万年筆を持つと大人になった気分になれます。それは、ただの筆記具ではなく、書く喜びを感じさせてくれる特別な存在です。万年筆はペン先の角度やインクの濃淡、筆圧の微妙な変化によって、文字の表情が変わります。そのため使う人の個性や感情を反映させた、味わい深い文章を綴ることができます。
では、なぜ万年筆に魅力を感じるのでしょうか。以下に3つの理由をあげます。
- 保有することの喜び(愛着): 万年筆は長く愛用できる筆記具であり、所有すること自体が喜びや愛着を感じさせてくれます。自分だけの特別なペンを持つことで、書く行為がより特別なものとなります。
- 自分の個性を表現できる: 万年筆は数多くのインクカラーや書き味のバリエーションがあり、使い手の個性や好みに合わせて選ぶことができます。自分の個性や感性を文字に込めることで、より深い表現が可能になります。
- 筆圧が必要なく書きやすい: 万年筆は書き始めから滑らかな書き心地を提供し、ほとんど筆圧が必要ありません。これにより、疲れることなく長時間の筆記が可能で、書く行為がより楽しい体験となります。
万年筆には文字を書くための道具として以上の魅力があります。自分の感情と個性を文字という形で紙に残すことができ、書く喜びを再発見することで日常が豊かに彩られること間違いなしです。
高級万年筆は必要?
万年筆の値段はピンキリです。大きく値段が変わるのがペン先(ニブ)と軸の材質です。
ペン先 | 金ペン先 | スチールペン先 |
---|---|---|
弾力 | 柔らかい | 硬め |
耐久性 | 腐食しづらい, 摩耗しにくい | 金より劣る |
価格 | 高い | 安い |
金ペン先は長年使っていると書き手に馴染むともいわれていますし、修理や調整も可能です。そして、軸は、高級万年筆だとセルロイド、エボナイト、金属、木製などですが、エントリーモデルの多くはABS樹脂です。
国産で安価な金ニブ万年筆も販売されています。実売価格で1万円を切っているものをあります。
- セーラー万年筆 プロフィットライト ゴールドトリム(14K)
- パイロット カスタム 74(14K+ロジウム)
しかし、気に入ったものをと考えるとやっぱり高価です、、、。
ドイツ製のエントリーモデルを選ぼう
ドイツ製のエントリーモデルの万年筆は、その多くが必要最低限の要素に絞り込まれ、機能性と使いやすさを追求したデザインが特徴です。伝統的なクラシックなデザインではなく、モダンで洗練されたスタイルは魅力的です。さらに、エントリーモデルであっても、優れた書き心地を提供しています。
手頃な価格でありながら、使いやすさを重視して設計されており、滑らかで安定した書き味が特長です。細部にまでこだわったドイツ製の品質は、心地よい筆記体験を提供してくれます。
万年筆は、書きやすく、カッコいいと感じられることが重要です。手にしっくり馴染む使い心地とスタイリッシュなデザインが、筆記体験に愉しみと満足感をもたらしてくれます。
書きやすさと魅力的なデザインにより、初心者から上級者まで、幅広いユーザーに向けてデザインされたドイツ製のエントリーモデルの万年筆は、品質と使いやすさを求める方にぜひおすすめしたい一品です。
オススメのドイツ製 エントリーモデルの万年筆
ドイツの老舗筆記具メーカーで人気のあるファーバーカステル、カヴェコ、ラミーから下記の3種類のエントリーモデルを紹介します。
FABER-CASTELL HEXO(ファーバーカステル ヘキサ)
Hexo(英語読みでヘキサ)は、1761年に創業されたドイツの筆記具メーカーであるFaber-Castell(ファーバーカステル)によって製造されたエントリーモデルの万年筆です。手頃な価格帯(4,950円)でありながら、Faber-Castellの品質とデザインを堪能できる万年筆です。
- FABER-CASTELL HEXOの特徴
- ファーバーカステルの原点、鉛筆を模した六角形軸の万年筆
- ボディは軽量で丈夫なアルミニウム素材(20g)
- ペン先はステンレススチール製でF(細字)/EF(極細)の2種類
- FABER-CASTEL HEXOの字幅
- Extra fine (EF) - 約0.3mm
- Fine (F) - 約0.4 mm
FABER-CASTEL Ambition EFを使っていますが、かなり文字幅は細く、ボールペンに近い感じです。ノートにメモをとるには最適ですが、文章を書くならF(Fine)がいいのではないかと思います。
Kaweco CLASSIC Sport
Kaweco(カヴェコ)は1889年創業のドイツの筆記用具メーカーです。CLASSIC Sport(クラシックスポーツ)は、1972年のミュンヘンオリンピックの際に公式ペンとなった商品の復刻版です。3,850円という手頃な価格も魅力的です。
- Kaweco CLASSIC Sportの特徴
- 手のひらサイズ(閉じた状態で10.5cm)、キャップを付けて使うと標準サイズ(13cm)に
- ABS樹脂製で軽量(11g)
- スチール製のペン先で EF/F/M/B/BB
