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Post Date:2009年5月25日 

ブログ・リサーチの活用方法

実践 ブログ・リサーチ <デジタル・アカシックレコードの探索>
著者: 立教大学経営学部教授 佐々木 宏(ささき ひろし)
株式会社きざしカンパニー  潮 栄治(うしお えいじ)
今田 智仁(いまだ さとし)
出版社: 同文舘出版
価格: 1,890円

有料のブログ・リサーチのツールとして、『感°Report 』(かんどれぽーと)、ブログクチコミサーチ などがありますが、本書は、『きざし』を利用したブログ・リサーチの方法になります。事例としてブログ本文を利用した、テキストマイニングや多変量解析手法も用いられているので、きざしが提供されているブログクチコミサーチ だけではできないこともありますが、ブログを利用したリサーチ方法(手法)を検討する上では、参考となる一冊です。



デジタル・アカシックレコード
著者は、ブログのことをデジタル・アカシックレコードと称しています。アカシックレコードとは、全宇宙の過去から未来まですべての歴史が書かれた記録ということです。著者は、ブログに記載された内容を分析することにより、過去を知り、未来を予測できるという意味合いでブログデータ=デジタル・アカシックレコードと称しているのだと思います。総務省 情報通信政策研究所(IICP) がレポーティングしている「ブログの実態に関する調査研究 」には、

2008年1月現在、インターネット上で公開されている国内のブログの総数は約1,690万(記事総数は約13億5,000万件。)

とあります。多種多彩な人の色々な想いや経験が記録されるブログは、確かにデジタル・アカシックレコードの名が相応しいかもしれません。

デジタル・アカシックレコードの探索
有料ツールを利用しなくても、ある程度の考察はできます。ここからは、ブログリサーチ実践編です。今回利用したツールは、Yahoo!ブログ検索 、gooブログ検索 、goo ブログ評判分析 、それと検索語の人気度が計れるGoogle 検索語分析ツール「Google Insights for Search 」です。

ブログからみたエギング
先ずは、Yahoo!ブログ検索で「エギング」と「アオリイカ」の2語を時系列に比較しています。

「エギング」を含むブログは、春イカの時期と秋イカの時期に2分されます。春イカは、4-6月でピークは、5月です。秋イカは、9-11月でピークは10月というのが分かります。しかし、大型の春イカ時期は、釣果があがらないと理由もあってか、ブログの件数が半減します。

また2007年秋のエギングが前年と比べて大幅に上昇していることから、2007年秋がエギングがブレークした時期だったのではないかと推測できます。更に2008年秋エギングで上昇を続けます。

「アオリイカ」というワードと比較するとエギングとほぼ比例して遷移していますが、2008年秋イカ時期には、「エギング」>「アオリイカ」となり、アオリイカはエギングで釣るというのが、定着しているように思えます。また8月は極端にブログ件数が少なくなっていることから、産卵後の新子時期で「エギンガー」が出没していないことがわかります。

疑問に思ったのが、冬の時期にも「エギング」という言葉でブログがエントリーされていることです。冬の寒い時期にエギングだけをしているとも思えず、別な釣りと併せて行っているのでは、ないかという仮説をたてて、goo ブログ評判分析 の関連語を探す で「エギング」に関連するものがないかを確認しました。

すると「アオリ」と近い位置に「メバル」があることに気がつきました。メバルも防波堤から疑似餌で釣れると訊いたことがあります。

餌木という疑似餌を使う、エギンガーが疑似餌を使うメバリングをしているという可能性は大いにあります。またメバルの時期は、春ですが、冬は大型が釣れるともあります。ちなみにメバルを疑似餌で釣ることをメバリングというらしいです。

そこで、もう一度、Yahoo!ブログ検索で「エギング」を含むブログの中で、and 条件で「アオリ」と「メバリング」を追加して検索してみました。

見事に「アオリ」が落ち込む12月から3月にかけて「メバリング」が上昇します。

ヤリイカなど冬に釣れるイカを狙うエギンガーが、併せてメバリングをしていることが、このことから分かりました。

※アングラーにとっては、常識なのでしょうか?
(アングラーとは、ルアーを使う釣り人)




エギンガーの属性を探る
エギングをしている人とは、どんな人なのでしょうか。gooブログ検索を使ってその属性を調べてみました(属性は、gooブログ利用者)。男女比でみると、9:1で男性。年代では、30代が6割を占めています。

右図の結果は、エギンガー、且つ、ブロガーの属性ですが、実際にエギングに出かけた時に見かけるエギンガーの属性を表しているように思えます。

地域別にみると、中部と関西が18%でトップ、次点で九州とあります。やはり、エギングのメッカ西伊豆を含む中部のエギンガーが多いことが伺えます。ちなみに関東は、四国、東北と並んで11%。確かに東京に住んでいるとエギングは、遠征を必要とするので、ちょくちょくできる釣りではないのでしょうか。









最後にブロガーではなく、エギングに興味を示し、ネット検索をしている側の観点から考察します。「Google Insights for Search 」では、特定の検索句の人気度を計ることができます。勿論、日本語や日本のサイトを対象にすることも可能です。上図は「エギング」の計測結果です。検索側からみると2007年秋よりも2008年秋シーズンがブレークポイントになっています。検索時期については、ブロガーの書き込んでいる時期と連動しますが、8月よりも7月の方が、落ち込んでいます。

下図は、各年毎のエギングに関する書き込みを計測するために、数字4桁+エギングで検索した、GoogleとYahooの検索結果件数です。2006+エギングでGoogle、Yahoo!共に100万の大台に乗ります。Yahooはそこから2007 2008と直線的に伸びていますが、Googleでは更に2008+エギングで大きく伸びていることがわかります。



