPILOTのカスタムヘリテイジ912 SM(中字軟) と比べると、筆圧を加えたときに大きくペン先がしなる(湾曲する)のがよくわかります。

しかし、細字ということもあってか、ペン先が大きくしなってもスリットがそれほど広がらず、字幅が大きく変化することなく安定して書けます。それでも、筆圧をかけないときと、かけたときの字幅の違いによって、文字に抑揚を表現することができます。

下の写真は、「大」の横棒だけ筆圧をかけた例です。

#3776 Century SF の字幅の違い

SF(細軟)のペン先は大きくしなりますが、他のセンチュリーのペン先と同様にやや硬めで、書くときに「カリカリ」とした感触があります。特に細かい字を書く際には「サクサク」と軽快に紙を滑るような感覚の中にしっかりとしたフィードバックがあり、繊細で正確な書き心地を提供します。SF(細軟)のペン先は、大きくしなる一方で、#3776特有のしっかりとしたタッチを感じさせる書き心地です。

この「しなり」と「カリカリ」としたペンタッチが、#3776 SF(細軟)特有の独特の書き心地を生み出しています。この大きくしなるペン先では、筆圧をかけ続ける書き方では書きづらいので、筆圧をかけない書き方が求められます。

また、細字の軟調ペン先なので、細く小さな字が書けます。手帳やノートなどに小さな字を書くのに適しています。しかし、ペン先がしなる特性上、速く書くのには不向きです。


#3776 センチュリーのデザイン

#3776センチュリーは、プラチナ万年筆が誇るフラッグシップモデルであり、シンプルでありながらもエレガントなシルエットを持ち、無駄のない直線的なラインが特徴です。このデザインは、クラシックな美しさと機能性を兼ね備えており、時代を超えて愛される普遍的な魅力を持っています。

微かに透けて見えるボディは美しい光沢を放ちます。

#3776 Century ブラックダイヤモンド

ブラックインブラックとブラックインダイヤモンドで悩みましたが、ロジウムメッキ仕上げ(シルバー)の方が、落ち着いた色合いなので、ロジウムフィニッシュ ブラックダイヤモンドを選びました。

#3776 センチュリーは、ペン先の横の張り出しが広くとられているためペン先が大きく見えます。万年筆はペン先が大きい方がカッコよく見えるので、カスタムヘリテイジも5号ではなく、10号の912にしましたが、カスタムヘリテイジの10号と比べても見栄えがいいです。

(左)Custom Heritage912 (右)#3776 Century 14K

#3776のスリップシール機構

万年筆は暫く使わないでいると、インクが出なくなったり、最悪、万年筆が使えなくなってしまいます。

#3776のキャップに搭載されたスリップシール機構は、キャップを閉めるときに空気を遮断する構造になっており、インクが長期間使用されない場合でも、常に書き出しがスムーズです。この機能は、プラチナが他社との差別化を図るために開発したもので、日常使いの万年筆としての実用性を高めています。


パイロットとプラチナの軟調ペン先どちらをファースト万年筆に選ぶべきか?

万年筆本来の書き方である筆圧をかけない書き方を学び、万年筆らしい文字を書きたいのであれば、パイロットのカスタムシリーズのSM(中字軟)がベストチョイスです。

Custom Heritage 912 SM は、ペン先のしなりは少ないですが、筆圧によって字幅に大きな差が生じるため、表現力に富んだ書き味が楽しめます。ペン先のタッチは柔らかく書き味は「ぬらっ」とした感じです。

中字より細字がというのであれば、#3776センチュリーの細軟という選択もありかと思いますが、前述した通りセンチュリーの細軟は独特の書き味です。万年筆を初めて使う方にはカスタムシリーズが無難な選択肢ですが、筆圧をかけない繊細な書き方を楽しみたい方には、#3776センチュリーSF(細軟)が最適です。

#3776 センチュリー SFを書きやすいと感じるためには、筆圧をかけない書き方が必要です。

再掲となりますが、下記は、生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

万年筆の持ち方については、象と散歩: 万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき1本とはを参照してください。


柔らかいペン先を求めて

柔らかいペン先を求めて日本の三大万年筆メーカーであるパイロットとプラチナの14K軟調ペン先、そしてセーラーの21Kの定番万年筆のコンプリートです。

#3776 CENTURY, Custom Heritage912, Professional Gear

さて、次に物欲の神様が降臨するのは、どの万年筆を手にしたときなのでしょうか、、。軟ペン繋がりで、エラボー、フォルカン、長刀研ぎ、それともB(太字)、若しくは外国ブランド?

