万年筆の世界に足を踏み入れてから、ずっと憧れていたのは、以下の特徴を持つペン先を持つ万年筆でした。
- 金ペン
- 軟ペン
これまで試し書きの経験しかありませんでしたが、その柔らかく、滑らかな書き味に触れ、日本語の美しさを引き立てる「トメ」、「ハネ」、「ハライ」が表現できることにも感動しました。自分が大人な美しい行書を書いている姿を妄想することができます。
「いつか買いたい!」
と思いながらも、価格面で躊躇していました。しかし、ジャーナリングを始めてみて、普段使っているMD万年筆やLAMY Safariの中字は、書きやすい万年筆ではあるけど、ペンをしっかりと持ってペン先を紙に当てる書き方をしているため、速いスピードで書き続けることには限界があることに気づきました。書き続けていると、考えが止まる前に手が疲れてしまいます。
保有していた万年筆の中では、Watermanフィリアス M(中字)がジャーナリングに適した万年筆でした。
スチール製ですが、大型のニブ(ペン先)で、滑らかな書き味を提供してくれます。またインクフローもよいので、筆圧をかけずに軽やかに文字を綴れます。しかし、線の太さの強弱の表現は、あまり得意ではなく、ペン先が直ぐに乾いてしまうので、1週間使ってないとインクが出なくなるとといった煩わしさがあります。
金ペンの特徴
金ペンとは、金製のペン先を持つ万年筆のことです。金ペンには、14K、18K、21Kなどがありますが、数値が大きいほど金の含有量が多く、ペン先は柔らかくなり、滑らかで濃い書き味になります。しかし、金の含有率は価格にも比例します。
金の純度は、金の含有量を24で割ったもので表されます。24Kを100とした金の含有率で、14Kは14/24(58.33%)の金を含み、21Kは21/24(87.50%)の金を含みます。また、Kは、Karat(カラット)の頭文字で、金の純度を表す単位です。
21Kになるとペン先がかなり柔かくなるので、軟調ペンといった特殊ペン先の必要はないかと思います。
ニブ(ペン先)のサイズの違い
同じ金の純度でもニブ・サイズが大きいと弾力性がでるので、ペンタッチが柔らかくなり、軽い筆圧でもインクが流れやすくなります。ペンのサイズもメーカーによって異なりますが、セーラー万年筆だと超大型、大型、中型、パイロット万年筆だと10号、5号のように記載されれています。
下表は、ニブ・サイズによる一般的な違いです。
金製 大型ニブ | 金製 中型ニブ | |
---|---|---|
柔らかさ | 柔かい | 硬い |
字幅の変化 | 筆圧によって変化しやすい | 安定している |
インクフロー | 多い | 少ない |
価格 | 高い | 安い |
柔軟さを求めるなら大型ニブが最適ですが、高額になります。予算に制限がある場合は、ソフト調の中型ニブがいいのではないでしょうか。
軟ペンの特徴
軟ペンは、柔らかいペン先で、筆圧をかけるとペン先が開きます。滑らかな書き味で、インクフローもよいので、線の太さの強弱を表現しやすく行書などにも向いています。
パイロットは、ソフト調の細字(ソフト・ファイン)、ソフト調の中細字(ソフト・ファインミディアム)、ソフト調の中字(ソフト・ミディアム)、超ソフト調(フォルカン)と軟ペンの宝庫です。
パイロットの14K 5号のペン先を選ぶのであれば、柔らかさを求めてソフト調のペン先がいいかもしれません。
柔らかく滑らかに書ける万年筆の選択肢
柔らかく滑らかに書くためには、ペン先の材質やサイズが重要です。一般的に、14Kや21Kなどの金製のペン先は、スチール製のペン先よりも柔らかく滑らかに書くことができ、ペン先のサイズが大きいほど柔軟性があります。また、細字よりも中字の方が線が太く、インクの量も多いので、滑らかに書くことができます。
上記の条件に合致する万年筆として、以下の3つを候補にあげました。
セーラー万年筆 プロフェッショナル ギア 中字(21K・大型)
21Kの大型ペン先を搭載した万年筆です。装飾部には金と銀があり、重厚感のあるデザインです。パイロット カスタムヘリテイジ 912 ソフト・ミディアム 中字(14K 10号)
14Kの10号ペン先を搭載した万年筆です。ソフト・ミディアムはペン先が柔らかく、しなやかに曲がります。デザインは、とてもシンプルです。パイロット カスタムヘリテイジ 91ソフト・ミディアム(14K 5号)
14Kの5号ペン先を搭載した万年筆です。912よりペン先のサイズが小さいですが、軟調ペンは、ペン先が柔らかいので、滑らかに書くことができそうです。
カスタム742(14K 10号)、カスタム74 (14K 5号)という選択肢もありますが、クリップの特徴的なデザインの玉クリップ(クリップの先にある丸い玉)がどうにも好きになれません。またカスタムは、万年筆の両端が丸くなっているバランス型ですが、カスタムヘリテイジは、両端が平らなベスト型です。
Custom 742 はバランス型 |
万年筆の形状には大きく2種類あり、両端が丸くなっているものがバランス型で、両端が平らなものがベスト型です。丸いのと平たいの。 | 筆記具専門店キングダムノート|スタッフブログにも記載されていますが、両端が平らなベスト型の方が歴史が古いとあります。丸みのあるもに懐古を覚える現代では、バランス型の方がスタイリッシュに見えるのが不思議です。
パイロット カスタム ヘリテイジ 912に決めた理由
セーラー万年筆 プロフェッショナル ギアがAmazonでかなり安価に販売されていたので、かなり迷いましたが、最初から気になっていたパイロットのソフトミディアムのペン先の万年筆に決定。ソフト・ミディアムであればカスタムヘリテイジ91で十分と購入を決めたところで、Watermanフィリアスのデカいペン先が脳裏に浮かんでしましました。
「やっぱり少しでもニブ・サイズは大きい方がいいのでは、でも値段が、、、」
と、葛藤している最中に
「あ、912をポチってしまった、、、」
カスタムヘリテイジ 912 の書き味は
「気持ちよく書ける!」が、最初の印象です。ミディアムサイズのニブの字幅は、細すぎず、視認性の高い文字が綴られていきます。
ソフト調のペン先ですが、柔らかすぎず、非常に書きやすいです。筆圧によって字幅を変化させることができ、トメ・ハネ・ハライといった表現もできます。インクフローは良好ですが、「ぬらぬら感」は強すぎません。ただし、インクの消費量が多いため、カートリッジだとコスパが悪いので、付属のプッシュ式のコンバーターの利用が必須です。
購入目的であったジャーナリングでは、『速く書き続けることができる』万年筆として素晴らしい性能を発揮しています。
ペンを握ってしまうと書き続けているうちに手が疲れてきますが、中指にペンを乗せて、親指と人差し指で軽く支えるという万年筆の本来の持ち方でペンをコントロールすることができるので、ペンを強く握る必要がありません。カスタムヘリテイジ912を使うと、もっと書き続けたくなります。
ブラックのボディでデザインがシンプルなので、手にしてカッコいいという訳ではありませんが、そのシンプルさにより長く使っても飽きがこないデザインと言えます。
万年筆の好みは人それぞれですので、必ずしもすべての人に合うとは限りません。しかし、カスタムヘリテイジ912は、滑らかな書き味と、軟ペンの特徴である柔らかい書き味を兼ね備えているため、長時間の筆記でも疲れにくく、快適に書き続けることができます。ジャーナリング用の万年筆を探しているの方は、是非、検討してみてください。
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