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Post Date:2026年5月10日 

ラジオな生活 —— Tivoli Audioで再発見した音楽との出会い

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2でラジオを聴く

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2 を購入した目的は、Wi-Fi接続を活かして、Apple Music や Amazon Music を BGM として流すことでした。

しかし、実際に使い始めてみると、Apple Music や Amazon Musicを流すより、ラジオやインターネットラジオ、Spotifyを聴く時間の方が長くなっています。

特にFM放送は、ここまで聴くようになるとは思っていませんでした。以前から朝は radiko でラジオを聴いていましたが、気がつくと自然にラジオを流すようになっています。

その理由を自分なりに考えてみると、次の3つではないかと感じています。

  1. ワクワク感
  2. friction(フリクション)が低い
  3. 偶発性

この3つを手がかりに、Model One Digital Gen.2 でラジオを聴く時間がなぜ心地よく感じられるのかを考えてみたいと思います。


Tivoli Audioでラジオを聴くと、なぜかワクワクする理由

radiko でも同じ番組は聴けるのに、Tivoli Audio でラジオをつけるとなぜかワクワクします。

それは、ラジオならではの揺らぎや実在感のある体験に理由があるのかもしれません。


1. 部屋に入り込んできた見えない電波を捉えている

インターネット配信は、データがどこを通っているのか具体的な場所をイメージしづらく、仕組みを論理として頭の中で理解しようとする「論理上の不可視」です。

一方で、ラジオ放送は、東京タワーやスカイツリーから飛んできた電波をラジオで受信すると音声や音楽になるという、子どもの頃に感じたような不思議さを持った「想像できる不可視」です。

よく聴こえるラジオ局にチューニングを合わせたり、アンテナの位置や向きを変えて受信感度を上げたりする行為は、見えないけれど確かに存在するものを、自分の身体を通して“つかまえにいく”体験です。

👉 「世界に満ちている見えない何かに、ほんの少し触れているような実在感と手応え」が、小さなワクワクを生みます。


2. ラジオ放送には“揺らぎ”がある

ラジオの音は、常にわずかな揺らぎを含んでいます。ノイズが混じったり、少し遠のいたり、急にクリアになったりと、完全に固定された音ではなく、コントロールできない揺らぎが発生します。

そのため、音は常にわずかに揺れ続け、同じように聴いていても微妙に印象が変わります。

そもそもFM放送は、音に応じて周波数をわずかに変化させ、それを音として再生する方式であり、信号の揺れが音として現れます。

👉 「完全にはコントロールできない」小さな不確実さが、期待とわずかな緊張を生み、それがワクワクにつながります。


3. ラジオ放送には“不可逆性(一回性)”がある

ラジオの不可逆性は、「一時停止できない」「30秒巻き戻せない」といった機能の話だけではありません。 もっと感覚的なレベルで、「時間の主導権が自分ではなく“放送側”にある」という種類の不可逆性です。

radiko のタイムフリーを使えば、番組の内容は後から何度でも聴き直せます。けれどそれは、再生ボタンを押した瞬間から始まる、自分主導の時間です。

一方、リアルタイムのラジオ放送では、時間は放送側の都合で淡々と流れていきます。自分のタイミングで始めたり止めたりするのではなく、「いま流れているもの」に耳を傾ける体験です。

👉 「いま・ここでしか起きていない」という一回性が、その瞬間に意識を引き戻し、わずかな緊張と集中を生み、それがワクワクにつながります。


4. 質量のあるラジオ音

Tivoli Audio で聴くラジオはクリアで聴きやすく、少しボリュームを上げると、低音も感じられる質量感のある音が前面に広がります。

Tivoli Audio は、ラジオを“オーディオ機器”として設計しているので、単に情報として音を受け取るのではなく、音そのものに触れているような感覚があります。

とくにFM放送で流れる音楽は、その瞬間がよい音楽との出会いになります。

👉 音に質量と存在感があることで、ラジオで出会う音楽の体験がより鮮明になり、ワクワクを生みます。


フリクションが低く、自然と流し続けられる

フリクションとは、何かを始めるときや続けるときに感じる「手間や面倒さ」のことです。

Model One Digital でFMラジオを聴く場合は、電源を入れるだけで再生が始まり、“情報にたどり着くまでの手間や負荷”が極端に少ないです。

また、Spotify Connect で Model One Digital 本体に登録しておけば、リモコンのプリセットボタンから Spotify のプレイリスト再生を始められます。ただし、Spotify Premium にしていない場合は音質に制限があり、CM も入ります。

TuneIn でラジオ局を聴く場合も、Chromecast であれば最初はスマートフォンでの操作が必要ですが、再生が始まればスマートフォンは不要になります。

これらと比べると、AirPlay での再生はスマートフォン経由となるためフリクションが高く、常にスマートフォンが必要となることでバッテリーも消耗します。

フリクションの低さという観点では、次の順になります。

  1. FMラジオ
  2. プリセットした Spotify
  3. TuneIn のラジオ局
  4. AirPlay での Amazon Music再生

フリクションが低いほど、意識せずに音を流し続けることができ、結果としてラジオを聴く時間が増えていきました。


インターネットラジオもやっぱり捨てがたい

インターネットラジオは、BGMとして流し続けるのに適しています。

TuneInは、ラジオ番組や音楽チャンネルをインターネット経由で聴けるサービスで、Amazon Echoなどでも利用できます。

中でも「1.FM」は、さまざまなジャンルの音楽を配信しているスイスのインターネットラジオ局で、BGM用途に非常に向いています。

Tivoli Audio Model One DigitalでもChromecastを使えばTuneInをラジオっぽく聴くことができます。

そして、Tivoliで聴くラジオ局を探している中で見つけたのが「Ella Radio」でした。


TuneInで見つけたElla Radioがスゴすぎる

Ella Radio は、2026年1月5日から放送が開始されたドイツのインターネットラジオ局で、名前の由来はジャズシンガーの Ella Fitzgerald です。