いやいや、初心に戻って大人な字の習得が先か、、、、。

Post Date:2024年7月7日 

万年筆デビューを成功させる!初心者が選ぶべき金ペン軟調万年筆

Custom Heritage 912 SM

憧れの万年筆を買ったものの、「思ったより書きづらい」と感じたことはありませんか?

実は私も同じでした。ボールペンより筆圧をかけていないつもりでも、万年筆の正しい使い方を理解できていなかったのです。

金ペンの軟調万年筆(Custom Heritage 912 SM)を使うことで、「筆圧をかけずに書く」という感覚を、指先で初めて理解できました。

筆圧を抜いて書くことに慣れると、万年筆がいかに優れた“書く道具”であるかが実感できます。また、ペン先が柔らかければ、中字でも細い字幅で書くこともできます。

筆圧をかけずに書くためには、軽くペンを握れる太めのボディと、柔らかいペン先がポイントです。

逆に、万年筆に慣れていなく筆圧をかけて書く人には、グリップが細く、硬いペン先で字幅が細い万年筆が書きやすい万年筆となります。

万年筆選びに迷っている方や、うまく使いこなせていないと感じる方へ――

筆圧をかけない書き方が自然と身につく、金ペンの軟調万年筆を選んでみませんか。


定番エントリーモデルの14K 軟調万年筆を選ぶ

ファースト万年筆には、定番のエントリーモデルである14K軟調万年筆を選びましょう。

万年筆はもともと筆圧をかけずに書く筆記具でしたが、現代ではシャープペンシルやボールペンに慣れている人が多く、筆圧をかけても書きやすい万年筆が新たな常識となっています。

しかし、万年筆本来の書き味を楽しむためには、筆圧をかけずに書くことを意識することが大切です。初めて万年筆を選ぶ際は、日本メーカーの定番エントリーモデルの中から、14Kの軟調ペン先を採用したものを選ぶのがオススメです。


定番のエントリーモデルから選ぼう!

日本の万年筆メーカーは、日本語の「とめ・はね・はらい」といった漢字の特徴を意識して万年筆を製造しています。定番のエントリーモデルは、長年多くの万年筆ファンに愛されており、ファースト万年筆として間違いのない選択と言えるでしょう。

日本の代表的な万年筆メーカーの定番エントリーモデルの金ペンは以下の通りです(価格は2024年10月1日時点)。

メーカー製品ペン先価格(税込)
パイロットカスタム 7414K 5号¥22,000
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #377614K 大型¥22,000
セーラー万年筆プロフィット スタンダード14K 中型¥17,600
プロフェッショナルギア スリム

数年前までは、少し背伸びをすれば手が届く価格帯だったエントリーモデルの金ペンですが、度重なる価格改定により、2024年現在では発売時の1.6倍から2倍にまで値上がりしています。それでも、「一生モノ」と考えると、購入する価値は十分にあります。

以下は、2019年以降の価格改定履歴です。人件費、物流費、そして万年筆のペン先の金やイリジウムといった原材料価格の高騰で、仕方がないのかもしれませんが、お財布的には厳しくなりました。

価格改定履歴
Custom74#3776Profit
発売時¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)¥10,000(税抜)
2019年¥12,000
(税込 ¥13,200)
¥13,000
(税込 ¥14,300)
¥14,000
(税込 ¥15,400)
2021年¥18,000
(税込 ¥19,600)
2022年¥16,000
(税込 ¥17,600)
2024年¥16,000
(税込 ¥17,600)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
¥20,000
(税込 ¥22,000)
※ 発売年によって税率が異なるので、発売時の価格は税抜価格です

金ペンを使おう!

