Custom 743 FA(フォルカン)を購入して、「次のELABO(エラボー)で、軟調ペン先は最後にしよう」と考えていました。
そんな折、PILOTが2025年10月1日から価格改定を行うというニュースが入り、エラボー(樹脂軸)も6,000円の値上げ対象に。
現在発売されているエラボーは3代目で、2009年に登場しました。発売当初の価格は 18,000円(税別)で、2024年の価格改定まで15年間も価格は据え置かれていました。
しかしそこからわずか2年の間に3度の価格改定が行われ、2025年10月1日に 32,000円(税別)、税込では35,200円となります、、。
年 | 税抜 | 消費税率 | 税込 |
---|---|---|---|
2009年 3代目エラボー | 18,000円 | 5% | 18,900円 |
2014年04月01日 | 18,000円 | 8% | 19,440円 |
2019年10月01日 | 18,000円 | 10% | 19,800円 |
2024年01月01日 | 22,000円 | 10% | 24,200円 |
2024年10月01日 | 26,000円 | 10% | 28,600円 |
2025年10月01日 | 32,000円 | 10% | 35,200円 |
値上げ前のいまをチャンスと捉え、思い切ってエラボーを駆け込みで手に入れました。
PILOT ソフト調ニブの系譜
PILOTは「ソフトニブ」と呼ばれる軟調ペン先を多数ラインナップしています。
代表的なのは SF(細字軟)・SFM(中細字軟)・SM(中字軟) といったタイプで、通常のペン先にクッション性のある『しなやかさ』を加えた設計になっています。
軟らかすぎないため、普段の筆記や長時間の使用にも最適で、扱いやすい軟調ニブです。
一方で、FA(Falcon nib) や エラボー専用ニブ は、筆圧を加えることでペン先が大きくしなり、細字から太字まで自在に変化させることができます。
「はね・はらい・とめ」といった毛筆的な表現を得意とし、通常のソフト調ニブよりもはるかに豊かな表現力を発揮します。
パイロット軟調ペン先(SF・SFM・SM)の特徴
パイロットの軟調ペン先(SF・SFM・SMなど)は、基本的な形状は通常のニブと同じですが、わずかに柔らかさを加えた設計になっています。
Custom74/742/743、Custom Heritage 912 などで選択できます。
フォルカンやエラボーのように大きくしなるわけではなく、柔らかいタッチで心地よい筆記感が魅力です。字幅のバリエーションも豊富で、細字から中字、太字まで用途に合わせて選びやすく、日常的な筆記に適しています。
ダイナミック表現力を求めるというよりは、普段の書き心地をより快適にしたい人にぴったりの選択肢です。
さらに、ペン先が適度にしなることで長時間の筆記でも手が疲れにくく、手紙やノート、仕事での使用にも安心して使える点が評価されています。
つまり、パイロットのソフトニブは「表現力」よりも「心地よさ」を重視する人にとって、最も扱いやすい軟調ペン先だと言えます。
FA(フォルカン)ニブの特徴(Custom 743/742など)
フォルカンは、Custom 743では15号、742では10号という大きなサイズのペン先を持ち、しなり幅が非常に大きいのが特徴です。
ペン先に字幅のバリエーションはなく、筆圧によって細字から太字まで自在に操ることができます。
そのため「はね」「はらい」「とめ」といった毛筆のような表現を得意とし、文字に力強さや抑揚を与えることができます。
一方で、インクフローが非常に豊かであるため、紙質によってはにじみや裏抜けが起こりやすい点には注意が必要です。
また、表現力の高さは大きな魅力ですが、日常の細かいメモや長時間の筆記では扱いにくさを感じることもあります。
フォルカンは、実用性よりも表現力を優先する書き手に向いた、個性的なペン先と言えます。
エラボーの特徴
エラボーには金属軸と樹脂軸の2種類がありますが、どちらもエラボー専用に設計されたニブで同じものを備えています。
エラボーは、フォルカンほど大きなしなりはなく、柔らかさはやや控えめですが、その分コントロールしやすく安定感のある書き味が特徴です。
字幅のバリエーションも豊富で、SEF(極細)・SF(細字)・SM(中字)・SB(太字) の中から用途や好みに合わせて選ぶことができます。
普段使いで安定した筆記を保ちながら、必要なときには文字に表現力を加えることができるため、日常と表現性をバランスよく両立できる一本といえるでしょう。
また、フォルカンに比べて扱いやすいため、初心者から中級者まで幅広い層におすすめできるのも魅力です。
エラボーは、ソフトニブとフォルカンの中間的な位置付けにあり、実用性と表現力の両方を求める人にとって最適な選択肢となります。
