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Post Date:2025年8月17日 

凛とした沈香、やさしい白檀 ― 香りがもたらす夏の涼

灯(TOMORI) 沈香と白檀

「香る涼 - お香で夏の暑さを凌ぐ」 では、杉や檜など、爽やかな木の香りを紹介しました。 暑い日には、こうした軽やかな香りがよく似合います。

けれど──沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)のような香木の、凛とした深い香りも、静けさの中に涼しさを見出せます

お寺の日常は、白檀の香りですが、厳かな場では沈香が焚かれ、静けさと緊張感を添えます。

白檀の香りは、やわらかな甘さの奥に、微かなほろ苦さを秘めた香り。乳香のようなまろみと、木肌の渋みが、空間を穏やかに包みます。

一方、沈香(じんこう)の香りは、重厚さと透明感が同居しています。

ほのかに甘い樹脂の香りに、煙のような静けさと、時折感じる清涼感が重なり合い、心の奥を静かに鎮めます。

深い森の木陰に差し込む一筋の光のように、涼やかさを伴った落ち着きをもたらす香りです。

白檀や沈香といった香木は、仏教文化とともに日本に伝わり、長い年月を経て“日本の伝統的な香り”となりました。

そんな白檀と沈香の香りを、夏の涼を楽しむひとときに添えてみるのも素敵です。


香木とはなにか?

「香木(こうぼく)」とは、焚くことで芳しい香りを放つ天然の木のことをいいます。代表的なものとして、沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)、伽羅(きゃら)などがあります。

特に沈香は、東南アジアに自生するジンチョウゲ科の樹木が、傷を負ったときに分泌する樹脂が、長い年月と高温多湿の環境の中で熟成されて生まれる、非常に稀で神秘的な香木です。

その沈香の中でも最上級とされる特別な存在が、伽羅です。わずかな香りだけで人を魅了し、古来より最高の香木として尊ばれてきました。

伽羅は、沈香が生まれる自然条件の中でもさらに限られた環境と、長い年月の重なりによってのみ生まれるため、その香りは「気品」「幽玄」「奥深さ」と形容されます。

次に白檀ですが、木そのものに香気成分(サンタロール類)を持ち、木の中心部分に甘くやさしい香り、その奥にほのかなほろ苦さを蓄えています。

これらの香木は、古来より香道や仏教儀式など、静かに心をととのえる香りとして用いられてきました。現代では、香木を細かく粉末にし、他の天然香料と練り合わせて作られる「お香」の原料としても広く使われています。

香木は、ただ香るだけの存在ではなく、悠久の時間が育んだ“香りの結晶”とも言えるでしょう。


沈香の涼しさ - VECThill「灯 沈香」

沈香の香りには、ふしぎな静けさがあります。甘さを抑えたスモーキーな落ち着きのある香りは、心を鎮め、夏の暑さに静かな涼をもたらしてくれます。

灯(TOMORI) 沈香(ANGARWOOD)

焚き進むにつれて、淡い甘さが余韻となり、空気の奥に澄んだ清涼感を残します。

VECThill(ベクティル)の『灯(TOMORI) 沈香』は、まさにこの沈香の持つ涼やかさを香りとして表現したお香です。

深みのある甘さと透明感をそなえ、ゆるやかに立ちのぼる煙が、部屋全体を静謐な空気で満たしてくれます。

夏の朝、静かに回るDC扇風機。その柔らかな風にのって沈香の香りが漂えば、これから始まる一日のあわただしさの前に、心を落ち着ける静かなひとときを味わえます。

静かな涼をもたらす沈香の香りを、ぜひ日常に。


白檀のやさしさ - VECThill『灯 白檀』

白檀の香りには、やわらかな甘さと、ほのかなほろ苦さが同居しています。その奥に潜むまろやかさが、夏の空気をやさしく和らげ、心に安らぎの涼をもたらしてくれます。

VECThill(ベクティル)の『灯(TOMORI) 白檀』は、そんな白檀の魅力をシンプルに表現したお香です。ほっと息をつけるような落ち着きと、奥行きのある甘さが、日常の中に静かな休息を与えてくれます。

夏の午後、窓から差し込む光の中で、ふと漂う白檀の香り。それは、あわただしい時間の流れをやさしく緩め、縁側で風鈴を聴きながら過ごすような、静かなひとときを運んでくれます。

やさしい甘さが心を和らげる白檀の香りも、日常に添えてみるのも素敵です。


不揃いの美徳 ― 職人の想いを無駄にしない

お香づくりの過程では、どうしても形が少し曲がったり、不揃いな品が生まれてしまいます。

見た目は不格好でも、焚けば沈香や白檀の香りは変わらずに広がります。

そうした品を無駄にせず届けるために用意されたのが「訳あり品」、一つひとつ職人の手で仕上げられた香りを、気軽に楽しめる価格で提供されています。

環境への配慮と、作り手の想いを大切にする選択。不揃いだからこその一期一会。そんな香りのひとときを、心に留めてみてください。

いつも販売されているわけではないので、見かけたときには是非。


横置きタイプのお香立てを

こちらは再掲になりますが、お香盾は、灰が散らばりにくい横置きタイプがおすすめです。

お香の灰はとても軽く、立てて焚いた場合は、高さの分だけ空気の流れに影響されやすくなるので、灰が受け皿の外に飛び出してしまい、掃除が大変になります

横置きタイプなら、お香の下に受け皿が沿うように配置されるため、灰をしっかりとキャッチできます。後片付けも簡単なので、日常使いにとても便利です。

また、横置きにすると、煙が水平方向にゆるやかに広がり扇風機の弱風にもふわりと乗って、自然なかたちで空間に香りが溶け込みます

普段、部屋に置いて使っているお香立ては、本来は縦置きタイプで、フタ付きのお香入れとして販売されていたものですが、お香を斜めに挿して焚き、お香入れの部分を灰受けとして活用しています。

