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ラベル *フォルカン の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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Post Date:2025年9月13日 

普段使いの一本に+表現力 ― PILOT エラボー

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟

Custom 743 FA(フォルカン)を購入して、「次のELABO(エラボー)で、軟調ペン先は最後にしよう」と考えていました。

そんな折、PILOTが2025年10月1日から価格改定を行うというニュースが入り、エラボー(樹脂軸)も6,000円の値上げ対象に。

現在発売されているエラボーは3代目で、2009年に登場しました。発売当初の価格は 18,000円(税別)で、2024年の価格改定まで15年間も価格は据え置かれていました。

しかしそこからわずか2年の間に3度の価格改定が行われ、2025年10月1日に 32,000円(税別)、税込では35,200円となります、、。

3代目エラボー価格遷移
税抜 消費税率 税込
2009年 3代目エラボー 18,000円 5% 18,900円
2014年04月01日 18,000円 8% 19,440円
2019年10月01日 18,000円 10% 19,800円
2024年01月01日 22,000円 10% 24,200円
2024年10月01日 26,000円 10% 28,600円
2025年10月01日 32,000円 10% 35,200円

値上げ前のいまをチャンスと捉え、思い切ってエラボーを駆け込みで手に入れました。


PILOT ソフト調ニブの系譜

PILOTは「ソフトニブ」と呼ばれる軟調ペン先を多数ラインナップしています。

代表的なのは SF(細字軟)・SFM(中細字軟)・SM(中字軟) といったタイプで、通常のペン先にクッション性のある『しなやかさ』を加えた設計になっています。

軟らかすぎないため、普段の筆記や長時間の使用にも最適で、扱いやすい軟調ニブです。

一方で、FA(Falcon nib)エラボー専用ニブ は、筆圧を加えることでペン先が大きくしなり、細字から太字まで自在に変化させることができます。

「はね・はらい・とめ」といった毛筆的な表現を得意とし、通常のソフト調ニブよりもはるかに豊かな表現力を発揮します。


パイロット軟調ペン先(SF・SFM・SM)の特徴

パイロットの軟調ペン先(SF・SFM・SMなど)は、基本的な形状は通常のニブと同じですが、わずかに柔らかさを加えた設計になっています。

Custom74/742/743、Custom Heritage 912 などで選択できます。

PILOTソフト調のペン種

フォルカンやエラボーのように大きくしなるわけではなく、柔らかいタッチで心地よい筆記感が魅力です。字幅のバリエーションも豊富で、細字から中字、太字まで用途に合わせて選びやすく、日常的な筆記に適しています。

ダイナミック表現力を求めるというよりは、普段の書き心地をより快適にしたい人にぴったりの選択肢です。

さらに、ペン先が適度にしなることで長時間の筆記でも手が疲れにくく、手紙やノート、仕事での使用にも安心して使える点が評価されています。

つまり、パイロットのソフトニブは「表現力」よりも「心地よさ」を重視する人にとって、最も扱いやすい軟調ペン先だと言えます。

金ペン軟調万年筆については下記の記事をご覧ください。


FA(フォルカン)ニブの特徴(Custom 743/742など)

フォルカンは、Custom 743では15号、742では10号という大きなサイズのペン先を持ち、しなり幅が非常に大きいのが特徴です。

ペン先に字幅のバリエーションはなく、筆圧によって細字から太字まで自在に操ることができます。「はね」「はらい」「とめ」といった毛筆のような表現を得意とし、文字に力強さや抑揚を与えることができます。

一方で、インクフローが非常に豊かであるため、紙質によってはにじみや裏抜けが起こりやすい点には注意が必要です。

また、表現力の高さは大きな魅力ですが、日常の細かいメモや長時間の筆記では扱いにくさを感じることもあります。

フォルカンは、実用性よりも表現力を優先する書き手に向いた、個性的なペン先です。

Custom 743 FAニブ(フォルカン)についてのレビューはこちらをご覧ください。


エラボーの特徴

エラボーには金属軸と樹脂軸の2種類がありますが、どちらもエラボー専用に設計されたニブで同じものを備えています。

エラボーは、フォルカンほど大きなしなりはなく、柔らかさはやや控えめですが、その分コントロールしやすく安定感のある書き味が特徴です。

字幅のバリエーションも豊富で、SEF(極細)・SF(細字)・SM(中字)・SB(太字) の中から用途や好みに合わせて選ぶことができます。

普段使いで安定した筆記を保ちながら、必要なときには文字に表現力を加えることができるため、日常と表現性をバランスよく両立できる一本といえるでしょう。

また、フォルカンに比べて扱いやすいため、初心者から中級者まで幅広い層におすすめできるのも魅力です。

エラボーは、ソフトニブとフォルカンの中間的な位置付けにあり、実用性と表現力の両方を求める人にとって最適な選択肢となります。


エラボーのペン先形状

エラボーのペン先は、その形状に大きな特徴があります。海外ではファルコン(はやぶさ)という名前で販売されていますが、根本から先端にかけて大きく湾曲していて、中程で隆起する、猛禽のクチバシのような独特の形状に加工されています。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のペン先

