Translate

ラベル .万年筆 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル .万年筆 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
Post Date:2026年1月19日 

木製が好き。でも万年筆は……そして、世界樹に。

WANCHER 世界樹 サンダルウッド wz ステンレスソフトニブ

ボールペンは、Faber-Castell(ファーバーカステル)の Ambition(アンビション) と Emotion(エモーション) を、木軸で愛用してきました。

Faber-Castell Ambition & Emotion

木軸があれだけ好きだったのに、気がつけば木軸の万年筆が手元にありません……。

アンビションやエモーションには万年筆タイプもあります。

しかし、万年筆を選ぶときにはペン先、とくに軟調ニブ を基準にしてきました。自分が購入する量産モデルの軟調ニブは、コストや安定性の面から樹脂軸が主流となりやすく、結果として樹脂軸が中心となっていました。

下の写真は Faber-Castell Ambition(ボールペン)です。傷も多くなりましたが、使い込むほど艶が増し、エイジングがとても美しい一本です。

Faber-Castell Ambition Ball Pen

WANCHERの万年筆でも、軸で選ぶというより、まずKEIRYU ニブ小太刀 といったペン先ありきで、エボナイトだから選んだわけではありませんでした。

WANCHER 世界樹は「木軸の万年筆が欲しい」と思って初めて選んだ万年筆です。もちろん、ソフトニブを選べたことも、背中を押した大きな理由でした。


日本メーカの木軸万年筆

日本の万年筆メーカーで、定番モデルとして木軸万年筆を展開しているのは、主に次の3モデルです。

いずれも高価なモデルです。そして残念ながら、通常モデルにはある軟調ペン先という選択肢は用意されていません。

『#3776センチュリー屋久杉』は実物を見ましたが、屋久杉の細かい木目が何とも言えない味わいを醸し出しています。

PLATINUM の公式サイトには「屋久杉万年筆の加工手順」が公開されていますが、それを見ると、素材の選別から乾燥、加工まで非常に手の込んだ工程が必要で、まさに一本モノの万年筆であることがよく分かります。


WANCHER の木軸万年筆

WANCHER は、ペン先の個性と素材の選択肢を重視した万年筆づくりを行う日本のブランドです。ペン先には JOWO のスチールニブを採用しつつ、KEIRYU ニブ小太刀研ぎなど、日本語筆記を意識した独自のニブも展開しています。

世界樹シリーズでは、サンダルウッド、黒檀、ベラウッド、チークウッドといったコスパの高い木軸モデルが用意されています。

  • サンダルウッド(白檀)
    • きめ細かく、手触りが非常にやさしい
    • 落ち着いた木目で、上品な雰囲気
    • 経年で自然な艶が出る
  • 黒檀(エボニー)
    • 非常に硬く、重量感がある
    • 木軸の中では寸法安定性が高い
    • 表情の変化は少なめ
  • ベラウッド
    • 明るめの色味と素直な木目
    • 軽量で取り回しが良い
    • 木軸らしいナチュラルさが強い
  • チークウッド
    • 油分を多く含み、水や湿度に比較的強い
    • さらっとした独特の触感
    • 使い込むと落ち着いた艶に変化

経年変化を楽しむならオリーブウッドも魅力的です。ただ、オリーブウッドは木目の個性が一本一本異なるため、オンライン購入では「好みと合うかどうか」は届いてみないと分かりません。

一方でサンダルウッド(白檀)は、落ち着いた色味と緻密な木目が特徴です。派手さはありませんが、光の当たり方で表情が静かに変わり、使うほどに艶が増していきます。

白檀の「控えめだけど、確実に育つ」感じに惹かれて、サンダルウッドを選びました。

WANCHER 世界樹 サンダルウッド wz ステンレスソフトニブ

キャップを閉めた状態で握ると、木そのものの温度が伝わってきます。とはいえ、実際に指が触れるグリップ部は樹脂で、木の質感を“触れて感じる”というより“眺めて味わう”万年筆です。

WANCHER 世界樹 サンダルウッド wz ステンレスソフトニブ

木軸万年筆は「新品が完成形」ではありません。手の油分や日々の使用によって、少しずつ艶と表情が育っていく。その変化を楽しめるのが、世界樹シリーズの大きな魅力だと感じています。