そんな工夫をするよりも、ステンレス製の網などの上にお香を横に寝かせてセットする“完全横置きタイプ”の香立てなら、灰が横に落ちる心配もなく、安全性にも優れています。

また、お香を最後まで使い切ることができ機材的です。

蓋つきの構造なら、部屋に出して置いても安心なので、日常使いにぴったりです。

そんな工夫をするよりも、ステンレス製の網などの上にお香を横に寝かせてセットする“完全横置きタイプ”の香立てなら、灰が横に落ちる心配もなく、安全性にも優れています。

また、お香を最後まで使い切れるので経済的です。

蓋つきの構造なら、部屋に出して置いても安心。扱いやすさと安全性を兼ね備えた、日常使いにぴったりのお香立てです。


香りで夏を愉しむ

強い日差しと蒸し暑さのなかでも、香りは心にやさしい涼を運んでくれます。

凛とした沈香の静けさ、やさしい白檀の甘さ。どちらも古くから人々に愛され、いまも私たちの暮らしに寄り添い続けています。

夏の暑い午後に扇風機の風にのせて香りを漂わせるもよし、朝や夜の静寂に添えてみるもよし。

香りは、夏を涼やかに過ごすための小さな工夫であり、ささやかな贅沢です。

香木の香りとともに、夏を愉しんでみませんか。

Post Date:2025年8月11日 

バルミューダの代わりになる?二重構造羽根DC扇風機 TOPZEEとQUADSを比べてみた【比較レビュー】

TOPZEE(トップジー)TPZ-001A

長時間、同じ場所に扇風機の風を当て続けると、皮膚や粘膜が乾燥し、筋肉が冷えて血流が悪化します。その結果、頭が痛くなったり、体がだるくなったりすることもあります。

しかし、自然の風のようにやわらかく広がり、体全体を包み込む風なら、ずっと浴びていても心地よいのです。

そのことを実感させてくれたのが、自然の風にこだわった"バルミューダ ザ・グリーンファン"

独自の二重構造羽根が生み出す、大きく包み込むやわらかな風。従来の人工的で硬い風とは異なり、自然界の風のように浴び続けられる心地よさです。

【引用】BALMUDA公式 - The GreenFan

The GreenFan のコンセプトは「気持ちのよい夏の風」。理想的な扇風機ですが、価格が高く、2台目の購入には手が届きにくいのが難点。

そこで今回は、バルミューダの特徴に近い次の条件を備えた、より手頃な扇風機を探してみました。

  • 立体的でやわらかな風を生む 二重構造の羽根
  • 静音で弱風が作れる DCモーター扇風機

自然の風を生み出す二重構造の羽根の力

バルミューダ「The GreenFan」が生み出す心地よい風の秘密は、二重構造の羽根にあります。

The GreenFanの二重構造の羽根

外側の大きな羽根は遠くまで届く直進性のある風を、内側の小さな羽根はやわらかく拡散する風を作ります。

この2種類の羽根が生み出す速度の異なる風は、内側の羽根から発生する遅い風が外側の速い風を引き込み、風同士がぶつかり合うことで大きく拡散します。その結果、面で広がる包み込むような優しい風が生まれるのです。

The GreenFanの広がりながら遠くまで届く風
【引用】Amazon - BALMUDA The GreenFan

2つの二重構造羽根DC扇風機

The GreenFanは魅力的な扇風機ですが価格が高めです。

そこで探してみると、TOPZEE TPZ-001AQUADS SMARTAIR DC という、二重構造羽根を搭載した中華製DCモーター扇風機?が見つかりました。


TOPZEE TPZ-001A の羽根

TOPZEE(トップジー)は、東京都荒川区にある株式会社Power Engineが運営するライフスタイルソリューションブランドです。DC扇風機はいかにも中国製という佇まい、、。

羽根の形状はバルミューダーに似ています。内側の羽根枚数がGreenFanより多い(7枚)というのが特徴です。

TOPZEE(トップジー)の二重構造の羽根

左がバルミューダー、右がTOPZEEの二重構造の羽根です。

バルミューダーvsトップジー 羽根の比較
  • 二重構造羽根(外側9枚+内側7枚) を採用
  • 外側の9枚羽根 … 風を遠くまで直進させる
  • 内側の7枚羽根 … 風をやわらかく広げ、体に当たる感覚をやさしくする
【引用】Amazon - TOPZEE TPZ-001A

Amazonの商品説明には羽根について下記のように記載されています。

✅ 航空力学の知見を導入して開発した「3D曲面ブレード」が従来の性能限界を突破。各羽根の角度を精密調整し、リビングの隅々まで到達する広域気流を実現しました。

✅ 「気流拡散率4倍の革新設計」一般扇風機比で約4倍の気流拡散効率を達成。拡散速度を制御した気流が体全体を包み込む、疲れ知らずの快適環境を創出します。

【引用】Amazon - TOPZEE TPZ-001A商品説明

キャッチコピーは「暮らしに無騒音極上の新風を」、漢字やや多めです、、。


QUADS SMARTAIR DC の羽根

QUADS(クワッズ)は、東京都目黒区の株式会社QUADSが展開する家電ブランドで、企画から設計、開発、販売までを手がけています。

羽根は、バルミューダ「The GreenFan」と同じ外側9枚+内側5枚の二重構造(合計14枚)を採用しています。羽根の形状は流線型でスリムなデザインです。

左がバルミューダー、右がQUADSの二重構造の羽根です。

バルミューダーvsクワッズ 羽根の比較
  • 外側の9枚羽根 … 直進性のある風を作り、遠くまで届ける
  • 内側の5枚羽根 … 風をやわらかく広げ、肌当たりをやさしくする

外側と内側で異なる速度と角度の風を発生させることで、肌当たりの良い風を作りつつ、部屋の奥までしっかり届かせます。

キャッチコピーは「心地よい風を遠くまで」。シンプルでストレートな表現ですが、カタログ値での裏付けはありません。


TOPZEE TPZ-001A と QUADS SMARTAIR DC、どちらがいい?