まとめ
今回は、時間の関係もあり、ブログに記載されている内容には着目していませんが、イノベーター理論に総じて論ずれば、2005年頃迄は、アングラーの中でのエギング転向者がイノベーターとしてエギングを初めていたのが、2006年には、アーリーアダプターを形成するまでに成長。そして2007年秋シーズンには、アーリーマジョリティに拡大し、2008年秋シーズンには、エギングがきっかけで釣りを始めるエギンガーが登場するなど、レイトマジョリティにまで成長したのではないかと思います。

※私のエギング師匠に確認したところ、2005年にはエギングがブームになっていたような気がするといわれましたが、それは釣り師としての感覚であって、一般人を巻き込んだムーブメントではないと逃げときましょう....。
Post Date:2009年5月21日 

世界ICTサミット2009

『世界ICTサミット2009』が日経ホールで6月8日、9日の2日間、開催されます。
※ICTとは、Information and Communication Technology の略称で、『情報通信技術』のことです。

名 称:世界ICTサミット2009 情報消費社会の未来
会 期:2009年6月8日(月)・9日(火)
会 場:日経ホール(東京・大手町)
主 催:日本経済新聞社、総務省
受講料:無料 ※事前申し込み・抽選制

多彩なゲストスピーカーを招き、「情報消費社会の未来」をメインテーマに、「クラウドコンピューティング」「ソーシャルWeb」「次世代モバイル」「メディアの革新」の4つの視点で最先端の動向と、今後のネット社会の発展について議論されるとあります(プログラムの詳細は、こちらから確認してください)。昨年の世界ICTサミット2008のアンケートでは、有料化を臭わす設問もありましたが、無料で開催されます。

ゲスト 所属
 ブラッドリー・ホロウィッツ 氏   グーグル副社長 
 ピーター・ソンダーガード 氏   ガートナー上級副社長 
 トラヴィス・カッツ 氏   マイスペース国際部門長 
 ポール・キャンドランド 氏   ウォルト・ディズニー・ジャパン社長 
 野田 聖子 氏   IT担当大臣 
 樋口 泰行 氏   マイクロソフト社長 
 山田 隆持 氏   NTTドコモ社長 
 田中 良和 氏   グリー社長 
 他多数(詳細はこちらで確認してください)

また今年もサミット開催中にライブストリーミングチャットが行われるようなので、抽選に当選したら無線LANに接続できる端末を持って参加しましょう。勿論、私はiPod Toch持参予定です。

※昨年の『世界ICTサミット2008/世界ICTカンファレンス』については、こちらのブログに記載してあります。
Post Date:2009年5月20日 

インターネット調査の不完全性

内閣府のサイトに、インターネット調査と訪問面接聴取による世論調査の結果を比較しているレポートが掲載されています。主旨は、世論調査手法(訪問面接聴取法)の改善です。

調査名更新日
世論調査におけるインターネット調査の活用可能性
~国民生活に関する意識について~(平成20年6月)
概要報告書2009/05/01

結論からいうと、ネット調査の回答は、現状の世論調査と差異があり、「現時点で世論調査が直ちにネット調査に置き換えられる可能性はほぼない。」とのことです。

その理由として、下記の3項目があげられています。

① 世論調査ではネット不利用者(少なくない)を含んでいる
② 訪問調査とネットでの回答方法の差異
③ 世論調査は住民基本台帳から無作為抽出、ネット調査は公募型のモニターからの選定

但し、ネット調査の可能性を全面的に否定しているわけでなく、設問によっては差異がないものもあります。興味のある方は、読んでみてください。

面白かったのは、下記にあるようにネット調査の回答者は、生活に満足も充実もしていないと回答が多いということです。不満多きネット住民は、カタルシスのためにネットで誹謗中傷を繰り返すのでしょうか。

※ 下記グラフは、上記のレポートから「わからない」「どちらともいえない」を除いて作成しています。

ネット調査の問題点については、大隅 昇(統計数理研究所 名誉教授)氏が、私の参加した統数研の公開セミナーやWord Minerのセミナーでも指摘していました。

ネット調査の問題点:

a)モニターの代表制の問題
ネット調査では、カヴァレッジ誤差と標本誤差の2つが大きな問題となります。統計学とは、標本から母集団を推測するものです。世論調査でいえば、母集団は、国民全員となります。そこから標本抽出をするために住民基本台帳を利用します。しかし、台帳に載っていない人もいます。これがカバレッジ誤差です。また標本誤差とは、住民基本台帳の一部しか利用していない場合などに発生する誤差です。

ネット調査で考えた場合、公募型のモニターの場合、ネット利用者全体の代表になっているわけではありません。ましてや国民全体の代表になり得るわけがないということです。そんなリストからスクリーニングしても意味はありません。

b)不正回答(虚偽、代理)の混入

ネット調査の場合、モニタ登録をしている本人が回答しているかどうか特定できません。勿論、対面式ではなく、郵送による回答などでも特定は不可能です。またモニター登録者が謝礼目的の場合は、複数のリサーチ会社に登録して、多くのアンケートに短時間で回答しようとします。

大隅先生の文献は、下記から参照可能なので、こちらも読んでみてください。

WordMiner TM研究会:文献リスト
大隅昇(2008):これからの社会調査―インターネット調査の可能性と課題―

ここまでの流れでいえば、ネットで世論調査をするためには、非公募型のパネルを作り、PCリテラシーの問題を克服しなければならないということになります。少なくともネットの代表制を保つためにも、非公募型のパネルは必要であると思います。

一方、一般企業が市場調査を実施する場合には、ネット調査が多く採用されています。その背景には、コストと期間の問題があります。ネット調査は、安価でお手軽というメリットだけを捉えずに、ネット調査の問題点を把握して、リサーチ内容と報告の解釈をする必要があります。

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