時間がそのまま表情になる──木軸ならではの楽しみです。


書き心地とバランス

世界樹 サンダルウッドは、キャップを外すと 12g前後。少し軽く感じますが、JOWO のペン先はインクフローが良く、筆圧をかけなくてもスッと線が出ます。

WANCHERの万年筆は、KEIRYUニブ(峰万年筆)、小太刀研ぎ(誠エボナイト)、ステンレスソフト(世界樹)と3本目です。

左)誠エボナイト 中央)世界樹 右)峰万年筆

キャップはねじ式です。WANCHERドリームペンはキャップ内部にスプリング機構があり、閉めたときにしっかり密閉されるため、インクの乾きが起きにくい構造になっています。

一方で世界樹は、そこまで強い密閉構造ではないため、しばらく使わない期間があると、インクが乾いて書き出しがかすれることもあります。

ただ、毎日使っているぶんには、乾きはほとんど気になりません。


中華製 木軸万年筆

Hongdian N8、Hongdian 620、Jinhao Dadao と、中華万年筆も何本か試してきましたが、インクフローも安定しており、価格以上に満足できる万年筆でした。

そこで「中華万年筆でも木軸はないか」と探して見つけたのが Jinhao 9056(Ranvi) でした。

素材表記には Juglans regia / Rosewood / Ebony とあります。Juglans regia はヨーロピアンウォールナット(胡桃)、Rosewood は日本で 紫檀(したん) と呼ばれることも多い ローズウッド系(Dalbergia 属)の木材、Ebony は 黒檀です。

ニブはステンレスで、「イリジウムポイント」と記載があります。字幅は F(0.5mm)のみです。

ウォールナットの色味は好みです。

Jinhao Dadao はインクフローも良く、超ビッグサイズながら、意外と書きやすい一本でしたが、木軸のJinhao 9056はどんな書き味になるのか──。

あれ?

Post Date:2026年1月18日 

続々・行書の学び方:書籍編

『はじめての行書つづけ字・くずし字 プロが使う美文字のテクニック』と『知識ゼロからのつづけ字・くずし字の書き方』

「もっと字がキレイになりたい!」

行書が美文字への近道だと分かっても、一朝一夕に身につくものではありません。それでも、少しでも楽に、早く上達したくて、まずはくずし方・つなげ方の基本パターンから学び始めました。

ただ、飽きずに練習を続けるには、ときどき新しい刺激も必要です。

今回は、行書の練習を続けるための次の一手として、“本で学ぶ”方法を紹介します。理解→反復→実践の順で、行書を日常の文字へ落とし込みましょう。

これから字を学ぼうという方には、武内和恵氏の『一瞬でコンプレックスが消える!人生が変わる魔法の美文字入門』が入り口として最適です。ここでまず、字の練習に対する固定観念を覆す2つの「逆転ルール」を学びます。

  1. 初心者こそ行書(くずし字)を学ぶべき
  2. ゆっくり丁寧に書かない

2つ目の「ゆっくり丁寧に書かない」は、力を抜いて書く(筆圧をかけない)感覚を身につけるためにも欠かせません。


行書のパターンを学ぶ

行書には、くずし方・つなげ方の基本パターンがあります。たとえば「灬(れっか/れんが)」の形を覚えると、「点・熱・煮・焦・黙・鳥・烈」など、さまざまな字に応用できます。

こうしたパターンを効率よく学べるのが、『知識ゼロからのつづけ字・くずし字の書き方』です。次の2章が“ルールの核”になります。

  • 第2章:くずし字24の基本ルール
  • 第3章:漢字の部首別 くずし方25の法則

この本では、くずし方が控えめな「楷書に近い行書」と、大きくくずした「よりこなれた行書」の2種類が掲載されています。自分の好みに合わせて書き分けを選ぶことができます。

さらに書き順も確認できるため、どこをどう崩し、どこを繋げるかがよりわかりやすくなります。


『知識ゼロからのつづけ字・くずし字の書き方』での学び方

『はじめての行書つづけ字・くずし字 プ『知識ゼロからのつづけ字・くずし字の書き方』

例えば、「09 縦線から上の横線に変える」という節では、主を例にして縦線から上の横線に遡って線の繋がりを表現する場合の説明で、練習で呈、里、性、室があげられています。

たとえば「09 縦線から上の横線に変える」では、「主」を例に、縦線から上の横線へ遡って、どのように線の繋がりを作るかが解説されています。練習例として「呈・里・性・室」があげられています。