DC扇風機を選ぶとき、デザイン性は外せないポイントです。

その点、TOPZEE TPZ-001A も QUADS SMARTAIR DC も、どちらもシンプルでミニマルなデザインが魅力です。

特に QUADS SMARTAIR DC は、台座部分にパネルやインジケータが一切なく、まさに“ド・シンプル”の極み。さらに、グレージュウッドモデルは木目調のポールを採用しており、他の扇風機にはあまり見られない個性的な仕上げになっています。

【引用】Amazon - QUADS ASMART DC グレージュウッド

下表に機能的な違いをまとめました。

特徴TOPZEE TPZ-001AQUADS SMARTAIR DCBALMUDA The GreenFan
モーターDCモーターDCモーターDCモーター
羽根構造30cm 二重構造(外側9枚+内側7枚)30cm 二重構造(外側9枚+内側5枚)二重構造(外側9枚+内側5枚)
風量設定26段階8段階4段階
風速1.93~5.44m/s
最大到達距離 約25m
未公表最大到達距離 約15m
ゆらぎ風機能自然風モード--
首振り上下左右自動左右自動/上下手動左右自動/上下手動
静音性約31dB約30dB10dB(最小)
消費電力32W24W20W

TOPZEE TPZ-001AQUADS SMARTAIR DCの違いは、下記の3点です。

  • 風量設定の細かさ(26段階 vs 8段階)
  • 首振りの方式(360°対応か否か)
  • ゆらぎ風機能の有無

見た目で選ぶなら、間違いなくQUADS SMARTAIR DC グレージュウッドモデルです。

ただし、二重構造の羽根を備えていても、本家バルミューダの風の心地よさに及ぶとは思えません。

そのため、風の心地よさを重視するなら、ゆらぎ風機能(自然風モード)を備えた TOPZEE TPZ-001A のほうが、より魅力的に感じられます。

TOPZEE TPZ-001A の3種類のモード:

モード名特徴・説明
通常モード設定した風量を一定で送り続ける
自然モード風の強弱をランダムに繰り返し、自然の風のようなゆらぎを再現
睡眠モード使い始めはやや強め、その後徐々に弱まり、眠りを妨げないやさしい風に変化

機能とデザインを比較して、最終的に自分の生活スタイルに合うほうを選ぶのがベストです。

「んー、、」TOPZEE TPZ-001Aをポチりとな。


TOPZEE TPZ-001Aの使い勝手

実際に使ってみて感じたのは、次の5点です。

  • 風量3以下の微風は心地よいが、バルミューダと比べると風の当たる面がやや小さい

  • その点を自然風モードがうまくカバーし、自然の風に近づけている

  • 横方向の首振り機能はやや不安定で、60度に設定していても時々180度まで回転してしまう

  • 首振りは水平360°/垂直105°に対応しており自由度は高いが、その分ヘッド部分の形状はやや重ため

    TOPZEEのヘッドの形状はスマートではない

  • リモコンは「左が風量アップ、右が風量ダウン」と直感的ではなく、慣れが必要

    TOPZEE リモコン

TOPZEE TPZ-001Aの生み出す風とバルミューダの風を比べると大きな違いがあります。

一瞬、「それならデザイン重視で QUADS SMARTAIR DC グレージュウッドモデルにしても…」という思いもよぎりましたが、

しかし、二重構造羽根や自然風モードなど快適性を高める機能を備えながら、この価格帯で入手できるのは大きな魅力です。

総じて、TOPZEE TPZ-001Aコストパフォーマンスの高いDC扇風機と言えます。

Post Date:2025年7月26日 

香る涼 - お香で夏の暑さを凌ぐ

部屋の中でも暑さが肌にまとわりつく夏の午後。エアコンの冷風とは違う、やさしく、心をほどくような“涼”を求めて――。

そんなとき、扇風機の微風に乗って、ふと香るお香の煙が、心にも身体にもそっと涼しさを届けてくれます。

王道の白檀(びゃくだん)、そして涼を愉しめる杉、檜、竹、茶香。日本の香りの文化には、暑さをしのぐための知恵と美しさが詰まっています。

香りで涼を感じ、日本らしさあふれる“夏の過ごし方”で酷暑を少しでも和らげましょう。


なぜ香りで「涼」を感じるのか?

杉、檜、竹、茶の香りが「涼しさ」を感じさせてくれるのには、科学的な理由があります。

香りは鼻から嗅神経を通じて、脳の「大脳辺縁系」という、感情や記憶に深く関わる領域にダイレクトに届きます。

これにより、木の香りを嗅いだ瞬間に、凛とした森の空気や、風が通り抜けるときの葉擦れ(はずれ)の音が思い浮かび、そうしたイメージが、実際の温度以上に「涼しさ」を感じさせてくれるのです。

さらに、杉や檜に含まれるテルペン類(α-ピネン、ボルネオールなど)は、冷感そのものは生みませんが、気分を落ち着かせ、呼吸を深めることで、内側から涼しさを引き出す働きがあります。

