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Post Date:2025年9月7日 

軟らかさと抑揚の世界、底の見えない万年筆沼の怖さ

象と散歩:軟らかさと抑揚の世界、底の見えない万年筆沼

万年筆を使い始めたころ、ボールペンと同じように強い筆圧で書き、F(細字)やEF(極細字)の硬いペン先を好んでいました。

しかし、中字の万年筆が生み出すインクの豊かさに出会い、軟らかいペン先のしなやかさに触れることで、筆圧をかけずに書ける万年筆の魅力を知りました。

そして今では、字に抑揚をつけることで、拙いながらも「行書」を嗜むようになりました。

そんな自分の万年筆との遍歴を振り返ってみたいと思います。


強い筆圧で書く細字の万年筆

万年筆を使い始めたころは、EF(極細字)やF(細字)の硬いペン先を好んでいました。

長年、FABER-CASTELL Ambition のボールペンを使っていたこともあり、最初の一本も同じ Ambition の EF(極細) にしました。

もう一本は、LAMY Safari F(細字)です。

LAMY Safari とFaber-Castell Ambition

何も、強い筆圧で細い字が書けるので、違和感なくボールペンから万年筆へ移行でき、細い軸も三角グリップも「強く握る」自分の書き方に合っていました。

この頃使っていた万年筆は、ボールペンの代替にすぎませんでした。


中字で知ったインクの豊かさ

万年筆の素晴らしさに気が付くきっかけとなったのは、MDノートを買いに行ったときに「カワイイ」と、衝動買いをしたMDつけペンでした。実は、これが中字との出会いでした。

MDつけペンのペン先

普段使っている極細字では感じられなかった、インクの濃淡や線の丸みが紙の上に現れ、書いた文字に「味わい」が生まれることに驚きました。

最初は「太すぎるのでは」と思った中字でしたが、書いてみるとむしろバランスが良く、読みやすさを保ちながら表情が豊かになることに気づきました。

万年筆が、初めて「表情を生み出す道具」になりました。


軟調ペン先と筆圧をかけない書き方

万年筆について調べるうちに、「金ペン」や「軟調ペン先」という言葉に強く惹かれました。

最初に手にしたのは、 PILOT カスタムヘリテイジ 912 SM(Soft Medium)、軟調ペン先のしなる感覚に触れ、書き味の柔らかさに驚きました。

Custom Heritage 912 SM

それまでの私はボールペンと同じように強い筆圧で書いていましたが、軟調ペン先だと筆圧が強いと逆に書きづらくなってしまいます。

そのため自然と「力を抜いて書く」ことを覚え、筆圧をかけずに文字を書く心地よさを知りました。

万年筆は軽く持ち、筆圧をかけずに書くことでこそ、万年筆らしい書き味となり、「楽に」書ける優れた筆記具だと実感しました。

続いて選んだのは、柔らかいという金の特徴を活かしたSAILOR プロフェッショナルギア 中字

SALOR PROFESSIONAL GEAR M

さらに、PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟)と、軟らかなペン先を次々と試していきました。

ペン先には、#3776と富士山を彷彿させるライン、そして可愛らしいハート型のハート穴です。

Platinum #3776 Century Soft Fine

正しい万年筆の持ち方

こちらは再掲となりますが、万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

ChatGPTに万年筆の正しい持ち方を指示して描いてもらった絵がこちらです。

万年筆の正しい持ち方
Created by GPT5

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. 中指の横腹親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. 親指人差し指で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。書道家の大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