エラボーのペン先形状
エラボーのペン先は、その形状に大きな特徴があります。海外ではファルコン(はやぶさ)という名前で販売されていますが、根本から先端にかけて大きく湾曲していて、中程で隆起する、猛禽のクチバシのような独特の形状に加工されています。
ペン芯はフラットで櫛溝がないのが特徴です。
筆圧を加えるとニブがしなるように開き、細字から太字まで滑らかに変化させることができ、毛筆のような抑揚ある筆跡を生み出します。
さらに、中央の切り割り(スリット)が通常のペン先よりも長く設計されている点も特徴的です。この長いスリットによって柔軟性が高まり、軽い力でも『しなり』やすくなっています。
ただし、フォルカンほどの極端な動きではなく、適度な抑えが効いているため、安定した書き味を保てるのがエラボーならではの魅力です。
フォルカンとの比較です。同じしなりを作り出すニブですが形状は大きく異なります。
実際にエラボーを使ってみて(レビュー)
エラボーの第一印象は「華奢?」というものでした。他のパイロットの万年筆と比べると、やや細く短く、握った感触もスリムに感じます。
万年筆 | 軸径 | 長さ | 重さ |
---|---|---|---|
ELABO | φ14.4mm | 137mm | 18.0g |
Custom74 | φ14.7mm | 143mm | 17.4g |
Custom Heritage912 | φ15.7mm | 137mm | 20.0g |
Custom 743 | φ15.7mm | 149mm | 25.0g |
特にフォルムが似ているCustom Heritage912と比べるとかなり痩せっぽちです。
肝心の書き味ですが、フォルカンはしなり幅が大きく、筆圧のコントロール次第で線が劇的に変化します。一方エラボーは、そのダイナミックさが抑えられており、「しなるけれど書きやすい」万年筆という印象です。
また、軟調ペン先のSM(中字軟)と比べると、エラボーには明確なしなりがあり、字に表現力を加えられます。
フォルカンやソフトニブと比べると、エラボーの魅力は「柔らかさ」「表現力の幅」「扱いやすさ」のバランスにあります。
軽く筆圧を加えると線に表情が生まれますが、フォルカンほどの大きな変化ではなく、安心してコントロールできる範囲に収まっています。
インクフローも過剰ではなく安定しており、長時間の筆記でも疲れにくいのは大きな利点です。
フォルカンが「豊かな表現力を発揮する一本」だとすれば、エラボーは「日常の筆跡に静かな彩りを添える一本」と言えるでしょう。
エラボーは、手帳やノートなど、細かい字を多く書く毎日の筆記にピッタリです。
どんな人におすすめか
エラボーは、万年筆らしい「筆圧をかけない書き方」ができないと扱いづらさを感じる万年筆です。そのため、まったくの初心者よりも、ある程度万年筆に慣れた人に適しています。
ただし、金ペンの価格高騰を踏まえると、万年筆デビューをエラボーで飾るという選択肢も十分に考えられます。その場合は、まず「万年筆の正しい持ち方」を意識することから始めてください。
ソフトニブ以上にニュアンスを表現できる一方で、フォルカンほど大きなしなりはないため、ノートや手帳など日常の筆記で自然に文字に味わいを加えられるのが魅力です。
また、「フォルカン(FAニブ)が気になるけれど、自分に使いこなせるかが不安」という人にとって、適度な表現力で扱いやすいエラボーは最適な選択肢です。
万年筆の持ち方
筆圧をかけない書き方をするには、万年筆を軽く持つことが大切です。強く握るのではなく、人差し指と親指で軽く支えるのが正しい持ち方です。
万年筆の持ち方をGPT5で生成してみました。
Created by GPT5 |
- 手の力を抜いて手首を90°にする
- 中指の横腹と親指と人差し指の間に万年筆をバランスよく乗せる
- ペン先の刻印は上向きになるように
- 親指と人差し指で軽く支える
- ペン先が紙に触れるまで、手首を内側に曲げる
書道家の大江静芳氏の動画を参考に、万年筆の正しい持ち方を身につけましょう。
まとめ 〜普段使いの一本に+表現力〜
Custom 743 FAのようなダイナミックな表現力も魅力的ですが、エラボーは日常に優しく彩りを添えてくれます。今回は手帳用の万年筆として細字を選んだため、字幅の変化はさらに控えめに感じます。
まさに「普段使いの一本に+表現力」という言葉がふさわしい存在だと感じました。
ソフトニブよりも一歩深い表現を楽しみたい人、フォルカンほどのクセは要らないけれど柔らかさを求めたい人にとって、エラボーはちょうど良い答えになるでしょう。
普段使いの一本にさりげない表現力を加えてくれる ーー それがPILOT ELABO(エラボー)です。
0 件のコメント:
コメントを投稿