今から2年前にNote Slateという製品が話題になったのを覚えているでしょうか。電子ペーパー(E-Ink)の技術を使った電子ノートです。スタイリッシュなデザインと$99という価格での発表に、発売を心待ちしていました。
しかし、2年経った今もNote Slateという商品は存在していません。
デジタル移民の悲しい性(さが)
ノートPC、タブレット、スマートフォンと各種電子機器を持ち歩きながらも、「何かを考えるとき」、「何かを理解しようとするとき」、「資料をまとめようとするとき」、「セミナーな講習で話を聴くとき」、「打合せでメモをとるとき」、「ブログを書くとき」など。そんなときはいつもペンと紙を手にしています。デジタルネイティブではないので論理的に順序立てた整理をしながらアウトプットすることができず、思いついたことを余白の様々な場所にランダムに文字、図、絵で描いて、足りないところを付け足していくことでしか、頭の中を整理することができないのです。正に書くではなく、描く作業なのです。
描く作業に必要な文房具にこだわって、あれこれと試していた時期がありました。その試行錯誤の結論が、その後長いこと使い続けている方眼紙タイプのA4レポート用紙、A4レポートホルダ、ファーバーカステルのボールペンです。
描くという作業では、横罫線があると邪魔になりますが、大きさを認識するのに レイメイ レポート用紙(ミシン目切り取りタイプ)のような方眼紙タイプが便利です。枠に囚われたいときにも、縦横無尽に書き殴りたいときにも使い分けることができます。またコピーを取ると枠線が映らないところも気に入っています。A4レポート用紙そのまま使用してもいいのですが、紀伊國屋でたまたま見つけて、一目で気に入って購入した革製のA4レポートホルダーです。使っているのは レイメイ藤井 ツァイトベクター レポートパッド ではありませんが、同じレザーのブラウンです。皮製品は長いこと使い込んでいると日に焼けたり手垢でいい感じになってきます。
ペンは一時期、洒落た大人を演じようと万年筆を使っていましたが、書きやすさを求めると高額になるのと、キャップを外して書くという動作が面倒だったこともあり、回転式のボールペンを利用するようになりました。回転式で、ある程度重さがあって、手に馴染む太さで、太字で書けるボールペンを探していて見つけたのが、ファーバーカステル ボールペン アンビション ペアウッド です。軸に梨の木が使われていて、握った太さも手にしっくりときます。こちらも木の部分が年月と共に味わい深い色になってきます。ボールペンの商品サイクルはしりませんが、未だに販売されていることにちょっと感動しました。
ボールペンで書いた内容は消すことができません。消せるという安心感は何度も訂正するという動作につながります。また書いた内容の訂正は思考の訂正です。消せないと制約が大切なのです。
勿論、最終アウトプットが手書きということはありませんので、不要なものは廃棄して、必要なものはクリアファイルに入れて電子化されたアウトプットになるまで持ち歩いています。
デジタル移民のメモツール
手書きのよさを捨て切れないデジタル移民に、描く作業をデジタル化できないかという欲求に応えてくれた製品がありました。iMPROV ELECTRONICSが開発した感圧式タッチパネル式のメモパッド『BoogieBoard(ブギーボード)』です。2010年に米国で発売され、日本では同年10月から KING JIM(キングジム)が販売しています。BoogieBoard(ブギーボード)は、子供の頃に使っていたマグネット式のお絵かきボードのデジタル版という感じです。
BoogieBoard(ブギーボード)には、BB-1(8.5インチ)、BB-2(10.5インチ)、書いた内容が保存ができるBB-3(9.5インチ)、最新版の BB-4(8.5インチ) があります。自分が使っているのは BB-2(10.5インチ) です。手で書くというのに非常にシックリくる電子機器です。書いた内容は保存できませんが、残したいときは、iPhoneで写真にとって、スキャニングソフトでPDFで保存すれば十分です。BB-3 が発売されたときに買い替えを検討して、家電量販店で試してみましたが、最初にSAVEを選択しないと書いた後では保存できず、PDFで保存された内容もPCに接続して転送しなければ見ることができず、その割には値段が高いので購入しませんでした。
最新版の BB-4(8.5インチ)は、BB-1、BB-2と比べると視認性が高くなり書いた内容が鮮やかになりました。しかし、エッジ部分のフレームとの高低差が高くなり、BB-1と同じ8.5インチですが、書ける範囲が狭くなってしまっています。やはり10.5インチのサイズがある BB-2 がおススメです。
しかし、BoogieBoard(ブギーボード)BB-2にもデメリットはあります。
- 一部分を消去できない(消しゴム機能がない)
- 書いた内容が常時見えている
- 持ち運びに不便
ということで、机の片隅に置いて裏紙として使うには便利なのですが、持ち運んでメモをするというのにはあまり向いていないデバイスです。
シャープの電子ノートWG-N10