この持ち方であれば、自然と筆圧をかけずに書けるようになります。

そしてそれこそが、万年筆らしい書き味を楽しむ第一歩です。


字に抑揚をつける楽しさ

軟調ペン先で「力を抜いて書く」ことを覚え、「行書」について学び始めると、文字に表情をつけたいと思うようになりました。

そうして手にしたのが、WANCHERの渓流ニブ小太刀ニブです。

渓流ニブと小太刀ニブの比較

渓流ニブも小太刀ニブも鉄ニブ(ステンレス製)なので "しなり" はありませんが、ペン先の角度によって線の太さに変化ができます。

渓流ニブのカマボコ型のペンポイントは、立てて書けば細く、寝かせれば太く──まるで毛筆のように自然な抑揚が生まれます。

一方の小太刀ニブは、矢尻のように尖れたペン先が、渓流ニブよりシャープで繊細な表現を生み出します。

渓流ニブと小太刀ニブの文字比較

上が渓流ニブ、下が小太刀ニブで書いていますが、共に鉄ニブとは思えないほどの表現力の幅に驚かされます。

「ただ書くだけ」だった文字が、抑揚のある筆跡へと変わるので、行書の練習にも大きな助けとなっています。


筆圧で表現力を:フォルカン

渓流ニブや小太刀ニブは「ペン先の角度による抑揚」でしたが、フォルカンは、金ペンのしなやかさを活かし、細い線から太い線まで筆圧によって線の表情を変えるペン先です。

10号と15号のペン先で悩みましたが、「えーいっ!」とPILOT カスタム 743 FAを購入。

PILOT Custom 743 Folcan

軟調ペンはペン先がしなっても、スリット(ペン先の割れ目)があまり大きく開かないようになっていますが、フォルカンは逆に大きくスリットが開くような設計になっています。

力を抜けば極細の線が、ぐっと筆圧をかければ毛筆のような太い線が ── まるで筆の穂先を操るようなダイナミックな表現が可能です。

ただし、その分コントロールは難しい、、。

まさに「扱いの難しいがゆえに、表現力の幅が大きい」ペン先でした。

これで自分の万年筆の旅も一区切りと思いました。
……しかし、いちどハマった万年筆沼の深みは底知れません……。

#3776 SF, ヘリテイジ912 SM, カスタム743 FA, プロギアM

終わりではなく次へ?

中字の万年筆だと細かい字を書くと字が潰れてしまいます。

なので、手帳に書くときは PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟) を使うことが多いです。

だったら、細字の実用性に加えて、柔らかさと抑揚を両立した万年筆があっても悪くはない。

PILOT ELABO(エラボー) が、気になります、

エラボーは、フォルカンほど極端にペン先が開かず、日常の筆記にも使いやすいと評判です。
それでいて軟調らしい柔らかさがあり、筆圧を少し変えるだけで抑揚のある線が生まれます。

エラボーは、字幅が、EF、F、M、Bから選べるということからも、フォルカンよりペン先の割れ目が開かないということがわかります。

手帳に書くのには、エラーボーの細字がいいかも。

やっぱり、次の一本が気になってしまいます……。
終わりのない万年筆探しは、まだまだ続きそうです。

Post Date:2025年2月9日 

鉄ニブの限界を超えた先に広がる表現の世界 – 渓流ニブと小太刀ニブの魅力

WANCHER 誠エボナイト マットブラック - 小太刀ニブ

万年筆を使ってみたい」と思った瞬間が万年筆の深い世界の入り口です。書きやすさを求めて選んだ一本は、「字の練習に使うから」という大義名分で価格のハードルをクリア。しかし、ほどなくして「もっと美しい字を書くために」と、次の一本が欲しくなる…。こうして気づけば、万年筆沼にどっぷり浸かっているのではないでしょうか。

そんな沼の深みで見つけたのが、日本語を抑揚のある美しい線で表現するために作られた、WANCHER(ワンチャー)のオリジナルニブKEIRYUニブ - 渓流でした。繊細な筆遣いが求められる和の書体にも適した特別なペン先です。

KEIRYU ニブは、細く凛とした線や太く力強い線をペン先の角度によって生み出します。それぞれの線を一つの文字としてシームレスに繋ぎ合わせるには、少々慣れが必要かもしれません。 ぜひ、しばらく KEIRYU ニブで遊んでみてください。使いこなすことでより楽しさが増し、自由に操れるようになれば自分でも驚くようなイキイキとした文字が表現できます。

