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Post Date:2025年7月28日 

フォルカンで書く、ゆっくりの美学

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

PILOTのCustom Heritage 912 SM を手にして、「万年筆の書き方」を初めて意識するようになり、「書くことの楽しさ」にも惹かれていきました。

そこから、「もっと美しく書きたい」という気持ちが芽生え、行書の練習を始めることに。

軟調ペンで紙の上をなぞるように書く、そのなめらかな筆致は、行書にぴったりだと感じていました。

ところが、WANCHERの小太刀ニブに出会って、字幅の変化の面白さと表現の奥深さにハッとさせられたのです。

小太刀のしなやかな書き味を楽しんでいるときに、ふと頭をよぎったのが――「そういえば、PILOTのFA(ファルカン)って、どうなんだろう?」


フォルカン(FA)ニブとは?筆のようにしなる特殊ペン先

「フォルカン(FA)」は、パイロットが開発した特殊ペン先のひとつです。筆のようなしなりと、線に強弱をつけられる表現力で、多くの書き手に支持されています。

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

フォルカンニブの語源と形状

「Falcon(ファルコン)」とは、英語で「ハヤブサ」を意味します。その名の通り、ペン先はハヤブサのくちばしのように細く長く湾曲した独特の形状をしています。

Custom 743 FA と Heritage 912 SMのペン先を比較する

この形により、スリット(ペン先の割れ目)が通常より深く、しなりやすく設計されているのが特徴です。筆圧をかけるとペン先が左右に開き、インクの出方が変化して線が太くなり、筆圧を抜けば細くなる ― そんな筆のような書き味を万年筆で実現しているのが、フォルカンニブです。


FAニブと軟調ペン先の違い

パイロットの SM(Soft Medium)や SF(Soft Fine)など、“S”のついたペン先は「軟調ペン先」と呼ばれています。

これらは、しなやかさとクッション性が特徴で、長時間の筆記でも手が疲れにくく、万年筆初心者にも扱いやすい設計です。

一方で FA(フォルカン)ニブは、筆圧をかけるとスリットが左右に大きく開き、字幅に明確な変化が生まれるように作られています。

筆圧でスリットが広がり太い筆致となるフォルカン

そのしなりを活かして、線に“表情”をつけることができる、表現重視のペン先なのです。

下表は、フォルカン(FA)と軟調ペン先(SM,SFM,SF)の違いです。

項目FA(フォルカン)ニブ軟調ペン先(SM, SFM,SF)
線の強弱表現◎ 筆圧で細〜太まで大きく変化する△ 緩やかに変化するが基本は一定
しなり◎ よくしなる。スリットが大きく開く◯ やわらかく沈み込む感覚。スリットの開きは小さい
書き味表現力が高く繊細。筆のような筆致表現が可能なめらかでクッションのある書き心地。長時間筆記に向く
扱いやすさ△ 慣れが必要。筆圧やスピードのコントロールに注意◎ 万年筆初心者でも扱いやすい

フォルカンニブには、筆圧によって細〜中〜太の線を描き分けることができます。


フォルカンニブを搭載した主なモデル

フォルカン(FA)ニブを搭載できるパイロットの日本国内向けモデルは、以下の3つです:

  • Custom(カスタム) 743 FA(14K・15号ニブ)
  • Custom(カスタム) 742 FA(14K・10号ニブ)
  • Custom Heritage(カスタム ヘリテイジ) 912 FA(14K・10号ニブ)

※「14K」とは、金の含有量を表す記号です。Kは Karat(カラット) の略で、金の純度を示す単位です。24Kを純金(100%)とし、14Kは24分の14、すなわち約58.3%の純金を含んでいることを意味します。

モデル名ペン先
サイズ
FAニブ
対応
備考
Custom 74315号✅ありパイロット唯一の15号 FAニブ搭載モデル。しなりが強く、線の強弱を出しやすい
Custom 74210号✅あり743よりやわらかさは控えめ、適度なしなりと安定した筆記バランス。
Custom Heritage 91210号✅あり742と同じく10号FAニブ、742よりもコンパクトで軽量・細身

Custom 742とCustom 912は同じ10号FAニブですが、デザインが大きく異なり、書き味やバランスに微妙な違いがあります。以下はその比較表です。

項目Custom 742 FACustom Heritage 912 FA
ペン先10号 FA(共通)10号 FA(共通)
軸の形状バランス型ベスト型
最大軸径約14.5mm約13.5mm
全長(キャップ付き)約146mm(やや長め)約137mm
重量(インクなし)約24g(やや重め)約19g
筆記バランスやや重めで後ろ寄り(胴軸側に重さあり)やや軽く、前重心(指先に近い)
装飾トラディショナルな金モダンでシンプルな銀
コンバーターCON-70(共通)CON-70(共通)

行書を練習するのに最適なFAニブを持つ万年筆は?