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2 でTuneInを聴く

Bass Jazz(ベース・ジャズ)は、Ella Radioのチャンネルのひとつで、次のように紹介されています。

Bass Jazzは、ジャズアンサンブルの基盤であるコントラバスの、深く温かみがあり、リズムを牽引する音に焦点を当てたチャンネルです。

【中略】

Bass Jazzは、集中して作業をしたいときや静かな夜、そして低音の繊細な表現を楽しみたい人に最適です。グルーヴと温かみ、そして洗練された音楽性に満ちた世界にぜひ浸ってみてください。

【引用】Ella Radio - Bass Jazz

まさにベーシストが主役の楽曲ばかりが流れ、いつ聴いても新鮮です。ベースの低音を軸にした音楽と、安定したウォーキングベースのテンポは、仕事や読書、勉強のBGMとして非常に相性がよいと感じています。


ラジオで出会う音楽の偶発性

ラジオで流れる音楽との出会いは偶然です。Spotify や Amazon Music といったサブスク型の音楽配信ではパーソナライズが進み、どうしても自分好みの音楽が中心になりがちです。

ラジオでは、「あ、いいなこの曲」と思っても、もう一度最初から聴くことはできません。こうした偶発的な出会いは、音楽を大量に消費するサブスクリプションとは異なる価値を感じさせます。

パーソナリティの曲紹介を聞き逃しても、あとから曲名を知りたいときは、FM局のプレイリストで確認できます。

下記は、首都圏で聴ける主なFMラジオ局のプレイリストです。

ラジオで聴いた音楽も、あとから曲名やアーティストを確認できますが、「その瞬間に出会う一期一会のような音楽の価値」は、やはりラジオならではだと感じています。


音楽を聴くためのラジオ

Tivoli Audio でラジオを中心に楽しむのであれば、名機 Model One BT です。

ラジオだけでなく、Spotify や TuneIn をラジオっぽく聴きたいのであれば、Model One Digital Gen.2 がオススメです。

Tivoli Audio Model One については、下記の記事に詳細を書いています。

Tivoli Audio 以外では、「ラジオで音楽を楽しむ+Bluetoothスピーカー」という Model One BT と同じコンセプトのラジオとして、台湾のオーディオメーカー Sangean(サンジーン)が発売している WR-101、WR-302、WR-304 があります。

木製キャビネットと背面バスレフ構造は共通仕様です。WR-101 にはFM用のロッドアンテナが付属していますが、WR-302/304はFM用アンテナも内蔵されています。

WR-101背面
WR-101背面 | amazon.co.jp
WR-302背面
WR-302背面 | amazon.co.jp

ラジオは FM 76–108 MHz / AM 522–1710 kHz に対応しており、日本のFM放送、ワイドFM、AM放送をカバーしています。

Bluetooth は高音質コーデックの aptX には対応していますが、iPhone が採用している AAC には対応していません。ただ、Tivoli Audio Model One にも AAC や aptX といった高音質コーデック対応との記載はありません。

WR-101 は小型ボディながら、89mm のフルレンジ(低音・中音)に加え、40mm のツイーター(高音)を備えた 2ウェイ・スピーカー+電子クロスオーバー構成となっています。そのため、フルレンジ構成の Model One よりもクリアに聴こえるのではないかと思います。トーンコントロールも備えており、好みの音に調整できそうです。

WR-302 と WR-304 は横型・縦型というレイアウトの違いはありますが、基本的な仕様はほぼ同じです。WR-304 はACアダプター駆動のため、ひとまわりコンパクトなサイズになっています。どちらも 3インチのフルレンジスピーカーを備えており、シンプルな構成でラジオとBluetoothスピーカーを楽しめます。

また、Sangean 製品は KOPEK JAPAN(コペックジャパン)が正規輸入販売元となっており、国内正規品であればサポートを受けられるので安心です。

一方で、インターネットラジオを中心に考えるのであれば、JBL Authentics 200 という選択肢もあります。

数少ないインターネットラジオ対応機で、アプリ経由でTuneInのラジオ局を選択でき、プリセット登録にも対応しています。

AirPlay や Chromecast での接続が可能なほか、Amazon Music、Spotify Connect にも対応しています。さらに、Amazon Alexa と Google アシスタントの両方を利用できます。

JBL Authentics 200 は、単なるインターネットラジオ受信機にとどまらず、さまざまな音楽サービスや再生手段と柔軟に接続できる点で、他に類を見ない存在です。

Post Date:2026年4月22日 

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2を選んだ理由 ― BTと比べて見えた違い

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

Model One BTとDigital Gen.2でかなり悩みましたが、最終的に選んだのはModel One Digital Gen.2でした。

決め手になったのは、『定山渓で出会った、空間に溶け込む音』で触れた、旅行中の宿泊先で聴いたあの音です。

自然に空間へ広がる鳴り方が強く印象に残り、その体験が最終的な選択につながりました。

翠山亭倶楽部定山渓(すいざんていくらぶじょうざんけい)

客室にはTivoli Audioのスピーカーが備え付けられており、滞在中も心地よい音に包まれて過ごすことができます。ゲストラウンジのバータイムには、TANNOYのスピーカーから流れるジャズが空間に静かに溶け込み、特別な時間を演出してくれます。

BTのアナログ的な魅力も捨てがたかったのですが、ストリーミング音楽をBGMとして聴く自分の使い方には、スマートフォン連携を前提としたModel One Digitalの方が合っていました。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

