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Post Date:2024年12月27日 

試す楽しさ!意外と侮れない中華万年筆の世界

Hongdian N8 Rose Red Long Knife nib ebonite feeder

中華万年筆は、粗悪なコピー商品のイメージでした。しかし、Hongdian N8のロングナイフニブは、そんな先入観を覆す一品です。「粗悪な模倣品」ではなく、「手軽に試せる長刀(なぎなた)風ペン先」としての魅力を備えています。

職人による精密な手作業ではなく、工業的に作られたアーキテクトニブかもしれませんが、雰囲気は十分楽しめます。万年筆初心者が「試しに」体験するのには最適なニブです。これをきっかけに渓流ニブ小太刀ニブ、そして長刀ニブへと進むのも選択肢のひとつです。

近年、中華万年筆は全体的なクオリティが向上しているようです。それでも、安心して購入するためには、評価数やレビュー内容のチェックは欠かせません。実績あるメーカーの商品を選ぶことで、より満足度の高い一本に出会えるはずです。


中華万年筆でニブ(ペン先)を試す

中華万年筆の中で、特に注目したいペン先をいくつかご紹介します。


Architect nib(アーキテクトニブ)

スタブニブはペンポイントが横に広いので、横方向にペンを動かすと細い線、縦方向に動かすと太い線が書けます。一方、アーキテクトニブは縦に長い形状なので、横は太い線、縦は細い線となります。

Hongdianのロングナイフニブは、ペンポイントがナイフのような形をしており、日本語の「トメ」「ハネ」「ハライ」を美しく表現できる長刀研ぎと形状が似ています。


Flex nib(フレックスニブ)

Flex nib(フレックスニブ) / Flexible nib(フレキシブルニブ)は、筆圧によってペン先が開き、線幅を変えられる軟調ペン先です。ドイツのJOWOやBOCKなどがフレックスニブを製造しています。

モンツァ3は、JOWOのペン先で、オムニフレックスを含む、ファイン、ミディアムとペン先が3つ付属する万年筆セットです。

【引用】Amazon - Monteverde Monza 3

JOWOのOmniflex™(オムニフレックス)のペン先は左右がカットされて、エラのように見える独特な形状のニブです。

こちらはモンツァ3のレッドモデルです。

中華万年筆でも軟調ペン先の万年筆を探してみましたが、残念ながら見つけられませんでした。アメリカの Noodler's Ink(ヌードラーズ)の万年筆にもフレックスニブ(鉄ニブ軟調ペン先)の万年筆がありました。

ヌードラーズのフレックスニブはニブ全体にスリットがあり、インクフローが良く、筆圧に応じて細字から中程度の線まで幅広い表現が可能とあります。

Geminiでの評価を要約すると、以下の特徴があげられます。

  • 肯定的な評価:インク容量の多さ、インクフローの良さ、滑らかな書き心地、価格の手頃さ
  • 指摘された点:ペン先の硬さ、大きさや重さ、インク漏れの可能性

これらの意見から、「インクフローの良さや滑らかな書き心地は魅力的だが、ペン先の硬さが課題」という鉄ニブの限界が見えてきます。それでも、この価格帯で軟調の書き味を試せる点は注目です。

中華万年筆ではないものの、軟調ペンの世界に興味がある方にとっては、Noodler’s InkのFlex nibは、試してみる価値はありそうです。


#8 nib(Large nib)

フレキシブルニブではありませんが、ニブサイズの大きな中華万年筆も魅力的です。特に、大きなニブには以下のようなメリットがあります。

  • インクフローが良い:スムーズなインク供給で滑らかな書き味が楽しめる
  • 筆圧のコントロールがしやすい:筆圧の強弱を表現しやすい
  • 存在感がある:万年筆に重厚感と風格を与えるデザイン