リラックス状態になると呼吸がゆっくりになり、体温の上昇も穏やかになるため、体温の上昇も穏やかになるため、結果として、涼しく感じやすい心と身体の状態が整うのです。

また、竹の香りに含まれるとされる「バンブーラクトン」という香り成分は、淡く青みがかったみずみずしさで、まるで風が抜ける竹林の笹鳴りのような清涼感を届けます。

ほんのりと香るこの成分が、暑さを忘れさせる“涼の余韻”を演出してくれるのです。

そして最後に、緑茶の香りについて。
緑茶には、青葉のようなヘキサナールや、リラックスを促すリナロールといった成分が含まれています。

これらの香りが心を静め、まるで冷たい緑茶を味わうような、内側からの涼しさをもたらしてくれます。

香りは、気温そのものを下げるわけではありませんが、感覚をやさしく調整する、もうひとつの「涼」のかたちなのかもしれません。

まとめ:香りが生む“涼しさ”のかたち

素材香りの特徴主な成分涼のタイプ涼を感じる理由
森林浴のような清潔な香りα-ピネン、フィトンチッド心理的涼感森を連想し、自律神経を整える
甘く神聖な木の香りα-ピネン、ボルネオール内面的涼感呼吸が整い、深い静けさが生まれる
青竹のように淡く軽い香りバンブーラクトン(通称)感覚的涼感風や竹林の情景が連想される
緑茶青葉+うまみ系のやさしい香りヘキサナール、リナロール、テアニン心身の涼香りと冷茶の記憶でリラックス

涼を感じるおすすめのお香5選

「香りで涼を感じる」——そんな感覚を、前述した杉・檜・竹・茶という4つの“涼香”を手軽に日常で楽しめるお香の紹介です。


杉:水車杉線香 無添加 線香(杉の葉100%/日本製)

「水車杉線香」は、筑波山のふもと茨城県八郷にある駒村清明堂を代表するお香です。

100年続く昔ながらの製法で、水車の力を使って粉砕した杉の葉だけを原料とした無添加線香。化学香料・着色料・防腐剤は一切使われていません。

着色料を使用していないため、見た目は乾燥した杉の葉そのままの自然な茶色

香りは、まるで森の中に立っているような清々しさと、ほのかな青みを含んだウッディな香調です。

杉の葉本来の素朴で澄んだ香りが、静かに心と空間に涼を届けてくれます。

お香はロングタイプで、長さは約13-14cm。

2箱(1箱あたり5束)で365本入りとされており、1束あたりおよそ36本程度と見られます。

燃焼時間は明記されていませんが、一般的な線香サイズとして約20〜30分ほどと考えられます。

煙は控えめで、自然素材ならではのやさしい香りが部屋に静かに広がります

  • 香りの印象:杉林に足を踏み入れたような、乾いたウッディさと素朴な清涼感
  • おすすめシーン:自然な涼を感じたい夏の朝や昼下がりに

檜:香彩堂「和木 檜(わぼく ひのき)」

「和木 檜」は、日本の木々の香りをテーマにした、香彩堂の和木シリーズのひとつです。

このシリーズには、檜(ひのき)、欅(けやき)、楠(くすのき)があり、 いずれも森の中の陽だまりに佇むような、落ち着きと調和をもたらす香りが特徴です。

檜の香りは、檜と白檀を主な香原料とし、
清涼感とやわらかな甘みが調和した、繊細で心安らぐ木の香りに仕上がっています。

煙は控えめで、洋室にもなじみやすく、香りの余韻も軽やか。
まるで静かな森に身を置いているかのような、穏やかな時間が広がります。

日常の中で、心を整えたい朝のひとときや、湿気の多い日の気分転換にもぴったりです。

ロングスティックタイプで25本入り、燃焼時間は約20〜25分。 手軽に焚けて、香りとともに静けさを暮らしに取り入れられます。

  • 香りの印象:凛とした檜に、白檀のぬくもりを添えた、清らかな木の香り
  • おすすめシーン:朝のスタート、集中したい時、静けさを取り戻したい夕暮れ時に

竹:京都香彩堂「百楽香 竹」「竹香」

京都の老舗・香彩堂には「百楽香の竹」と「竹香(ちっこう)」がありますが、原材料は竹ではありません。また2つは香りに、青竹と熟竹のような違いがあります。

「百楽香」シリーズの"竹"は、厳選された天然白檀と原料を調合した、“竹”はその名のとおり、青竹のようなみずみずしさと爽やかさを感じる香りです。

ロングタイプのお香で40本入りです。燃焼時間は、約20-30分(1本あたり)です。

  • 香りの印象:淡く青みがかった、風が通り抜ける竹林を思わせる香調。
  • おすすめシーン:蒸し暑い日の午後や、空気をリセットしたい時の一服に。

一方、竹香(ちっこう)は、スズラン、シクラメン、ベルガモット等が調合されて、わずかに甘く、影のある涼しさを感じます。静かな竹林の奥にたたずむような、落ち着きと余韻のある香りです。

こちらはショートタイプのお香で30本入りで、桐の箱に入っています。燃焼時間 約15-17分(1本あたり)です。

  • 香りの印象:静かな竹林の奥にたたずむような、落ち着きと余韻のある香り。
  • おすすめシーン:読書や瞑想など、心を内側に向ける時間にぴったりの香りです。

緑茶:香彩堂「百楽香 緑茶」

「百楽香 緑茶」は、京都の香老舗・香彩堂による“百の楽しみ”をテーマにしたシリーズのひとつ。

日々の暮らしにやさしく寄り添う香りとして、シンプルで洗練された香調と紙と桐箱のパッケージが特徴的です。

緑茶の香りをテーマにしたお香は意外と少なく、原料に茶葉そのものを使った製品はさらに珍しい存在です。

以前、JAいるま農産物直売所で購入した「狭山茶 茶香」には、いるま野産の狭山茶をお線香に練り込んであり、甘いお茶の香りがしますが、残念ながらネットでは購入ができません。