PILOT Custom 743 FA (ファルカン)

今回、FAニブの万年筆を購入する目的は「行書を練習すること」。その観点で、3モデルを「行書適性」で比較してみました。

モデル名適性理由・特徴
Custom 743 FA最適15号FAニブは筆のようにしなり、線の強弱が自在。はね・はらいが自然に出せる。漢字の表現に最も適している。
Custom 742 FA高適性10号FAニブ。適度な重量感と安定した筆記バランスで、とめ・はね・はらいが決まりやすく、行書に非常に向いている。
Custom Heritage 912 FA良い同じ10号FAニブ。軽快で扱いやすく、日常筆記としての行書にも適している。やや速書き向き。

当初は Custom 742 FA にしようかと思っていましたが、「ペン先が大きい方が軟らかい」というこれまでの経験と、PILOTの15号ニブの期待から、最終的に Custom 743 FA をポチり。


価格改定について

2024年10月1日より、パイロットの価格改定で、

  • Custom 742 / Custom Heritage 912:26,400円 → 33,000円
  • Custom 743:39,600円 → 44,000円

と、かなりの値上げ幅ですが、ECでは割引価格で購入可能です。

また、パイロットのCustomシリーズは量産型で品質も安定しているため、信頼できるショップであればネットでの購入でも安心です。


Custom 743 FAを使ってみて

Custom 743 FAのペン先は、軟らかすぎず、ちょうどいいしなり具合です。少し筆圧をかけることで字幅に大きく変化を出せます。

字幅の変化が楽しめる14K 15号フォルカン

体感としては、ペン先の軟らかさは以下の順で感じられます:
Custom Heritage 912 SM < Custom 743 FA < Platinum #3776 SF(細軟)

いちばん軟らかい #3776 SFは、少しの筆圧で大きくしなりますが、字幅は大きく変化しません。

一方、742 FAは、筆圧をほんの少しかけるだけでペン先がぐっと開き、線がふわりと太くなる。力を抜けば、スッと線が細く戻る。この「入りと抜きの動き」が心地よい筆致です。

反対に、強い筆圧で書く方には不向きかもしれません。軽やかなタッチでリズムよく書くときに、その魅力が際立ちます。


普段使いは軟調ペン、表現したいときはFA

PILOTの軟調ニブ(SMやSFM)は、どちらかというと日常的な筆記やメモに向いています。少し速く書くような場面でも、ペン先がスムーズに追従してくれるのが魅力です。

そうした特性から、Custom Heritage 912 は、ジャーナリングなど日々の記録に最適な一本といえるでしょう。

それに対して、フォルカンニブは「丁寧に書こう」という気持ちにさせてくれます。書くスピードは少し落ちるけれど、その分、書くことの楽しさや奥深さを感じられる。そんなペン先です。そして字の表現力を高めてくれるのでまさに行書の練習にピッタリな万年筆です。


行書に適した万年筆とは

最後に、自分が所有している万年筆の中から、行書に適していると感じたモデルを比較してみました。

モデル名線の表情しなり感書き味の特徴行書への適性
Pilot Custom 743 FA◎(筆のようにしなる)筆圧で線が変化、とめ・はね・はらいもダイナミックに表現できる最適
WANCHER 小太刀ニブ✕(しなりはない)筆圧とペン先の角度で、線の変化を自在に表現高適性
Custom Heritage 912 FA◯(自然なやわらかさ)軽く扱いやすく、筆圧で少し線に変化が出せる良い
WANCHER 渓流ニブ✕(しなりはない)やや太めの字幅で、滑らかに線の強弱が出せる良い
Platinum #3776 SF◎(ふわりとした柔らかさ)クッション感のある柔らかさ。一部向く