例えば、Jinhao X159やDadao 9019は、8号サイズのニブを搭載しており、その存在感は圧倒的です。

ペン先の交換も可能です。EF/F/M の3本セットを購入すれば、それぞれの字幅も試せます。

JOWO #6もかなり大きなニブですが、X159 や Dadao 9019の8号ニブはそれを上回るサイズです。また、Dadao 9019 の Heart Beat Nib(心電図ニブ)は、心電図の波形のようなユニークなスリットデザインが特徴的です。

Dadao 9019の評価も高く、以下のような点が特に注目されています。

  • インクフローが良い:スムーズにインクが出て、書きやすい
  • ペン先が滑らか:引っかかりがなく、気持ちよく書ける

フレキシブルニブな軟らかさ期待できないものの、インクフローの良さや滑らかな書き心地、そして個性的なスリットデザインは大きな魅力です。


金ペン

金価格の高騰に伴い、金ペンはますます手が届きにくい存在となっています。救いを中華万年筆に求められるのでしょうか。

日本の金ペンメーカーで最も安価なモデルは、セーラー万年筆のプロフィットライト 14Kです。定価は¥13,200ですが、Amazonでは実売価格で1万円を切っています。

一方、14Kニブの中華万年筆では、Wing Sung 618 14K が、実売価格で1万円以下で購入できます。シンプルでスタイリッシュなデザインですが、字幅はF(細字)のみです。

その点、プロフィットライトは、字幅の種類も豊富で特殊ペン先もあります。安心からからもプロフィットライトを強くおすすめします。


インクの充填方式

万年筆のインク補充方法にはさまざまな種類がありますが、中でもプランジャー吸入機構式は、試してみたくなる魅力的な充填方法です。この方式は、パイロットのカスタム823に採用されていることで有名です。


プランジャー吸入機構式とは?

プランジャー吸入機構式では、万年筆の尻軸にある「プランジャー」と呼ばれる棒を押し込むことで、タンク内にインクを吸い上げます。その仕組みは以下の通りです。

  1. プランジャーをインク瓶に浸ける
  2. プランジャーを押し込む

すると、不思議なことにインクがペン内部に充填されます。この操作を実際に動画で見ると、より理解が深まるでしょう。


中華万年筆でもプランジャー方式?

penBBS 456 は「真空充填式」とも表記されていますが、インク充填方法は、プランジャー吸入機構式と同じです。動画ではワンプッシュではインクが満タンにならず、2回プッシュしています。これは以下の可能性が考えられます。

  • タンク容量が大きいため、一度では満タンにならない
  • 吸入量が少ないため、複数回の操作が必要

プランジャー吸入機構式のように内部構造が複雑になると故障する可能性が高くなります。中華万年筆は保証も修理もないので、購入時にはリスクとメリットの比較が必要です。


セルロイド万年筆の雰囲気に焦がれる

セルロイドは、19世紀に誕生した世界初の人工プラスチックです。現代のプラスチックが石油由来であるのに対し、セルロイドはニトロセルロースと樟脳を原料としています。燃えやすさや経年劣化といった理由から、現在ではほとんど使われなくなっています。それでもなお、セルロイドの持つ独特の風合いは多くの万年筆ファンを惹きつけています。


セルロイド風の中華万年筆

セルロイドの魅力を感じられる中華万年筆には、以下のようなモデルがあります。

;

いずれも、セルロイドらしい色の深みや美しさの豊かな模様の万年筆です。


セルロイド風アクリル製モデル

PenBBS Tiny Happiness(小確幸)は、プラチナ万年筆のセルロイドモデル「金魚」を彷彿とさせるデザインです。セルロイドではなくアクリル製ですが、セルロイドを思わせる美しい色合いが特徴です。


まとめ

英雄359やMajohn P136のように、既存モデルに寄せたデザインは「粗悪なコピー商品」という印象を受けるかもしれません。しかし、実際に中華万年筆を使ってみると、その意外な完成度に驚かされることも少なくありません。

英雄359
【引用】Amazon - Majohn P136

「試しに使ってみる」という気軽さで手に取れるのが、中華万年筆の大きな魅力です。また、レビューだけに頼らず、自分で発見していく楽しみもあります。「調べる」「探す」「試す」というプロセスは、好奇心を大いに刺激してくれます。

長刀風ペン先を探している途中で、偶然見つけた「Jinhao Dadao 9019 ハートビートニブ」を思わずポチってしまいました。到着が楽しみです!