開封の儀はいつもワクワクします。


Model One BTとDigitalの違い、そしてGen3の進化

今回悩んだModel One BTとDigital Gen.2には、機能面だけでなく、コンセプトや使い方にも違いがあります。

BT と Digital の違いは、以下の表の通りです。

− Model One BT と Model One Digital gen.2 の比較 −
項目 Model One BT Model One Digital(Gen.2)
コンセプト アナログラジオ+Bluetoothスピーカー ストリーミング再生に対応したラジオ
接続 Bluetooth 5.0 AirPlay 2 / Chromecast / Bluetooth
出力 6.0W 記載なし
音の傾向 丸みがあり空間に溶け込む 輪郭が明瞭で空間に広がる
ラジオ AM / FM(ワイドFM対応) FM(ワイドFM対応)
操作性 アナログダイヤル ベゼル+リモコン
ディスプレイ なし 小型ディスプレイあり
定価 ¥37,400 ¥62,700

WiFi環境があり、ストリーミング前提でBGM的に使うなら、Model One Digital Gen.2。アナログ的な操作感とFM/AMラジオ中心なら、Model One BTです。

Model Oneシリーズを調べる中で、よりデジタル化が進んだModel One Digital Gen.3 の存在も知りました。

Gen.3は、Gen.2よりさらにデジタル寄りになり、“クラシックなラジオ”というより"小型の本格デジタルスピーカー"に近い印象です。


ラジオとしての完成度の高さ

Tivoli Audio Model One Digitalを使って最初に驚いたのは、ラジオの音です。

"進化したClassicラジオ"と謳われていますが、実際に使ってみると、自宅にあるラジオと比べてもFMの受信感度が高く、音声も音楽も非常にクリアに聴こえます。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

これは、3インチのフルレンジスピーカーによる中域の明瞭さが、人の声を聞き取りやすくしている要因のひとつと考えられます。

加えて、バスレフ構造によって低音が適度に補われることで声に厚みが生まれ、単なる情報としての音ではなく、実在感のある音として再生されます。

リモコンの「FM Scan Strength Set」を「Strong Station」に設定すると、ラジオ局をスキャンした際に受信状態の良い局のみが検出されます。これらの局をプリセットしておくと、選局も簡単になります。

単に音が良いだけでなく、"長時間でも疲れずに聴けるラジオ"としての完成度も高く、Radikoの利用が中心になってから少し遠のいていたラジオのある生活に、再び戻りたくなります。


ラジオの感度をあげる

Tivoli Audio Model One Digitalは、全体として受信感度が高いと感じます。ただし、ラジオの受信状態は居住地や周囲の環境に大きく左右されます。

ロッドアンテナを伸ばして向きを変えたり、受信しやすい位置を探したりしても改善しない場合は、外付けアンテナを試す方法もあります。左右に伸びた2本の導線からなるダイポールアンテナは、シンプルで効果が得られやすいアンテナです。窓辺に設置すると、受信状態が改善されやすくなります。


Tivoli Audio Model One Digital の低音

Model One Digitalは、3インチのフルレンジスピーカーを1基だけ搭載していますが、低音も意外なほどしっかり再生します。Model One BTは出力6Wと公表されていますが、Model One Digital Gen.2は、それよりも余裕のあるスケール感で鳴っているように思えます。

Model One BTが底面ポート(円形)を採用しているのに対し、Digitalは背面に横長のバスレフポートを備えており、この構造が低音の厚みや広がりに効いているようです。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

実際にバスレフポートに指を当てると、低音に合わせて「ボン、ボン、ボン」と空気が押し出されるのがわかります。

前面のスピーカーから直接届く音に対し、低音はキャビネットとポートの働きによって少し空間に回り込むように広がるため、前に強く出るというより、全体を下から支えるように聴こえます。

こうした仕組みは一般にヘルムホルツ共鳴として説明されますが、Model One Digitalでも、その効果によって小型機とは思えない量感が生まれているのだと思います。

中域の明瞭さと、ふくらみすぎない低音の心地よさがいちばん伝わりやすいのが、レジーナ・スペクターのアルバム『11:11』に収録されている『Rejazz』です。

彼女のどこか危うげな歌声とダブルベースの組み合わせが印象的で、『Wasteside』や『Marry Ann』もとても気持ちよく聴けます。


接続方式で変わる低音の表情

BluetoothとAirPlayで低音の違いを聴き分けやすいのが、ビル・エバンス・トリオによる『Baubles, Bangles and Beads』です。

エディ・ゴメスの力強く、かつスリリングに動き回るベースラインが印象的な一曲です。スコット・ラファロのベースがアタックの強さと輪郭の明瞭さを特徴とするのに対し、ゴメスはガット弦らしい、やや丸みを帯びた落ち着いた質感が魅力です。

この曲をBluetooth接続で聴くと、ベースは「ボン…ボン…」と胴鳴りが中心に感じられ、全体としてまとまりのある響きになります。一方でAirPlayで聴くと、そのまとまりの中に、弦を弾いた際のわずかなアタックやニュアンスが少し感じ取りやすくなります。

Bluetoothは圧縮伝送とはいえ、イヤフォンで聴いている限りでは音質に大きな不満を感じることはありません。しかし、Tivoli Audio Model One DigitalでBluetoothとAirPlayを聴き比べてみると、低音の輪郭や空間的な広がりの面でわずかな違いが感じられます。


Amadana CDプレーヤーはBluetooth接続で

いままではAmadana CDプレーヤーをSONYのサウンドバーにBluetoothで接続していましたが、接続先をModel One Digitalへ変更しました。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

一度ペアリングしてしまえば、次回以降はBluetoothモードに切り替えるだけで、自動的にCDプレーヤーと接続されます。

Bluetooth接続は簡単で便利ですが、ラジオやAirPlayと比べると音量差が気になります。音量バランスとしては、ラジオ > AirPlay > Bluetooth の順で、特にAirPlayとBluetoothの差が目立ちます。