行書に適した万年筆を選ぶとき、ポイントになるのは「線の変化のつけやすさ」だと感じています。

Custom 743 FAのように、しなりによって筆圧をそのまま線に反映できるモデルは、まさに筆のような感覚で書くことができます。一方、小太刀ニブのようにしなりがなくても、筆圧や角度によってダイナミックな線が引けるタイプも魅力的です。

何にしても「筆圧をかけずに書く」という、万年筆本来の書き方がベースになります。

まずは少し細めの軟調ペンで、軟らかいペン先の感覚に慣れるところから始めるのが良いのではないでしょうか。


やっぱり一本差しのケースを

新しく迎えたCustom 743 FAにも、以前こちらで紹介したFREESEの一本差し万年筆ケースを購入しました。

革の品質には多少のばらつきがありますが、1,000円とは思えないクオリティです。裏地には肌触りのよい柔らかなスエードが使われていて、しっかりと万年筆を守ってくれます。作りはシンプルですが、見た目も悪くありません。

ディープグリーン(プロギア)、ブラウン(#3776)、ブルー(Heritage 912)、レッド(Custom67)と使ってきたので、今回はブラックを選びました。


次はエラボー、、、?

PILOTのソフトニブ、そしてフォルカンと試してきたので、「自然な書き味でファンも多い」と言われる ELABO(エラボー)も、次はぜひ使ってみたいところです。

ソフトニブでは中字を選んだので、エラボーを買うなら細字?金属軸より樹脂の方が軽くてよい?

嗚呼、物欲の神が騒いでいます……。

Post Date:2025年7月26日 

香る涼 - お香で夏の暑さを凌ぐ

部屋の中でも暑さが肌にまとわりつく夏の午後。エアコンの冷風とは違う、やさしく、心をほどくような“涼”を求めて――。

そんなとき、扇風機の微風に乗って、ふと香るお香の煙が、心にも身体にもそっと涼しさを届けてくれます。

王道の白檀(びゃくだん)、そして涼を愉しめる杉、檜、竹、茶香。日本の香りの文化には、暑さをしのぐための知恵と美しさが詰まっています。

香りで涼を感じ、日本らしさあふれる“夏の過ごし方”で酷暑を少しでも和らげましょう。


なぜ香りで「涼」を感じるのか?

杉、檜、竹、茶の香りが「涼しさ」を感じさせてくれるのには、科学的な理由があります。

香りは鼻から嗅神経を通じて、脳の「大脳辺縁系」という、感情や記憶に深く関わる領域にダイレクトに届きます。

これにより、木の香りを嗅いだ瞬間に、凛とした森の空気や、風が通り抜けるときの葉擦れ(はずれ)の音が思い浮かび、そうしたイメージが、実際の温度以上に「涼しさ」を感じさせてくれるのです。

さらに、杉や檜に含まれるテルペン類(α-ピネン、ボルネオールなど)は、冷感そのものは生みませんが、気分を落ち着かせ、呼吸を深めることで、内側から涼しさを引き出す働きがあります。

リラックス状態になると呼吸がゆっくりになり、体温の上昇も穏やかになるため、体温の上昇も穏やかになるため、結果として、涼しく感じやすい心と身体の状態が整うのです。

また、竹の香りに含まれるとされる「バンブーラクトン」という香り成分は、淡く青みがかったみずみずしさで、まるで風が抜ける竹林の笹鳴りのような清涼感を届けます。

ほんのりと香るこの成分が、暑さを忘れさせる“涼の余韻”を演出してくれるのです。

そして最後に、緑茶の香りについて。
緑茶には、青葉のようなヘキサナールや、リラックスを促すリナロールといった成分が含まれています。

これらの香りが心を静め、まるで冷たい緑茶を味わうような、内側からの涼しさをもたらしてくれます。

香りは、気温そのものを下げるわけではありませんが、感覚をやさしく調整する、もうひとつの「涼」のかたちなのかもしれません。

まとめ:香りが生む“涼しさ”のかたち

素材香りの特徴主な成分涼のタイプ涼を感じる理由
森林浴のような清潔な香りα-ピネン、フィトンチッド心理的涼感森を連想し、自律神経を整える
甘く神聖な木の香りα-ピネン、ボルネオール内面的涼感呼吸が整い、深い静けさが生まれる
青竹のように淡く軽い香りバンブーラクトン(通称)感覚的涼感風や竹林の情景が連想される
緑茶青葉+うまみ系のやさしい香りヘキサナール、リナロール、テアニン心身の涼香りと冷茶の記憶でリラックス