- Kaweco CLASSIC Sportの字幅
- EF(極細字)約0.3mm
- F(細字)約0.5mm
- M(中字)約0.7mm
- B(太字)は約1.0mm
Moleskine Pen(Moleskine x Kaweco)
Kaweco Classic Sport は、キャップを閉じた状態だと10.5cmとかなり短く、他の筆記用具とのバランスが悪い。かといってKaweco Al Sport は13.5cmだけど値段が高くなります。
「惜しい、、、」と、思っていたら、ノートで有名なモレスキンからカヴェコとのコラボレーションしている万年筆が発売されていました。Kaweco Classic Sportがベースになっているようですが、Moleskine Penはキャップを閉じた状態で約14cmです。
キャップは同じ8角形ですが、ボディは15角形と洗練されたデザインです。またグリップ部は三角形で握りやすくなっています。
この万年筆は、過去へのノスタルジアと現在のクリエイティビティをつなげ、紙にアイデアを書き留めるクリエイティブな喜びを体験できるというとっても素敵なコンセプトで作られています。
- Moleskine Penの特徴
- グリップが指と親指の間にぴったりとフィット
- ABS樹脂製で軽量だがしっかりとした重さ(約14g)
- ニブは金メッキでF字
ニブ幅の詳細の記載はありませんが、Kaweco Classic Sprotと同じではないかと思います。カラーはブラック、レッド、ブルーの3種類があります。
LAMY safari
LAMY(ラミー)は、1930年にドイツで創業された筆記具メーカーです。Safariは、カジュアルでモダンなデザインで、5,000円以下の手頃な価格なので万年筆初心者に人気があります。とても書きやすい万年筆で自分もLAMY Safariはずっと使い続けています。
- LAMY safariの特徴
- 三角形のグリップでペンを持ちやすい
- ニブはステンレススチール製 EF/F/M/B で交換可能
- ボディはABS樹脂で色が多彩
- LAMY safariの字幅
- EF(極細字)約0.4mm
- F(細字)約0.5mm
- M(中字)約0.6mm
ニブ(ペン先)がAmazonでも簡単に手に入り、交換作業も簡単です。EF(極細字)、F(細字)、M(中字)、B(太字)、1.1mm(カリグラフィー)、1.5mm(カリグラフィー)、1.9mm(カリグラフィー)、LH(左利き用)と多彩な種類があり、更にシルバーとブラックがあるのでボディーカラーに合わせて選べます。
万年筆に慣れてきて、もう少し太い字が欲しい、細い字が欲しいという場合にニブだけが交換できるのは経済的にも環境的にも優しいパーツ交換です。EF/F/M/B 以外に 左き利き用、カリグラフィー用の1.1mm、1.5mm、1.9mmと種類も豊富で色はボディー色に合わせてシルバーとブラックを選べます。
EF/Mを使っていますが、最初の1本であればF(Fine)がいいかと思います。「細すぎる」「太すぎる」と購入後に思ったらニブを交換できるのがLAMYの強みです。
Safariは色が多彩ですが、若者向きだけではなく、伊東屋とコラボしたsafari×itoya copper 01などは、とても落ち着いた色合いです。
またLAMYは2022年春に漢字筆記に特化したペン先「漢字ニブ」を発売。先端から両サイドを削り込んだような独特な形状や、柔軟性を高めたペン先のしなり具合は、「とめ」「はね」「はらい」といった漢字特有の表現をサポートするために開発されたものです。
ボールペンのような筆致のEF、万年筆らしさのF、個性派のM
日本語はアルファベットの文字より構造が細かいです。ノートに細かい字を書くのであれば細い字幅のEF(Extra Fine)かF(Fine)です。
EFとFの違いは微妙ですが、Fの方がEFよりも字幅が太いので、万年筆らしい筆致になります。最初の一本であれば、万年筆らしい風合いがありながら、ノートや手紙などさまざまな用途に万能に使用できるF(Fine)をオススメします。
M(Medium/ミディアム)は、さらに万年筆らしい筆致で個性が現れます。文字幅はかなり太くなり個性を際立たせる一方で、細かい文字には不向きです。手紙やアイデアを書き出したりするときなど、少し大きめな文字を書くときには重宝します。また美文字練習にも最適です。
各メーカーで、ニブ幅や文字幅の記載をしていますが、万年筆の字幅には明確な規格がありません。同じ字幅の記載でも製造メーカー、モデル、使うインク、そして筆圧や握り方などによっても異なります。
下記は一般的な傾向です。
字幅 | 特徴 |
---|---|
EF(Extra Fine) | 細くシャープな文字が書けます。ボールペンに近い感覚で手帳やノートに小さい文字で書くのに適しています。 |
F(Fine) | EFほどの細さがない分、万年筆らしい文字が書けます。手帳やノート、一般的な筆記に向いています。 |
M(Medium) | 視認性が高い太い文字が書けるので手紙や字の練習に適しています。 |