そこで、CDプレーヤーのBluetooth接続と比べて、Apple Musicに取り込んだ方がよりクリアに聴こえるのではないかと考え、試してみました。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

ロン・カーターのサントリー・ホワイトのCM曲を収録した日本企画のベストアルバム『The Man with the Bass』をApple Musicに取り込み、AirPlayで再生してみました。

CDからMusic Appに取り込んだ音源はApple Lossless(ALAC)で保存できるため、元のCDに近い情報を保ったまま扱えます。これをAirPlayで再生すると、Bluetooth接続よりも音の輪郭やニュアンスが感じ取りやすくなる場面がありました。

『36414』『Double Bass』で聴き比べてみると、AirPlay接続の方が、弦を指で弾くアタック音や音の輪郭をよりはっきりと感じ取ることができました。


使ってみてわかった、リモコンの便利さ

Model One Digitalは本体の電源ボタンとベゼルで操作できますが、リモコンでの操作はわかりやすく、使ってみると便利さを実感できます。

Tivoli Audio Model One Digital Generation 2

電源をオンにしたあと、2段目右側にある「Sourceボタン」で入力モードを切り替えます。FMラジオ → Wi-Fi(AirPlay)→ Aux In → Bluetooth の順に切り替えることができます。

FMラジオを聴く際は、プリセット呼び出しやスキャン機能が便利です。受信状態の良いラジオ局を登録したり、設定に応じて受信可能な局をスキャンできるため、聴きたい局へすぐに切り替えられます。

また、AirPlayで音楽を再生しているときには、リモコンから曲送りや音量調整ができるのも便利です。スマートフォンを毎回手に取らなくても操作できるため、BGMとして音楽を流す際の使い勝手の良さを実感しました。

見た目はクラシックですが、実際の使い勝手には現代的な快適さがきちんと備わっています。Model One Digitalは、音の良さだけでなく、こうした日常的な操作性の面でもよくできた製品だと思います。


まとめ:聴く体験に勝るものはなかった

最初にTivoli Audioに惹かれたのは、アナログチックなラジオとしての佇まいでした。

しかし、実際に“邪魔にならない心地よさ”の音を聴いて、音楽配信サービスをBGMとして流すスピーカーとしての使い方が自分に合っていることに気がつきました。

また、実際に使ってみると、ラジオとしての完成度の高さにも驚かされました。

Model One BTにはアナログ的な魅力があり、Digital Gen.2にはスマホ連携を前提とした現代的な使いやすさがあります。両者はコンセプトも使い方も異なっています。

Model One Digital Gen.2は、日常の中で長く使いたくなる一台です。


AirPlay設定で「WiFi Setup Enabled」にならない

AirPlay設定で「WiFi Setup Enabled」にならない場合は、本体背面の「SETUP」ボタン操作が必要です。

クイックスタートガイドのAirPlay 2設定手順には、この「SETUP」ボタンについての記載がなく、設定をやり直そうとしてもできませんでした。

オンラインのオーナーズマニュアルには、次の手順が示されています。

  1. 電源ボタンを押して本体の電源を入れる
  2. Wi-Fiモードで、本体背面の「SETUP」ボタンを短く押す
  3. 「Wireless Setup Enabled」が表示されるまで待つ

Model One Digital Generation 2 | Owner's Manual

「SETUP」ボタンの操作については、Gen.3のマニュアルの方が分かりやすく、「WiFiモードで“WiFi Setup Enabled”が表示されない場合は背面のSETUPボタンを押す」と明記されています。

マニュアルを読んで問題は解決しましたが、クイックスタートガイドだけでは分かりにくく、設定に時間がかかってしまったのは残念でした。


【追記:その1】Spotify対応の意味

仕様にもSpotify®対応と記載されていますが、AirPlay2 / Chromecast に対応しているため、スマホのSpotifyアプリから楽曲を再生できるのは当然だと思っていました。

しかし実際には、Spotifyのプレイリストやラジオを本体のプリセットに登録できることが、「Spotify対応」の意味でした。オーナーズマニュアルには、次のように記載されています。

Spotify プレイリストをプリセットに追加する:リモコンを使用して、保存したプリセットにプレイリストを追加します。 使用したい番号プリセットを長押しして、画面上の確認を待つだけです。 プリセットを削除するに、リモコンの番号プリセットボタンを押し続けます。

Model One Digital Generation 2 | Owner's Manual

  1. Tivoli Audio Model One Digitalに接続する
    Spotifyで楽曲を選択して、左下にあるスピーカーアイコンを選択

    SpotifyからModel One Digitalに接続

  2. Spotifyの"プレイリスト/ラジオ"をTivoliで再生
  3. Model Oneのリモコンでプリセットボタンを長押し
  4. 「Preset Added」の表示で登録完了

登録したプレイリスト/ラジオは、Wi-Fiモードでプリセットボタンを押すだけで再生できます。

Spotify®対応のTivoli Audio Model One Digital Gen.2

スマートフォンを操作しなくても、ラジオのような感覚でSpotifyのプレイリスト/ラジオを再生できるため、BGM用途としての相性が非常に良いと感じました。


【追記:その2】TuneInをChromecastで聴く

TuneInは、インターネット経由でラジオ番組を聴けるサービスで、ジャンル別の音楽専門局も多数あります。

Model One DigitalでTuneInを聴くのであれば、AirPlayよりもChromecastで接続した方が、BGMとしての使い勝手は格段によくなります。

これは、AirPlayがスマートフォンから音声データを送る仕組みであるのに対し、Chromecastは再生情報(URLなど)をデバイスに渡し、デバイス自身がインターネットから直接ストリーミングする仕組みだからです。