Post Date:2024年12月14日 

長刀風?ロングナイフニブ:Hongdian N8 の表現力と可能性

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

長刀研ぎ(なぎなたとぎ)は、セーラー万年筆が誇る特殊ペン先です。刀剣の長刀に似た形状で、角度や筆圧によって線の太さや強弱を調整でき、日本語の「トメ」「ハネ」「ハライ」を美しく表現できます。

しかし、そんな魅力的なセーラーの長刀研ぎ(なぎなたとぎ)ですが、職人が一本一本手で研ぎ上げるため、気軽には手が出せない価格帯です。WANCHERの渓流ニブ / 小太刀ニブという選択肢もありますが、こちらも決して安価とは言えません。

そこで注目したのが、中国の万年筆メーカーが提供する「Long Knife Nib(ロングナイフニブ)/ Long Blade Nib(ロングブレードニブ)」です。「長刀ペン先」との記載もありますが、日本国内ではセーラー万年筆が文房具類で「長刀/NAGINATA」を商標登録しています。


英雄616 長刀風研ぎ

最初に見つけたのが英雄616 長刀風研ぎです。

英雄(ヒーロー)は、中国を代表する老舗万年筆メーカーです。1931年に創業し、長い歴史の中で、高品質で手頃な価格の万年筆を数多く生み出しています。また、1980年代にはパーカーと提携し、中国国内でパーカー万年筆の製造を請け負っていたこともあり、その技術力は広く認められています。

その影響もあってか、英雄616はパーカー51を彷彿させるデザインで、シンプルながらも洗練されたフォルムが特徴です。

商品の説明には、ペンポイントをイリジウムに交換して長刀風に研いでいるとあります。

定評ある中国のフーデットニブタイプ万年筆 英雄616を細い長刀風に。中国の工房店主が、一点一点手作業で研ぎ直しました。オリジナルから長刀風の研ぎ出し用にさらにペン先イリジウムがリチップ(交換)されています。

【引用】Amazon - 【稀少品】長刀風 漢字向け研ぎ出し 英雄616

ペン先はとても美しく研がれており、字幅はEF:極細字、F:細字、M:中字から選べます。

英雄616 長刀風研ぎ

しかし、ベースとなっている英雄616は非常に安価な万年筆であるため、万年筆としての基本性能、耐久性や品質に不安が残ります。「英雄616 長刀風研ぎ」のAmazonでの評価も割れています。さらにインクの充填方式がスポイト式コンバーターという点も悩ましいところです。カートリッジも使えません。


Hongdian(ホンディアン)イリジウム ロングブレード ニブ

Hongdian は、中国の万年筆メーカーで、Amazonで手頃な価格で高品質なモデルを多く展開しています。特に「Hongdian Black Forest(黒き森)」は、2万件以上のレビューを誇り、平均★4.5という高評価を得ています。

そして、Hongdianには、特殊な形状を持つ長刀風ペン先(ロングナイフ、ロングブレード ニブ)があります。また一部モデルには、安価な万年筆では珍しいイリジウム製ペンポイントやエボナイトフィードが採用されており、スムーズなインクの供給と書き味の向上が期待されます。

Hongdain N23 Hongdian N6

下表は、Amazonで見つけたHongdianの長刀風ペン先の万年筆の一覧です。

型番 カラー ニブ イリジウム エボナイト
フィード
コンバータ 字幅 mm
Hongdian N23 ブラック, ブルー ロングナイフ ⚪︎ ⚪︎ 0.5 - 1.0
Hongdian N8 レッド ロングナイフ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ 0.5 - 1.0
Hongdian N8 スノーホワイト ロングナイフ ⚪︎ ⚪︎ 0.5 - 1.0
Hongdian A3 ブラック ロングブレード ⚪︎ ⚪︎ F: 0.7
Hongdian N6 ブラック ロングブレード ⚪︎ F: 0.7
Hongdian Black Forest ブラック ロングナイフ ⚪︎ 0.5 - 1.0

