万年筆を使い始めたころ、ボールペンと同じように強い筆圧で書き、F(細字)やEF(極細字)の硬いペン先を好んでいました。
しかし、中字の万年筆が生み出すインクの豊かさに出会い、軟らかいペン先のしなやかさに触れることで、筆圧をかけずに書ける万年筆の魅力を知りました。
そして今では、字に抑揚をつけることで、拙いながらも「行書」を嗜むようになりました。
そんな自分の万年筆との遍歴を振り返ってみたいと思います。
強い筆圧で書く細字の万年筆
万年筆を使い始めたころは、EF(極細字)やF(細字)の硬いペン先を好んでいました。
長年、FABER-CASTELL Ambition のボールペンを使っていたこともあり、最初の一本も同じ Ambition の EF(極細) にしました。
もう一本は、LAMY Safari F(細字)です。
何も、強い筆圧で細い字が書けるので、違和感なくボールペンから万年筆へ移行でき、細い軸も三角グリップも「強く握る」自分の書き方に合っていました。
この頃使っていた万年筆は、ボールペンの代替にすぎませんでした。
中字で知ったインクの豊かさ
万年筆の素晴らしさに気が付くきっかけとなったのは、MDノートを買いに行ったときに「カワイイ」と、衝動買いをしたMDつけペンでした。実は、これが中字との出会いでした。
普段使っている極細字では感じられなかった、インクの濃淡や線の丸みが紙の上に現れ、書いた文字に「味わい」が生まれることに驚きました。
最初は「太すぎるのでは」と思った中字でしたが、書いてみるとむしろバランスが良く、読みやすさを保ちながら表情が豊かになることに気づきました。
万年筆が、初めて「表情を生み出す道具」になりました。
軟調ペン先と筆圧をかけない書き方
万年筆について調べるうちに、「金ペン」や「軟調ペン先」という言葉に強く惹かれました。
最初に手にしたのは、 PILOT カスタムヘリテイジ 912 SM(Soft Medium)、軟調ペン先のしなる感覚に触れ、書き味の柔らかさに驚きました。
それまでの私はボールペンと同じように強い筆圧で書いていましたが、軟調ペン先だと筆圧が強いと逆に書きづらくなってしまいます。
そのため自然と「力を抜いて書く」ことを覚え、筆圧をかけずに文字を書く心地よさを知りました。
万年筆は軽く持ち、筆圧をかけずに書くことでこそ、万年筆らしい書き味となり、「楽に」書ける優れた筆記具だと実感しました。
続いて選んだのは、柔らかいという金の特徴を活かしたSAILOR プロフェッショナルギア 中字、
さらに、PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟)と、軟らかなペン先を次々と試していきました。
ペン先には、#3776と富士山を彷彿させるライン、そして可愛らしいハート型のハート穴です。
正しい万年筆の持ち方
こちらは再掲となりますが、万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。
生成AIに正しい持ち方を指示して描いてもらった絵がこちらです。
Created by Dall-E 3 |
日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。
万年筆の持ち方
- 手の力を抜いて手首を90°にする
- "中指の横腹"と"親指と人差し指の間"に万年筆をバランスよく乗せる
- ペン先の刻印は上向きになるように
- "親指"と"人差し指"で軽く支える
- ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる
と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。
この持ち方であれば、自然と筆圧をかけずに書けるようになります。
そしてそれこそが、万年筆らしい書き味を楽しむ第一歩です。
字に抑揚をつける楽しさ
軟調ペン先で「力を抜いて書く」ことを覚え、「行書」について学び始めると、文字に表情をつけたいと思うようになりました。
そうして手にしたのが、WANCHERの渓流ニブと小太刀ニブです。
渓流ニブも小太刀ニブも鉄ニブ(ステンレス製)なので "しなり" はありませんが、ペン先の角度によって線の太さに変化ができます。
渓流ニブのカマボコ型のペンポイントは、立てて書けば細く、寝かせれば太く──まるで毛筆のように自然な抑揚が生まれます。
一方の小太刀ニブは、矢尻のように尖れたペン先が、渓流ニブよりシャープで繊細な表現を生み出します。
上が渓流ニブ、下が小太刀ニブで書いていますが、共に鉄ニブとは思えないほどの表現力の幅に驚かされます。
「ただ書くだけ」だった文字が、抑揚のある筆跡へと変わるので、行書の練習にも大きな助けとなっています。
筆圧で表現力を:フォルカン
渓流ニブや小太刀ニブは「ペン先の角度による抑揚」でしたが、フォルカンは、金ペンのしなやかさを活かし、細い線から太い線まで筆圧によって線の表情を変えるペン先です。
10号と15号のペン先で悩みましたが、「えーいっ!」とPILOT カスタム 743 FAを購入。
軟調ペンはペン先がしなっても、スリット(ペン先の割れ目)があまり大きく開かないようになっていますが、フォルカンは逆に大きくスリットが開くような設計になっています。
力を抜けば極細の線が、ぐっと筆圧をかければ毛筆のような太い線が ── まるで筆の穂先を操るようなダイナミックな表現が可能です。
ただし、その分コントロールは難しい、、。
まさに「扱いの難しいがゆえに、表現力の幅が大きい」ペン先でした。
これで自分の万年筆の旅も一区切りと思いました。
……しかし、いちどハマった万年筆沼の深みは底知れません……。
終わりではなく次へ?
中字の万年筆だと細かい字を書くと字が潰れてしまいます。
なので、手帳に書くときは PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟) を使うことが多いです。
だったら、細字の実用性に加えて、柔らかさと抑揚を両立した万年筆があっても悪くはない。
PILOT ELABO(エラボー) が、気になります、
エラボーは、フォルカンほど極端にペン先が開かず、日常の筆記にも使いやすいと評判です。
それでいて軟調らしい柔らかさがあり、筆圧を少し変えるだけで抑揚のある線が生まれます。
エラボーは、字幅が、EF、F、M、Bから選べるということからも、フォルカンよりペン先の割れ目が開かないということがわかります。
手帳に書くのには、エラーボーの細字がいいかも。
やっぱり、次の一本が気になってしまいます……。
終わりのない万年筆探しは、まだまだ続きそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