Tivoli側で再生が始まればスマートフォンに依存せず、アプリを閉じても再生が続きます。一方、AirPlay接続ではTuneInアプリを閉じると再生が停止します。

Chromecastの設定も難しくありません。iPhoneでAirPlayの設定が完了していれば、Google Homeアプリから簡単にTivoliへ接続できます。

Google HomeでCheomwcastを設定する

  1. Model One Digigitalの電源を入れてWiFiモードにします
  2. "Connecting to WiFi" が表示されたら設定開始です
  3. Google Home 右上の「+」ボタンから「デバイス追加」を選ぶとAirPlayで設定した同じWiFi上のTivoliを見つけてくれます
  4. デバイス名を付ければ完了です
Google HomeでChromecastを設定する

Chromecastの設定が終了したら、TuneInアプリからChromecastを選択してTivoli Audioに接続します。

ChromecastでTivoli Audio Model One Digital Gen.2に繋げる

Gen.2では、残念ながらTuneInはプリセットできませんが、一度スマホのTuneInアプリから接続すれば、そのラジオ局を聴いている限りはスマホは不要となります。

TuneInに接続中のTivoli Audio Model One Digital Gen.2

画面には、曲名とラジオ局(Love Songs Cafe)が表示されます。

Model One Digital Gen.2でTuneInをAirPlayとChromecastで接続して、再生をした場合の違いをまとめました。

− AirPlay と Chromecast の違い (TuneIn) −
項目 AirPlay Chromecast
必要アプリ なし Google Home
再生主体 iPhone Model One Digital
通信内容 音声データ 再生データ(URLなど)
音量調整 iPhone本体, Tivoli本体 Google Home, Tivoli本体
アプリ終了 停止 継続
スマホ依存 再生中は常時 再生開始時のみ

TuneInで聴きはじめるときにはスマホが必要ですが、「1.FM Adore Jazz」や「Love Songs Cafe」をずっとかけっぱなしにしてBGMとして使うのであれば、相性のよい使い方だと思います。

Post Date:2026年4月17日 

定山渓で出会った、空間に溶け込む音

翠山亭倶楽部定山渓のゲストラウンジに設置されているTANNOY

翠山亭倶楽部定山渓(すいざんてい くらぶ じょうざんけい)に宿泊したとき、バーラウンジに流れていたジャズの音に思わず足を止めました。

翠山亭倶楽部定山渓(すいざんていくらぶじょうざんけい)

客室にはTivoli Audioのスピーカーが備え付けられており、滞在中も心地よい音に包まれて過ごすことができます。ゲストラウンジのバータイムには、TANNOYのスピーカーから流れるジャズが空間に静かに溶け込み、特別な時間を演出してくれます。

ブックシェルフに囲まれたラウンジのカウンター奥に、 TANNOY のスピーカーが凛とした姿で佇んでいました。

翠山亭倶楽部定山渓 ゲストラウンジ

ANNOYはクラシックを聴くためのスピーカーという固定観念がありましたが、その音はジャズでも心地よく空間に響いていました。トランペットの音色は主張することなく、その場の空間に静かに滲んでいきます。

翠山亭倶楽部定山渓 ゲストラウンジにあるTANNOY

音が良い、というよりも、空間に自然に溶け込んでいる。主張することなく、しかし確かにそこにある。そんな音のある空間でした。

バーテンダーのN氏によると、音量を上げれば低音の響きをより感じることもできるそうですが、静かな空間での会話を邪魔しない、その染み渡るような音の広がり方がとても印象的でした。


客室で再び出会った「邪魔にならない音」

客室には Tivoli Audio Model One Digital が置かれていました。

翠山亭倶楽部定山渓 客室にある Tivoli Audio Model One Digital

かつて、SoundLink Revolve に惹かれたのも、旅館の客室に設置されていたものを使ったことがきっかけでした。日常から離れた素敵な部屋で聴く落ち着いた音楽は、いつもよりも魅力的に感じられます。

翠山亭倶楽部定山渓(すいざんていくらぶじょうざんけい)

客室にはTivoli Audioのスピーカーが備え付けられており、滞在中も心地よい音に包まれて過ごすことができます。ゲストラウンジのバータイムには、TANNOYのスピーカーから流れるジャズが空間に静かに溶け込み、特別な時間を演出してくれます。

少し前にKITTEのアンジェ ビュロー(ANGERS bureau))で Tivoli Audio Model One BT を見かけて物欲が再燃していたこともあり、Model One Digital Gen.2 の奏でる音を試してみることにしました。

バーラウンジの余韻が残っていたこともあり、流したのは Scott LaFaro のベースが際立つ「Alice in Wonderland」。粒立ちのよいベースのフレーズが静かに身体に馴染んでいきます。

驚いたのは、この小さな木製キャビネットのスピーカーが、先ほどのTANNOYで感じた感覚と、どこか通じるものを持っていたことです。

ウッドベースの音は輪郭が立ちすぎず、それでいて埋もれることもない。音の立ち上がりと消え際が滑らかで、フレーズの流れが自然に感じられます。

だいぶ前の記憶なので正確ではないかもしれませんが、Model One BTにはどこかラジオのような懐かしさがありました。だからこそ「いいな」と感じたのだと思います。一方で、今回聴いたModel One Digital Gen.2は、音の輪郭や粒立ちが少し整い、より洗練された印象を受けました。


「邪魔にならない音」とは何か

今回、TANNOY と Tivoli Audio に共通して感じたのは、“邪魔にならない心地よさ”でした。それは単に音量が小さいということではありません。

  • 必要以上に自己主張しない
  • 音が前に出てこない
  • 空間に自然に馴染む

つまり、音が“聴く対象”ではなく、“そこにあるもの”として存在している状態です。そのため、長くその空間にいても、耳が疲れることがありません。


“聴かせる音”と“溶け込む音”の違い

Tivoliの音は、“音のある世界”と“音のない世界”の境界を曖昧にします。普段はAmazon Echo Studioのステレオ構成にEcho Sub(サブウーファー)を組み合わせて音楽を聴いていますが、これはこれで素晴らしい音楽体験が得られます。