初めての中華万年筆ということもあって不安もありますが、以下の点から『Hongdian N8 ローズレッド』を選びました。

  • エボナイトフィードの魅力

    スムーズなインクフローへの期待も大きいですが、WANCHERの万年筆を購入したときに、渓流ニブではペン芯がエボナイトが選択できず、初のエボナイトフィードになるというのもポイントです

  • インク充填方式

    インク交換のしやすさを考えるとスポイト式ではなくコンバーター式です
    簡単なインク交換方法については「象と散歩: 万年筆のインク補充術:手を汚さず、コスパよく」を参考

  • 価格と性能のアンバランス

    特殊ニブの長刀風ペン先で且つペン先の素材がイリジウム、そしてエボナイトフィードの万年筆が5,000円以下というのは破壊的な価格です

デザインは二の次で、実用性を重視して選びました。


Hongdian N8 ローズレッド ロングナイフ ニブ

Hongdianのロングナイフ ニブは、非常に独特な形状が特徴です。ペンポイントは大きめで、風格があります。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

WANCHERの渓流ニブと比べると、ペンポイントは若干小ぶりですが、それでも一般的な万年筆と比べれば十分に大きなサイズです。このサイズ感がもたらす柔らかな書き心地は、実際に試してみると驚きがあります。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

ニブには寺院?のような刻印が施されており、エキゾチックなデザインが魅力を引き立てています。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

こちらがエボナイトフィードです。見た目からではエボナイトなのかプラスチックなのかはわかりません、、。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

アクリルの透明感のあるマーブル模様はキレイです。キャップのカエデも悪くはありません。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

付属のコンバーターです。EU規格もよりも口が大きく内径3.4mmとあります。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

なお、コンバーターは別売りもされており、カートリッジも利用可能です。さらに、キャップはスクリュー式で高い密閉性を実現しており、インクの乾燥を防いでくれます。そのため、しばらく使用しなくても問題なく筆記を再開できます。


Hongdian イリジウム ロングナイフ ニブの書き味

結果から先に言えば「期待以上の書き味」です。滑らかなインクフローと、ペン先の個性的な形状により、線に息吹を与え表現力が生まれます。

渓流ニブの滑らかな書き味には驚愕でしたが、Hongdianのイリジウム ロングナイフ ニブは、渓流ニブに及ばないものの、この価格でこの書き味には驚きました。

写真でも比較した通り、ペンポイントの大きさは渓流ニブほどではありません。しかし、この控えめなサイズが、普段使いの万年筆としての適度なダイナミックさを生み出しています。それでも、一般的なペン先と比べれば非常に表現力が豊かで、手書き文字に個性的な味わいを与えることができます。

Hongdian N8 Long Knife Nib wtih Ebonite Feed

字幅は0.5mmから1mmとありますが、中字から太字程度の印象です。以下にイリジウム ロングナイフ ニブの特徴をまとめます。

  • 線の太さをコントロール可能

    ペンの角度を調整するだけで、線幅を変化させることができます

  • 日本語との相性がよい

    横線が太く縦線が細い特性が、日本語のとめ、はね、はらいを美しく表現します

  • 滑らかな書き味

    インクフローが安定していて、ストレスなく筆記できます

  • 柔軟性はない

    鉄ニブ(スチール製)のため、柔らかさやしなりはありません

セーラーの長刀ニブ、ワンチャーの渓流ニブなどと同等の書き味は期待できませんが、特殊ニブとして非常に高い完成度を誇り、価格以上の価値を感じることができます。


まとめ

中華万年筆のHongdian N8 ローズレッド ロングナイフ ニブは、特殊ニブを搭載しながら5,000円以下という圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。イリジウムペンポイントやエボナイトフィードといったスペックには驚きますが、滑らかな書き味を実際に体感すると、この価格帯では考えられない満足感があります。