ペン芯はフラットで櫛溝がないのが特徴です。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のペン芯

筆圧を加えるとニブがしなるように開き、細字から太字まで滑らかに変化させることができ、毛筆のような抑揚ある筆跡を生み出します。

さらに、中央の切り割り(スリット)が通常のペン先よりも長く設計されている点も特徴的です。この長いスリットによって柔軟性が高まり、軽い力でも『しなり』やすくなっています。

PILOT ELABO 樹脂軸 細軟のスリット

ただし、フォルカンほどの極端な動きではなく、適度な抑えが効いているため、安定した書き味を保てるのがエラボーならではの魅力です。

フォルカンとの比較です。同じしなりを作り出すニブですが形状は大きく異なります。

FAニブとELABOの比較

実際にエラボーを使ってみて(レビュー)

エラボーの第一印象は「華奢?」というものでした。他のパイロットの万年筆と比べると、やや細く短く、握った感触もスリムに感じます。

万年筆軸径長さ重さ
ELABOφ14.4mm137mm18.0g
Custom74φ14.7mm143mm17.4g
Custom Heritage912φ15.7mm137mm20.0g
Custom 743φ15.7mm149mm25.0g

特にフォルムが似ているCustom Heritage912と比べるとかなり痩せっぽちです。

Custom Heritage 912 と ELABO の比較

肝心の書き味ですが、フォルカンはしなり幅が大きく、筆圧のコントロール次第で線が劇的に変化します。一方エラボーは、そのダイナミックさが抑えられており、「しなるけれど書きやすい」万年筆という印象です。

また、軟調ペン先のSM(中字軟)と比べると、エラボーには明確なしなりがあり、字に表現力を加えられます。

フォルカンやソフトニブと比べると、エラボーの魅力は「柔らかさ」「表現力の幅」「扱いやすさ」のバランスにあります。

軽く筆圧を加えると線に表情が生まれますが、フォルカンほどの大きな変化ではなく、安心してコントロールできる範囲に収まっています。

インクフローも過剰ではなく安定しており、長時間の筆記でも疲れにくいのは大きな利点です。

フォルカンが「豊かな表現力を発揮する一本」だとすれば、エラボーは「日常の筆跡に静かな彩りを添える一本」と言えるでしょう。

エラボーは、手帳やノートなど、細かい字を多く書く毎日の筆記にピッタリです。


どんな人におすすめか

エラボーは、万年筆らしい「筆圧をかけない書き方」ができないと扱いづらさを感じる万年筆です。そのため、まったくの初心者よりも、ある程度万年筆に慣れた人に適しています。

ただし、金ペンの価格高騰を踏まえると、万年筆デビューをエラボーで飾るという選択肢も十分に考えられます。その場合は、まず「万年筆の正しい持ち方」を意識することから始めてください。

ソフトニブ以上にニュアンスを表現できる一方で、フォルカンほど大きなしなりはないため、ノートや手帳など日常の筆記で自然に文字に味わいを加えられるのが魅力です。

また、「フォルカン(FAニブ)が気になるけれど、自分に使いこなせるかが不安」という人にとって、適度な表現力で扱いやすいエラボーは最適な選択肢です。


万年筆の持ち方

筆圧をかけない書き方をするには、万年筆を軽く持つことが大切です。強く握るのではなく、人差し指と親指で軽く支えるのが正しい持ち方です。

万年筆の持ち方をGPT5で生成してみました。

万年筆の正しい持ち方
Created by GPT5
  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. 中指の横腹親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. 親指人差し指で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

書道家の大江静芳氏の動画を参考に、万年筆の正しい持ち方を身につけましょう。


まとめ 〜普段使いの一本に+表現力〜

Custom 743 FAのようなダイナミックな表現力も魅力的ですが、エラボーは日常に優しく彩りを添えてくれます。今回は手帳用の万年筆として細字を選んだため、字幅の変化はさらに控えめに感じます。