Echo Studioで再生される音楽は、きれいに整えられた輪郭を持ち、トランジェント(音の立ち上がり)もやや際立っています。音は立体的に広がり、その存在を明確に感じさせます。さらにサブウーファーによって低音が加わり、全身を包み込むように音を“聴かせる”方向のスピーカーです。

この違いは、単なる音質の良し悪しではなく、設計思想の違いによるものだと思います。

Echo Studioは、DSPによって音の輪郭や低音、空間表現を積極的にコントロールし、“音を聴かせる”方向にチューニングされています。一方でTivoliは、フルレンジスピーカーと比較的シンプルな構成により、音を過度に加工せず、そのまま空間に溶け込ませるような鳴り方をします。


Tivoliの出発点はラジオから

Tivoliの出発点はラジオであり、「言葉を正確に伝える」という思想が設計の根底にあります。そのため、音は主張しすぎることなく、気がつけば音楽がそこにあるような自然さを感じさせます。

デジタル音源は、DSP(デジタル信号処理)によって音質が整えられていますが、その補正は過剰ではありません。“作り込まれた音”ではなく、あくまで自然さを損なわない範囲にとどめられています。

また、声がよく聞こえる中域を重視した設計により、ベースは量感で押し出されるのではなく、音の輪郭やフレーズとして自然に浮かび上がります。

Scott LaFaro のような動きのあるベースのフレーズも、美しく表現されます。


フルレンジスピーカーが生む自然なつながり

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2は、単一のフルレンジスピーカーで音を再生しています。

翠山亭倶楽部定山渓 客室にある Tivoli Audio Model One Digital

一般的なスピーカーは高音・中音・低音をそれぞれ別のユニットで分担しますが、フルレンジはひとつのユニットですべての帯域を鳴らします。

音の輪郭が過剰に際立つこともなく、音はひとつのまとまりとして空間に広がっていきます。それが、音のつながりの自然さとして感じられます。


Class ABアンプが生む滑らかな音

Tivoli Audio Model One Digital Gen.2 には、Class ABアンプが採用されています。

一般的な小型スピーカーで使われているデジタルアンプ(Class D)は効率に優れていますが、音の輪郭や立ち上がりが強調されやすく、音の存在感がはっきりと感じられます。

一方、Class ABアンプはアナログ的な特性を持ち、歪みが少なく、滑らかで自然な音を再生します。音のエッジが立ちすぎることがなく、やわらかく空間に広がっていきます。長時間聴いていても疲れにくい音です。

− Class AB と Class D の違い −
方式 音の傾向 歪み 効率 発熱 特徴
Class AB 滑らかで自然 少ない 中程度 中程度 切り替え時の歪みを抑えた設計
Class D 輪郭がはっきり・クリア 少ない 非常に高い 非常に小さい 小型・高出力・高効率

Model One BT と Digital Gen.2、どちらを選ぶか

ここまで書いてきたように、Tivoliの音の魅力は「主張しない自然さ」にあります。では、その音を楽しむうえで、Model One BT と Digital Gen.2 のどちらを選ぶべきかが悩みどころです。

比較のポイントは大きく3つあります。「音の方向性」「接続方法」「価格」です。

まず音の方向性ですが、アナログに強くこだわるのであれば BT だと思いますが、Digital Gen.2 は、DSPによって整えられた、より安定した音になります。

次に接続方法です。BT は、Bluetooth接続のため音声データを圧縮して再生しますが、Digital Gen.2は、AirPlayやChromecastに対応しており、より情報量を保ったまま再生できます。

そして価格。Model One BT は 37,400円(税込)、Model One Digital Gen.2 は 62,700円(税込)と、価格差も小さくありません。

− Model One BT と Model One Digital Gen.2 の比較 −
項目 Model One BT Model One Digital Gen.2
音の方向性 よりアナログ的 DSPで少し整えられた安定した音
接続方法 Bluetooth(圧縮) AirPlay2 / Google Cast
(高品質伝送), Bluetooth(圧縮)
ラジオ AM / FM / ワイドFM FM / ワイドFM
リモコン なし あり
価格 37,400円(税込) 62,700円(税込)

ラジオは受信環境によっては、うまく受信できないこともありますが、電波で聴く放送は自然で、耳に心地よく届きます。

また、Model One Digital Gen.2はAM放送には対応していませんが、ワイドFMに対応しているため、東京では「TBSラジオ」「文化放送」「ニッポン放送」をワイドFMで聴くことができます。

東京スカイツリーからは、以下のラジオ局が送信されています。

  • J-WAVE:81.3MHz
  • NHK-FM 東京:82.5MHz
  • TBSラジオ(ワイドFM):90.5MHz
  • 文化放送(ワイドFM):91.6MHz
  • ニッポン放送(ワイドFM):93.0MHz

また、東京タワーからは、以下の2局が送信されています。

  • TOKYO FM:80.0MHz
  • interfm :89.7MHz

Moel One Digital Gen.2 なら、スマホはAirPlay2で接続、Amadana CDプレーヤーはBluetoothで接続すればいいのかなあ、、、

嗚呼、物欲の神様…。

Post Date:2025年5月11日 

ウルトラセブンとリズムボックス、そしてYMO

ウルトラセブン 第37話「盗まれたウルトラアイ」に登場したリズムボックス

不朽の名作『ウルトラセブン』のあるエピソードで使われていた音楽機材が、テクノ音楽の礎を築いたYMOへと繋がる、ちょっとマニアックなお話しです。

『ウルトラセブン』第37話「盗まれたウルトラアイ」というエピソードで、マゼラン星への怪電波の発信源となっていたのが、なんと、バンドが生演奏する中、若者たちが踊るステージに置かれていた「リズムボックス」だったんです。