長刀ニブ、渓流ニブ、小太刀ニブといった日本語に特化した特殊ニブに興味はあるけど手が出せないけど、雰囲気を味わいたいという方にはオススメです。

中国からの発送なので注文してから8日後に届きました。追跡ができるので気長に待ちましょう。

Post Date:2024年11月24日 

WANCHERの渓流ニブが描く新たな万年筆の世界

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

軟調ペンからセーラー万年筆の日本語のためのペン先である長刀研ぎ(なぎなたとぎ)に興味を持ちました。しかし、今日日あまりにも高価で手が出ません。そんなときに出会ったのが、WANCHERの渓流ニブです。

渓流ニブは、日本の伝統と革新を融合した万年筆ブランドWANCHER(ワンチャー)のオリジナルペン先で、最終的な仕上げはペン先職人である長原幸夫氏によって行われています。長原氏はセーラーで長刀研ぎを復活させた故長原宣義氏のご子息で、同じく元セーラーの万年筆職人であり、現在はThe Nib Shaperとして活躍されています。

渓流ニブは、スチールニブなので軟らかいペン先ではありませんが、渓流のような柔らかな流れを筆跡に宿し、その独自の書き味は、日本語の美しさと表現力を際立たせてくれます。

渓流ニブを購入すると下記のカードが同梱されています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

渓流ニブとは?その独自性と特徴

多くの万年筆では、ペンポイントは半球形に仕上げられており、どの方向からも均一な線を引けるようにデザインされています。この形状は滑らかな書き心地を提供する一方で、線の強弱や表現力には限界があります。

一方、セーラー万年筆の長刀研ぎ(なぎなたとぎ)は、ペンポイントが長刀のように斜めに研ぎ上げられており、筆圧やペン先の角度によって線幅を大きく変化させる特徴があります。縦線を太く、横線を細く書くなど、日本語特有の書字美を追求した設計が施されています。

長刀研ぎ
【引用】Amazon - セーラー万年筆 長刀研ぎ

渓流ニブは、一般的な万年筆のペンポイントと長刀研ぎの中間的な形状です。ペンポイントはとても大きく、ペン先の先端は長刀研ぎほど鋭利ではありませんが、一般的なペンポイントよりも細長く研ぎ上げられています。また、ペンポイント全体がわずかに湾曲しており、この微妙なカーブが線の滑らかな流れを生み出す要因となっています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

裏から見ると刀というよりは山のようにもっこりとしています。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

この形状により、渓流ニブはスチールニブでありながら、ペン先の角度や筆圧によって線の太さに抑揚をつけることができます。特に、漢字の「ハライ」「トメ」「ハネ」といった線の強弱が美しく表現され、文字に動きと立体感をもたらします。

長刀研ぎは使ったことがないのでわかりませんが、渓流ニブはスチール製のため金ニブほどの柔軟性はありませんが、職人の丹念な調整により、硬いスチールでも適度な柔軟性を持たせて「静かで滑らかな変化」を実現しています。

Wancher公式YouTubeの「Keiryu Nib Review:渓流ニブのレビュー」では、セーラー万年筆の長刀研ぎとWancherの渓流ニブのペンポイントの形状の違いが紹介されています。また渓流ニブでどんな字が書けるのかがイメージできます。


渓流ニブの書き味

渓流ニブの書き味は、軟調ペンのように筆圧によるダイナミックな線の変化とは異なり、より穏やかで優しい変化が特徴です。ペン先の角度や筆圧に応じて、繊細な線の強弱を表現することができます。

WANCHERの渓流ニブのページには「水面をすべるアメンボのように」スーと線が引けるとありますが、潤沢なインクフローと職人よって研ぎ澄まされたペン先で、紙の上を滑るように静かでスムーズな書き心地を実現しています。