涼を感じるおすすめのお香5選

「香りで涼を感じる」——そんな感覚を、前述した杉・檜・竹・茶という4つの“涼香”を手軽に日常で楽しめるお香の紹介です。


杉:水車杉線香 無添加 線香(杉の葉100%/日本製)

「水車杉線香」は、筑波山のふもと茨城県八郷にある駒村清明堂を代表するお香です。

100年続く昔ながらの製法で、水車の力を使って粉砕した杉の葉だけを原料とした無添加線香。化学香料・着色料・防腐剤は一切使われていません。

着色料を使用していないため、見た目は乾燥した杉の葉そのままの自然な茶色

香りは、まるで森の中に立っているような清々しさと、ほのかな青みを含んだウッディな香調です。

杉の葉本来の素朴で澄んだ香りが、静かに心と空間に涼を届けてくれます。

お香はロングタイプで、長さは約13-14cm。

2箱(1箱あたり5束)で365本入りとされており、1束あたりおよそ36本程度と見られます。

燃焼時間は明記されていませんが、一般的な線香サイズとして約20〜30分ほどと考えられます。

煙は控えめで、自然素材ならではのやさしい香りが部屋に静かに広がります

  • 香りの印象:杉林に足を踏み入れたような、乾いたウッディさと素朴な清涼感
  • おすすめシーン:自然な涼を感じたい夏の朝や昼下がりに

檜:香彩堂「和木 檜(わぼく ひのき)」

「和木 檜」は、日本の木々の香りをテーマにした、香彩堂の和木シリーズのひとつです。

このシリーズには、檜(ひのき)、欅(けやき)、楠(くすのき)があり、 いずれも森の中の陽だまりに佇むような、落ち着きと調和をもたらす香りが特徴です。

檜の香りは、檜と白檀を主な香原料とし、
清涼感とやわらかな甘みが調和した、繊細で心安らぐ木の香りに仕上がっています。

煙は控えめで、洋室にもなじみやすく、香りの余韻も軽やか。
まるで静かな森に身を置いているかのような、穏やかな時間が広がります。

日常の中で、心を整えたい朝のひとときや、湿気の多い日の気分転換にもぴったりです。

ロングスティックタイプで25本入り、燃焼時間は約20〜25分。 手軽に焚けて、香りとともに静けさを暮らしに取り入れられます。

  • 香りの印象:凛とした檜に、白檀のぬくもりを添えた、清らかな木の香り
  • おすすめシーン:朝のスタート、集中したい時、静けさを取り戻したい夕暮れ時に

竹:京都香彩堂「百楽香 竹」「竹香」

京都の老舗・香彩堂には「百楽香の竹」と「竹香(ちっこう)」がありますが、原材料は竹ではありません。また2つは香りに、青竹と熟竹のような違いがあります。

「百楽香」シリーズの"竹"は、厳選された天然白檀と原料を調合した、“竹”はその名のとおり、青竹のようなみずみずしさと爽やかさを感じる香りです。

ロングタイプのお香で40本入りです。燃焼時間は、約20-30分(1本あたり)です。

  • 香りの印象:淡く青みがかった、風が通り抜ける竹林を思わせる香調。
  • おすすめシーン:蒸し暑い日の午後や、空気をリセットしたい時の一服に。

一方、竹香(ちっこう)は、スズラン、シクラメン、ベルガモット等が調合されて、わずかに甘く、影のある涼しさを感じます。静かな竹林の奥にたたずむような、落ち着きと余韻のある香りです。

こちらはショートタイプのお香で30本入りで、桐の箱に入っています。燃焼時間 約15-17分(1本あたり)です。

  • 香りの印象:静かな竹林の奥にたたずむような、落ち着きと余韻のある香り。
  • おすすめシーン:読書や瞑想など、心を内側に向ける時間にぴったりの香りです。

緑茶:香彩堂「百楽香 緑茶」

「百楽香 緑茶」は、京都の香老舗・香彩堂による“百の楽しみ”をテーマにしたシリーズのひとつ。

日々の暮らしにやさしく寄り添う香りとして、シンプルで洗練された香調と紙と桐箱のパッケージが特徴的です。

緑茶の香りをテーマにしたお香は意外と少なく、原料に茶葉そのものを使った製品はさらに珍しい存在です。

以前、JAいるま農産物直売所で購入した「狭山茶 茶香」には、いるま野産の狭山茶をお線香に練り込んであり、甘いお茶の香りがしますが、残念ながらネットでは購入ができません。