「百楽香 緑茶」も原材料には「厳選された天然白檀と原料を調合」としか記載はなく、茶葉の使用は明記されていません。

「香ばしい緑茶の香り」とありますが、ほんのりと甘さと瑞々しい清涼感があります。

ロングタイプの13.5cmのお香で20本入り、燃焼時間は約20-30分。煙は少なめで、和洋どちらの空間にもなじみ、香りの余韻も軽やかで心地よいです。

価格が少々高めなのが玉に瑕ですが、特別な夏のひとときにそっと寄り添ってくれるお香です。専用の香立ても付属しています。

  • 香りの印象:若葉の青みと、爽やかな甘みが混じった清々しい香り
  • おすすめシーン:蒸し暑い日の午後や、仕事の合間のリフレッシュ

香りを愉しむ工夫とおすすめの香立て

お香を涼やかに愉しむためには、道具へのこだわりも大切です。

  • 機能性
  • デザイン性

このふたつがバランスよく両立しているものを選びたいところです。

なかでもおすすめなのが、灰が散らばりにくい横置きタイプの香立てです。

お香の灰はとても軽く、立てて焚いた場合は、高さの分だけ空気の流れに影響されやすくなるので、灰が受け皿の外に飛び出してしまい、掃除が大変です

横置きタイプなら、お香の下に受け皿が沿うように配置されるため、灰をしっかりとキャッチできます。後片付けも簡単なので、日常使いにとても便利です。

また、横置きにすると、煙が水平方向にゆるやかに広がり扇風機の弱風にもふわりと乗って、自然なかたちで空間に香りが溶け込みます

デザインは好みによる部分もありますが、毎回片付けるのが面倒なので、焚いた後にそのまま蓋をして置いておけるようなオブジェ的な香立ては、とても便利です。

普段、部屋に置いて使っているお香立ては、本来は縦置きタイプで、フタ付きのお香入れとして販売されていたものですが、お香を斜めに挿して焚き、お香入れの部分を灰受けとして活用しています。

一方、玄関に置いているお香立ては、斜めにお香を焚くタイプのもの。来客時の香りの演出になるだけでなく、消臭効果もあって重宝しています。

ちなみに購入した時期はかなり離れていたのですが、どちらも偶然「鋳心ノ工房(ちゅうしんこうぼう)」のお香立てでした。

あとから気がついて、自分のセンスにブレがないことに思わず笑ってしまいました。


完全横置きタイプも

ステンレス製の網などの上にお香を横に寝かせてセットする“完全横置きタイプ”の香立てなら、灰が横に落ちる心配もなく、安全性にも優れています。

また、お香を最後まで使い切ることができ経済的です。

蓋つきの構造なら、部屋に出して置いても安心。扱いやすさと安全性を兼ね備えた、日常使いにぴったりのお香立てです。


サンメニー「寝かせる 線香皿」(有田焼)

日本製の有田焼に、ステンレス製の焼網がセットされたシンプルで機能的なデザイン。

お香をそのまま横に寝かせるだけで、灰がきれいに受け皿に落ちる構造になっています。

有田焼ならではの上品な質感と色合いは、和室にも洋室にもよくなじみ、食卓や書斎にも違和感なく置けるのが魅力です。

サイズは大小2種類あり、大サイズがロングタイプ(13-14cm)のお香用です。


CEREMONY「お香立て 横置き」(インセントボックス)

「CEREMONY」は、現代的でシンプルな美しさと実用性を兼ね備えた横置きタイプのお香立て

見た目はまるで小さな木箱のような佇まいで、焚かないときでも空間になじむ、インテリア性の高いデザインです。

構造は、香立て部分をすっきりと収納できるインセンスボックスタイプ

お香は横向きに寝かせて焚くスタイルで、

  • ステンレスメッシュの網の上に横向きに置くタイプ
  • 横向き専用の小さなスタンド(ホルダー)で支えるタイプ

の2種類から選べます。

蓋は意匠性を重視した陶磁器製、本体(ベース)は耐熱性に優れたセラミック製です。

蓋つきなので、焚き終えたあとにすぐ片付ける必要がなく、そのまま部屋に置いておける佇まいの美しさが魅力です。お香を使わないときも、静かな存在感を放つオブジェとして楽しめます


おわりに:香りで“涼”を感じる夏のひととき

エアコンでは得られない、心と身体にやさしい涼

それを運んでくれるのが、昔から日本で親しまれてきたお香の香りです。

自然の香りとともに静かに涼を味わう時間は、忙しい日々の中で、ほんの少しだけ自分を取り戻すきっかけになるかもしれません。

エアコンでは得られない、心と身体にやさしい涼

それを運んでくれるのが、昔から日本で親しまれてきたお香の香りです。

Post Date:2025年6月15日 

出汁のある暮らし:夏に効く"冷やし出汁"のススメ

茅乃舎 福岡限定 あごだし 出汁パック

昨年の暑い日、偶然立ち寄った出汁屋さんで「冷やし出汁」をいただきました。ひんやりとした口当たりとともに、かつおや昆布の旨みがふわりと広がり、汗ばむ身体にすっと染み込むような冷たさと、驚くほど上品で澄んだ味わい。

確かに、出汁の効いたスープや味噌汁は格別に美味しい。でも、あくまでも“何かを作るための素材”であり、それ単体を味わうという発想はありませんでした。

そんな固定観念を大きく覆したのが、この「飲む出汁」との出会いでした。出汁はそれ自体が完成された一品であり、心と身体をそっと癒してくれる静かな力を持っています。

それ以来、自宅でも出汁を飲料として取り入れるようになりました。寒い日には温かい出汁で身体をじんわりと温め、暑い日には冷たい出汁で喉を潤す。また、気持ちを落ち着けたいときには、静かに一杯をすすることで、心までも整う感覚があります。

こうして出汁は、私にとって季節を問わず寄り添ってくれる、欠かせない存在になりました。温もりも、涼やかさも、やさしさも――すべてを一杯に閉じ込めた「飲む出汁」。

そんな日々の癒しとなる出汁の楽しみ方、そして暑い夏にこそ味わいたい“冷やし出汁”の魅力を、ぜひ多くの人に知ってもらえたらと思います。


出汁とは? 飲む出汁の魅力と日常での取り入れ方

出汁(だし)は、日本の食文化を支えてきた“うま味”の源です。昆布やかつお節、煮干し、干し椎茸など、自然由来の素材から抽出されるエキスには、食材本来の旨みがぎゅっと凝縮されています。