字幅は太字程度で、小さな文字を書くよりも、中字からやや大きめの文字を書く際にその特性が最大限に発揮されます。漢字の「ハライ」や「トメ」など、筆致の美しさを求める文字に特に適しています。

渓流ニブの書き味についての動画もあります。


WANCHERの万年筆を選ぶ

渓流ニブを手に入れるには、以下の2つの方法があります。

  • WANCHERの万年筆に渓流ニブをカスタマイズ
    WANCHERの15,000円以上の万年筆(一部対象外)を購入し、追加料金7,700円(税込)で渓流ニブを選択できます。
  • 交換用ニブとして購入
    楽天やAmazonのWANCHER公式ストアで、交換用渓流ニブを9,350円(税込)で購入できます。 JOWO #6ニブの「世界樹 / カレイド」と交換できるので、価格を抑えて渓流ニブ万年筆が手に入ります。

峰万年筆もニブを外すことができます。

WANCHER - KEIRYU / 渓流ニブ

「世界樹万年筆 黒檀(エボニー)」に交換用ニブとして渓流ニブを購入することを検討していました。しかし、エボナイト素材に強く惹かれ、最終的には「ドリームペン/夢万年筆 -峰- 誠エボナイト」のマーブルパープルグレーを選びました。

完全に予算オーバーです、、。


エボナイトとは

エボナイトは、天然ゴムに硫黄を加えて加熱することで得られる、硬くて光沢のある素材です。かつては万年筆の軸材として広く使用されていました。しかし、より簡単に扱える樹脂素材が主流となる一方で、エボナイト特有の美しい光沢や温かみのある感触は多くの万年筆愛好家を惹きつけています。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

峰万年筆・マーブルパープルグレー

エボナイト軸の「誠エボナイト」はバランス型のデザインですが、峰万年筆は両端が平らなベスト型です。キャップ上部の突起(これが「峰」?)は、このモデルだけの特徴的なデザインです。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

峰万年筆のコンセプトは下記のようにあります。

この万年筆は成功への旅を意味し、一歩一歩高みへと続いていくイメージを元にデザインされています。キャップ上部の突起は私たちが目指す成功の頂を示しているのです。 「峰」という字は一般的に山の一番高いところを意味しますが、転じて技術や栄誉といった様々なもので頂点を極めたことへの比喩としても使われます。

人生の中において、世界の見方を変えるような地点に到達したいという願いをこめて、元々フラットだったキャップ上部を変更して今のデザインになりました。

【引用】峰万年筆 | Wancherpen Japan

峰万年筆は、マーブルパープルグレーマーブルグリーンの2色があります。前者は落ち着いた知性を感じさせる色合い、後者は自然の調和と生命力を思わせる鮮やかなグリーンが特徴です。

桐の箱に収められ、かなり仰々しい梱包なので開封の儀が恥ずかしい、、。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

コンバーターも付属しています。

WANCHER 峰万年筆 - 渓流ニブ

まとめ

WANCHERの渓流ニブは、日本の万年筆文化の伝統と革新が見事に融合した一品です。セーラーの長刀研ぎにインスパイアされつつも独自の形状を持ち、スチールニブでありながら日本語特有の線の抑揚を表現できる優れたパフォーマンスを提供します。職人の手による丹念な仕上げが、ペン先の滑らかな書き心地を実現し、使い手の筆跡に柔らかく美しい流れを生み出します。

また、渓流ニブのペン先を更にシャープに研いだ小太刀(こだち研ぎ)というオプションもあります。小太刀には細字、中字、太字の3種類があります。渓流ニブでは小さな字をかけませんので、ノートなどで使うのであれば、細字や中字が力を発揮します。

渓流ニブはWANCHERのブランド哲学を体現する特別なペン先です。このペン先は手書きの世界を広げてくれます。WANCHERの万年筆を手に取り、ペン先が生む新たな書き心地をぜひ体感してみてください。

スチールペンも侮れません。小太刀研ぎにも興味津々です、、。

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