実際に下の写真のドイツの万年筆3種(Faver Castell Ambiton EF, Moleskin Pen F, LAMY Safari M)とフランスの万年筆(Waterman Phileas M)で字幅の確認、
書き比べたのがこちらです。
インクも違うので一概に万年筆の差とも言えませんが、Faver-Castell Ambition EF と Moleskine Pen F で差がなかったり、LAMY Safari M より、Waterman Phileas M の方が太かったりと、やはりメーカーとブランドによって字幅はまちまちです。
Moleskine Penはシンプルでスタイリッシュな万年筆
F字幅の万年筆を購入しようと、Faber-Castell HexoとMoleskine Pen(Moleskine x Kaweco)で悩みましたが、Kawecoの万年筆を使ったことがなかったので、Moleskine Pen(ブルー)を購入しました。
ボディは太めですが、無駄のない洗練されたデザインが素敵です。また金色に輝くニブはワンポイントで高級感があります。このミニマルでモダンなデザインと金色のニブが、ABS樹脂製のチープなボディーをスタイリッシュに仕上げています。
LAMY Safariと同じようにグリップの部分が三角形になっていて持ちやすくなっていますが、ペンを持った感じはSafariより少し太く感じます。
Moleskine Penの書き味
Moleskine Penは、書くときには若干の筆圧が必要です。Faber-Castell Hexoは使ったことがないため比較はできませんが、Faber-castell AmbitionやLAMY Safariは筆圧をかけずに書くことができます。
万年筆は一般的に滑らかで柔らかい書き心地を持ち、筆圧をほとんど必要としないため、長時間の筆記でも疲れにくいという利点がありますが、MD万年筆も同様に筆圧がやや必要でした。しかし、使い込むうちに手に馴染み、自然な筆圧で書けるようになりました。
Moleskine Penも同じように慣れの問題かと思います。初めて使った際には筆圧を調整する必要があるかもしれませんが、徐々に使い込むことで快適な筆記体験を得られるようになると思います。
万年筆には個体差があるため、初めて使った際には違和感を感じることもありますが、使い続けるうちに自分に合った書き方や筆圧が見つかります。慣れを重ねながら、愛着のある万年筆との絆が深まっていくことを楽しんでください。
Faber-Castell Ambition EFが約0.4mmなので、Moleskine PenがKaweco Classic SportのF(Fine) 約0.5mと同じであれば、少し太くなることを期待していました。しかし、実際に書き比べてみると、0.1mmの差は目に見えるほどの違いではなく、ほぼ同じような字幅でした。
ただし、Ambitionが「カリカリ」とした筆記感なのに対し、Moleskine Penは「シャリシリ」と滑らかに紙の上を走る感触があります。ペンの太さと筆感の違いを楽しみながら慣れていきたいと思います。
Moleskine Penと併せて、Kaweco Classic Sport 用のKaweco ミニコンバーター2を購入しました。とても小さくて、装着してピストンが伸びている状態でもこんな感じです。
Kaweco ミニコンバーター2は、「ピストン式コンバーター」です。ピストンを押し込んだ状態で、ペン先をインクボトルに入れてからゆっくりとピストンを引っ張るとインクが補充されます。
対象万年筆は、
- クラシックスポーツ
- アイススポーツ
- スカイラインスポーツ
- プラススポーツ
と、ありますが、Moleskine Penでも使えます。
Moleskine Pen しばらく使った感想
違和感は慣れの問題だと前述しましたが、新しい万年筆に慣れるためにしばらくMoleskine Penだけを使っていました。購入時に付属していたインクカートリッジを使い終わり、コンバーターに切り替える頃には、「太めの握り心地」も「少し筆圧が必要」にも慣れていました。
筆圧が必要と感じるのは、インクフローが悪いからではなく、ペンの軽さからでした。コンバーターを挿入した状態で実測値で14gは、持っている万年筆の中でMD万年筆の16gよりも軽いです。軽い万年筆の場合は、万年筆の自重で紙の上で滑らせるのではなく、ペンを紙に当てる力が必要なのだとわかりました。
ペンケースも使おう
Faber-Castell Ambitionを購入したときに万年筆を1本だけさせる福岡のファッションブランドの皮のペンケースを購入したのですが、Ambitionは細く、そのまま差し込むとペンが滑り落ちてきてしまい、ペンクリップで挟む必要がありました。
ちょっとしたことですが、面倒に思い使っていませんでした。しかし、Moleskine Penは太さがあるので差し込んだだけでも滑り落ちてくるようなことはありません。
ペンケースにも活躍の場ができました。