【引用】渓流 - Keiryu Nib | Wancherpen Japan

実際に試してみると、ステンレスニブとは思えないほどの表現力の幅に驚かされます。軽いタッチでは繊細な線を引き、筆圧をかけることで力強い筆致へと変化する。この筆のような書き心地こそが、KEIRYUニブならではの魅力です。

一方、KEIRYUニブが筆のような柔らかい表現を得意とするのに対し、鋭くシャープな筆致を追求した特殊ニブも存在します。それが小太刀(こだち)研ぎです。セーラー万年筆の長刀研ぎを参考に、The Nib Shaperの長原幸夫氏が開発したこのニブは、細字・中字・太字への研ぎ出しが可能で、WANCHERの一部の万年筆で選択できます。


渓流ニブと小太刀ニブの違い

WANCHERと長原氏が共同で生み出した渓流ニブと、セーラー万年筆の長刀研ぎの技術を活かして作られた小太刀ニブは、どちらも日本語の美しさを引き出す特別なニブです。しかし、その「抑揚」の表現範囲に違いがあります。

渓流ニブは、筆圧に応じて滑らかに強弱が変化し、太くダイナミックな線も、柔らかくしなやかな線も自在に描けます。一方、小太刀ニブは、鋭くシャープな筆致が特徴で、細かい文字や繊細な筆運びに適しています。

この違いを生み出しているのが、それぞれのペンポイントの形状です。

小太刀ニブと渓流ニブのペンポイントの比較

渓流ニブ(写真 右)は、ペンポイントが大きく丸みを帯びた「かまぼこ型」の形状をしており、滑らかな線と豊かなインクフローを実現しています。一方、小太刀ニブ(写真 左)は、先端が細長く鋭利な矢尻のような形状で、フラットに研ぎ出されています。そのため、紙に触れる面積が小さく、繊細でシャープな線を生み出します。

渓流ニブと小太刀ニブの文字比較

上が渓流ニブ、下が小太刀ニブで書いています。


渓流ニブ – 筆のような抑揚を楽しむ特別なペン先

渓流ニブは、渓流の水の流れのように滑らかで、自然な抑揚を生み出すペン先です。ペン先の角度や筆圧に応じて線の太さが自在に変化し、豊かで立体感のある筆記を楽しむことができます。

渓流ニブの特徴は以下の通りです。

  • 柔軟な表現力
    スチールニブでありながら、筆圧や角度に応じて線の太さを調整可能
  • 湾曲した大きなペンポイント
    ペンポイントがわずかに湾曲したかまぼこ型の形状により、滑らかな筆記感と自然な強弱を表現
  • 中〜大きめの文字に最適
    特に漢字の「ハライ」「トメ」「ハネ」をダイナミックに表現

渓流ニブは、漢字を流麗に書きたい方や、線の表情を楽しみたい方に最適です。


購入方法

WANCHERでは、JOWO #6ニブを搭載した一部のモデルで、購入時にオプションとして、KEIRYUニブ・渓流が選択できます。料金は+7,700円です。

例えば「誠エボナイト」で渓流ニブを選択すると、税込で29,700円となります。

誠エボナイト     22,000円
渓流ニブ     7,700円
_________
合計     29,700円

「誠エボナイト -峰-」のペン先は渓流ニブのみで、税込35,200円です。

また、15,000円(税別)以下のJOWO #6ニブ搭載モデル(例:世界樹万年筆)では、購入時にKEIRYUニブを選択できませんが、別売の渓流ニブを購入して交換することが可能です。

「世界樹万年筆」と別売の交換用「渓流ニブ」の合計でWANCHER楽天公式であれば、税込で20,350円となります。

世界樹万年筆     11,000円
渓流ニブ(別売)     9,350円
_________
合計     20,350円

さらに、Amazonで検索するとMonteverde(モンテベルデ)Conklin(コンクリン)は、交換ニブとしてJOWO #6があるので、渓流ニブに交換できる可能性があります。試してはいないので、あくまで自己責任で、、。