ELABOの筆致

まさに「普段使いの一本に+表現力」という言葉がふさわしい存在だと感じました。

ソフトニブよりも一歩深い表現を楽しみたい人、フォルカンほどのクセは要らないけれど柔らかさを求めたい人にとって、エラボーはちょうど良い答えになるでしょう。

普段使いの一本にさりげない表現力を加えてくれる ーー それがPILOT ELABO(エラボー)です。

Post Date:2025年9月7日 

軟らかさと抑揚の世界、底の見えない万年筆沼の怖さ

象と散歩:軟らかさと抑揚の世界、底の見えない万年筆沼

万年筆を使い始めたころ、ボールペンと同じように強い筆圧で書き、F(細字)やEF(極細字)の硬いペン先を好んでいました。

しかし、中字の万年筆が生み出すインクの豊かさに出会い、軟らかいペン先のしなやかさに触れることで、筆圧をかけずに書ける万年筆の魅力を知りました。

そして今では、字に抑揚をつけることで、拙いながらも「行書」を嗜むようになりました。

そんな自分の万年筆との遍歴を振り返ってみたいと思います。


強い筆圧で書く細字の万年筆

万年筆を使い始めたころは、EF(極細字)やF(細字)の硬いペン先を好んでいました。

長年、FABER-CASTELL Ambition のボールペンを使っていたこともあり、最初の一本も同じ Ambition の EF(極細) にしました。

もう一本は、LAMY Safari F(細字)です。

LAMY Safari とFaber-Castell Ambition

何も、強い筆圧で細い字が書けるので、違和感なくボールペンから万年筆へ移行でき、細い軸も三角グリップも「強く握る」自分の書き方に合っていました。

この頃使っていた万年筆は、ボールペンの代替にすぎませんでした。


中字で知ったインクの豊かさ

万年筆の素晴らしさに気が付くきっかけとなったのは、MDノートを買いに行ったときに「カワイイ」と、衝動買いをしたMDつけペンでした。実は、これが中字との出会いでした。

MDつけペンのペン先

普段使っている極細字では感じられなかった、インクの濃淡や線の丸みが紙の上に現れ、書いた文字に「味わい」が生まれることに驚きました。

最初は「太すぎるのでは」と思った中字でしたが、書いてみるとむしろバランスが良く、読みやすさを保ちながら表情が豊かになることに気づきました。

万年筆が、初めて「表情を生み出す道具」になりました。


軟調ペン先と筆圧をかけない書き方

万年筆について調べるうちに、「金ペン」や「軟調ペン先」という言葉に強く惹かれました。

最初に手にしたのは、 PILOT カスタムヘリテイジ 912 SM(Soft Medium)、軟調ペン先のしなる感覚に触れ、書き味の柔らかさに驚きました。

Custom Heritage 912 SM

それまでの私はボールペンと同じように強い筆圧で書いていましたが、軟調ペン先だと筆圧が強いと逆に書きづらくなってしまいます。

そのため自然と「力を抜いて書く」ことを覚え、筆圧をかけずに文字を書く心地よさを知りました。

万年筆は軽く持ち、筆圧をかけずに書くことでこそ、万年筆らしい書き味となり、「楽に」書ける優れた筆記具だと実感しました。

続いて選んだのは、柔らかいという金の特徴を活かしたSAILOR プロフェッショナルギア 中字

SALOR PROFESSIONAL GEAR M

さらに、PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟)と、軟らかなペン先を次々と試していきました。

ペン先には、#3776と富士山を彷彿させるライン、そして可愛らしいハート型のハート穴です。

Platinum #3776 Century Soft Fine

正しい万年筆の持ち方

こちらは再掲となりますが、万年筆で筆圧をかけずに書くためには、ボールペンとは異なる持ち方を習得する必要があります。

ChatGPTに万年筆の正しい持ち方を指示して描いてもらった絵がこちらです。

万年筆の正しい持ち方
Created by GPT5

日本の万年筆の多くは、キャップを後ろに挿して使うことで、筆記時のバランスが良くなるように設計されています。そのため、書く際にはキャップを後ろに挿すのがおすすめです。

万年筆の持ち方

  1. 手の力を抜いて手首を90°にする
  2. 中指の横腹親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
  3. ペン先の刻印は上向きになるように
  4. 親指人差し指で軽く支える
  5. ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる

と、こんな感じですが、百聞は一見に如かず。書道家の大江静芳氏の動画を参考に、正しい持ち方を身につけましょう。

この持ち方であれば、自然と筆圧をかけずに書けるようになります。

そしてそれこそが、万年筆らしい書き味を楽しむ第一歩です。


字に抑揚をつける楽しさ

軟調ペン先で「力を抜いて書く」ことを覚え、「行書」について学び始めると、文字に表情をつけたいと思うようになりました。

そうして手にしたのが、WANCHERの渓流ニブ小太刀ニブです。

渓流ニブと小太刀ニブの比較

渓流ニブも小太刀ニブも鉄ニブ(ステンレス製)なので "しなり" はありませんが、ペン先の角度によって線の太さに変化ができます。

渓流ニブのカマボコ型のペンポイントは、立てて書けば細く、寝かせれば太く──まるで毛筆のように自然な抑揚が生まれます。

一方の小太刀ニブは、矢尻のように尖れたペン先が、渓流ニブよりシャープで繊細な表現を生み出します。

渓流ニブと小太刀ニブの文字比較

上が渓流ニブ、下が小太刀ニブで書いていますが、共に鉄ニブとは思えないほどの表現力の幅に驚かされます。

「ただ書くだけ」だった文字が、抑揚のある筆跡へと変わるので、行書の練習にも大きな助けとなっています。


筆圧で表現力を:フォルカン

渓流ニブや小太刀ニブは「ペン先の角度による抑揚」でしたが、フォルカンは、金ペンのしなやかさを活かし、細い線から太い線まで筆圧によって線の表情を変えるペン先です。

10号と15号のペン先で悩みましたが、「えーいっ!」とPILOT カスタム 743 FAを購入。

PILOT Custom 743 Folcan

軟調ペンはペン先がしなっても、スリット(ペン先の割れ目)があまり大きく開かないようになっていますが、フォルカンは逆に大きくスリットが開くような設計になっています。

力を抜けば極細の線が、ぐっと筆圧をかければ毛筆のような太い線が ── まるで筆の穂先を操るようなダイナミックな表現が可能です。

ただし、その分コントロールは難しい、、。

まさに「扱いの難しいがゆえに、表現力の幅が大きい」ペン先でした。

これで自分の万年筆の旅も一区切りと思いました。
……しかし、いちどハマった万年筆沼の深みは底知れません……。

#3776 SF, ヘリテイジ912 SM, カスタム743 FA, プロギアM

終わりではなく次へ?

中字の万年筆だと細かい字を書くと字が潰れてしまいます。

なので、手帳に書くときは PLATINUM #3776 センチュリー SF(細軟) を使うことが多いです。

だったら、細字の実用性に加えて、柔らかさと抑揚を両立した万年筆があっても悪くはない。

PILOT ELABO(エラボー) が、気になります、

エラボーは、フォルカンほど極端にペン先が開かず、日常の筆記にも使いやすいと評判です。
それでいて軟調らしい柔らかさがあり、筆圧を少し変えるだけで抑揚のある線が生まれます。

エラボーは、字幅が、EF、F、M、Bから選べるということからも、フォルカンよりペン先の割れ目が開かないということがわかります。

手帳に書くのには、エラーボーの細字がいいかも。

やっぱり、次の一本が気になってしまいます……。
終わりのない万年筆探しは、まだまだ続きそうです。

Post Date:2025年7月28日 

フォルカンで書く、ゆっくりの美学

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

PILOTのCustom Heritage 912 SM を手にして、「万年筆の書き方」を初めて意識するようになり、「書くことの楽しさ」にも惹かれていきました。

そこから、「もっと美しく書きたい」という気持ちが芽生え、行書の練習を始めることに。

軟調ペンで紙の上をなぞるように書く、そのなめらかな筆致は、行書にぴったりだと感じていました。

ところが、WANCHERの小太刀ニブに出会って、字幅の変化の面白さと表現の奥深さにハッとさせられたのです。

小太刀のしなやかな書き味を楽しんでいるときに、ふと頭をよぎったのが――「そういえば、PILOTのFA(ファルカン)って、どうなんだろう?」


フォルカン(FA)ニブとは?筆のようにしなる特殊ペン先

「フォルカン(FA)」は、パイロットが開発した特殊ペン先のひとつです。筆のようなしなりと、線に強弱をつけられる表現力で、多くの書き手に支持されています。

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

フォルカンニブの語源と形状

「Falcon(ファルコン)」とは、英語で「ハヤブサ」を意味します。その名の通り、ペン先はハヤブサのくちばしのように細く長く湾曲した独特の形状をしています。

Custom 743 FA と Heritage 912 SMのペン先を比較する

この形により、スリット(ペン先の割れ目)が通常より深く、しなりやすく設計されているのが特徴です。筆圧をかけるとペン先が左右に開き、インクの出方が変化して線が太くなり、筆圧を抜けば細くなる ― そんな筆のような書き味を万年筆で実現しているのが、フォルカンニブです。