うま味は、1908年に池田菊苗博士が昆布出汁から「グルタミン酸」を抽出したことで発見されました。それまでは味覚は「甘味(Sweet)・塩味(Salty)・酸味(Sour)・苦味(Bitter)」の4つとされていましたが、“これらに分類できない旨さ”があることが明らかになり、うま味(Umami)は「第5の味」として世界的に認識されるようになったのです。

下表は、出汁に使われる主な材料の分類と特徴です。

分類材料名主なうま味成分特徴
海藻🪸昆布(真昆布、利尻昆布、羅臼昆布)グルタミン酸まろやかで上品なうま味。出汁のベースによく使われる。
魚類🐟かつお節(荒節・枯節)イノシン酸香り高く、すっきりとした力強い味。味噌汁、めんつゆに定番。
魚類🐟煮干し(片口イワシ)イノシン酸+苦味成分味に奥行きがあり、家庭料理に多用。えぐみが出やすいため下処理が重要。
魚類🐟うるめいわしイノシン酸煮干しよりもクセが少なく、上品でまろやか。香りがやさしい。
魚類🐟トビウオ(あご)イノシン酸+香ばしさ炙ることで香ばしさとコクが出る。上品で甘みのある味わい。九州で人気。
菌類🍄干し椎茸グアニル酸しっかりしたコクと香り。昆布と合わせて精進出汁にも。
野菜🌱玉ねぎ、セロリ、にんじん、トマト等グルタミン酸+自然な甘み野菜ブロスとして洋風のスープにも合う。

通常は料理の土台として使われる出汁ですが、実はそのまま飲んでも美味しい健康飲料です。

  1. 胃腸にやさしく、体にすっと染み渡る

    出汁には脂肪や糖分がほとんど含まれておらず、胃腸への負担がとても少ないのが特徴です。食欲がないときや体調が優れないときでも、出汁のやさしい味わいなら無理なく体に取り入れることができます。

  2. 朝の目覚めに、出汁の一杯を

    目覚めたばかりの体に、温かい出汁を一杯。体がじんわりと温まり、内臓がゆっくり目を覚ましていくような感覚があります。コーヒーやお茶の代わりに出汁を飲むことで、胃を荒らさず、やさしく一日をスタートさせることができます。

  3. 栄養と水分を同時に補給

    出汁にはアミノ酸(グルタミン酸、イノシン酸など)をはじめ、ミネラルや微量のタンパク質が含まれており、水分と一緒に体に必要な栄養を手軽に補給できます。とくに夏場は、冷たい飲み物に偏りがちな中で、うま味を含んだ「飲む出汁」は水分補給の質を高めてくれる頼もしい存在です。また、出汁に梅干しを加えることで、さっぱりとした風味とともに、汗で失われがちな塩分も自然に補えます。


飲む出汁に向いている素材・そうでない素材とは?

飲む出汁として楽しむには、素材選びがとても重要です。すべての出汁がそのまま「飲む」用途に最適というわけではなく、素材によっては香りや苦味が強く出てしまうこともあります。また、温かく飲むのか、冷たく飲むのかによっても、向き・不向きがあります。


◎ 飲む出汁に向いている素材

昆布やかつお節、うるめいわし、野菜を使った出汁は、雑味が少なく後味もすっきりしており、飲む出汁として非常に優秀です。香りが穏やかでクセがない素材は、冷たくしても温かくしても飲みやすい仕上がりになります。

素材 飲料適温 特徴
昆布 冷・温 上品で透明感のあるうま味。冷やしても雑味が出にくく、清涼感がある。
かつお節 冷・温 香りが高く、すっきりとした軽やかな風味。温冷どちらでも◎。
うるめいわし 冷・温 クセが少なく、まろやかでやさしい味わい。出汁初心者にもおすすめ。
野菜出汁 冷・温 自然な甘みと旨味があり、体にやさしい印象。冷製スープのようにも楽しめる。

△ 飲む出汁としてはややクセが強い素材

煮干しや干し椎茸、トビウオ(あご)などは、出汁素材としては非常に優秀ですが、そのまま飲む場合は香りやコクが強く出やすいため、少し工夫が必要です。

素材 飲料適温 特徴
煮干し(片口イワシ)苦味やえぐみが出やすい。頭と内臓を取り除き、薄めて温めるとまろやか。
干し椎茸温かいと深みのある香りと旨味が、冷たいと香りが立ちすぎる。
トビウオ(あご)炙りの香ばしさが冷たいと渋みに。温かいと香ばしさが調和する。

温かい出汁 vs 冷たい出汁の楽しみ方

温かい出汁は、身体を内側から温めてくれるだけでなく、香りの立ち方もうま味の広がりも豊かになります。 特に椎茸や煮干しのような香りが特徴的な素材は、温かくすることでその力がより引き出されます。

一方で、冷たい出汁は夏場の水分補給や、すっきりした飲み口を楽しみたいときにぴったりです。昆布やかつお節、野菜出汁のように雑味が少なく軽やかな素材は、冷やすことで清涼感が増し、ぐっと飲みやすくなります。


素材と温度で、出汁の印象はがらりと変わる

出汁は「飲む温度」と「素材の個性」によって、まったく違った表情を見せてくれます。気分や体調、季節に合わせて、飲みたい出汁を選ぶこと――それもまた、出汁の楽しみ方のひとつです。