「百楽香 緑茶」も原材料には「厳選された天然白檀と原料を調合」としか記載はなく、茶葉の使用は明記されていません。

「香ばしい緑茶の香り」とありますが、ほんのりと甘さと瑞々しい清涼感があります。

ロングタイプの13.5cmのお香で20本入り、燃焼時間は約20-30分。煙は少なめで、和洋どちらの空間にもなじみ、香りの余韻も軽やかで心地よいです。

価格が少々高めなのが玉に瑕ですが、特別な夏のひとときにそっと寄り添ってくれるお香です。専用の香立ても付属しています。

  • 香りの印象:若葉の青みと、爽やかな甘みが混じった清々しい香り
  • おすすめシーン:蒸し暑い日の午後や、仕事の合間のリフレッシュ

香りを愉しむ工夫とおすすめの香立て

お香を涼やかに愉しむためには、道具へのこだわりも大切です。

  • 機能性
  • デザイン性

このふたつがバランスよく両立しているものを選びたいところです。

なかでもおすすめなのが、灰が散らばりにくい横置きタイプの香立てです。

お香の灰はとても軽く、立てて焚いた場合は、高さの分だけ空気の流れに影響されやすくなるので、灰が受け皿の外に飛び出してしまい、掃除が大変です

横置きタイプなら、お香の下に受け皿が沿うように配置されるため、灰をしっかりとキャッチできます。後片付けも簡単なので、日常使いにとても便利です。

また、横置きにすると、煙が水平方向にゆるやかに広がり扇風機の弱風にもふわりと乗って、自然なかたちで空間に香りが溶け込みます

デザインは好みによる部分もありますが、毎回片付けるのが面倒なので、焚いた後にそのまま蓋をして置いておけるようなオブジェ的な香立ては、とても便利です。

普段、部屋に置いて使っているお香立ては、本来は縦置きタイプで、フタ付きのお香入れとして販売されていたものですが、お香を斜めに挿して焚き、お香入れの部分を灰受けとして活用しています。

一方、玄関に置いているお香立ては、斜めにお香を焚くタイプのもの。来客時の香りの演出になるだけでなく、消臭効果もあって重宝しています。

ちなみに購入した時期はかなり離れていたのですが、どちらも偶然「鋳心ノ工房(ちゅうしんこうぼう)」のお香立てでした。

あとから気がついて、自分のセンスにブレがないことに思わず笑ってしまいました。


完全横置きタイプも

ステンレス製の網などの上にお香を横に寝かせてセットする“完全横置きタイプ”の香立てなら、灰が横に落ちる心配もなく、安全性にも優れています。

また、お香を最後まで使い切ることができ経済的です。

蓋つきの構造なら、部屋に出して置いても安心。扱いやすさと安全性を兼ね備えた、日常使いにぴったりのお香立てです。


サンメニー「寝かせる 線香皿」(有田焼)

日本製の有田焼に、ステンレス製の焼網がセットされたシンプルで機能的なデザイン。

お香をそのまま横に寝かせるだけで、灰がきれいに受け皿に落ちる構造になっています。

有田焼ならではの上品な質感と色合いは、和室にも洋室にもよくなじみ、食卓や書斎にも違和感なく置けるのが魅力です。

サイズは大小2種類あり、大サイズがロングタイプ(13-14cm)のお香用です。


CEREMONY「お香立て 横置き」(インセントボックス)

「CEREMONY」は、現代的でシンプルな美しさと実用性を兼ね備えた横置きタイプのお香立て

見た目はまるで小さな木箱のような佇まいで、焚かないときでも空間になじむ、インテリア性の高いデザインです。

構造は、香立て部分をすっきりと収納できるインセンスボックスタイプ

お香は横向きに寝かせて焚くスタイルで、

  • ステンレスメッシュの網の上に横向きに置くタイプ
  • 横向き専用の小さなスタンド(ホルダー)で支えるタイプ

の2種類から選べます。

蓋は意匠性を重視した陶磁器製、本体(ベース)は耐熱性に優れたセラミック製です。

蓋つきなので、焚き終えたあとにすぐ片付ける必要がなく、そのまま部屋に置いておける佇まいの美しさが魅力です。お香を使わないときも、静かな存在感を放つオブジェとして楽しめます


