象と散歩: ウォーキングベースを始めるときに、買うべき2冊の教則本の「譜面を読めるようになろうと」の中でベースの開放弦を中心に譜面上のどの音に当てはまるかを意識していると読譜ができるようになると書きました。
とは言ったものの、♯(シャープ)や♭(フラット)がたくさんある譜面を見ると気持ち悪くなってしまいます。
しかし、どうして♯や♭が付くのかという理由が理解できたら恐怖心が薄らぎました。
♯♭らと戦う術を覚えましょう。
メジャースケールとマイナースケール
♯(シャープ)や♭(フラット)について整理をする前に、まずは、基本となるメジャー・スケルとナチュラル・マイナー・スケール(以降、マイナー・スケール)についてです。
メジャースケールとは、よく耳にする ♪ドレミファソラシド♪ の音の並びです。
記号 | 英語 | 日本語 |
---|
R | Root | 完全1度 |
M2 | Major 2nd | 長2度 |
M3 | Major 3rd | 長3度 |
P4 | Perfect 4th | 完全4度 |
P5 | Perfect 5th | 完全5度 |
M6 | Major 6th | 長6度 |
M7 | Major 7th | 長7度 |
Oct | Octarve | 完全8度 |
ベースの指板でのスケールは下記にようになります。
また、マイナースケールは、3度,6度,7度 が半音下がった ♪ドレミ♭ファソラ♭シ♭ド♪ という音の並び順です。
記号 | 英語 | 日本語 |
---|
R | Root | 完全1度 |
M2 | Major 2nd | 長2度 |
♭3 | Minor 3rd | 短3度 |
P4 | Perfect 4th | 完全4度 |
P5 | Perfect 5th | 完全5度 |
♭6 | Minor 6th | 短6度 |
♭7 | Minor 7th | 短7度 |
Oct | Octarve | 完全8度 |
ベースの指板では、こんな感じです。
最初の音をCから半音づつ上げていくと、CからBまで12パターンの ♪ドレミファソラシド♪ があります。
下表はメジャースケールの ♪ドレミファソラシド♪ です。
Key | R | M2 | M3 | P4 | P5 | M6 | M7 |
---|
C | C | D | E | F | G | A | B |
D♭ | D♭ | E♭ | F | G♭ | A♭ | B♭ | C |
D | D | E | F♯ | G | A | B | C♯ |
E♭ | E♭ | F | G | A♭ | B♭ | C | D |
E | E | F♯ | G♯ | A | B | C♯ | D♯ |
F | F | G | A | B♭ | C | D | E |
G♭ | G♭ | A♭ | B♭ | C♭ | D♭ | E♭ | F |
G | G | A | B | C | D | E | F♯ |
A♭ | A♭ | B♭ | C | D♭ | E♭ | F | G |
A | A | B | C♯ | D | E | F♯ | G♯ |
B♭ | B♭ | C | D | E♭ | F | G | A |
B | B | C♯ | D♯ | E | F♯ | G♯ | A♯ |
この表は、フラットを基準に書いていますが、D♭=C♯、E♭=D♯、G♭=F♯、A♭=G♯、B♭=A♯なのでシャープで書くこともできます。ただしKey=G♯とは言わないので、この場合はA♭を使います。理由については後述します。
このフラットとシャープの両方の呼び方があるのは、ピアノの黒鍵部分に対してです。
マイナースケールについては割愛しますが、この12パターンのうちどれを使っているかが、曲のキーとなります。
またCメジャースケール以外では、フラットとシャープが使われているのは分かりました。しかし、上表ではフラットとシャープが無秩序に出現していて、法則性が見出せません。
次は、この法則性について整理していきます。
だから調号というのか
五線譜の先頭に付く、♯記号と♭記号を調号(ちょうごう)と言いますが、むかーし、音楽の時間に「♯がひとつ付いているのは、ト長調/ホ短調」と習った記憶があります。
調号は英語で Key Signature ですが、調とはキー(Key)のことで、ト=G、長調=メジャーです。そして、ホ=E、短調=マイナー なので ♯ がひとつのキーはG/Emのことだったと、今更ながら繋がりました。
下記は、Key=G の ♪ドレミファソラシド♪ です。
そしてこちらが、Key=Em の ♪ドレミ♭ファソラ♭シ♭ド♪ です。
Key=G/Key=Emでは必ずFに♯が付くので、毎回♯をつけるのではなく、へ音記号の右隣のFの位置に♯記号を付けます。(下譜面は Key=G)
調合の付与ルールとキー
調合を書く場所は決まっていて、 ♯♭共に1-7個まであります。
こちらが♯の一覧。Keyの左がメジャースケールで右がマイナースケールです。#の位置はKeyのダイアトニックスケールの7番目の音が追加されていきます。Key=GならGABCDEF♯です。