ウルトラセブン 第37話「盗まれたウルトラアイ」に登場したリズムボックス

1968年、放送当時にゴーゴークラブのような場所でドラムの代わりにリズムボックスが使われていたのかは想像の域を出ませんが、若者が熱狂するツイストのようなダンスミュージックに使われる、シンプルでアップテンポなリズムは、当時の大人たちには「単調なリズム」と映ったかもしれません。

一方で、リズムボックスの電子音で奏でられる規則正しいリズムは、近未来的な響きとして捉えられた可能性もあります。実際にテクノミュージックは70年代に開花します。

そして、繰り返される単調なリズムが、同じメッセージを何度も送るモールス信号のように聞こえたのではないか、ということです。実際、マゼラン星人のマヤは、故郷に「迎えはまだか」という短い通信を繰り返し送っていました。

さらに興味深いのは、地球防衛軍極東基地でリズムボックスのカバーが外されると、中にはテープが回っていて、テープ再生型(テープループ)のリズムボックス?でした。メロトロンのリズムボックス版⁈

ウルトラセブン 第37話「盗まれたウルトラアイ」に登場したリズムボックス

もしかしてテープループのリズムボックスってあったの?と、調べてみると、1949年に Chamberlin ‘Rhythmate’というテープに録音されているドラム音がループして再生されるというテープループ式のドラムマシンが発売されていたのを知りました。こちらがメロトロンの先祖でした、、。

60年代後半のリズムボックスは半導体で電子音を発生させるものでしたが、テープというアナログな仕組の方が、より機械的な印象を与えたのかもしれません。

にしても、恐るべしウルトラセブンです。

特撮作品に登場した「リズムボックス」という当時の新しい音楽技術への視点、そして繰り返される電子リズムという描写は、後にコンピューターと音楽を融合したYMOのような音楽が世界を席巻する未来を予見していたのではないかと勘繰ってしまいます。


1960年代後半に進化したリズムボックス

ウルトラセブンの「盗まれたウルトラアイ」が放送されたのは1968年6月16日です。

ウルトラセブン 第37話「盗まれたウルトラアイ」

1960代後半には、ACE Tone (エース電子工業) シリーズ、京王技術研究所 Donca Matic / Mini Pops シリーズなど、60年代後半には多くの名機と呼ばれるリズムボックスが発売されています。

「盗まれたウルトラアイ」が放送された1968年当時に発売されていたリズムボックスについて確認してみました。


ACE Tone シリーズ

ACE Tone Rhythm Ace FR-1 / FR-3は、アナログ方式のプリセットリズムマシンで、「電子化リズムマシンの原点」の一つとされています。

エース電子工業の創業者、梯郁太郎(かけはし いくたろう)氏は、エース電子工業を離れ、1972年にローランドを創業し、ACE Toneの技術やデザインを継承したTR-33 / 55 / 77 を発売します。これが後の名機TR-808(通称 ヤオヤ)に繋がっていきます。

  • Rhythm Ace FR-1(1967)

    FR-1は16種類のプリセットリズムパターンを搭載しており、プリセットを組み合わせることが可能です。また、FR-1はハモンドオルガンオプションとして採用されていたともあります。当時はオルガンにリズムボックスが搭載されていたんですね。エレクトーンみたいです。

  • Rhythm Ace FR-3(1967)

    8種類の基本リズムパターンの他に、2ビートと4ビートのリズムに対して、それぞれ6種類ずつのバリエーションが用意されていました。


Donca Matic / Mini Pops シリーズ

京王技術研究所は、1986年に社名がKROGとなりますが、1963年に発売した「ドンカマチック DA-20」は、国産初のリズムマシン市販機です。

Donca Matic DA-20
【引用】「ドンカマチック」が未来技術遺産に登録! | KORG

国産初となる円盤回転式電気自動演奏装置で、日本におけるリズム・マシン開発の出発点となった重要な機器として評価され、2020年に国立科学博物館が制定する未来技術遺産に登録されました。

  • Donca Matic DA-20(1963)

    回転する円盤にある接点が触れることによって真空管を使用したアナログ回路でリズム音が生成され、円盤の回転スピードを変えることでテンポが調整できるという機械的な仕組みでした。

    25種類のプリセットリズムパターンを搭載し、本体のフロントパネルにはミニ鍵盤のようなスイッチがあり、個別の音色を手動で鳴らすことも可能だったとあります。

  • Donca Matic DE-20(1966)

    Donca Matic DE-20になって機械式回転円盤から、トランジスタ回路を使用した電子式に変更されました。また、リズム音の生成もアナログ回路ですが、真空管からトランジスタに変更になっています。

  • Donca Matic DE-11

    DE-20の廉価版とありますが、詳細は不明です。動画で確認することができます。

  • Mini Pops 5 / 7(1966)

    Mini Popsシリーズは、より広範にトランジスタ技術を適用した、次の世代のリズムマシンとして位置づけられていて、トランジスタ式リズムマシンの重要なモデルと言われています。

  • Mini Pops 3 / 20S(1967)

    かなり洗練されているリズムボックスで20SのSはステレオを意味するとWikipediaには掲載されていますが、詳細は不明です。


ドンカマとは?