FAニブと軟調ペン先の違い

パイロットの SM(Soft Medium)や SF(Soft Fine)など、“S”のついたペン先は「軟調ペン先」と呼ばれています。

これらは、しなやかさとクッション性が特徴で、長時間の筆記でも手が疲れにくく、万年筆初心者にも扱いやすい設計です。

一方で FA(フォルカン)ニブは、筆圧をかけるとスリットが左右に大きく開き、字幅に明確な変化が生まれるように作られています。

筆圧でスリットが広がり太い筆致となるフォルカン

そのしなりを活かして、線に“表情”をつけることができる、表現重視のペン先なのです。

下表は、フォルカン(FA)と軟調ペン先(SM,SFM,SF)の違いです。

項目FA(フォルカン)ニブ軟調ペン先(SM, SFM,SF)
線の強弱表現◎ 筆圧で細〜太まで大きく変化する△ 緩やかに変化するが基本は一定
しなり◎ よくしなる。スリットが大きく開く◯ やわらかく沈み込む感覚。スリットの開きは小さい
書き味表現力が高く繊細。筆のような筆致表現が可能なめらかでクッションのある書き心地。長時間筆記に向く
扱いやすさ△ 慣れが必要。筆圧やスピードのコントロールに注意◎ 万年筆初心者でも扱いやすい

フォルカンニブには、筆圧によって細〜中〜太の線を描き分けることができます。


フォルカンニブを搭載した主なモデル

フォルカン(FA)ニブを搭載できるパイロットの日本国内向けモデルは、以下の3つです:

  • Custom(カスタム) 743 FA(14K・15号ニブ)
  • Custom(カスタム) 742 FA(14K・10号ニブ)
  • Custom Heritage(カスタム ヘリテイジ) 912 FA(14K・10号ニブ)

※「14K」とは、金の含有量を表す記号です。Kは Karat(カラット) の略で、金の純度を示す単位です。24Kを純金(100%)とし、14Kは24分の14、すなわち約58.3%の純金を含んでいることを意味します。

モデル名ペン先
サイズ
FAニブ
対応
備考
Custom 74315号✅ありパイロット唯一の15号 FAニブ搭載モデル。しなりが強く、線の強弱を出しやすい
Custom 74210号✅あり743よりやわらかさは控えめ、適度なしなりと安定した筆記バランス。
Custom Heritage 91210号✅あり742と同じく10号FAニブ、742よりもコンパクトで軽量・細身

Custom 742とCustom 912は同じ10号FAニブですが、デザインが大きく異なり、書き味やバランスに微妙な違いがあります。以下はその比較表です。

項目Custom 742 FACustom Heritage 912 FA
ペン先10号 FA(共通)10号 FA(共通)
軸の形状バランス型ベスト型
最大軸径約14.5mm約13.5mm
全長(キャップ付き)約146mm(やや長め)約137mm
重量(インクなし)約24g(やや重め)約19g
筆記バランスやや重めで後ろ寄り(胴軸側に重さあり)やや軽く、前重心(指先に近い)
装飾トラディショナルな金モダンでシンプルな銀
コンバーターCON-70(共通)CON-70(共通)

行書を練習するのに最適なFAニブを持つ万年筆は?

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

今回、FAニブの万年筆を購入する目的は「行書を練習すること」。その観点で、3モデルを「行書適性」で比較してみました。

モデル名適性理由・特徴
Custom 743 FA最適15号FAニブは筆のようにしなり、線の強弱が自在。はね・はらいが自然に出せる。漢字の表現に最も適している。
Custom 742 FA高適性10号FAニブ。適度な重量感と安定した筆記バランスで、とめ・はね・はらいが決まりやすく、行書に非常に向いている。
Custom Heritage 912 FA良い同じ10号FAニブ。軽快で扱いやすく、日常筆記としての行書にも適している。やや速書き向き。

当初は Custom 742 FA にしようかと思っていましたが、「ペン先が大きい方が軟らかい」というこれまでの経験と、PILOTの15号ニブの期待から、最終的に Custom 743 FA をポチり。