万年筆のペン先にはステンレスと金がありますが、紙に触れたときの「しなり」が大きく異なります。ステンレス製のペン先は硬いため、たわみを感じられません。

一方、金製のペン先は柔らかく、筆圧に合わせてしなやかにたわむため、滑らかな書き心地が楽しめます。エントリーモデルは14Kですが、金の含有量が多いほどペン先が柔らかくなるため、予算が許せば18Kや21Kの万年筆を選ぶのもオススメです。


軟調ペンという選択

定番のエントリーモデルは、筆圧をかけて書くことに慣れている万年筆初心者でも書きやすいように、ペン先のしなりを少なくし、スリットがあまり広がらないように設計されています。

例えば、パイロット CUSTOMのスペシャルサイトでは、Custom74について以下のように説明されています。

ボールペンの広がりにより、強い筆圧が一般化した日本人に合った書き味を目指したシリーズ。硬いタッチを基本に軟字も用意し、なめらかな書き味を実現。 ペン先は発売当時8種類、6年後の1998年に3種類追加し、現在の11種類に。

【引用】CUSTOMスペシャルサイト

Custom74の前身である、Custom67は、今より「しなり」がある軟らかいペン先だったといいます。時代と共に硬質化しているのは、他メーカーのエントリーモデルの万年筆にも共通する傾向と言えるでしょう。

しかし、金ペン先本来の「しなやかさ」を活かしつつ、筆圧をかけてもインクフローが安定しているだけの万年筆では、万年筆らしさや個性が失われてしまいます。

そこでおすすめしたいのが、ペン先を意図的に柔らかくした「軟調ペン」です。

PILOT Custom Heritage 912 SM(ソフトミディアム)のペン先

軟調ペンは、筆圧によって筆跡に強弱をつけやすく、ボールペンにはない万年筆ならではの感触を味わえます。また、自然と筆圧をかけずに書く習慣が身につくというメリットもあります。

エントリーモデルで軟調ペンをラインナップしているのは、パイロットとプラチナ万年筆です。

メーカー製品軟調ペン先
パイロットカスタム 74SF(細軟)/ SFM(細中軟)/ SM(中軟)
カスタム ヘリテイジ 91
プラチナ万年筆センチュリー #3776SF(細軟)

残念ながらセーラー万年筆には軟調ペンがありません。


パイロット Custom 74

パイロットの創業(1918年)から74年目(1992年)に発売されたカスタム 74は、30年以上愛され続けているロングセラーモデルです。

ペン先は11種類あり、軟調ペン先もSF(ソフト・ファイン)、SFM(ソフト・ファインミディアム)、SM(ソフト・ミディアム)の3種類が用意されています。これだけペン先の種類があると迷ってしまいますが、この11種類を全て試すことができるカスタム74試筆台というのが全国各地にあります。近くにあれば是非軟調ペン先の書き味を体験してみてください。

※ C(コース)とMS(ミュージック)は、27,500円(税込)

パイロットでは、ニブサイズ(ペン先の大きさ)を号数で表しています。Custom 74は14K 5号ですが、10号と15号のサイズもラインナップされています。

ニブサイズが大きくなると金の使用量も増えるため、価格も高くなります(価格は2024年10月1日時点)。

カスタムニブ・サイズ価格(税込)
Custom 7414K 5号¥22,000
Custom 74214K 10号¥33,000
Custom 74314K 15号¥44,000

10号以上のペン先には、SU(スタブ)、FA(フォルカン)、WA(ウェーバリー)といった特殊なペン先もあります。


Custom 74のデザインが好きになれない方へ

カスタム74の特徴である『丸いクリップ』が好きになれませんでした。カスタム ヘリテイジ 91は、同じ14K 5号のペン先ですが、ロジウム仕上げにシルバーのパーツで統一されたシンプルなボディデザインが魅力です。※写真はCustom Heritage 912