こうした同じパーツ(同系統の形)を持つ漢字には、同じくずし方・つなげ方が使えるので、まとめて覚えるのが効率的です。

次のように、関連する漢字を調べてセットで練習します。

  • 主:住、注、往
  • 呈:程、王、全
  • 里:埋、理、野
  • 性:生、性、星
  • 室:至、屋、握

※「室」と「至」は部首の関係ではありません。ここでは、行書で線の流れが似やすい“形(パーツ)”のグループとしてあげています。

共通のパーツ(同系統の形)を持つ漢字は『漢字辞典ONLINE』で探します。行書としての具体的な書き方は、後述する字典で確認します。


行書をしっかり学ぶ

『はじめての行書つづけ字・くずし字プロが使う美文字のテクニック〜書き込み式〜』は、草加市のひすい書道教室から初心者が行書を学ぶための教材として販売されています。Amazon、メルカリで購入することができます。

A4紙をカラープリンターで印刷し、リング製本したような手作り感が満載の教則本です。

『はじめての行書つづけ字・くずし字 プロが使う美文字のテクニック』はリング製本

超大きな文字サイズで見本もとてもみやすい、ドリル形式の本です。

『はじめての行書つづけ字・くずし字 プロが使う美文字のテクニック』超デカ文字サイズ

リング製本なので180度しっかり開けて、机の上でも書き込みやすい作りです。……とはいえ、「書き込んでしまうのがもったいない派」なので、別紙に練習しています。

内容は、入門編 → 基礎編 → 応用編 → 発展編 の順に、行書の法則を段階的に学べます。

『はじめての行書つづけ字・くずし字プロが使う美文字のテクニック〜書き込み式〜』では、行書のパターンではなく、法則を学ぶようになっています。パターンは真似できる「形」ですが、法則はパターンが生まれる「理由」や「ルール」です。

入門編では次の5つの法則を学びます。

  • 気脈が目に見える線として表れるときがある
  • 点画が省略されることがある
  • とめ、はね、払いなど形が変化したり、それらの収筆が変化することがある
  • 点画が連続することがある
  • 曲線的で丸みがある
『はじめての行書つづけ字・くずし字 プロが使う美文字のテクニック』- 入門編

詳細は、著者のYouTube解説をご覧ください。


字典で行書の書き方を調べる

行書を学ぶ上で、行書の字形筆順を確認できる字典は必須です。字典は「すぐ引ける」ことが大切なので、*電子書籍ではなく紙の書籍を選んでください。

行書の筆順まで調べられる字典としては、たとえば次のようなものがあります。

行書は活字では表せないので、字典には手書き文字が印刷されています。手書きゆえに字形や線質には筆者の個性が出るので、自分が「この形を書きたい」と思える字体の字典を選ぶのがオススメです。

字典選びで特に重視したいのは、①筆順が載っていることと、②お手本が見やすいことです。特に筆順の記載がないと、行書ではどこから書けばいいか迷いがちです。迷い箸ならぬ迷いペンにならないためにも、筆順つきの字典を選ぶのがおすすめです。

『楷行草 筆順・字体字典 第三版』と『模範漢字くずし方字典』を使っていましたが、新しく、複数の字体が載っていて、お手本も大きく見やすい『日本書道協会 楷行草 三体筆順字典』を中古で購入しました。

『日本書道協会 楷行草 三体筆順字典』と『楷行草 筆順・字体字典 第三版』

『日本書道協会 楷行草 三体筆順字典』は、縦約27cm、横約20cm、厚さ約7cm とB5判に近い大判サイズ。全1,439ページ、重量約2.8kgというボリューム満点な字典です。


どちらの書籍から始めるべきか

前述したように『知識ゼロ』はパターン(真似できる形)を増やす本で、『はじめての』は法則(行書らしさのルール)を段階的に学ぶ本です。

初めて行書を学ぶなら、『はじめての行書つづけ字・くずし字 プロが使う美文字のテクニック(書き込み式)』から学習を始めましょう。

最初は教則本通りの書き方で練習しましょう。書き順がわからない、他のくずし方を知りたいときには、辞典で調べます。

そして何より大切なのは、1日10分でもいいので「毎日書く」こと。継続は力なり。

お気に入りの万年筆で、字の練習を始めてみませんか?

