アップライトベースの練習で、心地よい低音のグルーヴを生み出すためには、メトロノームを使って「裏」を捉えながらのトレーニングが欠かせません。アンサンブルの土台をしっかりと支えるベーシストにとって、この基礎練習は絶対に避けては通れない道なので、日々の運指練習やスケール練習では、メトロノーム音がリズムのガイドとして静かに響いています。
メトロノームを使ったリズムを裏で取りながらの練習方法については「象と散歩:最高に可愛い機械式メトロノームでリズム感を鍛える」を参照してください。
しかし、いざお気に入りのスタンダードナンバーや、取り組んでいる曲を通しで練習しようとすると、メトロノームの刻む音では、物足りなさを感じてしまいます。
そこで、もっと音楽的なインスピレーションを与えてくれるドラムサウンドを、メトロノームのような感覚で扱える、操作も機能もシンプルなリズムマシンを探しました。
ベースの横にいるリズムマシンの条件
ベースの横に置くリズムマシンの条件として、4つの条件を考えてみました。
- スピーカー内蔵:アンプへの接続といった手間なく、本体だけで音が鳴ること。
- 電池駆動:コンセントの場所を気にせず、部屋のどこでも使えること。
- 操作がシンプル:電源を入れてボタンを押したら直ぐにリズムを刻み始めること。
- テンポを数値表示:メトロノーム同様、テンポ(BPM)を視覚的に確認できること。
これらの条件を満たす、魅力的な候補として3つの機種が浮かび上がってきました。それが、KORG KR-mini の後継機として、多機能さと手軽さを両立したKORGの『KR-11』、パワフルな内蔵スピーカーと付属品の充実が嬉しい島村楽器のオリジナルブランドLouisの『JB-205』、そして、高品位なサウンドとアコースティック楽器との相性も抜群なBOSS『DR-01S』です。
比較のために下表に簡単にまとめています。
機種名 | 主な特徴 | パターン | スピーカー出力 | 電池駆動 | 駆動時間 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|---|---|
KORG KR-11 |
豊富なリズムパターン,チェイン機能, カウントイン | 120+ パターン, 14 キット | 2W | 単3 x 4本 | 16h | ¥14,850 |
Louis JB-205 |
10W出力, FS付属, カウントイン, 自動エンディングあり | 50プリセット + 50ユーザー | 10W 5インチ |
単3 x 6本 | 30-40h | ¥15,000 |
Boss DR-01S |
アンプラグド楽器に特化した設計, カウントイン | 多彩 (レイヤー可能) | 7W 4インチ |
単3 x 6本 | 10h | ¥30,800 |
どう選べばいいのか?
KR-11、Louis JB-205、Boss DR-01Sとそれぞれに特徴があるので、自分にあったリズムマシンを選びましょう。
パーカッション系&音質にこだわるなら
パーカッション系&音質重視ならBoss DR-01Sがイチオシです。カホン等リアルな打楽器やドラムを最大7つ重ね、高品位なリズム伴奏を簡単に作れます。アコースティック楽器との相性も抜群で、7W / 10cm (4インチ)のスピーカーはパワフルかつクリア。本体だけでリッチなサウンドが楽しめます。価格は少し高めですが、カウントインやAux/Line端子も搭載し、練習からライブ、録音まで対応。価格に見合う価値を求める方に最適です。
多彩なリズムを手軽に!曲構成での練習もしたいなら
たくさんのリズムパターンに触れてみたい、そして曲全体の流れに合わせて練習したい、という方には KORG KR-11 がおすすめです。120種類以上もの豊富なリズム・パターンは圧巻です。そして「チェイン機能」で複数のパターンを順番通りに並べて再生できるので曲を通した練習もできます。「スゥイング」で揺れやノリの表現もできます。内蔵スピーカーのパワーは他の二機種ほどではありませんが、自宅での個人練習であれば十分です。
兎に角にもシンプルさを望むなら
難しいことは抜き!シンプルさ最優先ならLouis JB-205が最適です。プリセットのテンポを変えてメモリに記録できるので、電源スイッチをONにして、付属のフットスイッチを踏めば、いつものリズムとテンポで練習を開始。10W/5インチのスピーカーは十分な音量/音質で、カウントイン、自動エンディングも便利。電池で長時間駆動、ACアダプタ・FSも付属でコスパも◎。アンプの傍らに置いて気軽にビートを鳴らすスタイルに似合います。
と、いうことで、練習用のリズムマシンとしての利用なので、シンプルな操作で床に置けるミニアンプ型の形状が気に入りLouis JB-205を購入しました。
Louis JB-205を使ってみて
実際にLouis JB-205をベースアンプ(PJB Nanobass X4C)の隣に置いて使ってみると、まずその「シンプルさ」という選択が、日々の練習において、いかに大切かが実感できます。
また「これ、いいかも」と思ったのが、スタート時のカウントインと、ストップ時の自動エンディング機能です。フットスイッチを踏むと、演奏開始前に「カッ、カッ、カッ、カッ」と1小節分のクリック音が鳴るため、焦ることなくリズムの頭から練習を始められます。さらに、フットスイッチをもう一度踏むと、最後に「シャーン!」とシンバルが鳴ってくれます。この「締め」があるだけで、練習の区切りが明確になります。
内蔵されている50種類のプリセットパターンは、ロック、ポップス、ファンク、ジャズ、3拍子など、基本的なスタイルを網羅しています。この中からよく使うパターンを選び、練習したいテンポに変更してユーザーメモリに記録しておけるのが、地味ながら非常に便利でした。これにより、電源を入れるたびにテンポを設定し直す手間が省け、よく使う「自分だけのプリセット」をすぐに呼び出せます。
内蔵スピーカー(10W/5インチ)のサウンドは、自宅でのベース練習において、ベース小型アンプ(PJB Nanobass X4C)の音量に負けることなく、しっかりとリズムを届けてくれるパワーがあります。もちろん、何万円もする高級機のような超高解像度サウンドではありませんが、バスドラムのアタック感、スネアの抜け、ハイハットの刻みがクリアに聞き取れ、リズム練習のガイドとしては十二分以上の働きです。むしろ、変に加工されていないストレートなサウンドが、リズムの骨格を捉える練習には最適だと感じました。
これだけのサウンド、パワー、そして練習を快適にする機能(カウントイン、自動エンディング、ユーザーメモリ)を持ちながら、フットスイッチとACアダプターが最初から付属している。おまけに単三電池6本で30時間以上も稼働するというスタミナまで備えているのですから、驚くほどのコストパフォーマンスです。
「ベース練習の相棒」として、必要なものが、本当に必要な形でパッケージされている。煩わしいことから解放され、純粋にベースと向き合う時間を豊かにしてくれる。Louis JB-205は、まさにそんな実用性と満足感を得られる、粋なリズムマシンです。