小太刀ニブ – 漢字を美しく刻む鋭利なペン先

The Nib Shaper創業者・長原氏が、セーラー万年筆の長刀(なぎなた)研ぎに独自の改良を加え、より漢字を美しく書くために開発した研磨方法が小太刀(こだち)研ぎです。WANCHERをはじめ、複数のメーカーが長原氏の監修を受けて小太刀ニブを販売しています。

WANCHERでは、18金ペン先への変更が+15,000円(税別)で、小太刀ニブへの変更は+12,000円(税別)です。「スチールニブなのに?」と感じるかもしれませんが、鉄ニブとは思えない書き味を体験すれば、その価値に納得できるはずです。

小太刀ニブには以下のような特徴があります。

  • 鋭利なペンポイント
    矢尻のように細長く、フラットに研がれた形状
  • 線のメリハリ
    縦線と横線の太さのコントラストが大きく、立体感のある文字が書ける
  • 漢字に最適
    トメ、ハネ、ハライを精密かつ力強く表現可能
  • 力強い書き心地
    鋭い書き出しで、堂々とした文字の印象を与える

小太刀ニブは文字のメリハリや正確さを重視する方におすすめで、特に漢字の美しさを追求したい方に最適です。ただし、楽天公式では小太刀ニブの太字しか取り扱いがありません。

KEIRYU・KODACHI(渓流・小太刀)を選択すると、22,000円の誠エボナイトが35,200円になります。

誠エボナイト     22,000円
渓流・小太刀ニブ     13,200円
_________
合計     35,200円

楽天公式には以下のように記載されているので問い合わせてみてください。

※販売中のニブとは異なるお色やサイズをご希望の場合は、変更が可能なものもございますので、お問い合わせください。

【引用】WANCHER楽天公式 - 誠エボナイトマットブラック

価格はさらに高くなりますが、WANCHERでは18金の小太刀ニブも選択できます。「不思議の国のアリス」のハートの女王をモチーフにした「キングオブハート」は、セーラー万年筆のプロフェッショナルギアをベースにしています。このモデルでは、小太刀ニブのF(細字)、M(中字)、B(太字)が選択可能です。

小太刀ニブを選ぶならWANCHER公式サイトで購入した方が、より多くの選択肢があります。下写真はWANCHER公式で購入した「誠エボナイト マットブラック 小太刀研ぎ(中字)」です。

WANCHER 誠エボナイト マットブラック - 小太刀研ぎ(中字)

渓流ニブ vs 小太刀ニブ - あなたに合うのはどっち?

どちらのニブが良いかは、個人の好みや筆記スタイルによって異なります。渓流ニブは、かなり太めの線となるため、細かい文字を書くのには向いていません。

共通しているのは、ともにインクフローが良く、滑らかな書き心地を持つペン先であることです。しかし、なぜか同じインクを使っても、渓流ニブと小太刀ニブは、他の万年筆で書いたの比べてインクが薄いように感じます。気のせいかと書いた文字を拡大すると「ムラ」があるのがわかります。この「ムラ」がインクを薄く感じさせているのだと思います。

渓流ニブ、小太刀ニブで書くとインクが薄くなる?
  • 渓流ニブ:滑らかで、表現力豊かな筆記を楽しみたい方
  • 小太刀ニブ:漢字を美しく書きたい方、力強い文字を書きたい方

小太刀ニブは、太字・中字・細字の3種類から字幅を選ぶことができます。中字の字幅は、セーラー万年筆やパイロットの中字とほとんど変わりません。

渓流ニブと小太刀ニブは試し書きができないため、選択が難しいのですが、ペン先単体でも購入できる渓流ニブは、価格面も含めて小太刀ニブより入手しやすいというメリットがあります。


書くことを深める道具としての万年筆

万年筆は単なる筆記具ではなく、使い手の書く楽しさや表現の幅を広げる道具です。だからこそ、道具としての本質を見極め、適切なものを選ぶことが重要になります。

高価な万年筆が必ずしも良いとは限りません。しかし、ときに道具は自分を成長させてくれます。渓流ニブや小太刀ニブもそうした書くを楽しみ自分を成長させてくれる道具です。