Post Date:2025年11月19日 

ソフトニブとフレックスニブの違い ── そしてステンレスソフトニブの実力

WANCHER 世界樹 サンダルウッド + ステンレスソフトニブ

スチールペン先のソフトニブ(軟調ペン)ってどうなんだろう――。

鉄ニブで軟調… “鉄軟”!? そんな言葉遊びと好奇心から、WANCHER「#6 JOWOニブ・ステンレスソフト」を購入しました。

万年筆を使い慣れてくると、次第に“軟らかいペン先”に惹かれるようになります。しかし、金やイリジウムの価格高騰もあり、金ペンの価格は年々上がるばかりで、気軽に手を伸ばしにくい存在になってきました。

それでも多くの万年筆ユーザーは、あえて柔らかいペン先を求め続けます。

では、なぜ私たちはペン先に“しなり”や“柔らかさ”を求めるようになるのでしょうか。


ソフトニブとフレックスニブは違う

「軟らかいペン先」と聞くと、どうしても同じようなものとして語られがちですが、ソフトニブフレックスニブは構造も役割もまったく異なります。

どちらも“しなるように見える”という点では共通していますが、書き心地や線の変化、使い方はまったく別の方向を向いています。

ソフトニブは筆記時の“クッション性”や“しなやかさ”を楽しむためのもの。一方、フレックスニブは筆圧による線の太細を大きく生み出し、筆のような表現をするためのものです。

見た目は似ていても、実は書き味も目的も大きく違うのです。


ソフトニブの特徴

ソフトニブは、筆圧をかけずに書いたときに“わずかにしなる”ような感触を持つペン先です。最大の魅力は、書き味がやわらかく、指先に心地よい弾力が返ってくること

線の太さが大きく変わるわけではありませんが、さりげない揺らぎが文字に自然な表情を与えます。筆記のリズムに寄り添ってくれる、独特の“しっとり感”も魅力のひとつです。

具体的には次のような特徴があります。

  • 軽い筆圧で書ける

    紙に押し付けなくてもインクが自然に落ち、手が疲れにくい。

  • しなやかな弾力がある

    ペン先がほんの少しだけ沈み、書き始めや書き終わりがやわらかな表情になる。

  • 線の太さはほとんど変わらない

    線の強弱を楽しむためのニブではなく、書き心地のやわらかさにフォーカスした構造。

  • 日常筆記に向いた穏やかな性格

    手帳、ノート、日記などの普段使いで真価を発揮する。

  • 日本語の筆記に相性が良い

    とめ・はね・はらいの微細な動きを、自然な揺らぎとして受け止める。

ソフトニブは現代の硬めのペン先の中で、万年筆らしいしなやかさを味わえる存在ですが、線の強弱を楽しむためのものではありません。

その役割はあくまで、“書くことそのものを気持ちよくしてくれるニブ” にあります。

また、軟調ペン先を使うようになって初めて、“筆圧をかけないで書く”という万年筆本来の書き方を実感できました。

力を抜いて書けるので手が疲れず、自然と滑らかに筆が運ぶ――そんな心地よさを教えてくれるのがソフトニブです。

日本の万年筆メーカーでは、下記のペン先でやわらかさを楽しめます。

メーカーモデルニブ
パイロットカスタムシリーズSF(細軟) / SFM(中細軟) / SM(中軟)
ELABO(エラボー)EF / F / M / B
プラチナ万年筆Century #3776SF(ソフトファイン:細軟)
セーラー万年筆プロフェッショナルギア21K大判ニブ

フレックスニブの特徴

フレックスニブは、筆圧をかけたときにペン先のスリットが大きく開き、線の太さが変化するように設計されたペン先です。

繊細な細線から力強い太線までを一本で描けるため、“線の表情を楽しむためのニブ” と言えます。

ソフトニブの「しなやかな書き心地」とは違い、フレックスニブは線そのものの強弱やインクの濃淡による変化をつけることを目的としています。

これは、日本語の美しさを支える「とめ・はね・はらい」「縦横のメリハリ」「文字の抑揚」 といった要素とも相性がよく、筆で書いたときのような“息づかい”が生まれるのがフレックスニブの魅力です。