おわりに:香りで“涼”を感じる夏のひととき

エアコンでは得られない、心と身体にやさしい涼

それを運んでくれるのが、昔から日本で親しまれてきたお香の香りです。

自然の香りとともに静かに涼を味わう時間は、忙しい日々の中で、ほんの少しだけ自分を取り戻すきっかけになるかもしれません。

エアコンでは得られない、心と身体にやさしい涼

それを運んでくれるのが、昔から日本で親しまれてきたお香の香りです。

Post Date:2025年6月29日 

ノート以上、ノート未満。紙を“考える道具”に変える Paper Jacket FLEX

Paper Jacket FLEX と仲間たち

パソコンやスマホで何でも記録できる時代にあっても、「手書き」で考える時間には特別な価値があります。書くことで思考は進み、ペン先が紙の上を走ると、頭の中が少しずつ整理されていきます。

そんな手書きの良さを日常に取り入れたいけれど、ノートにびっしりと書き残すほどでもない。むしろ、アイデアの断片や思考のプロセスは、「書いては捨て」「書いては捨て」を繰り返して育てていきたい!

そんな、残すより、考えるためのツールが、「ノート未満、でもノート以上」という新しいノートの形です。

  • コピー用紙を、“思考の道具”に変える
  • “綴じないノート”で、発想はもっと自由に
  • ミニマルに、スマートに持ち歩く

この共通コンセプトのもとに生まれた、ノートのようでノートでない、スマートなプロダクトがこちらの3商品です。

  • PAPER JACKET® FLEX(BUTTERFLY BOARD)
  • SlideNote(研恒社 PageBase事業部)
  • CLIPNOTE(コクヨ)

先ずはその中でも、「最強ツール」とも言える存在——バタフライボードの PAPER JACKET® FLEX からレビューしていきます。


Paper Jacket FLEXを選ぶ理由

これまで「バタフライボード」や「バタフライボード Notes」など、バタフライボード社の製品を使ってきましたが、どれも製品コンセプトが一貫して明快であることに魅力を感じています。

PAPER JACKET® FLEX もその例にもれず、コピー用紙をマグネット × テコの原理で“ジャケット”のように包み込み、ノートとして使える設計になっています。

Paper Jacket FLEX のクリップ部分は薄い

同じようなコンセプトを持つSlideNoteやCLIPNOTEと比べても、“書く”という本質的な機能において、PAPER JACKET® FLEX が“最強”と呼べる理由があります。

  • フレックスカバーは360度開閉可能。フラット性に優れて折り畳んでも書きやすい。
  • 立ったままでも快適に書ける硬さがあります。
  • 挟む部分が少ないので無駄なく書くことができます。
Paper Jacket FLEX - 360度開閉可能なカバーで抜群のフラット性

Paper Jacket FLEXは書くことに集中できる

PAPER JACKET® FLEX を使ってまず感じたのは、「紙に書く」という行為に集中できる心地よさです。どのページも180度フラットに開くことができるMDノートを愛用していますが、それに近い満足度があります。

Paper Jacket FLEXは書くことに集中できる

これは、単なるペーパーホルダーではなく、“書くための道具”としての完成度が高いからこそ得られる体験だと思います。


✅ 安定感があるから、どこでも書ける

立ったまま、膝の上、電車の中、カフェの狭いテーブル、どんな場所でもしっかりとした書き心地が得られるのは、ジャケットのボードとしての硬さのおかげ。A3用紙を挟んで広げて使えば、持ち歩き用のミニホワイトボードにもなります。


✅ 用紙の入れ替えがスムーズでストレスがない

ノートやリング式の綴じ具と違い、“マグネット×てこ“の構造により、1枚の用紙でも30枚の束でもしっかり固定。「差し替えたい」「まとめたい」「順番を変えたい」と思った瞬間に、スッと対応できるのも大きな魅力です。


✅ 書きやすさを損なわない構造

綴じ部分が非常にスリムなので、紙の端までしっかり書けるというのも見逃せないポイント。書く面を無駄なく使えることが、ストレスの少ない筆記につながっています。

Paper Jacket FLEX は、こんなシーンにぴったり

  • 思考整理やアイデア出しに使うラフなスケッチ帳として
  • 会議メモやタスクの一時的なまとめ紙として
  • カフェの狭いスペースや、公園の椅子など書くスペースがない場所でも活躍