たとえば、暑い日は冷たい昆布出汁に梅干しを落として爽やかに。寒い朝には椎茸と昆布の合わせ出汁で、じんわり身体を温める。

そんなふうに、日々の一杯を季節に寄り添わせるのもおすすめです。


クセの強い素材を「冷やし出汁」として楽しむための工夫

煮干しや干し椎茸、トビウオ(あご)などは、香りやコクが豊かな分、そのまま冷やして飲むと渋みやクセが前に出やすい傾向があります。冷やし出汁として美味しく飲むには、ひと手間かけてやさしい味わいに整えるのがおすすめです。


煮干し(片口イワシ)

  • 頭とはらわたを取る(苦味の原因を取り除く)
  • 水出しでゆっくり抽出(冷水に6〜8時間漬けるとえぐみが出にくい)
  • 昆布と合わせてマイルドに
  • 薄めに仕上げる(濃くすると渋みが出やすい)

干し椎茸

  • 冷水でじっくり戻す(一晩かけて抽出することで香りが穏やかに)
  • 昆布と合わせて調和をとる
  • 少量ずつ使う(椎茸だけだと香りが立ちすぎることがある)

トビウオ(あご)

  • 焼きの香ばしさが冷たいと強く出るため、薄めに抽出
  • 昆布とブレンドしてまろやかさを加える
  • 梅干しや柑橘類(すだち、レモン)を加えて清涼感をプラス
  • 冷蔵庫でしっかり冷やして、キリッと引き締める

ワンポイント アドバイス

クセのある素材は「単体で濃く出す」よりも、「他の素材と合わせて軽く仕上げる」ことで、冷やしても飲みやすいバランスに整います。


手軽に楽しめる!おすすめの出汁パック

「出汁を自分で取るのは少しハードルが高い…」という方には、市販の出汁パックがとても便利です。パックを水に入れるだけで、自然素材のうま味がじんわりと引き出され、手間なく本格的な味わいが楽しめます。

茅乃舎 あごだし & だし 便利な出汁パック

冷水に数時間つけておくだけでも出汁がとれるため、冷やし出汁づくりにもぴったり。暑い季節には、前日の夜に仕込んで冷蔵庫に入れておくだけで、翌朝すぐに爽やかな一杯が楽しめます。

以下に、いくつか出汁パックをご紹介します。


久原本家 茅乃舎(かやのや)だし
  • 素材:焼きあご、かつお節、昆布、うるめいわしなど
  • 特徴:風味のバランスが非常に良く、香り豊かで味に深みがある
  • ポイント:少し高価ですが、プロの料理人にも愛用される安定のクオリティ
  • おすすめの飲み方:冷水出汁でも香り高く、上品な冷やし出汁に

茅乃舎 野菜だし(コンソメ風味)
  • 素材:玉ねぎ、にんじん、セロリ、キャベツなど(すべて国産)
  • 特徴:動物性素材を使わないのに、驚くほどコク深く洋風コンソメのような味わい
  • ポイント:和風にも洋風にも合い、冷製スープ風の冷やし出汁にも最適
  • おすすめの飲み方:トマトやきゅうりを加えて、食べる冷やし出汁にもアレンジ可能

無印良品「素材を生かした だしパック」
  • 素材:かつお節、昆布、煮干しなど
  • 特徴:化学調味料・保存料不使用で、クセが少なく自然な味わい
  • ポイント:価格も手頃で、日常的に使いやすいのが魅力
  • おすすめの飲み方:野菜と合わせて、よりやさしい出汁に仕上げるのも◎

手軽さと味わい、どちらも叶える選択肢

出汁パックを使えば、出汁を取る手間を省きながらも、素材本来のうま味をしっかり感じられるのが嬉しいポイントです。 冷水に数時間つけるだけでも十分に味が出るため、忙しい朝や疲れた夜にもぴったり。味に慣れてきたら、出汁パックをブレンドしてみるのもおすすめです。

商品名冷し出汁適正コメント
久原本家
茅乃舎 だし
公式には煮出しが基本とされていますが、水出しでも3~4時間程度でしっかりとした旨みが出ます。特に昆布・かつお節・うるめいわしの相乗効果が効いています。冷蔵庫でゆっくり抽出するのがおすすめ。
茅乃舎 野菜だし玉ねぎ・セロリなどの野菜素材は水出し可能ですが、加熱した方がコクが出やすい。冷水抽出でも3〜6時間ほど置けばほんのり甘みと香味が出てきます。煮出してから冷した方が冷製スープとして楽しめる。
無印良品
「だしパック」
かつお・昆布・煮干しベースのため、水出しでも旨みがしっかり出ます。3〜5時間ほど冷蔵庫で抽出すれば、クセのない飲みやすい出汁に仕上がります。手頃で試しやすいのも魅力。

上で紹介した、いずれの出汁パックも、冷蔵庫で数時間置くだけで飲める程度の味が出ます。特に茅乃舎の和風だしや無印のパックは水出しに向いており、しっかりとうま味が抽出されます。

「茅乃舎 野菜だし」は、ほぼコンソメスープです。煮出してから冷蔵庫で冷やすと冷製スープとして美味しく飲めます。


自分で作る、冷やし出汁のすすめ

市販の出汁パックも便利ですが、素材の味をじっくり感じたいなら、自分で出汁を取る時間もまた格別です。 とくに冷やし出汁は、水に素材を浸けておくだけのシンプルな方法でもしっかり味が出るため、初めての方にもおすすめです。

自家製 冷やし出汁

昆布+かつお節のシンプル水出しレシピ

最も基本的で失敗しにくいのが、昆布とかつお節の合わせ出汁。冷水でゆっくり抽出することで、雑味のない、まろやかで上品なうま味が引き出されます。

材 料
✔ 水 … 500ml
✔ 昆布 … 5〜8g(10cm角ほど)
✔ かつお節 … 10g

作り方
✔ 昆布を水に入れ、冷蔵庫で3〜4時間おく(前夜から一晩でもOK)
✔ かつお節を加え、さらに15〜30分浸ける
✔ ペーパーやキッチン用フィルターで濾せば完成