金ペンや軟調ペン先を使ってきた方なら、長刀研ぎを一度は必ず気にされるのではないでしょうか。そのときの選択肢として、渓流ニブや小太刀ニブを考えてみるのも良いかもしれません。

ふと、渓流ニブと小太刀ニブの両方を購入することになるのであれば、セーラー万年筆の長刀研ぎを購入できたのでは?と思うこともありますが、沼にハマっているので仕方がありません。

ふと、渓流ニブと小太刀ニブの両方を買うなら、セーラー万年筆の長刀研ぎが買えたのでは?と思うこともあります。でも、仕方ありません。万年筆沼とは、そういうものです。

Post Date:2024年11月24日 

WANCHERの渓流ニブが描く新たな万年筆の世界

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

軟調ペンからセーラー万年筆の日本語のためのペン先である長刀研ぎ(なぎなたとぎ)に興味を持ちました。しかし、今日日あまりにも高価で手が出ません。そんなときに出会ったのが、WANCHERの渓流ニブです。

渓流ニブは、日本の伝統と革新を融合した万年筆ブランドWANCHER(ワンチャー)のオリジナルペン先で、最終的な仕上げはペン先職人である長原幸夫氏によって行われています。長原氏はセーラーで長刀研ぎを復活させた故長原宣義氏のご子息で、同じく元セーラーの万年筆職人であり、現在はThe Nib Shaperとして活躍されています。

渓流ニブは、スチールニブなので軟らかいペン先ではありませんが、渓流のような柔らかな流れを筆跡に宿し、その独自の書き味は、日本語の美しさと表現力を際立たせてくれます。

渓流ニブを購入すると下記のカードが同梱されています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

渓流ニブとは?その独自性と特徴

多くの万年筆では、ペンポイントは半球形に仕上げられており、どの方向からも均一な線を引けるようにデザインされています。この形状は滑らかな書き心地を提供する一方で、線の強弱や表現力には限界があります。

一方、セーラー万年筆の長刀研ぎ(なぎなたとぎ)は、ペンポイントが長刀のように斜めに研ぎ上げられており、筆圧やペン先の角度によって線幅を大きく変化させる特徴があります。縦線を太く、横線を細く書くなど、日本語特有の書字美を追求した設計が施されています。

長刀研ぎ
【引用】Amazon - セーラー万年筆 長刀研ぎ

渓流ニブは、一般的な万年筆のペンポイントと長刀研ぎの中間的な形状です。ペンポイントはとても大きく、ペン先の先端は長刀研ぎほど鋭利ではありませんが、一般的なペンポイントよりも細長く研ぎ上げられています。また、ペンポイント全体がわずかに湾曲しており、この微妙なカーブが線の滑らかな流れを生み出す要因となっています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

裏から見ると刀というよりは山のようにもっこりとしています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

この形状により、渓流ニブはスチールニブでありながら、ペン先の角度や筆圧によって線の太さに抑揚をつけることができます。特に、漢字の「ハライ」「トメ」「ハネ」といった線の強弱が美しく表現され、文字に動きと立体感をもたらします。

長刀研ぎは使ったことがないのでわかりませんが、渓流ニブはスチール製のため金ニブほどの柔軟性はありませんが、職人の丹念な調整により、硬いスチールでも適度な柔軟性を持たせて「静かで滑らかな変化」を実現しています。

Wancher公式YouTubeの「Keiryu Nib Review:渓流ニブのレビュー」では、セーラー万年筆の長刀研ぎとWancherの渓流ニブのペンポイントの形状の違いが紹介されています。また渓流ニブでどんな字が書けるのかがイメージできます。


渓流ニブの書き味

渓流ニブの書き味は、軟調ペンのように筆圧によるダイナミックな線の変化とは異なり、より穏やかで優しい変化が特徴です。ペン先の角度や筆圧に応じて、繊細な線の強弱を表現することができます。

