軟調ペンからセーラー万年筆の日本語のためのペン先である長刀研ぎに興味を持ちました。しかし、今日日あまりにも高価で手が出ません。そんなときに出会ったのが、WANCHERの渓流ニブです。
渓流ニブは、日本の伝統と革新を融合した万年筆ブランドWANCHER(ワンチャー)のオリジナルペン先で、最終的な仕上げはペン先職人である長原幸夫氏によって行われています。長原氏はセーラーで長刀研ぎを復活させた故長原宣義氏のご子息で、同じく元セーラーの万年筆職人であり、現在はThe Nib Shaperとして活躍されています。
渓流ニブは、スチールニブなので軟らかいペン先ではありませんが、渓流のような柔らかな流れを筆跡に宿し、その独自の書き味は、日本語の美しさと表現力を際立たせてくれます。
渓流ニブを購入すると下記のカードが同梱されています。
渓流ニブとは?その独自性と特徴
多くの万年筆では、ペンポイントは半球形に仕上げられており、どの方向からも均一な線を引けるようにデザインされています。この形状は滑らかな書き心地を提供する一方で、線の強弱や表現力には限界があります。
一方、セーラー万年筆の長刀研ぎ(なぎなたとぎ)は、ペンポイントが長刀のように斜めに研ぎ上げられており、筆圧やペン先の角度によって線幅を大きく変化させる特徴があります。縦線を太く、横線を細く書くなど、日本語特有の書字美を追求した設計が施されています。
【引用】Amazon - セーラー万年筆 長刀研ぎ |
渓流ニブは、一般的な万年筆のペンポイントと長刀研ぎの中間的な形状です。ペンポイントはとても大きく、ペン先の先端は長刀研ぎほど鋭利ではありませんが、一般的なペンポイントよりも細長く研ぎ上げられています。また、ペンポイント全体がわずかに湾曲しており、この微妙なカーブが線の滑らかな流れを生み出す要因となっています。
裏から見ると刀というよりは山のようにもっこりとしています。
この形状により、渓流ニブはスチールニブでありながら、ペン先の角度や筆圧によって線の太さに抑揚をつけることができます。特に、漢字の「ハライ」「トメ」「ハネ」といった線の強弱が美しく表現され、文字に動きと立体感をもたらします。
長刀研ぎは使ったことがないのでわかりませんが、渓流ニブはスチール製のため金ニブほどの柔軟性はありませんが、職人の丹念な調整により、硬いスチールでも適度な柔軟性を持たせて「静かで滑らかな変化」を実現しています。
渓流ニブの書き味
渓流ニブの書き味は、軟調ペンのように筆圧によるダイナミックな線の変化とは異なり、より穏やかで優しい変化が特徴です。ペン先の角度や筆圧に応じて、繊細な線の強弱を表現することができます。
WANCHERの渓流ニブのページには「水面をすべるアメンボのように」スーと線が引けるとありますが、潤沢なインクフローと職人よって研ぎ澄まされたペン先で、紙の上を滑るように静かでスムーズな書き心地を実現しています。
字幅は太字程度で、小さな文字を書くよりも、中字からやや大きめの文字を書く際にその特性が最大限に発揮されます。漢字の「ハライ」や「トメ」など、筆致の美しさを求める文字に特に適しています。
渓流ニブの書き味についての動画もあります。
WANCHERの万年筆を選ぶ
渓流ニブを手に入れるには、以下の2つの方法があります。
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WANCHERの万年筆に渓流ニブをカスタマイズ
WANCHERの15,000円以上の万年筆(一部対象外)を購入し、追加料金7,700円(税込)で渓流ニブを選択できます。
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交換用ニブとして購入
楽天やAmazonのWANCHER公式ストアで、交換用渓流ニブを9,350円(税込)で購入できます。 JOWO #6ニブの「世界樹 / カレイド」と交換できるので、価格を抑えて渓流ニブ万年筆が手に入ります。
峰万年筆もニブを外すことができます。
「世界樹万年筆 黒檀(エボニー)」に交換用ニブとして渓流ニブを購入することを検討していました。しかし、エボナイト素材に強く惹かれ、最終的には「ドリームペン/夢万年筆 -峰- 誠エボナイト」のマーブルパープルグレーを選びました。
完全に予算オーバーです、、。
エボナイトとは
エボナイトは、天然ゴムに硫黄を加えて加熱することで得られる、硬くて光沢のある素材です。かつては万年筆の軸材として広く使用されていました。しかし、より簡単に扱える樹脂素材が主流となる一方で、エボナイト特有の美しい光沢や温かみのある感触は多くの万年筆愛好家を惹きつけています。
峰万年筆・マーブルパープルグレー
エボナイト軸の「誠エボナイト」はバランス型のデザインですが、峰万年筆は両端が平らなベスト型です。キャップ上部の突起(これが「峰」?)は、このモデルだけの特徴的なデザインです。
峰万年筆のコンセプトは下記のようにあります。
この万年筆は成功への旅を意味し、一歩一歩高みへと続いていくイメージを元にデザインされています。キャップ上部の突起は私たちが目指す成功の頂を示しているのです。 「峰」という字は一般的に山の一番高いところを意味しますが、転じて技術や栄誉といった様々なもので頂点を極めたことへの比喩としても使われます。
人生の中において、世界の見方を変えるような地点に到達したいという願いをこめて、元々フラットだったキャップ上部を変更して今のデザインになりました。
峰万年筆は、マーブルパープルグレーとマーブルグリーンの2色があります。前者は落ち着いた知性を感じさせる色合い、後者は自然の調和と生命力を思わせる鮮やかなグリーンが特徴です。
桐の箱に収められ、かなり仰々しい梱包なので開封の儀が恥ずかしい、、。
コンバーターも付属しています。
まとめ
WANCHERの渓流ニブは、日本の万年筆文化の伝統と革新が見事に融合した一品です。セーラーの長刀研ぎにインスパイアされつつも独自の形状を持ち、スチールニブでありながら日本語特有の線の抑揚を表現できる優れたパフォーマンスを提供します。職人の手による丹念な仕上げが、ペン先の滑らかな書き心地を実現し、使い手の筆跡に柔らかく美しい流れを生み出します。
また、渓流ニブのペン先を更にシャープに研いだ小太刀(こだち研ぎ)というオプションもあります。小太刀には細字、中字、太字の3種類があります。渓流ニブでは小さな字をかけませんので、ノートなどで使うのであれば、細字や中字が力を発揮します。
渓流ニブはWANCHERのブランド哲学を体現する特別なペン先です。このペン先は手書きの世界を広げてくれます。WANCHERの万年筆を手に取り、ペン先が生む新たな書き心地をぜひ体感してみてください。
スチールペンも侮れません。小太刀研ぎにも興味津々です、、。
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