⚠️ Paper Jacket FLEXの気になる点

PAPER JACKET® FLEX は機能的には完成度の高い非常によくできた製品ですが、実際に使っていて「もう一歩」と感じた点をいくつかあげておきます。


ジャケットの素材がややチープに感じる

素材はPVC(ポリ塩化ビニール)と記載されていますが、見た目・手触りともに「ザ・ビニール」といった質感で、正直チープな印象を受けます。さらに、素材が少し撓んでしまいます。

機能的には問題ないのですが、手に取ったときにもう少し“道具としての所有感”や質感の高さがあれば、より愛着が湧きやすく、長く使いたくなると感じました。


ジャケットを開くときの“つまみ”が気になる

ジャケットを開閉する際に指をかける“つまみ”部分のデザインも、正直チープな印象があります。開けやすさという点では十分に機能していますが、毎回手に触れる場所だけに、もう少しスマートで洗練された形状だったら嬉しいというのが率直な感想です。

Paper Jacket FLEX つまみのはチープなデザイン

値段が高い、、

A5版で3,850円、A4版では4,400円という価格は、コピー用紙を挟んで使うホルダーとしては、やはり高めの印象を受けます。もちろん、使い込んでいく中で機能性の高さや自由度には十分価値を感じられるのですが、最初に手に取るときの心理的ハードルはそれなりにあります。

この価格帯であれば、もう少し質感やディテールにこだわって欲しかったというのが、率直な気持ちです。


Paper Jacket FLEX - この価格に“価値”はあるか?

PAPER JACKET® FLEX は、決して安い道具ではありません。けれども、「コピー用紙を、どこでも・自由に・スマートに使う」という目的においては代わりになるものがなかなか見つからないという点で、確かに

PAPER JACKET® FLEX は、決して安い道具ではありません。けれども、「コピー用紙を、どこでも・自由に・スマートに使う」という目的において、“唯一無二の道具”ではありませんが、3つの製品の中でも特に“書き心地”に優れていると感じました。

書きたいときにすぐ書けて、終わったらサッと差し替えられる。綴じないからこそ、思考が止まらない。この“紙を使う体験そのもの”に価値を感じられる人には、十分にその価格に見合うプロダクトだと思います。


✅ Paper Jacket FLEX - こんな人にオススメ

  • ノートを「残すため」より「考えるため」に使いたい人
  • 思考の途中段階をどんどん書き出したい人
  • フラットで、どこでも書ける環境を求めている人
  • 道具としての使い心地や機能性にこだわりたい人

おわりに

PAPER JACKET® FLEX は、ノートでもバインダーでもない、“考えるための紙の使い方”を提案してくれるユニークな道具です。すべての人に合うわけではありませんが、「紙を思考のプラットフォームとして使いたい」と感じている人にとっては、とても頼もしい相棒になってくれるはずです。

最後に、今回紹介した PAPER JACKET® FLEX と、同じようなコンセプトを持つSlideNoteとCLIPNOTE、2製品との比較表を掲載しておきます。

項目 / 製品名SlideNoteCLIPNOTEPaper Jacket FLEX
メーカーLIHIT LAB.コクヨバタフライボード
綴じ方スライド式リングレス樹脂製クリップ(ワンプッシュ開閉式)マグネット × てこの原理によるホルダー
素材感・作りプラスチック樹脂PVC
紙の安定性高(しっかり固定)中〜高(最大25枚でも安定)非常に高い(1〜30枚でもしっかり保持)
収納可能な紙の枚数最大30枚最大25枚最大30枚
フラット性❌リングが干渉し完全にはフラット不可⭕やや浮きやすいが比較的フラット✅完全フラット。どこでも書きやすい
対応サイズA5、A4A4A5、A4
価格帯(目安)1,600円(A5)、2,222円(A4)702円3,850円(A4)、4,400円(A5)

持ち運ばないならバインダーもありかも

Paper Jacket の「マグネットで挟む」という機構が非常に使いやすかったこともあり、私は同じコンセプトのセキセイ・クリップボード・ベルポストも併用しています。

セキセイ クリップボード ベルポストのマグネットクリップ部

デザインもスマートで、持ち運ばないならこれもありです。

Paper Jacket FLEX と セキセイ クリップボード ベルポスト

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