WANCHERの渓流ニブのページには「水面をすべるアメンボのように」スーと線が引けるとありますが、潤沢なインクフローと職人よって研ぎ澄まされたペン先で、紙の上を滑るように静かでスムーズな書き心地を実現しています。

字幅は太字程度で、小さな文字を書くよりも、中字からやや大きめの文字を書く際にその特性が最大限に発揮されます。漢字の「ハライ」や「トメ」など、筆致の美しさを求める文字に特に適しています。

渓流ニブの書き味についての動画もあります。


WANCHERの万年筆を選ぶ

渓流ニブを手に入れるには、以下の2つの方法があります。

  • WANCHERの万年筆に渓流ニブをカスタマイズ
    WANCHERの15,000円以上の万年筆(一部対象外)を購入し、追加料金7,700円(税込)で渓流ニブを選択できます。
  • 交換用ニブとして購入
    楽天やAmazonのWANCHER公式ストアで、交換用渓流ニブを9,350円(税込)で購入できます。 JOWO #6ニブの「世界樹 / カレイド」と交換できるので、価格を抑えて渓流ニブ万年筆が手に入ります。

峰万年筆もニブを外すことができます。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

「世界樹万年筆 黒檀(エボニー)」に交換用ニブとして渓流ニブを購入することを検討していました。しかし、エボナイト素材に強く惹かれ、最終的には「ドリームペン/夢万年筆 -峰- 誠エボナイト」のマーブルパープルグレーを選びました。

完全に予算オーバーです、、。


エボナイトとは

エボナイトは、天然ゴムに硫黄を加えて加熱することで得られる、硬くて光沢のある素材です。かつては万年筆の軸材として広く使用されていました。しかし、より簡単に扱える樹脂素材が主流となる一方で、エボナイト特有の美しい光沢や温かみのある感触は多くの万年筆愛好家を惹きつけています。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

峰万年筆・マーブルパープルグレー

エボナイト軸の「誠エボナイト」はバランス型のデザインですが、峰万年筆は両端が平らなベスト型です。キャップ上部の突起(これが「峰」?)は、このモデルだけの特徴的なデザインです。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

峰万年筆のコンセプトは下記のようにあります。

この万年筆は成功への旅を意味し、一歩一歩高みへと続いていくイメージを元にデザインされています。キャップ上部の突起は私たちが目指す成功の頂を示しているのです。 「峰」という字は一般的に山の一番高いところを意味しますが、転じて技術や栄誉といった様々なもので頂点を極めたことへの比喩としても使われます。

人生の中において、世界の見方を変えるような地点に到達したいという願いをこめて、元々フラットだったキャップ上部を変更して今のデザインになりました。

【引用】峰万年筆 | Wancherpen Japan

峰万年筆は、マーブルパープルグレーマーブルグリーンの2色があります。前者は落ち着いた知性を感じさせる色合い、後者は自然の調和と生命力を思わせる鮮やかなグリーンが特徴です。

桐の箱に収められ、かなり仰々しい梱包なので開封の儀が恥ずかしい、、。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

コンバーターも付属しています。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

まとめ

WANCHERの渓流ニブは、日本の万年筆文化の伝統と革新が見事に融合した一品です。セーラーの長刀研ぎにインスパイアされつつも独自の形状を持ち、スチールニブでありながら日本語特有の線の抑揚を表現できる優れたパフォーマンスを提供します。職人の手による丹念な仕上げが、ペン先の滑らかな書き心地を実現し、使い手の筆跡に柔らかく美しい流れを生み出します。

また、渓流ニブのペン先を更にシャープに研いだ小太刀(こだち研ぎ)というオプションもあります。小太刀には細字、中字、太字の3種類があります。渓流ニブでは小さな字をかけませんので、ノートなどで使うのであれば、細字や中字が力を発揮します。

渓流ニブはWANCHERのブランド哲学を体現する特別なペン先です。このペン先は手書きの世界を広げてくれます。WANCHERの万年筆を手に取り、ペン先が生む新たな書き心地をぜひ体感してみてください。

スチールペンも侮れません。小太刀研ぎにも興味津々です、、。

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