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2009年7月24日

統計でウソをつく法

先日参加したCRM系の会合で、「顧客満足度は売上には寄与しない」という話がありました。

例であげられていたのは、

「1980年代GMは、品質向上を図り、顧客満足度を90%まで向上させたが、継続してGM車を購入したのは40%にすぎなかった。」

と、いう内容です。

5割の人は満足しているといっているのに継続購入しなかったといわれると、確かに顧客満足度と継続購入には関連がないように聞こえます。しかし、上記の例から顧客満足度は売上に寄与しないと本当に言えるのでしょうか。例えば、下記のような前提条件がある場合はどうなるのでしょうか。(数値は適当です。)

1)米国人は車を買い換えるときに65%が別メーカーの車種を選択をする。
2)GM、フォード、クライスラーのシェアはそれぞれ30%。

1)や2)のような場合であれば、40%が継続購入したという結果は顧客満足度が起因して向上されたと判断できるかもしれません。また「非常に満足」という回答者でみれば継続購入率がもっと高くなっているかもしれません。

このように断片的な数値から判断することは非常に危険ですし、逆にいえば数値を理由にウソをつくこともできます。

平均のまやかし

厚生労働省の平成19年国民生活基礎調査では、平成18年の平均所得は566万8千円となっています。この数値だけをみて、平均値以下だと悲観する必要はあるでしょうか。

嘆く前に所得の分布を考察しましょう。平均収入については、公的機関からの発表資料なので分布についても掲載されています。これを見ると実は平均年収よりも低い世帯は61.2%です。所得の格差が広がっているという別の問題はありますが、6割の世帯が平均所得額以下である平均値は、何を意味する数値なのでしょうか。(※所得に関しては、他にも年代や居住地によっても異なります。)

所得金額階級別世帯数の相対度数分布(H19 国民生活基礎調査から引用)














古典的名著

統計でウソをつく法」は、そんな統計的まやかしについて書かれた本です。原作の初版は、1954年で日本では1968年に発刊されている超ロングセラーの名著です。掲載されている例題は、時代を感じさせますが、逆にそれもまた面白く感じます。

例えば、

『米国大統領選挙をある雑誌の購読者と電話調査でランドン圧勝と予測。しかし結果はルーズベルトの圧勝であった。』

これは、現在でも社会調査などで多く利用されるRDD(Random Digit Dialing)のサンプリング方式の問題点として記載されていますが、現在とは問題点が異なっています。当時は電話普及率が低く、保有者は富裕層でした。そして共和党支持者には富裕層が多かったということが調査ミスに繋がったとあります。

現在の日本では、携帯電話の普及によって固定電話の普及率が低下していますので、当時とは別な理由でRDDの問題点が指摘されています。

興味のある方は一読を。

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