Custom Heritage 912 SM

両橋が丸いバランス型のCustom 74に対し、両端が平らなベスト型のHeritage 91は、若干全長が短くなりますが、基本的な仕様は同じです。

比較項目Custom 74Custom Heritage 91
デザインバランス型ベスト型
ペン先14K 5号14K 5号 ロジウム仕上げ
ペン種EF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB
サイズ最大径φ 14.7mm 全長 143mm最大径φ 14.7mm 全長 137mm

カスタム ヘリテイジにもニブサイズが10号のCustom Heritage 912がありますが、15号はありません(価格は2024年10月1日時点)。

カスタム ヘリテイジニブ・サイズ価格(税込)
Custom Heritage 9114K 5号 ロジウム仕上22,000円
Custom Heritage 91214K 10号 ロジウム仕上33,000円

プラチナ万年筆 #3776 センチュリー

3776という数字は、日本最高峰である富士山の標高に由来し、「日本最高峰の万年筆」を目指すというプラチナ万年筆の想いが込められているとあります。

#3776 センチュリーの最大の特徴は、大きなペン先と、インクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を搭載したキャップです。この機構のおかげで、年に数回しか使わない場合でも、万年筆をスムーズに使い始めることができるという優れものです。

#3776には軟調ペン先もラインナップされていますが、SF(細字軟)のみとなっています。

#3776 Century 字幅の種類

公式サイトでは「柔らかいペン先 筆圧により少し太い字も書ける」と説明されていますが、写真だけでは細字と細軟の違いが分かりづらいかもしれません。しかし、#3776 センチュリー 試筆台設置店では、全種類のペン先の書き味を試すことができます。


中字?細字?万年筆の字幅選び

手帳やノートに細かい字を書くことが多いなら、細字の万年筆が適しています。しかし、万年筆ならではの個性豊かな字を楽しみたいなら、中字がおすすめです。特に中字の軟調ペンは、筆圧によって字幅に変化が生まれるため、筆圧をかけずに書くことで細めの字を書くことも可能です。

下写真は、Custom Heritage 912 SM(中字軟)で筆圧を入れて書いたとき(上)と筆圧をかけないで書いたとき(下)の線の太さの違いです。同じペン先でこれだけ太さの違いを出せます。

Custom Heritage 912 SM:筆圧による字幅の違い

中字の軟調ペンを使うことで、万年筆の正しい書き方である「筆圧をかけない書き方」をマスターできます。もし太い字幅が好きになれないという場合には、SM(中字軟)より少し字幅の細いSFM(中細字軟)という選択肢もあります。

しかし、万年筆を1本手に入れると、きっともう1本欲しくなるはずです。最初にSM(中字軟)を選んでおけば、2本目にはSF(細軟字)を選ぶことができ、中字と細字の字幅の違いを楽しめます。

また、プラチナ万年筆にはSM(中字軟)がないため、最初にパイロットの中字軟を選び、2本目にプラチナ万年筆のSF(細軟字)を選ぶと、メーカーやデザインの違いも楽しめます。


ファースト万年筆にオススメの一本

ファースト万年筆を選ぶ際に大切なポイントは2つあります。

  1. 万年筆らしい文字が書けること
  2. 筆圧をかけない書き方を習得できること

この2つのポイントを満たすためには、以下の3つの条件を満たす万年筆を選びましょう。

  1. 日本の万年筆メーカーの定番モデル
  2. 金ペン(14K)
  3. 中字の軟調ペン

これらの条件を考慮すると、選択肢として残るのは、パイロットのCustom 74 SM(ソフト・ミディアム)、またはCustom Heritage 91 SM(ソフト・ミディアム)です。どちらにするかは、あなたのデザインの好みで選んでください。


正しい万年筆の持ち方

万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

生成AIに正しい持ち方を指示して絵を描いてもらいました。

万年筆の正しい持ち方
Created by Dall-E 3

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. "中指の横腹"と"親指と人差し指の間"に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. "親指"と"人差し指"で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

万年筆の正しく持てれば、筆圧をかけずに書くというのにも慣れてきます。

14K軟調万年筆で万年筆ライフを楽しんでください!

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