具体的には次のような特徴があります。

  • 筆圧でスリットが開く構造

    ペン先のスリットが大きく広がり、細い線から太い線まで、明確なラインバリエーションが生まれる。

  • 線の強弱(太細)がはっきり出る

    アップストロークは細く、ダウンストロークは太く。筆記体や装飾文字だけでなく、日本語の「とめ・はね・はらい」を美しく見せる。

  • 少ない筆圧でしなる

    良質なフレックスニブは、わずかな力で自然に開くため、太線も滑らかに出せる。

  • 使いこなすには慣れが必要

    長く筆圧をかけ続けると“レールアウト”(インク切れ)が起きやすく、書き手のコントロールが求められる。

  • 文字に強い表情をつけられる

    行書、筆記体など、書く文字に動きや抑揚を持たせたい場面 で力を発揮する。

フレックスニブは、ソフトニブのような“しっとりした書き心地”ではなく、“線の変化を積極的に楽しむためのニブ” です。

そのため日常筆記よりも、「書く表現」や「筆跡のデザイン」に興味がある人に向いています。

日本の万年筆メーカーでフレックスニブを現行ラインナップとして提供しているのは、PILOTだけです。FA(Falcon)ニブは、毛筆のように線の強弱がはっきり出る希少な存在で、日本語の筆記にも表現力を与えてくれます。

PILOTの下記モデルでFA(Falcon nib)が選択できます。

モデルFAニブ選択可ニブサイズ特徴
Custom 742#10軽快・扱いやすい
Custom 743#15安定感・筆感が最も強い
Custom Heritage 912#10現代的デザイン・やや軽め

歴史的に見れば、つけペンはフレックスニブだった

万年筆が登場する以前、筆記の主役はディップペン(つけペン)でした。

当時はスパンサリアンやコッパープレートなど、線の太細がはっきりした筆記体が一般的で、その書体を美しく書くためには 柔らかくしなるペン先=フレックスニブ が欠かせませんでした。

スパンサリアンとコッパープレート
Created by GPT5

薄いスチールで作られたペン先は、筆圧をかけるとすぐにスリットが開き、細い線から力強い太線まで自在に描けるようになっていました。


最初の万年筆も、実はフレックスニブだった

万年筆の原型をつくったウォーターマン(WATERMAN)も、例外ではありません。19世紀末~20世紀初頭にかけて作られた初期のウォーターマンには、つけペン文化を引き継ぐ、柔らかくしなるフレックスニブ が搭載されていました。

その代表例が、ヴィンテージ万年筆として今も人気の WATERMAN #52

  • 1920年代の代表モデル
  • 黒のハードラバー軸にゴールドのクリップ
  • ペン先は柔らかくしなる14Kゴールド
  • わずかな筆圧で太線が生まれる、本物のフレックス

現在でも「真のフレックス(True Flex)」の象徴として語られるほど、しなり・反発・線の強弱の美しさ を備えた名品です。

こうした欧米のペン文化の影響は、日本の万年筆づくりにも及びました。

国産万年筆メーカーであるパイロット、プラチナ、セーラーの黎明期(1920〜1930年代)でも、柔らかめでしなる金ニブ が数多く作られており、当時は今よりずっと“しなりのあるペン先”が一般的でした。

しかし、戦後になるとボールペンの普及とともに筆記習慣が大きく変化します。

筆圧を書き込む筆記具が主流になったことで、万年筆にも耐久性や安定性が求められ、徐々に硬いペン先が主流へと移っていきました。


まずは、軟調ペン(ソフトニブ)から――筆圧を抜く書き方を身につける

つけペンの時代から受け継がれた“しなるペン先”は、文字に表情を与える一方で、扱いには繊細さが求められます。

現代のように筆圧を書き込む筆記具に慣れた私たちにとって、いきなりフレックスニブを使いこなすのは難しいのが正直なところです。

そこで大きな助けになるのが 軟調ペン(ソフトニブ) です。

ソフトニブは、フレックスのように派手に開くわけではありませんが、わずかな“しなり”と“弾性”を通して 筆圧を抜いて書く感覚 を自然に教えてくれます。

自分も PILOT Custom Heritage 912 SM(中軟)を使って、初めて、

「あ、力を入れないほうが万年筆は気持ちよく書けるんだ」

という感覚を実感できました。

Custom Heritage 912 SM

強く押し付けるクセが残っていた頃はペン先が引っかかることもありましたが、力を抜くと紙を滑るようにペン先が動き、手が疲れず、書くことそのものが軽くなるのを感じました。


すべてのソフトニブが“筆圧からの転換”に向くわけではない

軟調ペンは万年筆本来の書き方を教えてくれる存在ですが、プラチナ#3776 SF やパイロットの ELABO のような大きくしなるニブは、強い筆圧で育ってきた人にとって扱いが難しい場合があります。