価格改定について

2024年10月1日より、パイロットの価格改定で、

  • Custom 742 / Custom Heritage 912:26,400円 → 33,000円
  • Custom 743:39,600円 → 44,000円

と、かなりの値上げ幅ですが、ECでは割引価格で購入可能です。

また、パイロットのCustomシリーズは量産型で品質も安定しているため、信頼できるショップであればネットでの購入でも安心です。


Custom 743 FAを使ってみて

Custom 743 FAのペン先は、軟らかすぎず、ちょうどいいしなり具合です。少し筆圧をかけることで字幅に大きく変化を出せます。

字幅の変化が楽しめる14K 15号フォルカン

体感としては、ペン先の軟らかさは以下の順で感じられます:
Custom Heritage 912 SM < Custom 743 FA < Platinum #3776 SF(細軟)

いちばん軟らかい #3776 SFは、少しの筆圧で大きくしなりますが、字幅は大きく変化しません。

一方、742 FAは、筆圧をほんの少しかけるだけでペン先がぐっと開き、線がふわりと太くなる。力を抜けば、スッと線が細く戻る。この「入りと抜きの動き」が心地よい筆致です。

反対に、強い筆圧で書く方には不向きかもしれません。軽やかなタッチでリズムよく書くときに、その魅力が際立ちます。


普段使いは軟調ペン、表現したいときはFA

PILOTの軟調ニブ(SMやSFM)は、どちらかというと日常的な筆記やメモに向いています。少し速く書くような場面でも、ペン先がスムーズに追従してくれるのが魅力です。

そうした特性から、Custom Heritage 912 は、ジャーナリングなど日々の記録に最適な一本といえるでしょう。

それに対して、フォルカンニブは「丁寧に書こう」という気持ちにさせてくれます。書くスピードは少し落ちるけれど、その分、書くことの楽しさや奥深さを感じられる。そんなペン先です。そして字の表現力を高めてくれるのでまさに行書の練習にピッタリな万年筆です。


行書に適した万年筆とは

最後に、自分が所有している万年筆の中から、行書に適していると感じたモデルを比較してみました。

モデル名線の表情しなり感書き味の特徴行書への適性
Pilot Custom
743 FA
◎(筆のようにしなる)筆圧で線が変化、とめ・はね・はらいもダイナミックに表現できる最適
WANCHER
小太刀ニブ
✕(しなりはない)筆圧とペン先の角度で、線の変化を自在に表現高適性
Custom Heritage 912 FA◯(自然なやわらかさ)軽く扱いやすく、筆圧で少し線に変化が出せる良い
WANCHER
渓流ニブ
✕(しなりはない)やや太めの字幅で、滑らかに線の強弱が出せる良い
Platinum
#3776 SF
◎(ふわりとした柔らかさ)クッション感のある柔らかさ。一部向く

行書に適した万年筆を選ぶとき、ポイントになるのは「線の変化のつけやすさ」だと感じています。

Custom 743 FAのように、しなりによって筆圧をそのまま線に反映できるモデルは、まさに筆のような感覚で書くことができます。一方、小太刀ニブのようにしなりがなくても、筆圧や角度によってダイナミックな線が引けるタイプも魅力的です。

何にしても「筆圧をかけずに書く」という、万年筆本来の書き方がベースになります。

まずは少し細めの軟調ペンで、軟らかいペン先の感覚に慣れるところから始めるのが良いのではないでしょうか。


やっぱり一本差しのケースを

新しく迎えたCustom 743 FAにも、以前こちらで紹介したFREESEの一本差し万年筆ケースを購入しました。

革の品質には多少のばらつきがありますが、1,000円とは思えないクオリティです。裏地には肌触りのよい柔らかなスエードが使われていて、しっかりと万年筆を守ってくれます。作りはシンプルですが、見た目も悪くありません。

ディープグリーン(プロギア)、ブラウン(#3776)、ブルー(Heritage 912)、レッド(Custom67)と使ってきたので、今回はブラックを選びました。


次はエラボー、、、?

PILOTのソフトニブ、そしてフォルカンと試してきたので、「自然な書き味でファンも多い」と言われる ELABO(エラボー)も、次はぜひ使ってみたいところです。

ソフトニブでは中字を選んだので、エラボーを買うなら細字?金属軸より樹脂の方が軽くてよい?

嗚呼、物欲の神が騒いでいます……。

PILOTの価格改定の前にELABOを購入。エラボーの記事は下記をクリックしてください。[2025.09.15追記]

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