Key | ♯個数 | 調号 | ♯位置 |
---|
C/Am | 0 |
| |
G/Em | 1 | | F |
D/Bm | 2 | | F,C |
A/F♯m | 3 | | F,C,G |
E/C♯m | 4 | | F,C,G,D |
B/G♯m | 5 | | F,C,G,D,A |
F♯/D♯m | 6 | | F,C,G,D,A,E |
C♯/A♯m | 7 | | F,C,G,D,A,E,B |
そして下記が♭の一覧となります。♭の位置はKeyのダイアトニックスケールの4番目の音が追加されていきます。Key=FならFGAB♭CDEFとなります。
Key | ♭個数 | 調号 | ♭位置 |
---|
C/Am | 0 | | |
F/Dm | 1 | | B |
B♭/Gm | 2 | | B,E |
E♭/Cm | 3 | | B,E,A |
A♭/Fm | 4 | | B,E,A,D |
D♭/B♭m | 5 | | B,E,A,D,G |
G♭/E♭m | 6 | | B,E,A,D,G,C |
C♭/A♭m | 7 | | B,E,A,D,G,C,F |
「ん、12パターンしかないのに、調号が付かないのを含めて15パターンある」
よく見ると15パターン(1+7+7)の中で、♯、♭が5個以上付く6パターンは、♯と♭の違いはありますが、同じ音です。
メジャーキーでいうと下記の3組(6パターン)です、
- B(♯5個) / C♭(♭7個)
- F♯(♯6個) / G♭(♭6個)
- C♯(♯7個) / D♭(♭5個)
です。
C♭はBのことなので♭を敢えて7個付ける必要はなく、Key=Bとした方が分かりやすい。また、C♯とD♭は、♯が7個のC♯より、♭が5個のD♭の方がスッキリします。
やっかいなのは、F♯とG♭です。♯、♭共に6個です。ベーシストにとっては、違いがないように思えますが、勢いで購入してした Ray Brown's Bass Method のスケール練習では、B、F♯、D♭ が使われています。
意味があって使い分けをしているのでしょうか。。。
Circle of Fifth(五度圏)
♯(シャープ)がひとつづつ増えていく、メジャースケールのキーのC,G,D,Aってベースの弦でも馴染みがある並び順です。
ルートと5度で弾くときに、1弦下の(太い)弦の同じ位置で弾いても5度上になります。
Cの5度の上はG、Gの5度上はD、Dの5度上はAです。
また♭が増えていく、C,F,B♭,E♭の並び順は、1弦上の(細い)弦の同じ位置にある4度上の音になります。
ベースの弦の並びと譜面が関連付けられてくると五線譜も愛おしくなってきます。
五線譜に♭が5つあっても慌てずに、ベースの指板を見ながら C,F,B♭,E♭,A♭,D♭と数えていけば、Key=D♭と分かりますし、使われる音はDメジャースケールなので、下図のR(ルート)がDから始まるスケールになります。
ちなみにこの5度上がる、4度上がる(5度下がる)循環は、Circle of Fifthといって、右回りはCから5度づつ上がっていき、左回りは5度づつ下がって(4度づつ上がって)いきます。
上図はメジャースケールで書いていますが、マイナースケールのキーでも同じです。
この図でもわかるように下の3つはフラットとシャープがダブっている部分となります。
メジャー・キーにG♯がない理由
Circle of Fifth の図を自分で書いてみて、メジャーキーでは、G♯ではなくA♭が使われる理由が分かりました。
理論上は右回りに行くとC♯の5度上がG♯になります。しかし、C♯には♯が7個付いているので、G♯になると♯が8個になってしまいます。
メージャーキーとマイナーキーの関係
メジャースケールを中心に説明してきましたが、次は、メジャー・キーとマイナー・キーの関係ついて説明します。
♯がひとつならば、キーはGかEmですが、これはGとEmのスケールが同じ構成音だからです。
この同じ調号でのメジャーキーとマイナーキーの関係を平行調といいます。
この関係をベースの指板で表すと数のようになります。
平行調は英語では、Relative Key ですが、ベースの弦で考えると平行調と納得できます。
このベースの指板上での関係を覚えておけば、調号が♯ひとつの場合、メジャースケールならCの1弦上のG、マイナースケールなら1弦上の2フレット高いAmと確認することができます。
やっぱり基本はこの2冊
ウォーキングベースを学ぶために購入した
ですが、この2冊を通じて、音楽理論の基礎が理解でき、徐々に譜面も読めるようになってきました。
例えば下記の譜面
調合を見て、Key=B♭ だということがわかり、Cm7→F7→B♭の流れは、Jazzの4度進行の定石であるツーファイブ(IIm7→Ⅴ7→Ⅰ)が使われているということが分かります。
TAB譜をみながら弾くだけでは理解できなかった世界が広がりました。
本を読むだけでなく、ベースを弾く時間も作らなくちゃと反省する今日この頃です、、、。