  • ペン先が沈み込みすぎる
  • 思わぬ方向へしなって不安定に感じる
  • 力を抜く前に“書きづらい”と感じてしまう
  • 書き癖が強いほどコントロールが難しい

筆圧のある書き方から、いきなり 非常に柔らかいソフトニブ に移行すると、「気持ちよく書ける」よりも前に “扱いづらさ” を感じてしまいます。

その結果、「ソフトニブって書きづらい」という誤解につながることもあります。

これでは本末転倒です。


"筆圧を抜く"ための最良の入口は、穏やかな軟調ニブ

特にオススメなのが、パイロットの Custom 742 または Custom Heritage 912 に搭載される10号ペン先の SM(中字・軟)。 やわらかさは十分にありながら、しなりすぎず、適度なコシを保つため、筆圧が自然に抜けていく“絶妙なバランス”を持つ軟調ペン先です。

また、万年筆価格が高騰している昨今、742や912が予算的に厳しい場合は、より手頃な Custom 74 SM も候補に入ります。

パイロットの“やわらかいけれどコシがある” バランス型のソフトニブは、

  • 力を抜いたときに気持ちよく書ける
  • 書くほど自然に筆圧が抜ける

という特性があり、筆圧のある書き癖を持つ現代の書き手にとって、“力を抜いて書く万年筆らしい書き方”へ移行するための、ちょうど良いステップになります。

そして、一本目の軟調ペン先を選ぶのであれば、万年筆らしい線の伸びやかな表情をもっとも素直に味わえる SM(中字・軟) が最適です。

筆圧ゼロで"ふわっと書き"、紙の上を“無重力散歩”するような心地よさを味わってみてください。


筆圧を抜くための万年筆の持ち方

軟調ペンを使うと筆圧を抜いて書く感覚がつかみやすくなりますが、そもそも “万年筆の持ち方” が間違っていると、どんなペン先を使っても筆圧は抜けません。

繰り返し掲載していますが、とても大事なので改めて記しておきます。

万年筆の持ち方
  1. 手の力を抜き、手首は 90° くらいの角度にする
  2. 中指の指先の横腹親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印(ロゴ)は必ず上向き
  4. 親指人差し指で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

下記がGPT5で生成した正しい万年筆の持ち方です。

万年筆の正しい持ち方
万年筆の正しい持ち方:Created by GPT5

筆圧をかけない書き方をするには、万年筆を軽く持つことが何よりも重要です。強い筆圧の原因の多くはペンを強く握る持ち方にあります。

下の例では、ペンを持つ指に力が入りすぎて、人差し指が反り返ってしまっている悪い例です。実は、自分も以前はこのような持ち方をしていて、無意識に強く握り込んでいました…。

ペンを持つ手に力が入ってしまっている例:Created by GPT5

書道家・大江静芳氏の動画では、万年筆の持ち方がとても分かりやすく解説されています。文字や写真だけではイメージしづらい方は、こちらの動画を参考にしてみてください。


ソフトニブとフレックスニブの違いをまとめると

万年筆に慣れてくると、自然と“軟らかいニブ”に魅力を感じるようになります。ソフトニブは、筆圧をかけずに書くという万年筆本来の心地よさを味わえるニブです。

一方、フレックスニブは線の太さを大きく変化させることができ、筆のような抑揚で日本語を美しく表現できるニブです。

以下にソフトニブとフレックスニブの違いをまとめます。

特徴 ソフトニブフレックスニブ
スリット開き幅少ししなるが、スリットは大きく開かない筆圧で大きく開き、線幅が大きく変化する
筆跡の特徴線幅の変化は控えめで、安定した整った筆跡細線〜太線の差が大きく、表情豊かな筆跡になる
筆圧の必要度筆圧をかけずに軽く書ける線の変化を出すには筆圧コントロールの習熟が必要
インクフロー均質で安定しており、日常筆記に向く開きすぎるとインクが追いつかずスキップすることがある
書き味柔らかくしなやかな書き味で扱いやすい表現力は高いが、使いこなしには慣れが必要

WANCHERのステンレス・ソフトニブとは

WANCHERの 「#6 JOWO・ステンレスソフト」 を購入したのは、

「スチール製のソフトニブって実際どうなんだろう?」

という純粋な興味からでした。

結論としては、

価格を抑えながら、ソフトニブ的な“しなり”を体験できる貴重な選択肢

だと感じています。

#6 JOWO・ステンレスソフトのしなり具合

「#6 JOWO・ステンレスソフト」は、ペン先の両側にサイドカットがあり、楕円に削られています。このサイドカットされた部分より先で曲がる(しなる)構造になっています。