マルチトラックレコーディングを行う際のガイドリズムのことを、いまでも「ドンカマ」と言います。これは、かつてレコーディングスタジオに Donca Matic(ドンカマチック)が備品として置かれていた時期があり、その略称である「ドンカマ」がガイド音を指す言葉として広まったと言われています。

「YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY」のインタビューの中で細野晴臣氏も下記のように言及しています。

「このツアーのときのクリックはドンカマみたいな音が鳴っているだけで、今みたいにバックトラックが鳴っているわけではないから、それに合わせるわけにはいかない。一番肝心だったのは(高橋)幸宏のドラムなので、幸宏のグルーヴに合わせてシンセベースを弾いていたんです」

【引用】YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY - ロングインタビュー

と、「ドンカマみたいな音」という言葉を用いて、ライブのときにタイミングを合わせるためのガイド音を「ドンカマ」表現しています。

ちなみに「YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY」は、アルファミュージック設立55周年を記念して、ライヴ・レコーディングが行われた4都市5公演の全貌を伝える5CD+1BDのライヴ・ボックス・セットです。

Blu-Rayのライブ映像は、THE GREEK THEATREとHURRAHの映像を最新の技術でアップコンバート、サウンドも新たにミックスとリマスタリングが施されています。

ドラムもベースの音も一つ一つの音の粒がたっていて、とても1979年の演奏とは思えないクォリティです。それにしても細野さんのシンセベースの手弾きの演奏には天晴れです。

YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY

アルファミュージックのYouTubeチャンネルでは、このBOX SETに収録されている THE GREEK THEATREでの「RYDEEN」の映像が公開されています。

CDで聴く音楽もいいものです。

YMO LIVE AT THE GREEK THEATRE 4/8/1979

世界初の商用リズムボックス Wurlitzer Sideman

1959年に発売された Wurlitzer Sideman(ウーリッツァー・サイドマン)が世界初の商用リズムボックスと言われています。

真空管と電磁式回転ディスクを用いた機械式のリズム生成機です。ボタンを押すことで手動で演奏することも可能です。

日本のコルグ創業者である加藤氏がドンカマチック開発の着想を得る際、クラブで使われていたSidemanに触発されたというエピソードがWikipediaに記載されています。実際にSidemanの動画を見ると、Donca Matic DA-20がWurlitzer Sidemanを強く意識して作られたことがよく分かります。


テープループのドラムマシン Chamberlin Rhythmate(チャンバリン・リズメイト)

世界初のリズムボックスより10年前にハリー・チャンバリン(Harry Chamberlin)によってテープ再生式(テープループ)の「世界初のドラムマシン」であるリズメイト(Chamberlin Rhythmate)が製造されています。

1インチ幅の磁気テープループに記録された、本物のアコースティックドラムキットやパーカッション(ボンゴ、クラベス、カスタネットなど)の演奏パターン(サンプル)を再生することでサウンドを生成します。サンプリング(PCM)音源を搭載したドラムマシンLinn Drum の大先輩です。


YMOでみるリズムボックス

1980年に発売されたローランド TR-808は、ドンカマチックよりも1年早い2019年に「音楽シーンに大きな影響を与えたリズムマシン」として国立科学博物館の「重要科学技術史資料」(通称 未来技術遺産)に登録されています。

Yellow Magic Orchestra もアルバム『BGM』(1981年)でTR-808を使っています。アルバムに収録されている「1000 KNIVES(千のナイフ)」 は、坂本龍一のファーストソロアルバムのセルフカバーで、「YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY」でも演奏されいる、とてもグルービーな一曲です。必ずテーマに戻るという構成はJazzのようでもあります。

しかし、このBGMバージョンではTR-808のリズムが前面に押し出され、ヤオヤ(TR-808の通称)のキック音とクラップによって、より機械的で乾いたアレンジとなっているのが特徴です。


Nothing has to Change(何も変わらないこと)

今回のブログでは、ウルトラセブンに登場した謎のリズムボックスから始まり、初期の国産リズムマシン、そして世界の最先端を走ったTR-808やChamberlin Rhythmateに至るまで、リズムマシンの歴史を辿ってきました。

ウルトラセブン「盗まれたウルトラアイ」のエピソードで描かれた、あの単調でありながらも近未来的なリズムボックス。そして、初期のリズムボックスにおけるテクノロジーの限界からくる「シンプルに、決まったことを繰り返す」という制約こそが、リズムボックスの本質となり、その後の技術的な挑戦へと繋がっていきました。

ウルトラセブンは、北米版ブルーレイで安価に高画質で楽しむことができます。

日本のテクノロジーである Donca Matic DA-20 が示したリズムボックスの本質と挑戦は、時代を超えて脈々と受け継がれています。

少し前に『メトロノームじゃ物足りない!アップライトベース練習に最適なリズムマシンはこれだ!(おすすめ3選)』というタイトルで、B-205の購入理由について「スピーカーで音が鳴らせてシンプル操作」と書いていましたが、もしかしたら、大人になってウルトラセブンに興味をもつのも、昔のリズムボックスに惹かれるのもベースに nothing has to change という思想に基づいて判断していたのかもしれません。

テクノロジーがどれだけ進化しようとも、根源的なリズムの力、そしてシンプルな繰り返しの中に宿る魅力は不変である。音楽の歴史を紐解く中で、そんな普遍的な本質を見出す面白さを改めて感じることができました。

マニアックすぎる書籍 Rhythm Machines

Don Camatic CE-11の動画の最初に紹介されている書籍『Rhythm Machines: The rise and fall of the presets』は、1960年代後半から1980年代初頭にかけて登場したプリセット式リズムマシン(ドラムマシン)の歴史を詳細に記録したものです。Ace Tone、Eko、Elka、Farfisa、Gulbransen、Kay、Kawai、Korg (Keio)、Maestro、Seeburg、Roland、Yamahaなど、主要メーカーからマイナーなメーカーまで、300近い機種を網羅し、カラー写真とモノクロ写真を含む200ページにわたる詳細な情報が掲載されています。

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