→ 昆布だけで作ればさらにあっさりとした味わいに。朝や水分補給用にもおすすめです。

→ かつお節を加えるとグルタミン酸(昆布)+グアニル酸(干し椎茸)+イノシン酸(削り節)で、うま味の相乗効果が最大限になり、味わい豊かな風味になります。

かつお節と真昆布の合わせ出汁に梅干しを加える

干し椎茸と昆布を使った冷やし出汁のコツ

干し椎茸は、グアニル酸による深いコクと独特の香りが特徴の出汁素材です。冷やして飲む場合は、香りが立ちすぎないよう水でじっくり戻してから使うのがポイントです。

材 料
✔ 水 … 500ml
✔ 昆布 … 約5g(10cm角ほど)
✔ 干し椎茸 … 1〜2枚(スライスでも可)

作り方
✔ 昆布と干し椎茸を一緒に容器に入れ、水を注ぐ
✔ 冷蔵庫で一晩(6〜8時間)ゆっくりと抽出
✔ 椎茸と昆布を取り出し、ペーパーなどで軽く濾して完成

→ 柑橘や梅干しを加えると、香りに変化が出て清涼感がアップ


アレンジで広がる、夏の冷やし出汁

冷やし出汁の良さは、自分の好みに合わせて自由にアレンジできるところにもあります。 素材を変えたり、トッピングを加えることで、毎日の一杯にバリエーションをつけられます。

夏らしいアレンジ例
柑橘を加える(すだち・ゆず・レモン):香りが立ち、さっぱり感が増す
梅干しを加える:塩分補給とアクセントに
トマトやきゅうりのスライスを入れる:見た目も涼しげで、栄養もプラス
千切り生姜:ピリッとした辛味と香りがアクセントに。身体を冷やしすぎず、後味も引き締まる。
氷を浮かべる:キリッと冷やして飲むと、暑い日の体に染み渡る

自分で作るからこそ味わえる、一杯の豊かさ

好みの素材を選び、時間をかけて抽出する。その過程もまた、出汁を飲む楽しみのひとつです。お気に入りのボトルに冷やし出汁を仕込んでおけば、暑い日も、心と体をやさしく整える一杯に出会えるはずです。

自家製 冷やし出汁(昆布、かつお、椎茸)

出汁の健康効果を科学で見る ― 食欲・血糖値・心への作用

最近では、出汁の「おいしさ」だけでなく、健康や美容のサポートとしての効果にも注目が集まっています。 日本経済新聞・日経スタイル女性にうれしい「だし」ダイエット効果や冷え改善も では、以下のような効能が紹介されていました。

この記事では、出汁に含まれるうま味成分(グルタミン酸やイノシン酸など)がもたらす以下の効果が取り上げられています:

効果内容
満腹感の促進出汁を飲むことで脳が「満足した」と感じやすく、食べすぎを防ぐ手助けに
血糖値の抑制食前に出汁を飲むことで、血糖値の急上昇を抑える「セカンドミール効果」が期待できる
冷えの改善温かい出汁は内臓をやさしく温め、冷えやすい体質の人にも効果的
間食の予防空腹時に低カロリーで満足感のある出汁を飲むことで、無意識な間食を防ぐ習慣に

大学研究から見た“うま味の力”――近畿大学の実験結果より

近畿大学農学部(奈良キャンパス)でも、かつお出汁に含まれるうま味成分が脳と身体に与える作用を研究しています。 「おいしさとは何か。かつおだしの健康機能から見えてくるおいしさの正体」 では、以下のような観察結果が報告されています。

  • 出汁を飲んだ被験者は、そうでない人よりも食後の満腹感が高い
  • 同じ献立でも、食前に出汁を飲んだ方が摂取カロリーが低下する
  • 血糖値の変化が緩やかになり、身体への負担が軽減される

さらに、かつお出汁には次のような多彩な生理作用も期待されているそうです。

  • 疲労回復・高血圧抑制
  • 胃の動きを助け、唾液の分泌を促進
  • 満腹感の持続・脂肪摂取の抑制
  • 脳の活性化・ストレス軽減・抗うつ効果

体にも、心にも良い効果があるかつお出汁は万能薬です。


毎日の“ちょっと出汁習慣”で、心と体を整える

忙しい朝や、間食しそうな夕方。そんなときに温かい出汁を一杯飲むだけで、食事のコントロールや体調管理につながります。

とくに夏は冷たい出汁にして、さっぱりと水分・ミネラル・うま味をまとめて補給。手軽で、体にやさしくて、しかもおいしい。そんな出汁はまさに、味方になってくれる“飲む健康習慣”です。

忙しい朝や、間食しそうな夕方。そんなときに温かい出汁を一杯飲むだけで、食事のコントロールや体調管理につながります。特に夏場は冷やし出汁にして、水分・ミネラル・うま味を一度に摂れる“やさしい一杯”に。

手軽で、体にやさしく、しかもおいしい。そんな出汁はまさに、現代人に寄り添う“飲む健康習慣”です。


季節に寄り添う一杯として ― 出汁のある暮らし

暑い日には、キリッと冷えた出汁で身体の内側から涼やかに。寒い日には、湯気の立つ一杯で心と身体をじんわり温める。疲れているとき、忙しいとき、少し気持ちを整えたいときにも、出汁のやさしさがそっと背中を押してくれます。

市販の出汁パックは手軽で便利、しかもとても美味しい。でも、素材を選び、ゆっくりと抽出する自家製の冷やし出汁には、また違った味わいと愛着があります。そのどちらも、“飲む出汁”というシンプルな習慣が持つ奥深さと豊かさを教えてくれました。

あなたの暮らしの中にも、ぜひ一杯の出汁を。

きっと、新しい美味しさと、ささやかな心地よさに出会えるはずです。

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