昨年12月に シャープが手書き電子ノート(WG-N10) をプレスリリースしました。スマートフォンやタブレットという高機能のデバイスがある中、電子ノートという手書きノートという単機能のデバイスを発売するにあたっての経緯はわかりませんが、人はときに高機能のものよりもシンプルであることを求めます。勿論、スマホやタブレットでも手書きのアプリケーションはありますが、紙のノートに書いている感覚とは程遠いです。また細かい文字や図も描くことができません。
「紙のノートと同じように」、シンプルに考えた答えがシャープの電子ノートだと思います。
WG-N10のAmazonでの販売価格は、2013年2月時点で ¥11,100 です。Kindle Fire が¥12,800 で購入できることを考えると決して安い電子機器とは言えないかもしれません。しかし便利な筆記用具と考えるのであれば、決して高い買い物ではないと思います。
シャープ電子ノートWG-N10を使ってみて
シャープ電子ノート(WG-N10)を購入してから3週間程が経ちますが便利に使えています。まず書き心地のよさは抜群です。細字で書けば細かい文字や図を書くこともできます。ただ6インチというサイズはノートというよりもメモ帳サイズです。メモをするには十分な大きさですが、考えをまとめるなどのときには、やはり10インチ程度の大きさが欲しくなります。左画像はマインドマップで書いたものですが、やはりメモ程度の広がりが限界です。
次にバッテリーですが、充電の煩わしさから解放してくれるのはとてもありがたいです。電池の残量が3メモリしかなく、かなり大ざっぱだと感じましたが、1週間使ってもメモリひとつ分ぐらいしか減りませんので、残メモリが1つになったら充電しなくてはと思っておけば十分です。外出時に電池残量を気にしながら使うスマホとは大きな違いです。
気になった点としては、静電容量式のスタイラスペンを利用するのでノートと同じように画面に手を置いて書けるのですが、手を置いて書いていると結構画面が汚れていくので、クリーニングクロスが必要なことと、バックライトがないのでセミナーなどの会場でライトを落としている薄暗い場所での視認性でしょうか。
また電子機器としてではなく、文房具として考えると、1万円を超える筆記用具となるのでもう少しお洒落であって欲しいと思います。標準のスタイラスペンは仕方がないとしても、感圧式が蔓延する昨今、静電容量式のスタイラスペンもあまり見かけないので、オプションとして、幾つかのタイプを販売してもいいのではないかと思います。同様に標準のカバーのセンスもいまひとつなので、折角A6サイズにして市販の ブックカバー や A6の手帳カバー が使えるようにしているので、価格を下げるためにもカバーは付けなくてもいいのではないかと思います。結局、自分は文庫本のブックカバーと昔使っていた電子手帳のスタイラスを利用しています。
シャープ電子ノートでリフィルを利用する
シャープ電子ノート(WGN-10)の機能としてリファイルを追加することができます。シャープが提供している電子ノート追加リファイルダウンロードページからダウンロードしてPC経由で電子ノートに取り込むことができます。下記は週間計画表ですが、その他、複数のコンテンツをダウンロードすることができます。
また700x600の16ビットの画像であれば読み込めるので、Wordなどで作成したフォーマットをWindowsのペイントにコピペしてオリジナルのリファイルを簡単に作成することができます。まさにシステム手帳。できればリファイルではなくフォームとして使えればさらに便利なのですが。また複数枚をリファイルとして読み込んだ場合、最後に追加されたページが表示されるという仕様はいまいちです。3W1Hの変形させたフォーマットを作成して001~020まで20枚複製して取り込んで使っていますが、結構、便利に使えます。
電子ノートの内容を検索する
検索は日付とタグ付け(10種類)から検索することができます。複数のノートをまたいでの検索が可能ですが、書くときにはひとつのノートに書いて、タグ付けするのが便利だと思います。整理が必要な場合は、「ページ移動」で別なノートに移動することができます。
シャープ電子ノートで書いた内容をPCに保存する
シャープ電子ノート(WGN-10)は、ノートに書き込んだ内容を画像としてPCに転送できます。しかし、本体に1000ページ保存できるので、手書きのメモを取り出して活用するシーンはあまりありません。書きだした内容は16ビットのビットマップで画質がいいものではありません。本体に保存した内容を後で閲覧できる、追記、変更できるというのが電子ノート的便利さではないかと思います。
シャープ電子ノート(WGN-10)まとめ
デジタル移民の物欲をくすぐる逸品で、アーリーアダプターまでは購入を検討する製品ではないかと思います。しかし、代替が可能な製品のため爆発的なヒットを望めるとは思えません。個人的には冒頭に記載したNoteSlateのように電子ペーパーで10インチぐらいの電子ノートを後継機として発売していただければと思います。
WGN-10のよい点
- 書き心地のよさ
- バッテリーが長持ち
- 後で追記、修正できる
WGN-10の改善点
- 画面が小さい
- バックライトがない
- 付属品がカワイクない
・デジタル移民向けの電子ノート
・「シンプルに考えると」と、新しい製品やサービスが生まれる
・イノベーティブな製品が流行るとは限らない