字幅はF:細字です。

#6 JOWO・ステンレスソフト

ソフトニブなのでしなりはしますが、スリットが大きく開くわけではありません。そのため、フレックスニブのようなダイナミックな線の強弱ではなく、“さりげない表情の変化” にとどまります。

#6 Jowo ソフトニブ の筆致

WANCHERのステンレスソフトニブは、金ペンのようなしなやかな弾力とは違いますが、スチールとは思えない“意外な気持ちよさのあるしなり” を持っています。

  • 押し込みすぎない範囲で、ほどよくしなる
  • スチールとは思えない軽やかなしなり
  • インクフローもよく、“紙の上を滑る感覚” を味わえる

といった特徴があり、WANCHER のステンレスソフトニブは、

「万年筆らしい柔らかさを味わいたい人」に最適で、同時に “筆圧を抜く書き方” を身につけるステップとしても優れた一本 と言えます。

金ペンの軟調ニブやフレックスニブへ進む前の、現実的で、楽しい入口のひとつ となるペン先です。


WANCHERのソフトニブの購入は

WANCHER公式サイトでは、世界樹カレイド のペン先として「#6 JOWO・ステンレスソフト」 を選択できます。このオプションで購入すると、金ペン軟調ニブで比較的手頃な PILOT Custom 74 SM(中軟)よりも低価格で“ソフトな書き味”を試せる点が魅力です。

また、すでに JOWO #6 に対応した万年筆 を持っている場合は、交換用として 「#6 JOWOニブ・ステンレスソフト」 を購入し、ペン先を付け替える方法もあります。

※ 国産では WANCHER、海外では TWSBI が、JOWO #6 に対応した万年筆をラインナップしています。

ただし、万年筆によっては ペン芯の形状や個体差により相性が出る場合 があるため、ニブ交換は自己責任でお願いします。

残念ながら自分が WANCHER 世界樹・サンダルウッド を購入したときは、オプションでペン先をステンレスソフトに変更できませんでした。そのため、交換用の 「#6 JOWO・ステンレスソフト」 を別途購入して付け替えて使っています。


ステンレス・フレックスニブはどうなのか?

ステンレス・ソフトニブの書き心地が想像以上に良かったので、次に気になっているのがステンレス製のフレックスニブです。

現在、WANCHERの公式サイトには#6 ニブ・ワンチャー真玉ストリームニブ という、ステンレスのセミフレックスサンセットニブをブレード構造に改良したフレックスニブが掲載されています。

ただし残念ながら、まだ販売前の段階。

ソフトニブが先行して発売された流れを見ると、いずれ販売される可能性は高く、楽しみに待ちたいところです。

一方、Amazonには、MONTEVERDE(モンテベルデ)製の「#6 JOWO 用ステンレス・フレックスニブ」が販売されています。

もちろん、書き心地だけで言えばPILOT Custom 743 の FA(Falcon)ニブのほうが上質であることは間違いありません。

それでも、

「スチールでどこまでフレックスを再現できるのか?」

という好奇心は大いに刺激されます。

嗚呼、物欲の神様……。


まとめ:自分だけの軟調ペンを選ぶ楽しみ

万年筆を使い続けるうちに、書き心地の違いや、字の表情の変化 に自然と目が向くようになります。

その入口として、ソフトニブ(軟調ペン) が最適です。

しなりすぎず、筆圧を抜いたときの心地よさを教えてくれる——それは現代の硬めの万年筆では得られない、万年筆らしい魅力です。

一方で、文字の表情を大きく変えたいなら フレックスニブ という選択肢があります。線の太さが変わり、日本語にも筆記体にも、筆のような抑揚を与えてくれる特別な存在です。

そして今回のような、JOWO #6 のステンレスソフトニブ は、金ペンへ進む前の“現実的で楽しいステップ”として、とても良い体験を与えてくれます。

スチールでもしなる。けれど、扱いやすい。その意外性こそが、このニブの魅力と言えるでしょう。

柔らかさを知ることは、書く楽しさを広げること でもあります。

あなたも、自分にとって心地よい一本を見つけてみてください。

象と散歩:人気の投稿(過去7日間)